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任命拒否 学問の自由に与える影響はきわめて深刻 国際学術会議が書簡

 国際学術会議(ISC)が、菅首相の任命拒否に対し「学問の自由に与える影響をきわめて深刻」と懸念を表明。「自由で責任ある学術の実践」の内容を示したうえで、「世界の学術を代表するものとして、ISCが、学術の最高議決機関のメンバーを推薦する際の学術上の選択の自由を擁護し、確保することに取り組む日本学術会議に強力な支援を提供することが適切だと考えています」と支援を表明した書簡を、日本学術会議会長が、記者会見で紹介した。下段に同会議による翻訳全文。 

*国際学術会議 40の国際的な学術団体と、140以上の国や地域を代表する学術団体が加盟する組織

 記者会見では、学術会議の活動として提言とその1年後に提言の効果が不十分だった場合に出されるインパクトレポートのスケッチ的な一覧、活動についてのるQ&A、学協会・大学等の声明等一覧表などが資料としてアップされている。

 

【記者会見資料 2020.11.26

【日本学術会議に関するQ&A  令和 2 年(2020 年)11 26日】

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性売買禁止 ジェンダー平等のための北欧モデル

 ジェンダー平等社会の実現にとって必要なのは、“セックスワーク論”の掲げる性売買の合法化と対局として注目される「北欧モデル」

  ~ 論稿の土台として、政府が合法として風営店を持続化給付金の対象からはずことに根拠はない。同時に、届出制のあと違法行為があれば、「指示」、営業停止ができるにもかかわらず、貧困と格差社会の「安全弁」として性搾取・人権侵害が蔓延している実態を事実上放置されていることが問われるべき。

 以下、「北欧モデル」のスケッチ  (前衛2020.12メモ)

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性犯罪規定の改正 「同意の有無」を中核に 学術会議提言

 2017年、110年ぶりに刑法の性犯罪規定が改正された。その際、「必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする」という附帯決議(附則9条)が付け加えられた。この決議に基づいて、法施行後3年にあたる2020年に法務省に「性犯罪に関する刑事法検討会」が設置され、審議が始まっている。

 提言は、性暴力に対する国際人権基準の反映「同意の有無」を中核に置く刑法改正を求めて出されたもの。下段に提言概要と、「2017年刑法改正までの経緯と改正の限界」

 なお、提言でモデルとして示された「スウェーデン刑法モデル」は、性売買についても新たな境地を開いているので、別記事で紹介したい

【「同意の有無」を中核に置く刑法改正に向けて

―性暴力に対する国際人権基準の反映― 提言 日本学術会議  2020.9.29

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世界1位 デンマークの電子政府」 カギは政府・社会への信頼感

  デジタル化が進まない要因は、技術より、政府・行政、社会への信頼という記事。

2020 年版の総務省の「情報通信白書」では、サービスアプリケーションの利用にあたって、パーソナルデータを提供することへの不安が、「とても不安」「やや不安」を合わせると8割。米国、ドイツ、中国と比べても一番高い。

菅政権が法治主義を蹂躙する強権政治を続ける限り、「デジタル庁」をつくっても、関連産業に税金を流すだけで、社会的な信頼性・有益性をそなえたシステムが構築できるとは思えない。

 【世界ランク1位「デンマークの電子政府」と日本政府の重大すぎる違い高い技術だけでは電子化は進まない PRESIDENT  

鈴木 賢志明治大学国際日本学部教授・学部長 2020/11/05 】

 

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外国人労働者  ~人権無視の働かせ方、入管収容 / 日本は見捨てられる?

  「移民政策と取らない」との建前から、技能実習生、留学生という名で劣悪・違法な働かせ方、雇用の調整弁と使い捨てるために、失踪が絶えない。そのために懲罰的な入管の対応。それが国連人権理事会から人権規約違反と突きつけられる。

  実質賃金があがらず、その結果、経済も停滞している日本。こんな人権無視が続いていて、いつまでも日本に働きに敵くれる外国人がいる、と思わない方がよい。すでに、そうなりつつある。

  ――差別的処遇が残っている限り、日本の労働者・国民も幸せになれない。

【入管収容について国連人権理事会の恣意的拘禁作業部会の意見を真摯に受け止め、国際法を遵守するよう求める会長声明 日弁連 10/21

【管理でなく共生こそ 入管法考える 藤野氏招き集い 東京・墨田  赤旗202098日】

【外国人技能実習生が働く事業所 7割超で違反 厚労省まとめ NHK10/24

【彼は駅に捨てられた… NHK WEB特集 20201022日】

党の方針としては・・・

【外国人労働者の生活と権利の向上を 日本共産党参院選政策 20196月】

 こんな状況なので、日本は選ばれなくなってきている記事も・・・

【データで読み解く外国人労働者 魅力薄れる日本の賃金 日経 2020//2】

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「数えきれないほど叩かれて」 日本のスポーツにおける子どもの虐待  ヒューマン・ライツ・ウオッチ報告・提言7/20

202007asia_japan_sports_cover_jpn ヒューマン・ライツ・ウオッチが7月20日「数えきれないほど叩かれて」と題した調査報告書を公表。

25歳未満のアンケート回答者381人のうち、19%がスポーツ活動中に殴打されるなどの暴力を受けている。性虐待を受けた人も5人いた。報告には、具体的な証言も多数紹介されており、部活動やトップレベルのスポーツでも依然として指導現場などで暴力・虐待が根強く残っていることが明らかになった。”

HLWは、各種団体まかせやガイドラインでは限界があり、国が、日本のスポーツにおける子どもの虐待への対処を任務とする独立した行政機関として「日本セーフスポーツ・センター」(仮称)を設置することを提言している。

【日本:メダル獲得努力の裏の子どもの虐待 ~ 2021年の夏季オリ・パラ大会開催国として、大胆な改革を直ちに行うべき ヒューマン・ライツ・ウオッチ 7/20

【「数えきれないほど叩かれて」  日本のスポーツにおける子どもの虐待 7/20 調査報告・提言】

【日本スポーツ界にはびこる「鉄拳制裁」 人権団体調査 2割が「暴力受けた」、性虐待も 8/2全国新聞ネット】

  成績をあげるた、暴力・恐怖で「ブレークスルー」を起こさせる「ダークペダゴジー」という問題、ジェンダー平等の低さとともに、「メダル獲得=正義」が作り出すゆがみがあるように、下記の記事から考えさせられた。

【「普通の人」がなぜ過激化するのか<歪んだ正義>(1) 毎日8/2()

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コロナ禍・学校再開 と「子どもの権利条約」  声明など

 教育研究者で土佐町議でもある鈴木大裕氏のFBより

「コロナ休校で、学校のありがたさを感じた人は少なくないと思います。塾でも託児所でも食堂でも公園でもない学校という特別な場所。そんな学校の再開を楽しみにしていた子は全国にいたはずです。子どもたちが学校の何を楽しみにしていたか、行政は耳を傾けていますか?授業時間の確保ばかり気にして、子どもたちの喜びを奪っていませんか?学校は人を育てる場所です。授業はその一部にすぎません。学校から授業だけを抽出してしまえば、教育は商品化し、合理化が進みます。受験勉強も、オンライン学習も、特化してやってきた塾や民間企業の方がノウハウがあります。効率化を突き詰める中で学校は存在意義を失い、塾のカリスマ講師の授業をオンラインで一斉配信すれば良いとの意見も出てくるでしょう。授業をオンラインでやれば良いなんて、そんな簡単な話じゃないんです。」

子どもを主人公に。その考えのもととなる「子どもの権利条約」。コロナ禍に対して、子どもの権利委員会からのメッセージ、声明など

【学校の再開にあたり、日本の先生方へ 国連子どもの権利委員会委員・弁護士 大谷美紀子 メッセージ 】

以下は平野裕二の子どもの権利・国際情報サイトより

【国連・子どもの権利委員会:新型コロナウィルス感染症(COVID-19)に関する声明 4/8

【国連・社会権規約委員会:新型コロナウィルス感染症(COVID-19)と経済的、社会的および文化的権利に関する声明 4/17

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学校再開と子どものストレス~子どもらしさを回復する権利、少人数学級と教員の同僚性の確保を

 コロナ禍は、「今だけ、金だけ、自分だけ」の新自由主義のゆがみを見事に浮かび上がらせた。教育も最大のテーマの1つ。

明日を担う子供たちが幸せを実感し、希望を持てる社会をどうつくるか、子どもの権利が問われている。そうした記事も多い。

【<この人に聞きたいQ&A>休校のストレス、いかに回復? 埼玉大・高橋准教授  東京6/26

【「3密」防止の分散登校 教員「子ども一人一人に目が届く」 従来の教育観見直す契機に 神戸新聞6/14

【休校明けの子にどう向き合う? 精神科医大野裕氏に聞く 朝日6/7

【学校再開、まずは「ストレス軽減」を 教員のメンタルも注意  サンケイビス6/1

【学校再開で子どもはストレス 家庭で十分な休養を、授業は詰め込まなくていい 教育評論家 親野智可等 PEX6/8 】

同時に、同僚性を破壊され、成果主義・自己責任を追及される教育現場の見直しも喫緊の課題。

【多忙で孤立「壊れる教員たち」の過酷すぎる現実 東洋経済オンライン6/28

 以前、メモした田中孝彦先生の備忘録。

【子ども理解 臨床教育学の試み 備忘録 2010/4

ハーマンの「心的外傷と回復」にもふれながら、「教育困難の本格的打開には―― 子ども理解を深めることを軸に、教師同士の支えあう関係を創り、父母・保護者や他領域の発達援助専門職との共同関係を広げる、そうした教師たちの模索・努力を支えていく以外にない」と説く。

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東京高検検事長の定年延長についての元検察官有志による意見書 5/15

「東京高検検事長の定年延長についての元検察官有志による意見書 5/15」

  1 東京高検検事長黒川弘務氏は、本年28日に定年の63歳に達し退官の予定であったが、直前の131日、その定年を87日まで半年間延長する閣議決定が行われ、同氏は定年を過ぎて今なお現職に止(とど)まっている。

  検察庁法によれば、定年は検事総長が65歳、その他の検察官は63歳とされており(同法22条)、定年延長を可能とする規定はない。従って検察官の定年を延長するためには検察庁法を改正するしかない。しかるに内閣は同法改正の手続きを経ずに閣議決定のみで黒川氏の定年延長を決定した。これは内閣が現検事総長稲田伸夫氏の後任として黒川氏を予定しており、そのために稲田氏を遅くとも総長の通例の在職期間である2年が終了する8月初旬までに勇退させてその後任に黒川氏を充てるための措置だというのがもっぱらの観測である。一説によると、本年420日に京都で開催される予定であった国連犯罪防止刑事司法会議で開催国を代表して稲田氏が開会の演説を行うことを花道として稲田氏が勇退し黒川氏が引き継ぐという筋書きであったが、新型コロナウイルスの流行を理由に会議が中止されたためにこの筋書きは消えたとも言われている。

  いずれにせよ、この閣議決定による黒川氏の定年延長は検察庁法に基づかないものであり、黒川氏の留任には法的根拠はない。この点については、日弁連会長以下全国35を超える弁護士会の会長が反対声明を出したが、内閣はこの閣議決定を撤回せず、黒川氏の定年を超えての留任という異常な状態が現在も続いている。

 

 2 一般の国家公務員については、一定の要件の下に定年延長が認められており(国家公務員法81条の3)、内閣はこれを根拠に黒川氏の定年延長を閣議決定したものであるが、検察庁法は国家公務員に対する通則である国家公務員法に対して特別法の関係にある。従って「特別法は一般法に優先する」との法理に従い、検察庁法に規定がないものについては通則としての国家公務員法が適用されるが、検察庁法に規定があるものについては同法が優先適用される。定年に関しては検察庁法に規定があるので、国家公務員法の定年関係規定は検察官には適用されない。これは従来の政府の見解でもあった。例えば昭和56年(1981年)428日、衆議院内閣委員会において所管の人事院事務総局斧任用局長は、「検察官には国家公務員法の定年延長規定は適用されない」旨明言しており、これに反する運用はこれまで1回も行われて来なかった。すなわちこの解釈と運用が定着している。

 検察官は起訴不起訴の決定権すなわち公訴権を独占し、併せて捜査権も有する。捜査権の範囲は広く、政財界の不正事犯も当然捜査の対象となる。捜査権をもつ公訴官としてその責任は広く重い。時の政権の圧力によって起訴に値する事件が不起訴とされたり、起訴に値しないような事件が起訴されるような事態が発生するようなことがあれば日本の刑事司法は適正公平という基本理念を失って崩壊することになりかねない。検察官の責務は極めて重大であり、検察官は自ら捜査によって収集した証拠等の資料に基づいて起訴すべき事件か否かを判定する役割を担っている。その意味で検察官は準司法官とも言われ、司法の前衛たる役割を担っていると言える。

  こうした検察官の責任の特殊性、重大性から一般の国家公務員を対象とした国家公務員法とは別に検察庁法という特別法を制定し、例えば検察官は検察官適格審査会によらなければその意に反して罷免(ひめん)されない(検察庁法23条)などの身分保障規定を設けている。検察官も一般の国家公務員であるから国家公務員法が適用されるというような皮相的な解釈は成り立たないのである。

 

 3 本年213日衆議院本会議で、安倍総理大臣は「検察官にも国家公務員法の適用があると従来の解釈を変更することにした」旨述べた。これは、本来国会の権限である法律改正の手続きを経ずに内閣による解釈だけで法律の解釈運用を変更したという宣言であって、フランスの絶対王制を確立し君臨したルイ14世の言葉として伝えられる「朕(ちん)は国家である」との中世の亡霊のような言葉を彷彿(ほうふつ)とさせるような姿勢であり、近代国家の基本理念である三権分立主義の否定にもつながりかねない危険性を含んでいる。

  時代背景は異なるが17世紀の高名な政治思想家ジョン・ロックはその著「統治二論」(加藤節訳、岩波文庫)の中で「法が終わるところ、暴政が始まる」と警告している。心すべき言葉である。

  ところで仮に安倍総理の解釈のように国家公務員法による定年延長規定が検察官にも適用されると解釈しても、同法81条の3に規定する「その職員の職務の特殊性またはその職員の職務の遂行上の特別の事情からみてその退職により公務の運営に著しい支障が生ずると認められる十分の理由があるとき」という定年延長の要件に該当しないことは明らかである。

  加えて人事院規則11―87条には「勤務延長は、職員が定年退職をすべきこととなる場合において、次の各号の1に該当するときに行うことができる」として、職務が高度の専門的な知識、熟練した技能または豊富な経験を必要とするものであるため後任を容易に得ることができないとき、勤務環境その他の勤務条件に特殊性があるため、その職員の退職により生ずる欠員を容易に補充することができず、業務の遂行に重大な障害が生ずるとき、業務の性質上、その職員の退職による担当者の交替が当該業務の継続的遂行に重大な障害を生ずるとき、という場合を定年延長の要件に挙げている。

  これは要するに、余人をもって代えがたいということであって、現在であれば新型コロナウイルスの流行を収束させるために必死に調査研究を続けている専門家チームのリーダーで後継者がすぐには見付からないというような場合が想定される。

  現在、検察には黒川氏でなければ対応できないというほどの事案が係属しているのかどうか。引き合いに出されるゴーン被告逃亡事件についても黒川氏でなければ、言い換えれば後任の検事長では解決できないという特別な理由があるのであろうか。法律によって厳然と決められている役職定年を延長してまで検事長に留任させるべき法律上の要件に合致する理由は認め難い。

 

 4 416日、国家公務員の定年を60歳から65歳に段階的に引き上げる国家公務員法改正案と抱き合わせる形で検察官の定年も63歳から65歳に引き上げる検察庁法改正案が衆議院本会議で審議入りした。野党側が前記閣議決定の撤回を求めたのに対し菅義偉官房長官は必要なしと突っぱねて既に閣議決定した黒川氏の定年延長を維持する方針を示した。こうして同氏の定年延長問題の決着が着かないまま検察庁法改正案の審議が開始されたのである。

  この改正案中重要な問題点は、検事長を含む上級検察官の役職定年延長に関する改正についてである。すなわち同改正案には「内閣は(中略)年齢が63年に達した次長検事または検事長について、当該次長検事または検事長の職務の遂行上の特別の事情を勘案して、当該次長検事または検事長を検事に任命することにより公務の運営に著しい支障が生ずると認められる事由として内閣が定める事由があると認めるときは、当該次長検事または検事長が年齢63年に達した日の翌日から起算して1年を超えない範囲内で期限を定め、引き続き当該次長検事または検事長が年齢63年に達した日において占めていた官及び職を占めたまま勤務をさせることができる(後略)」と記載されている。

  難解な条文であるが、要するに次長検事および検事長は63歳の職務定年に達しても内閣が必要と認める一定の理由があれば1年以内の範囲で定年延長ができるということである。

  注意すべきは、この規定は内閣の裁量で次長検事および検事長の定年延長が可能とする内容であり、前記の閣僚会議によって黒川検事長の定年延長を決定した違法な決議を後追いで容認しようとするものである。これまで政界と検察との両者間には検察官の人事に政治は介入しないという確立した慣例があり、その慣例がきちんと守られてきた。これは「検察を政治の影響から切りはなすための知恵」とされている(元検事総長伊藤栄樹著「だまされる検事」)。検察庁法は、組織の長に事故があるときまたは欠けたときに備えて臨時職務代行の制度(同法13条)を設けており、定年延長によって対応することは毫(ごう)も想定していなかったし、これからも同様であろうと思われる。

 今回の法改正は、検察の人事に政治権力が介入することを正当化し、政権の意に沿わない検察の動きを封じ込め、検察の力を殺(そ)ぐことを意図していると考えられる。

 

 5 かつてロッキード世代と呼ばれる世代があったように思われる。ロッキード事件の捜査、公判に関与した検察官や検察事務官ばかりでなく、捜査、公判の推移に一喜一憂しつつ見守っていた多くの関係者、広くは国民大多数であった。

  振り返ると、昭和51年(1976年)25日、某紙夕刊1面トップに「ロッキード社がワイロ商法 エアバスにからみ48億円 児玉誉士夫氏に21億円 日本政府にも流れる」との記事が掲載され、翌日から新聞もテレビもロッキード関連の報道一色に塗りつぶされて日本列島は興奮の渦に巻き込まれた。

  当時特捜部にいた若手検事の間では、この降って湧いたような事件に対して、特捜部として必ず捜査に着手するという積極派や、着手すると言っても贈賄の被疑者は国外在住のロッキード社の幹部が中心だし、証拠もほとんど海外にある、いくら特捜部でも手が届かないのではないかという懐疑派、苦労して捜査しても造船疑獄事件のように指揮権発動でおしまいだという悲観派が入り乱れていた。

 

 事件の第一報が掲載されてから13日後の218日検察首脳会議が開かれ、席上、東京高検検事長の神谷尚男氏が「いまこの事件の疑惑解明に着手しなければ検察は今後20年間国民の信頼を失う」と発言したことが報道されるやロッキード世代は歓喜した。後日談だが事件終了後しばらくして若手検事何名かで神谷氏のご自宅にお邪魔したときにこの発言をされた時の神谷氏の心境を聞いた。「(八方塞がりの中で)進むも地獄、退くも地獄なら、進むしかないではないか」という答えであった。

  この神谷検事長の国民信頼発言でロッキード事件の方針が決定し、あとは田中角栄氏ら政財界の大物逮捕に至るご存じの展開となった。時の検事総長は布施健氏、法務大臣は稲葉修氏、法務事務次官は塩野宜慶(やすよし)(後に最高裁判事)、内閣総理大臣は三木武夫氏であった。

  特捜部が造船疑獄事件の時のように指揮権発動に怯(おび)えることなくのびのびと事件の解明に全力を傾注できたのは検察上層部の不退転の姿勢、それに国民の熱い支持と、捜査への政治的介入に抑制的な政治家たちの存在であった。

  国会で捜査の進展状況や疑惑を持たれている政治家の名前を明らかにせよと迫る国会議員に対して捜査の秘密を楯(たて)に断固拒否し続けた安原美穂刑事局長の姿が思い出される。

 しかし検察の歴史には、捜査幹部が押収資料を改ざんするという天を仰ぎたくなるような恥ずべき事件もあった。後輩たちがこの事件がトラウマとなって弱体化し、きちんと育っていないのではないかという思いもある。それが今回のように政治権力につけ込まれる隙を与えてしまったのではないかとの懸念もある。検察は強い権力を持つ組織としてあくまで謙虚でなくてはならない。

 しかしながら、検察が萎縮して人事権まで政権側に握られ、起訴・不起訴の決定など公訴権の行使にまで掣肘(せいちゅう)を受けるようになったら検察は国民の信託に応えられない。

  正しいことが正しく行われる国家社会でなくてはならない。

  黒川検事長の定年延長閣議決定、今回の検察庁法改正案提出と続く一連の動きは、検察の組織を弱体化して時の政権の意のままに動く組織に改変させようとする動きであり、ロッキード世代として看過し得ないものである。関係者がこの検察庁法改正の問題を賢察され、内閣が潔くこの改正法案中、検察幹部の定年延長を認める規定は撤回することを期待し、あくまで維持するというのであれば、与党野党の境界を超えて多くの国会議員と法曹人、そして心ある国民すべてがこの検察庁法改正案に断固反対の声を上げてこれを阻止する行動に出ることを期待してやまない。

  【追記】この意見書は、本来は広く心ある元検察官多数に呼びかけて協議を重ねてまとめ上げるべきところ、既に問題の検察庁法一部改正法案が国会に提出され審議が開始されるという差し迫った状況下にあり、意見のとりまとめに当たる私(清水勇男)は既に85歳の高齢に加えて疾病により身体の自由を大きく失っている事情にあることから思うに任せず、やむなくごく少数の親しい先輩知友のみに呼びかけて起案したものであり、更に広く呼びかければ賛同者も多く参集し連名者も多岐に上るものと確実に予想されるので、残念の極みであるが、上記のような事情を了とせられ、意のあるところをなにとぞお酌み取り頂きたい。

 

 令和2515

 元仙台高検検事長・平田胤明(たねあき)

 元法務省官房長・堀田力

 元東京高検検事長・村山弘義

 元大阪高検検事長・杉原弘泰

 元最高検検事・土屋守

 同・清水勇男

 同・久保裕

 同・五十嵐紀男

 元検事総長・松尾邦弘

 元最高検公判部長・本江威憙(ほんごうたけよし)

 元最高検検事・町田幸雄

 同・池田茂穂

 同・加藤康栄

 同・吉田博視

 (本意見書とりまとめ担当・文責)清水勇男

 

 法務大臣 森まさこ殿

人権侵害の「救済」とは―事実を認め人間の尊厳を回復し、教育に活かし繰り返さないこと  国連の基本原則 

申 惠丰・青山学院大学法学部教授の季刊「現代の理論」21号の論稿。

国連総会は、2005年、長年の取り組みをもとに、「国際人権法及び国際人道法の重大な違反の被害者のための救済の権利に関する基本原則及びガイドライン」を採択している。その基本は、現状回復、リハビリ、金銭賠償、満足(公的な事実の認定、謝罪等)、再発防止の保証(教育)、となっている。

その観点で「徴用工」への日本政府の対応を検証している。満足、再発防止がほとんど実施されていない。それは、技能実習生への対応にも表れているとの問題提起は鋭い。

【人権侵害の「救済」とは―事実を認め人間の尊厳を回復し、教育に活かし繰り返さないこと 申 惠丰・青山学院大学法学部教授 「現代の理論」】

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