トランプ政権の国家安全保障戦略と「力の支配」
雑誌「経済」26.4号より、 森原康仁・専修大教授の論稿のメモ
トランプ大統領の言動は、「国家安全保障政策2025」を忠実にそったもので、「気分任せ」と、軽視すべきではない、と言う重要な解明。まず、「敵」を知せなくては・・・・
メモは、第二次トランプ政権の部分をメモしているが、論考は、それぞれの時期の「戦略」について考察している。
大きな流れが把握できる。
第二次トランプ政権の国家安全保障戦略 「力の支配」とNSS2025 (メモ)
森原康仁・゛専修大教授 経済2026.4
◆はじめに
第二次トランプ政権(25.1.20発足)、の「国歌安全保障戦略(NSS2025)」(26.1.25発表)~「歴代政権は、大仰な国家建設プロジェクトや、『ルールに基づく国際秩序』といった空想的な抽象概念を維持するという自己満足的な公約のために、我々の軍事的優位を、そして国民の生命、善意、資源を浪費してきた」と規定
→相互関税、国連諸機関からの脱退、ベネズエラ・イラン攻撃など---「ルールに基づく国際秩序」の破壊による「力の支配」を特徴とする。それらは思い付きでなく「NSS2025」の忠実な実行
◆^米国一極覇権の終焉と孤立主義への衝動
・NSS2017を継承しつつも「『アメリカ・ファースト』こそが原動力」と、より極端な自国中心主義でイデオロギー色が強い
➡これまでの「関与の質的変化」という緩やかなトレンドを断ち切り、WWⅡ後の「大戦略」である「リベラル覇権」の解体を決定づけるもの
(1)3つの特徴
①「民主主義対専制主義」パラダイムの放棄 ~「価値に基づく同盟」というアプローチの否定
・国際関係を、純粋な国益とパワーバランスの観点から再定義~他国の政治システムは問わず、米国の主権と経済的利益に資するか否かが第一の判断基準
・同盟国との関係~「共有する価値」でなく、「負担の公平性」に基づく取引的なものに⋰改変/軍事費増と自律を迫る
②「大国間競争」を縮小し孤立主義的・抑制主義的な傾向を強めている
・NSS2017 「競争相手」と位置付け、世界規模での対抗姿勢が鮮明 ➡「2025」 競争の範囲を限定する傾向
・グローバルな覇権の維持わり、「西半球」の防衛(メモ者 米以外の影響力排除)を最優先/モンロー主義の「伝統」回帰
・中国とは厳しい競争姿勢の維持。が、ロシアには融和的
③「経済安全保障」の絶対化と保護主義の全面化
・「経済安全保障は国家安全保障」が「2017」に続き導入・同時に極点に達したと言える
自由貿易体制の維持より、国内産業保護と貿易収支の均衡を優先
関税政策を安全保障の主要ツールとして公然と位置づけ~同盟国でも経済的競合国は「脅威」となる可能性
(2) どのような「リアリズム」か 孤立主義的衝動とアジアへの関与
以上を踏まえると、「2025」の特徴 ~ 「孤立主義的傾向がより強まったリアリズム」と言える
・国益の定義 「国際秩序の維持」 ➡ 「米国民の物質的・経済的保護」へと縮小
→エリート主導の「リベラル国際主義」を拒絶し、内向きのナショナリズムを正当性の源泉とするとともに、絶対的利益より相対的利益を重視。⇔同盟国であっても米国の国力を損なう存在は「競争相手」と見なされる
・国際レジームへの決定的な不信~「世界の警察官」の役割り放棄、国際機関・国際制度を米国の主権を制限するものとみなす。そして“米国は世界を普遍的ルールの適用対象でなく、『勢力圏』からなる分割された空間として認識している”と一般的に解釈される余地を与えていることも重要な特徴
* が、米国の関心が純粋な「孤立主義」になったと評価するのは行き過ぎだろう
➡ 「2025」 ①集団的防衛を強化するための同盟国・パートナー国の産業基盤活性化
②戦略資源の同盟国と連携した開発
③自由で開かれたインド太平洋への大統領のコミットメント
④クアッドなど同盟国との輸出管理規制・サプライチェーン面での連携
⑤(アジアの)同盟国の経済がいかなる競合勢力に従属することがないよう確保する
⑥米国の同盟国システムの「経済的連合体」としての統合
⑦同盟国・パートナー国へり貢献が、競争優位を支える
という認識を示す。(③~⑦は、主にアジアを念頭としたもの。「世界全体の恒久的支配」への関心は著しく減退)
*「2025」・・・「優先主義」的な特徴 = MEGA運動の極端な孤立主義と、コルビー国防次官(中国への拒否戦略)・ベッセント財務長官らの選択的関与との間に横たわる緊張関係や矛盾を折衷する試みてもある。
◆「2025」と第二次トランプ政権の対外行動
・「ルールに基づく国際秩序」の破壊~「2025」の特徴は、実際の行動が裏付けている
①ウ戦争の停戦交渉・・・東部の譲渡をウ側に要求~大西洋憲章以来の「武力による国境変更の否認」を米国自らが否認したに等しい。/ベネズエラ攻撃と大統領拘束は、国際法より国内法や実力を優先するむき出しの帝国主義
②「西側同盟秩序」のゆらぎ、同盟を「取引」の対象として再定義~デンマークにグリーンランドの割譲を要求
③国際レジームという「ルール」破壊~「核実験の再開」に言及(25.10)、パリ協定からの離脱、関税を武器にした貿易協定の見直し・多国間主義的な通商秩序の否定
④「ルール」に実質を与える国際機関の破壊~66の国際機関からの離脱(26.1.7)。象徴的なWHOの脱退・資金停止、国連難民高等弁務官事務所の資金削減・・・パンデミック対策・人道支援の現場に深刻な影響
*「2025」は、自国の実利を優先する「むき出しの力の支配」を貫く動きを自己正当化するもの~リベラル国際秩序は多分に偽善的で両義的概念であるが、建前は「権威主義」と異なる民主主義の擁護者として位置付けてきたが、その建前の放棄。きわめて独善的な力の支配を前面に押し立てている
* 世界は、帝国主義的な「弱肉強食」の時代に、逆戻りするのか否かの瀬戸際にある
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