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「3割減」(国の説明)がコスト3倍に!? 「中止の提言」も 自治体システム標準化 

12/5付の赤旗に、デジタル庁の「デジタル社会構想会議」の記事が出ている。その中で、全国知事会デジタル社会推進本部長の村岡嗣政山口県知事が文書で提出した意見が紹介されている。

“「今年度末に移行期限を迎える自治体情報システムの標準化に向けて、▽期限に間に合わないシステムが残る▽移行後のシステム運用経費が大幅に増加する」と指摘し「移行により大幅な増加が見込まれる運用経費については、従来の枠組みにとらわれることなく、十分な措置を講じる必要がある」”

 標準化と聞くと、国レベルでシステムを開発し、それにオプションを追加できる、ようなイメージを抱きやすいが、国は仕様書を示すだけで、各自治体とベンダーでシステムを組めとうもの --誰かが、“カレーを食べにカレー屋に入ったら、レシピと材料が出てきた”と表現していた。

なかなか素人にはわかりにくい分野なのだか、以下のウェブ記事がよくわかる。2つめの記事は首都圏の県庁職員かつ研究者の方の中止の提案

3割削減のつもりがコスト3倍!? 自治体システム標準化の大誤算|はちみつ 25/6/6

自治体情報システム標準化の中止を提言します(Ver1.0)|岩崎 和隆(Kazutaka IWASAKI

画像は全てカットしてますので元記事をみてください。文中の下線は、メモ者の手によるもの。

3割削減のつもりがコスト3倍!? 自治体システム標準化の大誤算|はちみつ 25/6/6

はじめに

国は自治体システムの標準化・ガバメントクラウド移行で運用経費の「3割削減」を目指していたはずが、現実にはなぜか運用経費が「数倍」に膨れ上がっており、この大失態の補填のため、数千億円規模の国費が投入される可能性がある。
この複雑な政策課題を、なるべくわかりやすく、お届けします。

🎬 登場人物

  • DX庁 夢見部長(年齢不詳・男性)
  • 人気アイドル はちみつちゃん20歳・女性・美少女)

目次

  1. はじめに
  2. 🎬 登場人物
  3. 📊 目標と現実とのギャップ
  4. 🔍 要因分析の矛盾
  5. 💸 機能強化という名の費用増
  6. 🛠️ 対策という名の責任逃れ
  7. 🔮 中長期対策という絵に描いた餅
  8. 🎯 責任転嫁の構造
  9. 💥 結論:制度の破綻
  10. エンディングテーマ

夢見部長: 皆さん、こんにちは!DX庁の夢見でございます!

はちみつちゃん: 公共系アイドル、はちみつちゃんです!よろしくお願いしま〜す!

 夢見部長: さあ、はちみつちゃん、今日はですね、地方公共団体の情報システム標準化、そしてガバメントクラウド移行について、皆さんに素晴らしいお話をお届けしたいと思います!この取り組みはですね、「自治体の人的・財政的負担を軽減し、自治体が地域の実情に即した住民サービスの向上に注力できるよう」にすることを目的としているんですよ!

はちみつちゃん: わー、部長、いつも熱いですね!でも、私、ちょっと心配事があるんですよ。国は「平成30年度(2018年度)比で少なくとも3割の削減を目指す」って言ってますよね?

標準化基本方針において「標準準拠システムへの移行完了後に(運用経費は)少なくとも3割の削減を目指す」とされているほか、国はこの目標の実現に向けた環境を整備することと定められている。

 夢見部長: その通り!「地方公共団体情報システム標準化基本方針」などで明確に掲げております! 期待してください!

はちみつちゃん: なのに、東京都の調査だと、都内自治体の運用経費は「移行前と比べて全体で約1.6倍に増大する見込み」って書いてありましたよ?! 最大だと2倍、3倍、いや、中核市だと5.7なんて試算も出てるんですけど?! 3割削減どころか、数倍に増えるって、それ「夢見」すぎじゃないですか?!

東京都の調査では、「仮にデジタル庁が主張する割引を最大限適用できたとしても、都内全体で1.6倍に増加」する

中核市市長会・全国町村会からも数倍にコストが増加する見込みであると国に対して要望をあげている

📊 目標と現実とのギャップ

夢見部長: いやいや、それはまだ「足下の見積」であってこれから「クラウド最適化」をすすめることで

はちみつちゃん: 足下どころか、もうつま先立ちで崖っぷちですよ!「クラウド最適化を行うことにより、中長期的にはほとんどのケースにおいてコスト削減が見込まれている」って主張してますけど、その試算根拠や実現に要する期間、条件等は具体的に示されてないんですよ?! どこが削減されるんですか?!

根拠のない主張を繰り返す国に対して東京都は強く改善を求めている。

夢見部長: うむむ。で、では次に、その運用経費増加の要因についてご説明しましょう!

🔍 要因分析の矛盾

夢見部長: 要因は大きく3つ!「構造的な要因」「機能強化要因」「外部要因」です!

 まず「構造的な要因」!これはですね、ガバメントクラウド移行に伴う「新たな経費の発生」があるのです。ガバクラ接続回線費とか、運用管理補助委託経費とかね!

はちみつちゃん: それ、「新たに追加作業が必要」だとか「二重の基盤・ネットワーク管理費用」が発生するって、もうだいぶ前から指摘されてましたよね?! 何で今更「新たな要因」みたいに言ってるんですか?!まるで「初めて気づいた!」みたいな顔して!

複数の関係者が当初からコスト増の懸念は伝えていたものの、十分な対策が検討されることはなかった。以下は中島さんの2023年の投稿。図でわかりやすく示されているが、某幹部によって「アジビラ」として一蹴された。

夢見部長: (汗) い、いや、それは当時の環境がですね。あとは、移行期限に間に合わせることを優先した結果、パッケージや運用が「十分にクラウド最適化できていない」という点も挙げられます!

はちみつちゃん: それもそうなんですけど、そもそも「3年でやりきれ!」ってお尻叩いたの、国ですよね?!  「期限が切られたら官僚は知恵を絞る」って菅さんは言ってたのに、結局、その知恵は出せなかった。むしろ標準仕様策定後も大規模な法改正が相次いで現場に負担をかけて足を引っ張ってましたよね。

「政治生命を懸けた」、菅前首相が振り返るデジタル庁発足までとこの1 「我が国全体をつくり替えるくらいのつもりで取り組んでほしい」――。2021年9月1日、菅義偉首相(当時)は肝煎りで発足さxtech.nikkei.com

💸 機能強化という名の費用増

夢見部長: うう。そして「機能強化要因」としましては、サービスレベルの向上です!セキュリティ強化や大規模災害対策を実現した結果、クラウド利用料が増加しているのです!

はちみつちゃん: それって「今までより良いサービスを選んだら高くなった」ってだけですよね?! 今まで遠隔地バックアップどころか監視もやってなかった自治体が、それをやるようになったらお金がかかるのは当たり前! でも、それをサービスレベルの向上でまるでAWSが高いみたいに言ったら流石にCSPが可哀想じゃない? 同じサービスをオンプレでやったらむしろめちゃくちゃ高くなりますよね。

機能強化による要因

夢見部長: (タジタジ) ご、ごもっとも。あ、あ、あとは、「標準仕様書への対応に伴いシステムの機能が増強」された点も大きいですね!

はちみつちゃん: これですよこれ!「中核市規模」を想定して作ってるから、人口が少ない町村だと「使わない機能まで強制的に買わされる」って話でしょ?! 昔はオプションだった機能が必須になって、その分料金も上がってるって、ベンダーさんも言ってましたよ! 「使いたくないものにお金払え」って、それじゃ誰も納得しないですよ!

ワーキングチーム検討資料(2025/5/15)では、中核市規模の自治体を想定して標準仕様が策定されたと明記

はちみつちゃん: しかも、もっと酷い話もあるんですよ! 標準化を機に、結局、表計算ソフトや紙ベースに戻っちゃった自治体もあるって聞きましたよ!

はちみつちゃん: 使いもしない機能に高いお金を払って、使いたい機能は我慢して紙で管理する。これって本末転倒じゃないですか?!

夢見部長: ぐ、ぐぬぬ。さ、最後に「外部要因」!物価上昇や賃上げ、為替変動など、マクロ経済環境の変化がですね

はちみつちゃん: これはもう、言うまでもないですよね?!円安でAWSの利用料が事実上高くなっているとか、みんな分かってますよ! なのに「3割削減」なんて目標、なぜ掲げつづけたのでしょうか。

🛠️ 対策という名の責任逃れ

夢見部長: (気を取り直して) 大丈夫!これらの増加要因に対し、国は「総合的な対策」を打ち出しました!

 はちみつちゃん: そうですか。今までの対策、効果ありました?

夢見部長: まずは「当面の対策」ですね! 「見積精査支援の拡充」として新たに専門チームを立ち上げて、自治体の見積精査を支援します!

はちみつちゃん: はぁ・・・。(あきれた顔で) 見積もり精査でどこまで下がるんですか?!レクサスの見積書を精査しても、軽自動車の値段にはならないでしょ?! それじゃ、せいぜい数%下がれば御の字じゃないですか?!しかも、事業者からは「邪魔されるだけ」って声も出てますよ!

 夢見部長: (咳払い) い、いや、それはあとは、「クラウド利用料の更なる各種割引等の交渉」や「先行事例の横展開」なども進めます!

はちみつちゃん: 割引が期待できるならそれは良いことですけど、基幹システムは長期利用が見込まれるのに、単年度予算の問題とかで一部の長期割引で値引きできないとか、国がルールを作ってるんですから、国がまず見直すべきじゃないですか?!
あと、「見える化・分析」ってずっと前から言ってるけど、ダッシュボードも全然出てきてませんよね?!早くしてくださいよ!

🔮 中長期対策という絵に描いた餅

夢見部長: そして中長期的には、「システム運用管理の省力化・自動化の推進」や「公共SaaSによる基盤・業務一体調達の実現」を目指します!

構造的な要因に対する対策

はちみつちゃん: 「モダン化」もいいけど「なぜコストが下がるのか」のロジックが曖昧で、結局、事業者に追加投資させるだけじゃないですか?! また値段上がりますよ。「公共SaaS」も、メリットは語るけど、どうやってコスト下がるのか、具体的な計画がない! 定性効果しか書いてないし、まさに「絵に描いた餅」ですよね!EBPMどこいった?

公共SaaSではモダン化が必須であり、技術審査を受ける必要があるとされる。

夢見部長: (必死に) いやいや、国も頑張っているんで。さらにこれはまだ検討中なのですが、運用経費の増加という自治体の意見を踏まえて、財政措置のあり方を継続議論しつつ、取り組み内容をバージョンアップしていきたいと思っています!

検討事項

はちみつちゃん: いやいや「法施行から5年後に見直す」って、それって「現行バージョンではうまくいきませんでした」って認めてるようなもんですよね?

夢見部長: (へたり込みながら) はちみつちゃん手厳しい

🎯 責任転嫁の構造

はちみつちゃん: 「国の取り組み」って、結局「今までの対策を着実に実施する」とか「積極的に支援する」とか、ふわっとした言葉ばかりで、何もしなくても「やりました!」って言えるような内容じゃないですか?! しかも「事業者への期待」がまた酷い!「自治体の運用実態に基づいて改善策を積極的に提案しろ」って、カスタマイズ禁止したのに、今度は個別対応しろって「ダブルスタンダード」じゃないですか?! 都道府県には「市町村の支援をやれ」「見積精査支援をやれ」って、国がやるべきことを丸投げしてますよね?!

夢見部長: (顔面蒼白) そ、そんなことは

標準化のメリットのひとつとして自治体ごとのカスタマイズ(の撤廃による)負担軽減を謳う

大半のケースで自治体ごとにシステムは分離されており、改善提案は自治体ごとの個別環境に対して行う必要がある。

💥 結論:制度の破綻

はちみつちゃん: 結局、この「総合的な対策」って、今までの取り組みの何が悪かったかの検証もなく、ただ「あれをやれ、これをやれ」と事業者等に新たな負担を強いる計画書になってますよ! しかもそれに従う事業者のシステムを「優良システム」と呼ぶって上だけ目線にも程がありますよね! もはや「3割削減」の目標なんて、2030年度よりも先まで線が伸びてて、もう事実上ギブアップしてるようなものじゃないですか!

運用経費などの課題と見通しは「2030年度〜」にまでかかると資料上見ることができる。

はちみつちゃん: だって、この内容で「大丈夫そう」って思える人、います?! 国はもっと抜本的な組織の見直しとか、第三者による政策チェックとか、今までの取り組みの何が問題で目標達成と真逆の取り組みを進めてしまったのか、しっかり振り返るべきですよ!
このままじゃ、自治体システムの標準化、この総合対策案が進められたとしても本当に大丈夫なのかと疑問しかないです。

夢見部長: (蚊の鳴くような声で) うう

はちみつちゃん: というわけで、今日のライブはここまでです^^ ありがとうございました〜!

夢見部長: (力なく) …ありがとうございました

エンディングテーマ

※この記事は政策課題への問題提起を目的としており、特定の個人や組織を誹謗中傷するものではありません。

※対談部分のトークスクリプトは筆者が40分以上しゃべりつづけた解説用音声データを文字起こしし、NotebookLMにより漫才の台本として生成されたものを筆者が加筆修正したものです(8割程度は原文ママ)。以下から始まるあとがきは筆者によって記載しています。

あとがき

総合対策案の評価と課題

国がその目標(3割削減)に反して、標準化・ガバメントクラウド移行に伴う運用経費の高騰を認め、短期間で「総合対策案」を取りまとめたことは評価されるべきだ。また、国・地方デジタル共通基盤推進連絡協議会やワーキングチームの資料や議事要旨がインターネット上で公開され、SNS等で内容の議論が行われたことも、状況改善への期待を抱かせるものであった。

一方で、為替変動や物価高などの外的要因は仕方ないにしても、運用経費増加は国のこれまでの取り組みによる構造的な要因が大きい。なぜ多数の関係者が声を上げていたにも関わらず、このタイミングまで来てしまったのかは大いに疑問がある。

そして、現在の取り組みへの振り返り・反省もなく、新たな施策やバージョンアップを目指すようでは、この先も同じような状況になってしまうのではないかとの疑念を払拭することは難しいだろう。自治体システム標準化・ガバメントクラウドの推進体制・組織の刷新、第三者による政策評価などを含めた、抜本的な見直しが必要だ。

また、今回の対策案で提示された各種対策によって、本当に運用経費の削減効果があるかどうかは議論・検証が不十分なままとなっている。根拠もないのに、公共SaaS等によって事業者・都道府県・市区町村に新たな負担を強いるような計画となっている点は非常に残念であり、定性的な効果にとどまらず、定量的な効果検証によって、しっかり施策の具体化を進めていただきあい。

 事業者への対応について

事業者ヒアリングの中で、実際の現場の厳しい意見が寄せられた際、耳を傾けるどころか、「嫌ならやらなくていい」という恫喝めいた発言がワーキングチームのメンバーからあったことは非常に残念であった。

また、総合対策案の中でも、国の方針に従う事業者のシステムを「優良システム」として取り扱うという表現も、同様に国の意のままにならない事業者のシステムは「不良システム」というメッセージにどうしても感じてしまう。

都道府県のメンバーからも「国はベンダーに指導するように」との発言があり、悪意・悪気はないものと思いたいが、ワーキングチームの中で事業者は殊更悪い存在のように扱われている印象があった。

この難局を乗り越えていくためには国・都道府県・市区町村だけでなく、事業者も含めてステークホルダーが協力しながら推進していく必要があるが、一部の関係者がそのような姿勢では、うまくいくものもいかなくなってしまうのではないだろうか。

 今後に向けて

運用経費削減の効果が出るのは2030年度以降になる可能性が高い現在の状況では、補助金として実際に国費投入されることになれば、その規模は数千億円どころか数兆円にも上る一大事業になると見込まれる。このような規模の事業については、国民の関心を高め、透明性を確保しながら進めていく必要があるだろう。

標準化・ガバメントクラウド移行を前向きに進めていくためには、すべての関係者が建設的な対話を重ね、実効性のある対策を共に検討していく必要がある。

参考資料

主に「デジタル行財政改革会議」、「東京都」、「デジタル庁」の資料を参考とした。

デジタル行財政改革会議|内閣官房ホームページ内閣官房 デジタル行財政改革会議www.cas.go.jp

 

 

 

自治体情報システム標準化の中止を提言します(Ver1.0)|岩崎 和隆(Kazutaka IWASAKI

岩崎 和隆(Kazutaka IWASAKI)   2025627 21:47

1 はじめに

 自治体情報システム標準化(以下「標準化」と言います。)の期限が20263月に迫ってきました。
 そのような状況で、20251月から5月にかけて、標準化のランニングコストの見込みがいくつか出てきました。また、202310月から何度か期限に間に合わないシステムの調査が行われていますが、増加傾向となっています。

 そこで本稿では、現時点でのランニングコストの見込み及び期限に間に合わないシステム数の状況、標準化で実現できることとできないことをまとめます。国の動向も説明します。

 そして、これらの現在の状況を鑑み、私は関係者の今まで、そしてこれからの多大なご尽力に心から敬意を表すとともに、本稿で標準化の中止を提言します。

 あわせて、標準化はやりかけの事業のため、中止にあたって後始末の方法も提言します。

 

2 ランニングコストの見込みと各団体の国への要望

 いくつかの団体がランニングコストについて国に要望しています。その要望書における現時点での見込みは次の表1のとおりです。

1 標準化後のランニングコストの見込み

注)東京都知事、特別区長会会長、東京都市長会会長、東京都町村会会長による総務大臣及びデジタル大臣への共同要請

※1のリンク先  ※2のリンク先   ※4のリンク先

 そして、各団体の要望は次の表2のとおりです。

2 表1記載団体等の国への要望

3 移行期日に間に合わないシステム

 移行期日に間に合わないシステムの数の推移は、国の調査※5 ※6によると表3のとおりです。

3 移行期日に間に合わないシステム数

注)標準化対象システムには市区町村のものだけでなく都道府県のものがあるため、団体数の母数は1,788団体(市区町村1741団体+都道府県47団体)となります。

 表3のとおり、調査のたびに増加しているため今後も増加が予想されます。

 

4 国の動き

 このような状況を踏まえ、20255月に内閣官房デジタル行財政改革会議国・地方デジタル共通基盤推進連絡協議会(以下「協議会」と言います。)が中核市市長会、事業者(3社)、指定都市市長会からヒアリングを実施しました※7。また、20256月には、デジタル庁が「自治体情報システムの標準化・ガバメントクラウド移行後の運用経費に係る総合的な対策について」※8を公表しました。

 協議会の事業者ヒアリングでは、協議会側から、「今回、利用料の増など結構強気な価格設定をしていると感じているが、他社に乗り換えられてしまうリスクはないのか」(事業者A議事要旨※9)、「我が国の経済にとって価格転嫁をいかにしていくか、大きな課題ではある一方、2倍や3倍という価格設定は、強気な設定にも見える。事業者と自治体の間の意識のギャップがあるような気がするが、事業者にとって、強気な価格設定をしていても大丈夫だと判断しているのはなぜか」(事業者B議事要旨※10)、「我が国の経済の最大の課題は、価格転嫁できてこなかったことだとは認識しているが、一方で、受け入れる自治体側が、運用経費全体が大幅に増加になると言われている状況を踏まえると、かなり強気な価格設定だと思う。」(事業者C議事要旨※11)という発言がありました。

 自治体がランニングコスト増で困っているという事情を踏まえた発言と考えられますが、標準化はそもそも、事業者が望んだことでなく国の政策として行われていることです。この事情を考慮すると、事業者に向かって「強気な価格設定(と感じる、に見える、だと思う)」と言ったことは、「おまゆう」ではないでしょうか。

 

5 現時点で標準化により実現できること、できないこと

 標準化では、システムの機能はさほど改善しません。また、国民の利便性もさほど向上しません。

 国は、標準化によりセキュリティが向上すると言いますが、従前のセキュリティ対策の何が悪くてどのようなリスクがあったのか、筆者が知る限り国は具体的な説明をしていません。たとえば、比較的大規模な自治体ではデータセンターと契約して仮想サーバで業務システムを動かしているところがあります。この方法で何がいけないのか、どのようなリスクがあるのか、国は説明していません。

 セキュリティについては、現状の課題が明らかになっていないので、標準化前後を比較したくても標準化前の課題やリスクが分かりません。そのため、私は改善したか否かを評価できる状況にないと考えます。また、仮に改善したとしても、セキュリティがオーバースペックになっているか否かを判断することも出来ない状況です。

 まとめると、機能や国民の利便性はほぼ変わらず、セキュリティは有益な改善があったか否か分からないにもかかわらず、ランニングコストはおおむね1.6倍から2.3倍増加する見込みということになります。

 

6 私が考えるランニングコスト増加要因

 ランニングコストが増加した要因として、私が考える主なものは次のとおりです。

(1)標準化というビッグピクチャーはあったが、ランニングコスト3割削減を実現するための具体的な方策がなかった

(2)そもそも、各自治体が個別にシステム・インテグレートを行う方法では、ランニングコスト削減が難しい

(3)短期間に各自治体でシステム・インテグレートを行うため、技術者が不足し、価格高騰を招いた。

(4)国が自治体に期限付きで標準化を義務付けたことと、そのような状況であることを事業者が承知しているため、自治体が事業者と価格交渉するのが困難になった。

(5)カスタマイズ(SAPで言うアドオン。以下同じ。)を禁止したため、パッケージソフトウェアの機能が膨れ上がった。また、パッケージソフトウェアで不足する機能は外付けシステムを用意する必要が生じた。

(6)標準仕様書が改定されつづけ、要件が固まらない。

(7)ガバメントクラウドを利用する自治体では、標準化対象システムはガバメントクラウド利用となるが、標準化対象外システムは既存の情報インフラを使い続けることが多い。この場合、情報インフラの二重投資が発生する

 

7 標準化の中止を提言します

 2025613日に閣議決定された「デジタル社会の実現に向けた重点計画」※12では、標準化対象システムで20263月までに標準化が完了しないものについて、移行期限後、概ね5年以内に移行できるよう国が積極的に支援することとしています。

 しかし、6に記したランニングコスト増加要因について、一部の要因は対策ないし緩和することができるかもしれませんが、多くは対策が困難と私は考えます。

 国民の利便性がさほど向上せず、機能が従前とさほど変わらず、セキュリティが向上したか分からない、セキュリティがオーバースペックでないか分からないという状況です。それにもかかわらず、ランニングコストはおおむね1.6倍から2.3倍になります。これを、5年延長して実施することが果たして適切なのでしょうか。私は民間企業のことはよく分かりませんが、民間企業なら、早々に方針転換し、既存の投資は損失として処理し、損失の拡大を防ぐのではないでしょうか。

 標準化完遂に向けてさらに5年の歳月を費やすことは、将来、それを省みたときに多くの関係者が後悔することになると予想します。

 また、このような状況で標準化を続けることは、

ランニングコストの増加分を負担する国民だけでなく、

いわれのない批判をされながらリプレースとシステムの安定稼働に取組む事業者

標準化対象システムのリプレース、ガバメントクラウドと従来の情報インフラの二重管理、標準化対象システムと標準化対象外システムの連携などに苦しむ自治体

標準化の計画立案者として国民、事業者、自治体から非難される

というすべてのステークホルダーに大きなデメリットがあります。

そして、国以外のステークホルダーは国が悪いと思えば多少気持ちが楽になるかもしれませんが、他のステークホルダーからの非難が集中し、かつ他のステークホルダーのせいにできない国が最も辛いかもしれません。

 このように、標準化は政策としてすでに破綻していると私は考えます。民間企業なら投資を損失として計上して事業を中止する状況と考えられるからです。

 ゆえに、私は関係者の今まで、そしてこれからの多大なご尽力に心から敬意を表すとともに、次のことを提言します。

(1)標準化は中止する。

(2)まだ稼働していないシステムについては、標準仕様書準拠システムへの移行の完遂ないし現行システムの利用継続のどちらかとし、その判断は各自治体にゆだねることとする。なお、各自治体の判断で、これ以外の選択肢も採用可能とする。また、これに要する費用は国が負担する。

(3)従前のシステムのランニングコストと比べて増加した分は、国が全額負担する。

(4)標準化の中止に伴い事業者に損失が発生するときは、国が補填する。

(5)改めて、標準化対象システムと標準化対象外システムについて、自治体統一システムを目指す。

 

8 私の考える自治体統一システム構想

 私が考える自治体統一システム構想を説明します。

 まず、コンセプトは、次の図1のとおりです。

1 自治体統一システム構想のコンセプト

 中央集権と地方分権という軸とは独立して、集中処理と分散処理という軸があるのではないか、という考えに基づきます。

 現金給付・徴収を中心に、児童手当のような全国一律の制度、小児医療費助成のような各自治体で制度が異なるもののいずれも、技術的には統一システムで実現可能です。あわせて、自治体のマスターとも言うべき住民基本台帳も統一システムにします。

 次に、データベースは業務別に全国で1個、アプリは1個を理想としつつ市区町村の規模に応じて3個程度まで許容することとし、仮に指定都市用、中規模自治体用、小規模自治体用の3つとします。たとえば、住民記録のシステムであれば、A社が受注したら、データベースの設計、指定都市用、中規模自治体用、小規模自治体用をすべてA社が開発することとします。アプリは3つとしていますが、共通化できる機能は共通にすることになります。

 そして、統一システムの利用は自治体の任意としますが、統一データベースへの参加は義務とします。

 それから、プッシュ型サービスを採用し、国民の利便性の向上と自治体の業務効率化を図ります。

 最後に、業務別にデータベースを統一した上で、各業務を所管する省庁がデータベースを管理することとします。この方式であれば、国民Bさんのデータを誰かが一元管理する状況ではありませんので、マイナンバー判例に反しないと考えられます。

 

9 国民の皆様へのお願い

 標準化の失敗は明らかですが、この計画を推進した政治家や国の職員を非難しても、おそらく頑なになるだけで国民の皆様にメリットがありません。
システムはとても難しいものです。国民の皆様には、関係者の失敗を責め立てるのでなく、関係者が次の目標に向かって気持ちと政策の方向を切り替えられるよう、過度な責任追及をしないことを私はお勧めします。

 どうしても責任追及したいのでしたら、選挙のときに国や自治体のシステムをよくすることができるかという基準で投票することをお勧めします。選挙では他にも争点がたくさんありますので、国や自治体のシステムを最優先で考えて投票することは難しいと考えられます。国民の皆様が投票に反映できないのでしたら、寛容になるしかないと私は考えます。

参考文献

※1)中核市市長会, “地方公共団体情報システム標準化に関する緊急要望

,https://www.chuukakushi.gr.jp/docs/2025012700012/file_contents/youbousho.pdf, 参照2025-6-27, 2025.

※2)全国町村会, “地方公共団体情報システム標準化に関する緊急要望”,

https://www.zck.or.jp/uploaded/attachment/4897.pdf, 参照2025-6-27, 2025.

※3)時事通信社, “「標準化」全額国費を緊急要望=移行後経費2倍超に-全国町村会”, 2025-4-25配信記事, 2025.

※4)東京都知事, 特別区長会会長, 東京都市長会会長, 東京都町村会会長, “地方公共団体の基幹業務システムの標準化に関する共同要請”,

https://www.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/tosei/20250529_26_01, 参照2025-6-27, 2025.

※5)デジタル庁, “移行困難システム把握に関する調査における調査結果の概要(令和510月調査時点)

,https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/c58162cb-92e5-4a43-9ad5-095b7c45100c/b7d2bc55/20240305_policies_local_governments_doc_01.pdf, 参照2025-6-27, 2024.

※6)デジタル庁, “特定移行支援システムの該当見込み(概要)」(令和71月末時点)

,https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/c58162cb-92e5-4a43-9ad5-095b7c45100c/f8b81445/20250404_policies_local_governments_doc_01.pdf, 参照2025-6-27, 2025.

※7)内閣官房デジタル行財政改革会議国・地方デジタル共通基盤推進連絡協議会, “関係者ヒアリング(自治体情報システムの標準化・ガバメントクラウド移行後のシステム運用経費)”,

https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/digital_gyozaikaikaku/kyotsu6/kyotsu6.html, 参照2025-6-27, 2025.

※8)デジタル庁, “自治体情報システムの標準化・ガバメントクラウド移行後の運用経費に係る総合的な対策について

,https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/c58162cb-92e5-4a43-9ad5-095b7c45100c/dc96d895/20250613_policies_local_governments_doc_02.pdf, 参照2025-6-27, 2025. 

※9)内閣官房デジタル行財政改革会議国・地方デジタル共通基盤推進連絡協議会, “国・地方デジタル共通基盤推進連絡協議会ワーキングチーム(個別ヒアリング)事業者A議事要旨”,

https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/digital_gyozaikaikaku/kyotsu6/jigyoushaa_giziyoushi.pdf, 参照2025-6-27, 2025.

※10)内閣官房デジタル行財政改革会議国・地方デジタル共通基盤推進連絡協議会, “国・地方デジタル共通基盤推進連絡協議会ワーキングチーム(個別ヒアリング)事業者B議事要旨”,

https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/digital_gyozaikaikaku/kyotsu6/jigyoushab_giziyoushi.pdf, 参照2025-6-27, 2025.

※11)内閣官房デジタル行財政改革会議国・地方デジタル共通基盤推進連絡協議会, “国・地方デジタル共通基盤推進連絡協議会ワーキングチーム(個別ヒアリング)事業者C議事要旨”,

https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/digital_gyozaikaikaku/kyotsu6/jigyoushac_giziyoushi.pdf, 参照2025-6-27, 2025.

※12)2025年(令和7年)613日閣議決定, “デジタル社会の実現に向けた重点計画”,

https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/5ecac8cc-50f1-4168-b989-2bcaabffe870/cd4e0324/20250613_policies_priority_outline_03.pdf, 参照2025-6-27, 2025.

 

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