資本論 児童労働と教育・考 労働時間の制限がテーマ
「ゴータ 綱領批判」 (1875年)・・・ 「それ (児童労働の一般的禁止一引用者)を実施することは一 よしんばできる として反動的であろう」といったうえで「種々な年齢の段階におうじて労働時閤を厳格に規制し、またその他の児童保護の予防手段を実行しさえすれば、少年時代から生産的労働と教育を結合することは、今日の社会を変革する最も有力な手段のひとつである」
➡、マルクスの時代以後、少なくとも先進諸国では児童労働が一般的に禁止され公教育制度が歴史的に成立していっ たことを歴史的進歩として肯定的に捉える歴史認識が存在している。
が、上にみたようなマルクスの言説に即するならば、児童労働の一般的禁止を与件とした公教育の成立は「反動的」と評価されるべき事態であるはずである。/
➡ 問われるべきは、先行研究が暗黙に前提してきた児童労働の一般的禁止を歴史的進歩として肯定的に捉えて しまう歴史認識から、マルクスの言葉を解する方法論である
そのためには、資本論第一巻の仕上げの時期に開催された国際インター・ジュネーブ大会の議論、マルクスの「指示」の意味を読み解くことがカギを握る。この「指示」は、マルクスが教育について最も語ったものとして注目されてきた。
以下は、このテーマで一番納得がいった解明をしている青柳宏幸氏の論稿からのメモである。
- 国際労働者協会ジュネーブ大会における教育論争
・「『生産的労働と教育との結合』についてマルクスがもっとも系統的に展開した文献」としてこれまで最重要視されてきた「指示」はジュネーブ大会用に書かれたテクス トである。/が、「指示」は当時の国際労働者協会内部の状況のなかで解釈される必要がある
・この論争の点は教育制度の構想と結びつく教育の質にあったのであり、教育への国家関与の是非その ものが直接の争点ではなかった。そして、問題とされていた教育の質。最も重要なもののひとつが労働と教育の結合であった。
・資本論』が刊行された時期であり、彼の思想がいちおうの完成に至った時期であるということである。国際労働者協会での実践活動と『資本論』執筆という理論的活動はマルクスにとっていわば車の両輪ともいうべき密接に関連した活動で あっ た
・マルクスの「指示」の意図 ・・・ フランス労働者たちが、中央評議会主導の大会運営に反発してジュネーブ大会に提出した「フランス代表の覚書 (M6moire des d616gu6s frangis )」に「知育、教育、家族 (INSTRUCTION ,EDUCATION ,FAMILLE)」 という章があった。/当初のプログラムでは評議会は「教育」問題を、今必要とされている論点をそらすものとして、議題から外した。が、結果的に大会では教育問題が議論されることになっ た。 という流れ。
・教育をめぐる対決とは家庭教育を擁護する多数派意見と国家による無償義務制の教育を要求する少数派とのこと~ が、本来は不可分である労働と教育が切り離されていることが労働者に対する支配の基礎をなしている。そして、この支配を覆すために、切り離されてしまった労働と教育を再び労働が行われる場において結合しなければならないとされる、という教育と労働組織の一体化という考えは多数派、少数派も共有していた。
・労働者支配と教育の関係
現行の労働者に対する支配が労働と教育の分離に基礎を置いているのであれば、労働者に対する支配が続く限り、労働と教育の結合を実現することは不可能。なぜなら、労働と教育の結合を実現するためには資本に支配されている現実の労働組織を労働者が自主管理するアソシエーションへと変革していくことが必要だが、そのためにはまず現在の支配が覆されなければならないから /その結果、フランス労働者たちは現状の社会内部における改良の可能性に否定的にならざるをえない。
➡ この点こそが、次でみるように、マルクスがフランス労働者たちを批判する理由
・「指示」では教育は独立の項目ではない
マルクスは、フランス労働者たちのイデオロギーはプルードン主義であり、その非政治主義はなによりもまず労働日の法的制限に対する反対に象徴されていると認識していた。実際、パ リ支部代表はジュネーブ大会において労働日の制限に反対している。
➡「指示」におけるマルクスの課題は、プルードン主義とのイデオロギー闘争に勝利し、労働日の制限を国際労働者協会の大会議決とすること
- 「指示」の具体的項目
・第3項目
「労働日の制限」が出てくる。冒頭に、資本論で引用された「それなしにはいっそうすすんだ改善や解放の試みがすべて失敗に終わらざるをえない先決条件である」 「それは、労働者階級、すなわち各国民中の多数者の健康と体力を回復する ためにも、またこの労働者階級に、知的な発達、社交 (sociabl intercourse)、社会的・政治的活動の可能性を保障するためにも、ぜひとも必要である」としている。自由な時間の獲得にわる労働者階級の発達(「時間は発達の場」(賃金価格利潤))と、労働時間制限の意義を示している。
・第4 項目
「年少者と児童 (両性)の労働」ではまず最初に、 「男女の児童と年少者を社会的生産の大事業に協力させる近代工業の傾向は、資本の もとでは歪められていまわしいかたちをとっているとはいえ、進歩的で、健全で、正当な傾向であ ると、 われわれは考える」と児童労働に対する基本的な考えが表明される。
次に労働時間の年齢別の制限が要求されたうえで「なによりもまず児童と年少労働者を現制度の破壊的影響から救ってやらなければならない」という理由から「労働が教育と結合されない限り、両親や企業家に年少者の労働の使用を許 してはならない」 ことが宣言される
*教育の内容について
・3つの項目をあげている・・「第一 、精神の教育(Mental education)。第二、身体の教育 (Bodily education )一 体操学校や軍事教練によって行われている種類のもの。 第三、技術訓鰊 (Technological training) あらゆる生産工程の一般原則を教え、同時に児童と少年にあらゆる職業の基本的な道具の実地の使用法や取り扱い方の手ほどきをするもの
➡ マルクスは、工場監督官の報告に注目・共感し、“有給の生産的労働、精神の教育、身体的訓練及び総合技術訓練の結合は、労働者階級を上流階級や中流階級の 水準をはるかにこえた水準に高めるであろう”と評価している。
*「指示」が示す教育の位置づけ
・マルクスにとって、教育とは労働日の短縮によってうみだされた自由時間に対応してはじめて可能となる活動であっ た。教育とは労働者階級が自由時間を用いて実現する 「知的な発達、社交、社会的・ 政治的活動」のひとつにほかな らない。 ➡ 児童の労働時間を制限する「公教育」への位置づけの意義/工場法の立法原理が関係する!
・工場法の立法原理
工場法は、「自由な行為者」である成人男性労働者の労働については全く規制をせず、「自由な行為者」とはみなしえない子どもと女性の労働についてのみを保護規制の対象とした。つまり 工場法 立法原理は 「自由な行為者」 はないものの保護規制であり、工場法は自由契約を尊重するもの
➡ 児童労働とは、労働者である親が「奴隷商人」となることであり、自由な契約にもとづく行為という原則と相いれず、議会からの問題提起、介入をもたせすことになる。 マルクスによれば、この親の 「奴隷商人」 化という自体によって「機械によって労働力の買い手と売り手との法律関係に革命が引き起こされ、そ のために全取引が自由な人と人とのあいだの契約とい う外観さえ失ってしまう。
・マルクス 成人男性も「自由な行為者ではない」
工場法の立法原理は、「自由な行為者」を基準として、大人と子どもを区別し両者のあいだに分断線を引くものである。 それに対 して、マルクスは成人男性を含めた労働者一般が「自由な行為者」ではないとしている。
・階級闘争の最前線としての児童労働
「労働日」篇は、子どもを特別視して児童労働の保護規制を要求するものではなく、子どもを含んだ労働者階級全体が一般的権利として労働日の法的制限を勝ち取る必要があることを示したもの。総じて「労働日」篇では、子どもと大人の区別は捨象され、子どもも大人と同格の労働者階級の一員として位置づけられている
・マルクス 児童労働に限定していた工場法が成人男性の労働日も結果的に制限する効果を指摘している。
その理由について、「(1844 年法は)たいていの生産過程では児童や少年や 婦人の協力が不可欠だっ たので実際は成年男子工場労働者の労働日をも同じ制限に従わせた」と述べている。
そして、このような結果が生じた理由は、大工業における機械の使用が 「社会的に組織された生産過程で婦人や男女の少年や児童に決定的な役割を割り当てる」こと に求められている。と述べる
★ 大工業にとって児童労働は不可欠の存在・・・児童労働の保護 規制は、 子どもにだけ (あるい はその親にだけ) 関係する問題で あるの ではなく、実質的に 労働 者階級全体の 運命を左右するきわめて重要な問 題であるとい うことになる
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