「参政党」の研究 自民党を「極右」から揺さぶる言動
参政党についての研究。
まず、23年にまとめたメモから概要。そのあと憲法草案、核武装、女性蔑視、排外主義、気候危機否定、医療攻撃など、自民党の最も「右」の部分と親和性が高い。そして、かれらが「影響力」をひろげる足掛かりになったオーガニックについて、22年の有機農家と市民の声明を最後にのせている。
≪23年のメモ≫
2020年結成。既存政党を「仲間内の利益を優先」「縁故者や世襲ばかり」と批判。「投票したい政党がないなら自分たちでつくろう」をスローガンに、タウンミーテングなど参加型の運営が特徴
天皇中心の国づくり、世界をリードしてきた日本の知恵・伝統の重視。9条改憲、敵基地攻撃保有、軍事費2倍化、同姓婚・選択的夫婦別姓に反対、外国人・外国資本排斥(だからカジノも反対)など超右翼思想。
が、主張の中心は化学的物質に依存しない食と医療。そのためオーガニック推し・反ワクチン(5類移行、行動制限廃止を主張)で、食と医療における反グローバル資本を打ち出し、そうした問題に関心ある層に共感を集めている。赤旗にも登場する鈴木宣弘東大教授を招いた農業に関するタウンミーティングを積極的に展開し、党勢拡大に利用している。
一方、気候危機には「CO2を減らすことに意味あるのか?と否定的。「自然を破壊する」と再エネに反対。新型原発を基幹エネとして推進。減税や高等教育無償化などの主張も・・・財源は、政府によるデジタル通貨発行で従来の財政制限を打ち破るという荒唐無稽なもの。統治機構としては、官民の区別の一掃、自治体の経営化など新自由主義思想を持つ
・・以下は、今回の参院選にあたっての研究メモ
■参政党の憲法「構想案」
~「創憲で幸福度をあげる」? いや「ダダ下がり」確実~
○憲法の基本原則 国民主権、基本的人権、恒久平和がなくなる。「権利は義務と一体」と基本的人権を否定
*統治権の主体は「天皇」、「国民主権」は明文化されていない。
*「天皇は…神聖な存在として侵してはならない」と、明治憲法の「神聖にして侵すべからず」と全く同じ。
*「国民の要件」に「日本を大切にする心を有すること」と規定。この要件に当てはまらないものは“非国民”にできる危険なもの。
*「自由」と「権理」という文言はあるが、「基本的人権」がなく、財産権、表現の自由、思想信条の自由、苦役からの自由、居住・移転・職業選択の自由、黙秘権、国家賠償請求権、刑事補償請求権、請願権、公務員の選定・罷免県、法の下の平等など、大切な権利規定をことごとく削除。
*教育では、「教育勅語」などの歴代の詔勅や神話を教えることを義務づけている。
*「家族は社会の基礎」だとされ、婚姻は「男女の結合を基礎」とし、性的マイノリティーの権利を排斥。「夫婦の氏を同じくすることを要する」と、夫婦同姓を憲法上「強制」しようとしている。
*平和主義の「章」は存在せず、「自衛のための軍隊」の保持を明記、国民には「日本を守る義務」が課される憲法案。
○自衛軍、先制攻撃、核武装
*23年「政策カタログ」では、「専守防衛では人命と国土を護(まも)れなくなっている」。安保条約と日米豪印の4カ国枠組み「クアッド(QUAD)」をアジア海洋同盟として強化する。「『先手』対応ができる国家へ」と「先制攻撃」、「拡大核抑止」を主張。
*神谷代表「佐渡島を独立国にして、原子力潜水艦を配備します!日本は、佐渡が国と軍事同盟を結べばいい!」と核武装を主張。
○侵略戦争でなく自衛戦争との暴論
*7/3 神谷代表 日本外国特派員協会での会見(7月3日)
・「大東亜戦争は日本の自衛戦争であったという考え方もできる」、「日本はアジアをすべて侵略して自分たちの領土にしようという野心で起こした戦争ではない」。
*西田発言について「本質的に彼が言っているのは間違っていない」(神谷代表 6/10青森の演説会)
・「日本軍が、日本人が沖縄の人たちを殺したわけじゃない。それにもかかわらず、日本軍にやられたみたいな記述があるのはおかしい」と述べ西田氏を擁護。「琉球新報社説」は、「沖縄戦の最大の教訓である『軍隊は住民を守らない』と、神谷氏の認識は大きくかけ離れている。そればかりか、日本軍が沖縄住民に犠牲を強いたという事実をねじ曲げている。スパイ嫌疑、食料強奪などで日本兵が住民を殺害した事実を神谷氏は直視すべきだ」と反論。
■「日本人ファースト」のその中身は?
○そもそも「外国人が優遇されている」ってホント?
*年金制度
・厚労省が将来の年金水準を予測するために行っている「財政検証」。「外国人の入国超過が年間16.4万人規模で続く場合、2057年の年金の所得代替率(現役世代の手取り収入に対する年金額の割合)は50.4%となる」と試算。一方、外国人の流入が少ない場合、62年に47.7%にまで下がると試算。外国人の流入制限をすると、現役世代として年金保険料を納める人口が減少し、日本人の年金が下がる可能性がある。
*医療制度 3カ月滞在で国保に入れ、高額医療が受けられる。
・国保に入れるのは在留資格を持つ者、旅行者は入らない。厚労省のデータでは、国保険加入者のうち外国人は約4%。しかし医療費全体に占める外国人の医療費は1.39%。技能実習生など若く健康的な外国人が医療制度の重要な支え手になっている。
*参政党は、生活保護について「外国人への生活保護の支給停止」と暴論を展開。
・外国人の利用は生活保護全体の3%。在留カードなど書類の提出が必要。3%の中には戦前の植民地支配がもたらした在日韓国人・朝鮮人も含んでいる。生活保護法では、生活保護の適用対象を日本人としているが、1954年の厚生省(当時)の通知により、人道的な措置として準用されることとなった。
*日本も批准している国際人権規約には「内外平等の原則」がかかげられており、外国人差別が禁止されている。
*農業、建設業など外国人労働者抜きになりたたない今の日本。
・少子化の進む韓国や中国と「争奪戦」と言われる状況。政府は、2018年に「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」を決定。その目的には、「外国人がキャリアアップしつつ 国内で就労して活躍できるようにすることなどにより、日本が魅力ある働き先として選ばれる国になるような環境を整備していく」と掲げている。
*参政党は、「外国人優遇が日本の問題だ」と主張しているが、国民生活が苦しい原因は、自民党政権が「財界・アメリカ優先」の政治を続けてきたから。本当に暮らしを良くするなら「財界ファースト・アメリカファースト」の政治を見直すべき。
■反ジェンダーの時計の針を逆戻りさせる党
○不当な性的分業論の押し付け
*「将来の夢はおかあさん、という価値観をとりもどす」、「3年間は育児に専念することを奨励」、「高卒で子ども3人産んだお母さんは大卒より給料をよくする」「子どもの数で年金加算」と主張。
*人の生き方に政治が介入し、あたかも子どもを産まない女性は価値がないかのような暴論を展開。しかも育児は女性におしつけ、一方「残業規制の撤廃」を掲げ、男は仕事づけにと、時代錯誤の性的分業論を展開している。
○女性らの自己決定権を侵害
*「選択的夫婦別姓は、複雑な家族関係になり、治安が悪くなる」「家族の一体感がなくなる」と猛反対している。
*強制的夫婦同姓は日本だけ。参政党は、日本以外の国はすべて治安が悪いとでもいうのでしょうか。
■気候危機に背を向ける反進歩の党
○気候危機対策─「パリ協定の離脱」を主張
*「日本が達成しても貢献度は少ないから」と身勝手な主張で離脱すべきと主張している。日本は世界第5位の排出国、この事実を見ようともしていない。
*「未だ科学的な議論の余地のある…」と、30年以上前の認識を吐露している。「ICPP21年報告」では、(温暖化は)「人間活動が原因」であり「疑いの余地ない」と解明している。
*「既存原発・化石燃料の活用」を主張(23年政策カタログ)
■医療費削減で、「自公維国」と同じ主張
・「無駄な医療費削減 OTC医薬品の保険適用外に」と「自公維国」同様の患者いじめの主張を展開。
・「終末期の延命措置医療費の全額自己負担化」・・・ 経済力で「命」が左右。
・「診療報酬は担当する人数(患者数)に応じた定額制」 ・・救急、高度医療を担う医療機関が消滅
有機農業ニュースクリップ:■有機農業は排外主義に与しない 参政党に反対する農民と市民が声明 22.8.15
先の参議院選挙で参政党という新しい政党が一議席を獲得しました。参政党は、有機農業や種子の国内自給、有機給食推進などの一方で、天皇中心主義、外国人参政権反対、憲法9条改正など国家主義・排外主義を主張しています。 こうした農や食への主張が有機農業や有機食品、添加物問題などの関心ある層を引き付けたといわれています。こうした参政党の主張に対して、農民と消費者(生活者)の立場から「私たちは農と食が国家主義・排外主義の枠内で語られることを拒否します」と題した声明が、32名の農民や市民の呼びかけで発表されました。
声明は、参政党が「化学的な物資に依存しない食と医療の実現と、それを支える循環型の環境の追求」を掲げたことが、「有機農業や食の安全に関心をもつ人たちの中に小さなブームを巻き起こし、票を集めた」と指摘しています。さらに、「有機農業運動はこれまで一貫して国際交流を大事にし、海外の実践に学び、日本の経験を分かち合いながらその思想や技術を発展させてきました」「国家主義・排外主義は私たちのこうした思いや実践と相いれません」と、これまでの有機農業運動が排外主義の対極にあるとしています。そして、《私たちは、農民、消費者生活者が取り組む農業生産活動、有機農業や食の安全をめざす運動が、国家主義・排外主義の枠内で語られることを拒否します》と、参政党の主張に反対し、与しない姿勢を明確にしています。
こうした参政党の主張に対して、一部では「有機農業はナチス・ドイツと親和性が高い」という主張が出てきています。『ナチス・ドイツの有機農業』を著した藤原辰史さん(京都大学人文科学研究所准教授)は、「有機農業で健康になるべきはドイツ人だけ、アーリア人種だけというナチスの考え方です。アーリア人種だけが有機農業を通して健康であるべきだ。その反対に据えられているのは精神障害者、身体障碍者、ユダヤ人、スラブ人、ポーランド人です。そういう人たちは飢えて食べられなくてもしょうがない人種というカテゴリーに当てはめられてしまう」(『土と健康』2022年1・2月号)、とその人種差別性を指摘しています。参政党の主張がナチス・ドイツと親和性が高いからといって、有機農業がナチス・ドイツと親和性が高いというのは妥当ではありません。
《食への権利》について、声明は次のように述べています。世界人権宣言や国際人権規約に明示されている権利であり、「人は誰でも、いつでも、どこに住んでいても、心も体も健康で生きていくために必要な食料を作り、手に入れることができる、すべての人が生まれながらにもっている権利として位置づけられています」。
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