高額療養費制度改悪 がん患者・障碍者団体が声明。知事からも「国家的殺人未遂」と批判の声
丸山達也島根県知事は18日の記者会見で、「高額療養費制度」の負担上限額を引き上げる政府の方針を巡り、「治療を諦めないといけない人が出てくる。国家的殺人未遂だと思う」「今でも苦労があるのに引き上げる。患者の命が失われる制度。憲法にも違反する」と、県民の代表として極めてまっとうな発言をしている。
「国家的殺人未遂だ」 島根県知事、高額療養費制度の負担上限引き上げを批判 | 中国新聞デジタル 2/18
負担増による削減額5330億円のうち、受診抑制分が2270億円という試算までしての提案だから「国家的殺人未遂」は的確な批判と言える。
以下は、特に影響が懸念される当事者の団体の声 (下線はメモ者)
・全国がん患者団体連合会 高額療養費制度における負担上限額引き上げの検討に関する要望書 24/12/24
・「高額療養費制度の負担上限額引き上げ反対に関するアンケート取りまとめ結果(第1版)~3,623人の声」公開のお知らせ 全がん連 25/1/20
・緊急声明 高額療養費制度における負担上限額の引き上げについて 日本障害者協議会(JD) 2/12
■全国がん患者団体連合会(全がん連)
高額療養費制度における負担上限額引き上げの検討に関する要望書 24/12/24
高額療養費制度は、家計に対する医療費の自己負担が過重なものとならないよう、医療機関の窓口において医療費の自己負担を支払った後に、月ごとの自己負担上限額を超える部分について事後的に保険者から償還払いされる制度であり、がんをはじめとする命に関わる疾患で治療を受け、かつ高額な医療費を支払う患者とその家族にとっては、治療を受けるうえでまさに命綱といえる大切な制度です。
現在、厚生労働省の社会保障審議会医療保険部会において、国民皆保険の維持あるいは保険料軽減などの観点 から、高額療養費制度における負担上限額引き上げの検討が行われており、厚生労働省からも引き上げ額や引き上げ時期についての提案が行われています。一方で、高額療養費制度における負担上限額引き上げは、がんをはじめとする命に関わる疾患で治療を受け、かつ高額な医療費を支払う全ての患者とその家族に影響を与えるものです。新たな治療や治療薬の登場によるがん治療の高度化に伴い、高額療養費制度の負担上限額まで支払っている患者とその家族が既に多くおり、特に「長期にわたって継続して治療を受けている患者とその家族」にとっては、大きな影響を与えるものとなります。
現在のがん治療においては、長期にわたって継続して治療を受けることを前提とした治療や治療薬が増えており、これらの治療を受けているあるいは治療薬を投与されている患者とその家族は毎月、一定の医療費を支払い続けています。70歳未満の現役世代の中には、仕事や日常生活を続けながらぎりぎりの範囲で医療費を毎月支払い続けている患者とその家族もおり、高額療養費制度における負担上限額引き上げは、高額療養費制度の負担上限額まで支払っている患者とその家族、特に「長期にわたって継続して治療を受けている患者とその家族」にとっては生活が成り立たなくなる、あるいは治療の継続を断念しなければならなくなる患者とその家族が生じる可能性が危惧されます。
以上の状況を鑑み、高額療養費制度における負担上限額引き上げの検討に関して以下の要望を提出いたします。
記
・ 高額療養費制度における負担上限額引き上げは、がんをはじめとする命に関わる疾患で治療を受け、かつ高額な医療費を支払う全ての患者とその家族に影響を与えるものであることから、負担上限額引き上げの軽減 および影響を緩和する方策について検討すること。
・特に、「長期にわたって継続して治療を受けている患者とその家族」にとっては、高額療養費制度における負担上限額引き上げは生活が成り立たなくなる、あるいは治療の継続を断念しなければならなくなる患者や家 族が生じる可能性が危惧されることから、「長期にわたって継続して治療を受けている患者とその世帯」の月単位の上限額(「多数回該当」の月単位の負担上限額など)の引き上げについては、負担上限額引き上げ の軽減および影響を緩和する方策について特段の配慮を行うこと。
「高額療養費制度の負担上限額引き上げ反対に関するアンケート取りまとめ結果(第1版)~3,623人の声」公開のお知らせ 25/1/20
20代、30代の若い患者のみなさんの切実な声も多数よせられています。どの声も本当に心に刺さります。
■緊急声明 2/12
高額療養費制度における負担上限額の引き上げについて
NPO法人日本障害者協議会(JD) 代表 藤井 克徳
政府は2025年8月と2026年8月の二段階に分けて、高額療養費制度の負担上限額を引き上げるとしています。高額療養費制度の引き上げは公的な医療費助成制度のない長期慢性疾患や難病のある人たちなど、中長期にわたり高額な治療の継続が必要な患者や家族に多大な影響を及ぼします。また、この問題は所得水準の乏しい障害者全体にも甚大な影響をもたらします。負担増によって受診を抑制し、治療選択を狭め、その結果、重症化の危険、治療継続の断念につながり、生活の崩壊や命の危機にも直結しかねません。
障害者権利条約では、政策決定過程で障害のある人たちの声を聴き、決定に参画させることを国や自治体に求めています。本人不在の決定は障害者権利条約に反しています。また、2022年9月に出された国連・障害者権利委員会からの勧告では、費用負担能力に基づいた医療費補助金の制度が不十分であると指摘されています。さらに「費用負担能力に基づいた医療費補助金の仕組みを設置し、これらの補助金を、より集中的な支援を必要とする者を含めた全ての障害者に拡大すること」を求めています。この勧告に逆行する動きであり、容認できません。
石破総理大臣の施政方針演説には、冒頭で「国民1人1人の幸福実現」を掲げつつ、後段では「高額療養費制度の見直しなどにより保険料負担の抑制につなげる」とあります。高額療養費制度を利用している人たちへの影響や実態をどれほど理解しての発言なのでしょうか。
がんをはじめとする命にかかわる疾患、難病や長期的に治療が必要な人たちから、負担上限額引き上げが、いかに大きな影響を及ぼすのか、危機的な状況を訴える声が数多く上がっています。政府は、負担上限額引き上げの決定の際にどれだけ患者やその家族の声を聴いたでしょうか。中長期にわたって高額な治療が必要な人たちの生活実態や影響を把握したうえでの決定だったのでしょうか。多数回該当の人には限度額の見直しを検討されているようですが、それで今般の負担上限額引き上げの影響がなくなるわけではありません。中長期の治療の必要な人たちの生活実態や障害者の所得状況を無視し、何より当事者の声を軽視した今般の引き上げ案については、ただちにこれを撤回すべきです。
〇参考 障害者自立支援法違憲訴訟原告団・弁護団と国(厚生労働省)との基本合意文書
(平成22年1月7日)一部抜粋
国(厚生労働省)は、障害者自立支援法を,立法過程において十分な実態調査の実施や、障害者の意見を十分に踏まえることなく、拙速に制度を施行するとともに、応益負担(定率負担)の導入を行ったことにより、障害者、家族、関係者に対する多大な混乱と生活への悪影響を招き、障害者の人間としての尊厳を深く傷つけたことに対し、原告らをはじめとする障害者及びその家族に心からの反省の意を表明するとともに、この反省を踏まえ、今後の施策の立案・実施にあたる。
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