学校体育館への空調設置 スポットクーラー課題検証を受け
埼玉県が議会質問をうけて。スポットクーラー設置の実証実験を行っている。
4台設置するのに19人(搬入15人、電源接続作業に4人)。大型トラックの搬入経路確保、運転開始までに3時間かかったことなど様々な課題があきらかになった。また、2週間リースすると購入と同額となること。決定的なのは温度が1~2度しか下がらなかった(外気温34度、室内32度)
この結果をうけ、スポットクーラーで対応を考えていた14施設を調査し課題を把握。これをうけて県は「課題を克服するためには、エアコンの本設置を検討していくことが必要と考えております。」と答弁している。
実証実験を行わせたことで突破口を開いている。大いに参考にできる取り組みである。
- 2021年12月埼玉県議会 .安藤友貴 議員(公明)
本県の考え方は、移動式のエアコン、いわゆるスポットクーラーを調達し設置するという、効果に疑問が残る対応となっています。
そこで、今年の6月定例会で我が会派の深谷議員が、県立学校体育館におけるエアコン設置訓練の実施を提案し、現在教育局が考えている冷房効果や設置方法など一度検証すべきと訴えました。教育長より、「必要な冷房効果が得られるか検証していきたいと思います」との答弁がございました。
早速8月に2校で検証が行われました。8月13日は残念ながら大雨で8月とは思われない寒さであったため検証がうまくいきませんでしたが、8月30日は気温が34度を超える絶好の検証日和となりました。深谷議員とともに川越工業高校に8時に到着し、スポットクーラーの搬入から視察をいたしました。搬入は15人の人員で4台のスポットクーラーが体育館へと運ばれます。
まず、設置されるまでの問題点として、3つ指摘をいたします。
1点目、運び込まれるために人員が15人と多く、加えて電源接続作業の方が4人いらっしゃいました。合わせて19人です。有事のときに人員が確保できるか、疑問です。
2点目に、大型トラックで運び込まれましたが、途中止まっている車が邪魔でトラックが入れない箇所がありました。慌てて車の持ち主を探し、移動してトラックが旋回できましたが、これを有事のときにすぐ行動できるのでしょうか。
3点目、搬入から運転開始まで3時間以上かかりました。しかも、避難者がいない状況でこれだけかかりました。有事の際はもっと時間がかかると予想されます。
さて、次に冷房効果についてです。館内の温度と外気温をプロットしたデータがこちらになります。
これもパソコンに入っておりますが、プロットデータです。外気温との差が約1度から2度です。結論から申し上げますと、残念ながら冷房効果はありません。16時前まで深谷議員と体育館にいましたが、とにかく暑い。絶対温度32度前後でいるわけですから、当たり前です。災害時には人も増えます。より体感温度は上がるでしょう。
視察後、私は電車で地元に戻りましたが、乗換えの朝霞台駅でめまいと頭痛に襲われ、しばらく動けませんでした。深谷議員も頭痛があったそうです。2人とも支援物資が届くまでという想定を考え、水を一口しか飲まなかったのが原因だと思いますが、有事の際に同じような状況になる方も考えられます。
後日、職員になぜここまで温度が下がらなかったのかと聞くと、台数が足りなかったという答えでした。6台あれば効果があったということです。4台でも相当な人員と時間がかかっています。排気口の場所も6台だと増えます。また、2週間以上使用する場合、リース費用は購入と同額の費用となるそうです。仮に6台だと金額はおよそ3,000万円、費用対効果に疑問が残ります。その後の保管もどうするのでしょうか。
- 22年12月議会 深谷顕史 議員(公明)
本県の考え方は、空調機器設置済みの避難所が近隣にない十四の防災拠点校に指定されている県立学校の体育館に電源の整備のみを行い、災害時に体育館が避難所となった際には、スポットクーラーやパッケージエアコン等を調達し、搬入、設置、運転するという、効果に疑問が残る対応であります。団体と協定を締結しているものの、大規模災害時において保有する機器を確実に確保できる保証がない上、道路が寸断されれば搬送もままなりません。昨年、電源の整備が完了した体育館を調査し、現場を見る中で、多くの課題が浮き彫りになりました。
そこで、私は、少なくとも通常の体育館と重層体育館、それぞれにおいて設置訓練を行うよう求め、昨年夏に実施していただきました。当時、一緒に現地を調査した安藤友貴議員が昨年十二月定例会一般質問でこのことを取り上げ、搬入に際しての作業員確保の問題、空調機器搬送用大型トラックの取り回しの問題、設置時間の課題などを指摘しました。さらに、そもそも冷房効果自体が乏しいのではないかとのデータ結果も示させていただきました。この質問に対する教育長の答弁は、「エアコンの本設置も選択肢に含めていきたいと考えております」とのことでありました。国の緊急防災・減災事業債の事業期間は令和七年度までであり、残された時間はもうありません。
- 教育長答弁
この訓練結果を受け、県では、14校すべてについて改めて現地調査を行いました。
調査の結果、学校ごとに状況は異なりますが、例えば、体育館の入口に段差があるため仮設スロープを設置する必要が生じたり、エアコンの排気口を設けるために壁や窓を加工する作業が必要となるなどの課題が判明いたしました。
災害発生時の混乱の中、人や物が不足する状況を想定すると、このような作業が必要となることは避難所の速やかな環境整備に支障となるものと改めて認識したところでございます。
こうした課題を克服するためには、エアコンの本設置を検討していくことが必要と考えております。そのため、今後、緊急防災・減災事業債の活用期限などを見据え、ランニングコストなども含めた全体の財政的負担について十分な検討を行うなど、鋭意取組を進めてまいります。
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