My Photo

« 24総選挙~前回の共闘の到達点をリアルに見、大切にする | Main | 「立憲民主」の選挙政策を見る  »

「賃上げ・時短」政策と「人手不足」問題~ カギは、持続可能な働き方

 待たれていた政策だと思う。 賃上げと時短をセットで提起したことである。その意義を若者の現状や「人手不足」問題の角度から論点を整理したメモ (経済24.10 特集「人手不足」を考える )

賃上げと一体に、労働時間の短縮を 働く人の自由な時間を拡大するために力を合わせましょう│労働・雇用│日本共産党の政策│日本共産党中央委員会 (jcp.or.jp) 9/20

Ⅰ若者が願い、求めている

30年間の若者意識の変化を調査では、お金トップはかわらないものの、その回答率は3割以上に増え、続いて「時間」「自由」が6位、8位から、2位、3位に躍進。一方、幸せ、恋人は、大きく順位を落としている。

  経済的にも精神的にも追い詰められた姿が示されている。

 若者がこの改善を強く求めている。それば他の世代にも好影響をもたらすにちがいない。

Photo_20241001124201

博報堂生活総合研究所「若者調査」30年変化の結果を発表~親子/交友/働き/学び/環境などで大きな変化~ |ニュースリリース|博報堂 HAKUHODO Inc. 24/7/3

 

〇日本経済のゆがみを正せば展望は開ける

 では、日本経済に、賃上げ、時短をする力がないのか、というと、大企業の内部留保と配当金は増え続け、格差は拡大している。この12年、経常利益は2倍に増えているが、法人税収は増えていない。このゆがみを正すことが重要。

Photo_20241001124301 Photo_20241001124302 

 

 

 

*「自民党税制改正大綱」(23年12月)~ 過去40年間の法人税率の連続的な引き下げによって、「企業経営者が……投資拡大や賃上げに取り組むことが期待された」、しかし、「賃金や国内投資は低迷」し、一方で「企業の内部留保は名目GDPに匹敵する水準にまで増加」し、「企業が抱える現預金等も300兆円を超える」と述べ、「法人税改革は意図した成果を上げてこなかった」。 また、労働者の7割が働く中小企業について、その多数が赤字企業であり、賃上げにむけた「税制措置のインセンティブが必ずしも効かない構造となっている」

★労働生産性から考える

  賃金が上がらない理由に、「労働生産が低い」という話がある。「非効率な経営だからしかたがない・・」と思わされている側面がある。

 「労働生産」とは、「付加価値生産」のことであり、総労働量に対し、付加価値(利益+人件費)をどれだけ生み出したかの指標。一企業なら人件費を抑制し、利益を拡大したかが問われる指標である。

Photo_20241001124401

 が、一方、マクロでみると、GDP(付加価値の総額)は、その5割強を家計消費が支えており、家計が温まり、消費が増え、民間投資が増えるというサイクルにならないと生産性はあがらない。消費が増え、経済成長しないと生産性はあがらない、という感覚的にはわかりづらい関係にある。

*労働生産性に比べ賃金の上がり方が低迷し、乖離が広がっているということは、利潤に比重が偏っていることを示している。

 

. 人手不足解消の決め手

 介護、保育、教師、建設、運輸など深刻な人手不足が社会問題になっている中での「時短!」、「大丈夫か」の声が聞こえてきそうだが、リアルに見てみたい。 以下は、民間シンクタンクの分析と経済24.10月号 「人手不足」を考える から

 

1. 現状  三菱UFJリサーチ&コンサルティング23/5/8レポート参考

厚生労働省「雇用動向調査」より

・未充足求人数(満たされていない求人 数) 2010年 約30万人➡ 2022年約130万 人(19138万人)

・欠員率(調査時点の雇用者数に対する未充足求人数の比率) 2010年 0.7% ➡ 2022年 267

 

2022年 未充足、欠員率の中味

業種別 未充足求人数  医療・福祉 約23万人、小売と宿泊・飲食 約20万人

      欠員率  宿泊・飲食と運輸・郵便の3.8%が最も高い

職種別 未充足求人数  医療関係者や保育士等が含まれる専門職・技術職で約32万人

飲食店従業員や介護サービス従事者等が含まれるサービス職が約28万人

販売が約 23 万人

      欠員率  輸送・機械運転 5.4%、建設・採掘 4.9%、販売 3.8%、保安とサービス職3.6

 

→ いずれも現業職で、仕事はきついが、その割に低処遇の職種で人手不足が深刻となっていることを示している

 

・一人あたり労働時間 (GDP総計) 1990年代半ば 約1900時間 ➡ 2021年 約1650時間

*見かけ上の話、大半は非正規労働者の増加、次いで所定内労働時間の減少 → 細切れ労働の拡大が背景

 

・就業者数 1990年代半ば 6700万人程度 → 自営業者の減少を受けて2000 年代前半 6400 万人程度 

→ 2000 年代後半以降 労働集約的な各種サービス産業を中心に雇用者数が増加、直近2021 年 6800 万人程度

 うち雇用者数 90年代半ばから2021年に 5400万人から6000万人と600万人増

 

・雇用者数 2013年~2022年 全体で485 万人増加

1564歳の女性の正規+ 211 万人、65歳以上の女性の非正規+110万人、65 歳以上の男性非正規+88万人。

 

2 現状 人口減と有業者の変化       「経済」24/10月号より

〇 25‐64歳 人口減も、女性の有業者増

2012-22年 15歳以上 62万人減、25‐64歳546万人減、65歳以上543万人増

・25‐64歳 人口では男女ほぼ同数 有業者(就業構造基本調査 )では女性が大きく増加

       男性 161万人減(有業率 89.2%→91.2%)、

       女性 135万人増( 〃   66.8%→77.6%) 

 *要因 正規雇用の専門職・事務職の増(ダイバーシティ重視、医療介護福祉分野の需要増)

       女性の貧困化(実質地賃金の低下、男性稼ぎ手モデル解体、無年金期間対応)

       専業主婦 2000年 約900万世帯 15年約700万世帯、23年 517万世帯

          (なお、1人家庭  2011年 123.8万世帯 →21119.5万世帯)

 

〇 男性有業者 25-64歳  ブルーカラー職の激減

 専門・技術職、事務職の増/販売79万、生産工程68万、建設48万、輸送・運転30万、サービス18万減

 

〇 女性有業者  正規労働者242万人増

  男性正規増59万人の4倍/女性非正規率 57.5%→53.2%に低下

  専門技術職147万、事務職136万人の増/農林漁業27万、生産工程10万、販売5万人の減

  サービス業 25‐64歳20万減。が、65歳以上37万人増(介護、調理、清掃などで増)

 

〇 若年人口減の中で、増加する学生の有業者 

  ・高校生 45.5万人減 非正規で働く高校生 2.3万人増  6.9%が働いている

  ・大学生 16万人増   非正規で働く学生 33万人増 

   大学生の非正規雇用 32.3%→41.9%/女性 34.3%→44.2%

  *親世代の賃金低迷、企業の人手不足の穴埋め、将来の社会・経済の大きな損失(衰退途上国の要因)

 

〇 無業者4613.5万人の内訳 (15歳以上、「就業構造基本調査」より)

   家事1939.5万人(45%)、通学601.8万人(14%)、その他1747.7万人、うち就業希望者782.7万人!

 

. 人手不足の要因  持続不可能な働かせ方

 全体的特徴~男性のブル-カラー職減/65歳以上女性の介護・サービス職・清掃職の増、学生の飲食サービス業のバイト増

 

〇 ブルーカラー職、サービス職の低賃金 ~  ボーナス含む所定内賃金の時間当たりの平均値 

 建設職2000円台(男)、貨物・バス・タクシーなど運転職 1800円台(男)、

 介護職1700円台(女)、福祉専念職19000円台(女)、飲食・調理・給仕1300円台(女) ビル清掃1200円台(女)

 総合事務職3000円台(男)、企画事務員3400円台(男)、看護師2400円台(女) など

  • 2000円未満だと、年2000時間働いて、年収400万円に届かない。 

 

〇「失われた30年」のもとで広がったビジネスモデル、

① 低価格の商品・サービスの隆盛 /非正規雇用の全面活用

外食チェーン業  ワンオペ、なんちゃて店長、名ばかり管理職などなど

 → 持続不可能な働かせ方を社会全体に広げ、今日の人手不足社会誕生の背景の1つに

 

② 労働・業務の部分化、細分化 ~ 委託市場の拡大 /雇用と事業単位が、生活維持が不可能な単位に細分化

  短時間・少就労日数就労と、対極の長時間・多就労日就労の両極と中間層を生み出した

 → 労働に必要な技術・技能育成、社会的キャリア形成の基礎を喪失させた

 

〇 多重下請け構造がもたらす困難   建設業・運送業

 ・中抜き、下層ほど低賃金 /下請け構造の末端は「個人事業主」~「請負」関係、労働法の適用外 

 ・22年「就業調査」 初の個人事業主(フリーランス)を調査 209万人、うち建設業42万人、

 

★現状打開のために  ・・・中小企業分野  「経済」特集 永山利和・論考より

  • 労働時間・休日法規に広範かつ多岐にわたる適用除外の縮小 /特に労基法33、36条

  週、月、年など労働時間の上限設定、残業代割増の2倍化、正規雇用の促進

  • 事業運営に関する社会的規制の重視    ギグワークなど偽造請負の解決
  • 全国一律の最低賃金
  • 公正取引改善  
  • 中小企業の賃上げ率が大企業を上回っている ~ 

 厚生年金の1号保険者4200万人の「業態別規模別適用状況」をもとにすると、

23年の平均賃上げ率1.8~1.9% /大企業の上昇率 21年0.5%、22年0.8%、23年1.5%

15~19年の対前年変化率も大企業より、中小企業の方が高い

  

. 政策的に作り出された持続不可能な働かせ方

〇 若者から忌避される教職

・ 旧特報 4%の給与加算による「定額働かせ放題」   学テ、デジタル、道徳、部活など増える一方の業務

・教員志願者の減少、若手教員の退職増、メンタル病休増/病休・産休の代替教員が見つからず、現場の負担増

  ようやく小学校で35人学級、中学は40人。他の先進国は20人程度

*財務省は、少人数学級の効果に「エビデンスがない」と一貫して抵抗/文科省 競争と管理の重視

 

〇 介護   人手不足でサービス維持できない

・全産業平均 月6万円低い  ・細切れ化、介護サービスの短時間化、職員配置基準の緩和 

 ・24年 訪問介護の基本報酬減  事業所倒産の増加/特に地方、中山間地で深刻

*近年のドイツの取組 制度開始95年、日本同様に介護職不足、無資格者の増加など大きな問題

  ➡ 19年 介護士に資格別賃金制導入 2210月段階で、

    無資格の介護士 時給13.7ユーロ(およそ2000円)

    補助介護士(1年の教育・研修) 14.6ユーロ(2132円)

    専門介護士(3年の 〃    ) 17.1ユーロ(2497円)

  20年施行の介護職業法 高齢者介護、病人看護、病児看護を「総合ケア職」創設(看護師と介護士の両資格)

 

〇 保育  年間賃金 全産業平均わり110万円低い

・有資格者で都道府県への登録者173万人。 実際の従事者数66万人

・都再就職支援のための調査 「改善希望」の回答 給与改善62.7%、職員増員48.6%、事務・雑務軽減40.1%

 低い賃金、配置基準の改善がカギ /賃金構造基本調査 全産業平均507万円、保育士397万円

*政府の一貫した人件費抑制政策 民営化、非正規化、認可外への誘導/公立保育財源の一般財源化、建設費補助など民間施設に手厚い措置など・・・  /介護とともに家事の延長というジェンダーバイアスの存在

 

★現状打開のために 教員・介護・保育など~ 処遇と人的配置など公的基準の改善 

 

Ⅵ 科学的社会主義の視点から・・・

〇 生産力の発展が、労働力の安売りをつくりだす  ~ 「相対的過剰人口」

・資本は、利潤をもとめて、生産力の拡大競争(商品価格の低下・特別な利潤の確保。この競争に負けると破産)

→消費に見合う商品量を、より少ない労働者で生産可能に

.「相対的過剰人口」の発生・・・好況時には、就業人口が増えるが、同じ量の生産に、より少ない労働者で対応できる。

  停滞期(以前より生産規模が拡大していても)には、「過剰人口」として失業者、半失業者として現れる 。

→失業者、半失業者の存在が、「重石」となり、労働力の安売りが蔓延する

→ 「一方における富の蓄積、他方における貧困の蓄積」を生み出す(資本蓄積の一般法則)/格差社会を生み出す。

 

〇「相対的過剰人口」「貧困の蓄積」とのたたかい ~ 時短と社会保障

・「“大洪水よ、わが亡きあとに来たれ!”これがすべての資本家およびすべての資本家国家のスローガンである。それゆえ、資本は、社会によって強制されるのでなければ、労働者の健康と寿命にたいし、なんらの顧慮も払わない。」(第一部第三篇第八章「労働日」)

・「身を守る」ために、労働者たちは、結集し、階級として、1つの国法、1つの強力な社会的バリケードを奪取しなければならない」

→工場立法  1850年 10時間法

  ・8時間労働、1917 ロシア革命 /ILO発足1919(1号条約 8時間労働) 

  ・有給休暇、バカンス  1936フランス人民戦線内閣 

  ・国連 人権とビジネス / 先進国の最低課税率の合意 

 

〇 ブースの雇用政策 19世紀末、不況・貧困の中、社会主義運動の高揚 

・チャールズ・ブース 資本家  ~  「貧困が2割いる」との労働者側の批判に対し、貧困の実態調査

 →実際は「3割」、しかも「なまけもの」だからでなく、「どんな条件でも働かざるを得ない」層の存在が全体の労働条件を引き下げている事実に直面

・高齢者、障碍者など半失業状態の解消~労働市場から引き上げる(労働市場の組織化)

そのために、失業保険、無拠出年金、公的な職業紹介所(正規雇用しか紹介しない)などに着手

・それらの 一連の社会保障政策を累進課税で推進(ロイド・ジョージ)した予算は「人民の予算」と名付けられた。

 

〇 ヨーロッパの労働運動 「労働力の安売りをさせない 

  ・フランスなど週35時間労働など時短→ 生産力の上昇にあわせ、雇用の「イス」を増やし、「重石」をなくす。   

・社会保障の前進。「失業する権利」を保障し、「安売りをさせない」 

  ・同一価値労働・同一賃金

 

まとめ的感想

現在でも働くことを希望する無業者は700万人を超えている。労働環境が改善すれは、人手不足分野に就業したり、短時間就労がより通常の8時間労働に変わっていったりすることも期待できる。

教員・介護・福祉、建設、運輸、第一次産業・・・その専門性や社会的意義にふさわしいルールをつくること、これが生活の安定と個人の活力の高まり・より良き社会の形成へのもっと確かな道と思う。

AIにより、なくなる職が多数ある、というのだから、人口減の日本では取り組みやすいのではないか・・・

賃上げと時短のセットは、男性の長時間労働を改善し、ジェンダー平等社会の土台になる。

 

最期に・・・・

共産主義とは、われわれにとって成就されるべきなんらかの状態、現実がそれに向けて形成されるべき何らかの理想ではない。われわれは現状を止揚する現実の運動を共産主義と名付けている」 ( 「ドイツイデオロギー」 ) 

 

人間らしい生活、十分な自由時間を求める運動・・・それは「いまここにある社会主義、共産主義」なんだと思う

« 24総選挙~前回の共闘の到達点をリアルに見、大切にする | Main | 「立憲民主」の選挙政策を見る  »

経済・政治・国際」カテゴリの記事

雇用・労働」カテゴリの記事

科学的社会主義」カテゴリの記事

備忘録」カテゴリの記事

December 2024
Sun Mon Tue Wed Thu Fri Sat
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        
無料ブログはココログ