24年9月議会に向けて 意見書・私案1
・大学の高学費の是正と研究環境充実のための財政措置を求める意見書案
・「子ども医療費助成」の後退を許さず、さらなる充実を求める意見書案
・長期収載医薬品への選定療養導入撤回と医薬品の安定供給を求める意見書案
〇香美市議団 教員配置のあり方を見直し、学校現場への配置を優先するよう求める意見書(案)
大学の高学費の是正と研究環境充実のための財政措置を求める意見書
近年、国立・私立大学の授業料の引上げが相次いでいる。
国立大学では、 平成31年度に東京工業大学、東京芸術大学、令和2年度に一橋大学、千葉大学、東京医科歯科大学、令和6年度に東京農工大学が、授業料について、 文部科学省が定める年額の標準額である53万5,800円を上回る額への引上げを行い、このうち多くの大学が、増額の上限である標準額の2割増の引上げを行った。本年5月には、東京大学が授業料の引上げを検討していること も報じられた。
私立大学も、この10年間で平均授業料が約10万円上昇し、令和5年度 入学者に係る初年度授業料の平均額は、約96万円にも上る。令和5年度から令和6年度にかけては物価高騰の影響などにより、約4分の1の大学が学費の引上げを実施した。授業料の引上げの背景には、国立大学法人への運営費交付金の削減や、私立大学への補助金が極めて貧弱なことがある。本年6月、国立大学協会、国からの運営費交付金の減額や物価高騰を受け、国立大の財務状況は「もう限界だ」と訴える異例の声明を発表している。
政府は、平成24年に経済的、 社会的及び文化的権利に関する国際規約の高等教育の無償化の規定に係る留 保を撤回しており、大学をはじめとする高等教育の学費を無償化していく責任がある。
それにもかかわらず、本年3月の中央教育審議会の高等教育の在り方に関する特別部会では、私立大学の学長が、国立大学の学費を150万円 程度に引き上げることを提案するなど、学費の引上げを加速させるような議論が行われており、許し難い問題である。
大学生、卒業生及び子育て世帯は、高額な学費、貧弱な奨学金制度、利子も含めた奨学金の返済により、既に重い負担を強いられている。学生は、学費や生活費を賄うためのアルバイトに時間を割かなければならず、勉学や研究に集中できない状況が生じている。
学費の引上げは、若者の教育を受ける権利を奪い、未来を奪い、大学の活力や研究の質の低下を招いている。文部科学省発表の注目度の高い論文数の国別順位は、過去最低となった昨年と同じ13位で、過去最高の3位から凋落が続いており、日本の科学技術、経済の活力にとっても由々しき事態を招いている。
よって、国会及び政府に対し、高等教育の無償化を実現する立場から検討を行い、国立大学法人運営費交付金及び私立大学等経常費補助金を大幅に増額し、各大学が学費の引上げをせず、引き下げること、また充実した研究環境が確保できるような財政措置を講ずるよう強く要請する。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
「子ども医療費助成」の後退を許さず、さらなる充実を求める意見書
厚生労働省は2023年9月、小学生から18歳未満への医療費助成を独自に行う地方自治体の国民健康保険への国庫負担金の減額措置(ペナルティ)を廃止を決定し、今年4月から実施された。これは、全国知事会、全国市長会、全国町村会の地方三団体が「国の少子化対策に逆行するもの」として繰り返し廃止をもとめてきたものである。
しかし、厚生労働省は6月26日、各都道府県の国民健康保険担当局に向け、「こどもの医療費の適正化等の取組」と称して、「外来医療費を無償化せず自己負担を設けている場合」や「無償化から窓口での支払いが必要な制度に変更した場合」など、2024年度の実施状況を踏まえ 来年度から国保の「保険者努力支援制度」の市町村指標において加点することを自治体に通知した。交付金の増額により、自治体に国の意向を押し付け、制度後退を誘導するやり方は。形を変えた「ペナルティ」の復活であり、子どもの疾病の早期発見と早期治療を妨げるものである。
「こどもみらい戦略〈加速化プラン〉」のなかで国が実施した「ペナルティ廃止は子育てに対する経済的支援」としてきたことと大きく矛盾するものであり、今回の通知内容は、到底容認できない。
よって、次のことを強く要請する
1 国の子育て支援、少子化対策とも矛盾する6月26日の通知を撤回すること。
2 国の制度として、子どもの医療費無償化制度の拡充に早急にとりくむこと。
(新婦人の要望を基本したもの)
長期収載医薬品への選定療養導入撤回と医薬品の安定供給を求める意見書
2024年10月から長期収載医薬品への選定療養の導入が予定されている。これまでも選定療養がさまざまな形で導入されてきたが、今回の選定療養の導入は、医療の中でも投薬という診療行為の中核をなす部分にかかるものである。
後発医薬品では先発医薬品の承認の際に要するデータまでは求められておらず、後発医薬品に処方を限定しようとすることは医療上も適切ではない、との指摘が医療関係者からなされている。また、額徴収をめぐっては、患者への理解も得づらく、薬局窓口の実務が混乱することも明らかである。特別負担の費用計算が複雑かつ負担割合が4割を超える場合も発生するなどの問題もある。
薬剤の「差額」の持ち込みは、市販薬と類似する薬の処方、定型的な外来医療を超えた部分など、あらゆる保険給付にも応用可能な仕組みあり、「必要かつ適切な医療は基本的に保険診療により確保する」という公的医療保険制度の基本理念を揺るがしかねないことを強く危惧する。
医薬品の供給困難はすでに3年以上も継続し、いまだ出口が見えない状況である。2024年7月現在での医薬品の限定出荷・供給停止は合計22%で、さらに冬季においては3割近くの医薬品が正常に流通しない状況が続いている。これは前代未聞の異常事態であり、一刻も早く解消すべき問題であるが、薬剤への「選定療養の導入」は、不安定供給にさらに追い打ちをかける恐れがある。 この異常事態が続く中で選定療養を強行するということは、受療権の侵害につながり、更なる混乱を招くことは明らかである。
また、薬剤師をはじめとする医薬品供給困難の対応の最前線にいる医療職種は対応に多くの手間を取られ、疲弊しており、国民のための安全安心の薬剤活動に大きな支障をきたしている。
出口の見えないこのような医薬品の供給が困難な状況を一刻も早く解消することに真剣に注力すべきであり、このことからこの長期収載医薬品への選定療養の導入の撤回を求める。
教員配置のあり方を見直し、学校現場への配置を優先するよう求める意見書(案)
学校現場は、いま大変な長時間労働を強いられています。 その中で、高知県 では40人に1人が病休となり、採用されてからの3年間で小中学校の新採用 者は約2割が辞めていくというような若年退職者が続出する実態です。
土佐経済同友会が県内の小中学校、 高校など326校、 計6733人の教員 を対象にしたアンケートで、「子どもや知人に教員の仕事を勧めたくない」と 約6割が回答したとの報道があります。
このような背景もあり、教育現場は産休や病休などへの 「代替教員」、「臨 時教員」 も含め教員不足が慢性的になり、一ヶ月以上未着任が2020年度で、 66校、 78件となっています。
過労死ラインを超える超過勤務を余儀なくされている教育現場の実態を考慮 するならば、 指導主事等教員免許を持ちながら教壇に立たない教員の比率が全 国一高い高知県の教員配置の現状を見直し、学校現場への配置を増やすべきではないでしょうか。
よって県におかれては、 指導主事等の教員配置のあり方を見直し、学校現場 への配置を優先するよう求めるものです。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出します。
高知県議会議長 加藤 漠 殿
高知県知事 浜田 省司殿
高知県教育長 長岡 幹泰殿
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
(民医連の声明を基本にしたもの)
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