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ダイバーシティ&インクルージョン  組織のアップデート

 ビジネス、生産開発の現場において、自発性・創意を生かす取り組みは、日々発展している。まわりのモチベーションを下げるハラスメントを生まない職場づくりも努力されている。一昔前のダイバーシティから、ダイバーシティ&インクルージョンなど発展している。むかしから、興味をもってきた。一方、発達心理学、臨床教育学、障害者教育などの分野にも関心があり、独学してきた(専攻は工学系なのだが・・)

 それは、みんなの「よりよい社会をつくりたい」という気持ちを原動力に、おのずと前進をつくれる組織に・・という問題意識からである(自分自身、押しつけられたり、圧をかけられるのが大嫌いだったので・・)

 そこで、参考になる配信記事(下段の記事中、グラフは略。下線はメモ者)。

【多様な声からマーケティングとビジネスを考える|羽生祥子のVoiceHub Vol.1 ── 松永 エリック・匡史<前編>2023.01.31

https://c.kodansha.net/news/detail/42364/

Z世代の労働観から、マーケティングのヒントを探る|羽生祥子のVoiceHub Vol.1─ 松永 エリック・匡史<後編>2023.03.07

https://c.kodansha.net/news/detail/42544/index.php

記事中の「多様性ゼロ組織の“症状”」の一覧   自戒をこめて 

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【多様な声からマーケティングとビジネスを考える|羽生祥子のVoiceHub Vol.1 ── 松永 エリック・匡史<前編>2023.01.31

目次

  • 学生の共感が集まった「グループシンク」(集団思考)
  • 多様性がないことに対する嫌悪が強いZ世代
  • ダイバーシティ&インクルージョンは企業の経営に直結する
    • 数合わせは、ダイバーシティではない
  • 評価のKPIと企業カルチャーの両輪で進めるのが理想

 

本記事は「日経DUAL」「日経xwoman」の創刊編集長・羽生祥子さんが、アカデミックの現場の声(Voice)からマーケティングとビジネスのヒントを届ける連載企画です。
 1回目は、ビジネスコンサルタントで音楽家でもある、青山学院大学 地球社会共生学部 教授 松永 エリック・匡史さんとの対談。前編では「多様性とグループシンク」をテーマに語り合いました。

 

◆学生の共感が集まった「グループシンク」(集団思考)

羽生 今日は、エリックゼミの学生たちに聞いた「多様性」に関するアンケート回答をもとに、メディアではなかなかすくいきれないZ世代の視点を、グイッと解き明かしていけたらと思います。よろしくお願いいたします!

エリック 先日は、羽生さんにアドバイザーとして授業に参加してもらいました。学生たちとの「多様性」についてのディスカッションは、かなり盛り上がりましたよね。

羽生 そう、手がどんどん挙がる。「多様性がないと組織がどうなるか」というテーマでは、集合意識によって間違った合意形成をしてしまう「グループシンク(集団思考)」に学生の共感が集まりました。

*多様性がない組織にみられる8つのグループシンク(集団思考)の症状(©羽生プロ)

 

エリック 僕の授業では日頃からグローバルにおけるダイバーシティの現状を話しているので、多様性に関して関心の高い学生が多いんですよ。とはいえ、「グループシンク」という言葉は、初めて聞いたという学生もいました。

羽生 この「グループシンク」は、一般的に終身雇用制度を採用している大企業や、上下関係の厳しい職場などに多くみられるものです。用語の説明をした後、学生たちに「実際にグループシンクを見たり、体験したりしたことがあるか?」という質問をしたら、約7割の方が「はい」と答えましたね。これには、大変驚きました。

*企業や職場で見られる、「グループシンク」を体験したことがあると、学生の約7割が回答した(©羽生プロ)

 

エリック 僕は逆に、「学生が敏感に反応しているな」と感じた。僕のゼミを通じて、学生たちがダイバーシティ、つまり平等性や公平性という観点について学び、多様性のない集団に対して敏感になっているので、7割が「はい」と答える結果になったのじゃないかな。

羽生 日頃の学びや思考が大事ってことですね。企業のマーケティング活動も、Z世代の若者がダイバーシティ、公平性や平等性にここまで敏感だという視点を意識しないと、今後は共感を得られなくなりそうですね。

エリック そうですね。

 

◆多様性がないことに対する嫌悪が強いZ世代

羽生 バイト先などですでに「不平等」を感じている学生や、高校時代に「大学に進学しないなんてあり得ないと言われた」という経験をしている学生もいて、身近な大人がステレオタイプな発言をしてしまうんだなぁと。

エリック 高校生が進路を決めるにあたって「大学に行くべきだ」というグループシンクはかなりありますね。大学の選択でも、「学びの自由」「個性の尊重」と言いながら、現実は高い偏差値の大学を良しとすることに、学生たちは大きな違和感を抱いていると思います。

羽生 今回のVoiceHubを通して、「多様性がないことへの嫌悪や忌避は、Z世代は特に強い」と痛感。「将来、多様性(ダイバーシティ推進機運)のある組織で働きたいですか?」というアンケートで、100%の学生が「はい」と答えたんですからね......

学生の100%が「ダイバーシティのある組織で働きたい」と回答

 

エリック うちの学部は全員留学と地球規模の社会課題に向かい合うことが必須で、大学で遊ぶことを期待する学生にはある意味面倒臭い学部です。これは入学前からだと思うのですが、どの学生に話を聞いても社会課題に対して高い意識をもっています。授業では、アドバイザーとしてトランスジェンダーの方をお招きして一緒にディスカッションを行うこともあります。そういう意味では、ダイバーシティをかなりレベルの高いところでとらえている学生が多いことが、「100%」という数字につながっているのだと思います。

羽生 企業やメディアで働く大人の感覚より、ずいぶん進んでいる。

エリック ただ問題点もあります。「ダイバーシティがない会社では働きたくない」という学生は100%ですが、「では実際に、どういう会社で何をすべきか」という具体的なビジョンを持っている学生は100%ではないんです。

「貧困を救いたい」とテーマを掲げても、「じゃあ貧困を救うために、どうする?それはどの会社でできる?」という発想まではまだ描けていない学生が多いのは、課題と考えています。まだ、社会課題というとNGONPOというイメージが強いようで、企業と結びついていないケースが多いなと感じています。

企業側も、この「課題解決を具体的に描く」という部分では、まだ遅れているように思いますが、いかがですか?

羽生 まさにそこですね。学生も企業も、社会課題解決は営利組織(いわゆる企業)ではできない、やる術がないと思い込んでいる。ですが、今いちばんマーケティングで熱いのは、営利企業こそが地球全体のモンダイにどう取り組むかというビジネスストーリーなんです。単純には売上や利益につながらない、むしろコストのかかることなので、かなり知恵とノウハウが必要です。

 

◆ダイバーシティ&インクルージョンは企業の経営に直結する

羽生 日経xwomanの読者調査では、「ダイバーシティのない組織で働いている女性の50%以上が転職したいと思っている」という結果が出ています。企業からみれば、せっかく採用した優秀な若い社員が辞めてしまうのは、経営的には大きなマイナスです。エリック先生は、学生にもすでにそういう意識はあると感じますか?

エリック 実際にうちのゼミOBOGからも、優秀な人が男女の不平等を感じたり、結婚や出産をきっかけに会社を辞めたという話をよく聞きます。「僕なら、こんなに優秀な人は辞めさせないのに、もったいないな」と話を聞くたびに思います。

羽生 企業が「ダイバーシティ、やっています」といっても、よく聞いてみると「ダイバーシティ(多様な人を集める)」だけやって「インクルージョン(違いを認めて包含する)」ができていないケースもあります。

これからの企業は、D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)の両輪が欠かせない。そのためには、まず経営者自身が"腹落ち"して、意識改革してもらうことが必要ですね。

エリック そうですね。CSR(企業の社会的責任)の時代は、経営のために形だけ整えていればよかったかもしれませんが、いまはCSV(共通価値の創造)の時代です。ダイバーシティをCSRのひとつだと思っている経営者は、いますぐ経営の問題ととらえ直し、取りかかるべきだと思います。ダイバーシティーは経営マターであり企業価値そのものであると認識すべきです。

羽生 まったく同感です。

 

◆数合わせは、ダイバーシティではない

エリック 企業活動において売れる製品やサービスをつくることや、顧客満足度をあげることに、性別や国籍は関係ありません。それなのに、ダイバーシティがない企業というのは結局、従業員をフェアに評価していない企業なのです。アンフェアな評価は優秀な人材の流出だけではなく社員全体のモチベーション低下にも直結します。

羽生 おっしゃるとおりです。

また、「ダイバーシティ=女性活用のための数合わせ」くらいに考えて、女性をひとりだけ役員にするような安易なやり方も問題。これでは、女性が女性の足を引っ張る、女性が孤立するという別の問題も出てきてしまう。

この現象は、「クイーンビーシンドローム(女王蜂症候群)」によるものです。クイーンビーシンドロームとは、男性社会のなかで"ひとりだけ"成功した女性が、自分の地位を守るために他の女性の活躍を邪魔する、という行動心理です。

この問題を解決するために、たとえば大和証券では、10人の役員枠に一度に4人の女性を登用し、ダイバーシティ推進で成功しました。「たったひとりだけ勝ち上がった女性」ではなく、「性別に関係なく能力のある複数の人を引き上げる」組織に変えたことで、突出した女性の足を引っ張るような風潮がなくなったと聞いています。

エリック ダイバーシティを数合わせだけで表面的に女性登用がうまくいっていると見せかけている企業もけっこうあります。そういう企業は、逆にフェアではないと印象付けられる可能性も高いのです。

羽生 そうですね。それと、女性登用のプロセスも重要。たとえば、ある企業で女性が役員に抜擢されたとします。でも、その女性が深夜残業や飲み会、休日のゴルフなど、男性と「同化」することで役員のポジションを得たのだとしたら、それは真のダイバーシティとは呼べない。私は「ニセ女性活躍企業」と呼んでいます。

先ほども申しましたが、違う行動や違う発想・意見を受け入れる「インクルージョン」がなければ、結局見せかけのダイバーシティに終わってしまいますからね。


◆評価のKPIと企業カルチャーの両輪で進めるのが理想

エリック 僕が日本のいちばんの問題だと思っているのは、評価のKPIが明確になっていないことです。外資系企業の評価はすべて数値化されています。客観的に数字で評価できるKPIがあれば性別や年齢、国籍で差別されることはないのに、日本は違いますよね。主観的な派閥や好き嫌いで評価していてはグローバルから取り残されるだけです。

羽生 たしかに日本では、努力しているとか、長く働いていることが評価の対象になりがちです。

エリック 日本は単一国家なので、これまで阿吽(あうん)の呼吸でやってきました。たとえばアメリカのような連邦国家にはいろいろな国籍の人がいます。多様な考え方や文化、宗教の違う人たちをまとめるには客観的なKPIなしでは難しいのです。客観的な評価のために数値化し、評価する努力は真似るべきだと思います。客観的な評価には性別、年齢、国籍は関係ないのです。

羽生 障がいのある方の採用なども、日本はまだ画一的ですよね。

エリック 障がいのある方を採用することで、従業員に一体感が生まれるという考え方もあります。これはインクルージョンの話ですね。たとえば、なにか障がいをもっていてもチーム内で助け合うことによって高いチーム力が生まれれば、障がい者雇用もパフォーマンスにもよい影響を与える可能性があると思います。それが企業カルチャーになっていくと素敵だなと思います。日本はそれができる国だと信じています。

羽生 そうですね。D&Iは、評価のKPIと企業カルチャーの両輪で進めるのが理想だと私も思います。

 

 

 

Z世代の労働観から、マーケティングのヒントを探る|羽生祥子のVoiceHub Vol.1─ 松永 エリック・匡史<後編>2023.03.07

目次

  • 仕事も私生活も自分で選びたいZ世代
  • 「自分が好き(ファン)だから」という視点で選ぶZ世代
  • 減点法には、未来がない
  • 批判ではなく、「共感」で届けることが重要

 後編では、「Z世代の労働観」から、Z世代向けのマーケティングのヒントを探りました。

 仕事も私生活も自分で選びたいZ世代

羽生 前回に引き続き、エリックゼミの学生たちに聞いたキャリア観に関するアンケート回答をもとに、日本のZ世代の労働観について解き明かしていけたらと思います。またその結果から、Z世代向けのマーケティングのヒントも同時に探れたらと考えていますので、よろしくお願いします!

さて、「労働と私生活のバランスをどう感じるか」というアンケートでは、「仕事か、私生活か」という二者択一ではない回答が目立ちましたよね。

エリック そう、「若いうちは仕事に没頭したい」「ライフステージに合わせて、メリハリをつけた働き方をしたい」という回答が多かったですね。

労働と私生活のバランスを問うアンケートの結果。年齢や状況に応じて、仕事と私生活のバランスを取りたいと考える学生が多い傾向にあった。

羽生 つまり、若者は安定して見える大企業や、ずっと同じペースで仕事をすることを求める会社は望んでいない。むしろ、仕事も私生活も自分で選択できる会社に魅力を感じるのではないかと、私は思いました。日常的に学生たちと接しているエリックさんは、どう思われましたか?

エリック 仕事であれ私生活であれ、自分の価値観でそのときに大事にしていることができるかどうかで、働き方を選ぶ学生が増えたと感じます。インターネットで情報が溢れる中で育った学生は、情報を鵜呑みにしないで自分で考える傾向が強まっているのでしょう。

羽生 いまは、仕事と私生活を切り分けて考える「ワーク・ライフ・バランス」よりも、ライフのなかにワークがあるという「ワーク・イン・ライフ」の考え方が広まっていますよね。

エリック そうですね。僕も「ライフのなかにワークがある」というワーク・イン・ライフの考え方には賛同しています。授業でもワークライフバランスという言葉をよく耳にしますが、ライフとワークを天秤にかけてバランスを取るのは間違いだと教えています。ワークはライフの一部だし、そのバランスは人によって価値観が違って然るべきです。「残業が多いからブラック企業だ」という考え方に象徴される「仕事が多いから不幸だ」「ワークとライフが5050のバランスが最善である」というのは、他人が決めることではないと思いますね。正直言って僕は仕事がライフにおける大きな部分を占めていますが自分の人生に満足しています。

羽生 この結果から、「自分の生き方(働き方)は、自分で選びたい」という彼らの意思を感じることができますよね。これはマーケティングにおいても同様で、ひとつのスタイルを"ベストプラクティス"として押し付けるのではなく、多様なケースを示して共感を呼ぶアプローチを目指すことが大切なのではないでしょうか。

エリック Z世代である今の学生たちは、"自分らしさ"をとても大切にしています。採用においても、マーケティングにおいても、パーソナルな部分を理解してあげることが大切な要素だと感じます。同じ地上波の番組や雑誌、新聞を観て影響される時代は終わり、自分の好きなコンテンツを選ぶ世代は、マスのパワーで強引に創り出されたトレンドには興味がないのです。

 

「自分が好き(ファン)だから」という視点で選ぶZ世代

羽生 近年はターゲットに合わせて、商品やサービスをより細分化して紹介するマーケティングも目立ちます。

たとえば、アフラック生命保険株式会社のがん保険の紹介サイトは「もしも自分ががんになったら...」というLPで、実際のがん体験者のさまざまなケースを細かく紹介しています。いわゆる昔の編集手法でよくある「ベストバイ」というアプローチではなく、「このケースは自分の場合だ」と、リアルな自分ゴトとして検討することができる。正解はひとつではないという視点を商品と組み合わせていて、よくできていると思います。

*事例別に細かく保険体験が紹介された「アフラックのサイト」は、多様化するライフスタイルに合わせている

 

エリック 商品やサービスを「流行っているから」ではなく、「自分が好きだから」という視点で選ぶのが強いのも、最近の若者の傾向ですよね。定年後の人生をどのように過ごしたいかというアンケートでも、学生によっていろいろな回答があったのは、いまの若者の特徴をよく表していると感じました。まさに個の時代を象徴していると感じますね。

羽生 確かに......! 自由回答にそれぞれ自分の"理想の定年後"を書き込んでいて、読んでいるだけでも多種多様で面白い。

エリック 考えてみたら、人によって合う・合わないがあるはずなのに、「退職後は田舎でのんびり暮らすのがいい」とか押しつけるのは、間違いですよね。いいか悪いかの問題ではなく、都会と田舎ではコミュニティも生活ルールも利便性も異なるわけですから。ちなみに僕は都会じゃないと生きていけない派です(笑)。

*定年後の人生をどう過ごしたいかというアンケートには多様な回答が寄せられた

 

羽生 私がこれまで創刊してきたメディアでも、老後の描き方はさまざまです。老後は田舎でのんびり暮らしたいという考える若者もいるし、老後は銀座で歌舞伎を楽しみたいという60代の人だっている。一律に「退職後は田舎で悠々自適の生活をしよう!」と決めつけられたら、違和感を覚えてしまうと思います。

企業のビジョン・ミッション・バリューの作り方も変わってきましたよね。これまでの日本企業では、経営トップが決めていましたが、いまは若手社員と経営陣が一緒になって「CI(コーポレート・アイデンティティ)」をつくるケースが増えています。

エリック いまの企業トップにいる方たちは、2030年にはほぼ、いなくなります。自社のビジョン・ミッション・バリューがZ世代の若者たちに受け入れられるかどうかを見直すことも、企業の存続に必要不可欠ですね。Z世代の若者にとって、特に未来を描くビジョンは他人事ではないのです。Z世代が企業の中枢になるときの話をしているわけですから。

羽生 おっしゃるとおりです。

 

◆減点法には、未来がない

羽生 いま、日本の将来を不安視する人が増えている。だからゼミの中であえて、「日本を誇りに思えますか」というアンケートも行ったんですよ。そうしたら、59%が「誇りに思う」と答えた。素晴らしい数字ですね、ここに私は希望を感じました。エリックさんはいかがですか?

*エリックゼミの学生は、約6割が「日本を誇りに思う」と回答した

 

エリック これは地球社会共生学部ならではの傾向かもしれません。本学部の学生は、提携しているタイ、マレーシアなどへの留学が必須で、卒業前には全員が留学経験者です。目や髪の色、着ている服、カルチャー、食べ物など、あらゆることが違う海外での生活を通して、日本について考える経験をしている彼らなので、客観的に日本のよさがわかるのだと思います。アジアへの留学はアジアに対する偏見を崩し、さらにアジアの学生との対話を通して日本を素晴らしさ見直すきっかけになっているようです。

羽生 なるほど。日本から一度も出たことがないと、なかなか客観的に自国を眺めることはできず、悲観的になってしまうかもしれませんね。海外在住経験の多いビジネスエリートにどこで暮らしたいかと聞くと、実は「日本がいい」と答える人は多いです。「日本はもう終わっている」と批評から入る人もいますが、いいところを見つけ、加点するくせをつけないと日本の成長を実質的に推進できない。それに、そのような視点を持ったほうが、人生を楽しく過ごせると思います。

エリック 僕も海外経験が長いのですが、日本が大好きです。特に海外で働くと日本人の素晴らしさをたくさん発見することができますよ。ただ最近気になる減点法の考え方は日本の教育の問題だと思います。受験も就職もランキングに惑わされているからでしょうか。減点法の人生を過ごしても楽しくないし、明るい未来はないと思います。ポジティブに未来を創造したいですよね。

 

◆批判ではなく、「共感」で届けることが重要

羽生 マーケティングでも、批判を大前提に考えると失敗することが多いですよね。失敗する理由を挙げることが賢い仕事だと思っているのは、イノベーションができない組織の"あるある"です。それに、批判ではなく、共感を大事にする会社や団体には、必ず「いいね」と思う若者がついてきます。古い価値をそのまま使うのではなく、若者たちの価値と融合させる。つまりインクルージョン(包含)ができれば、その企業は成長できると思います。

エリック 僕の大学で最も共感する親友でもある駅伝の原監督から聞いたのですが、最近のスポーツは単に結果を追い求めるのではなく、勝敗のプロセスを重視して共感につなげているそうです。たとえば箱根駅伝で、トップ争いだけではなくシード争いも盛りあがるのは、スポーツの魅力が単に勝負だけではなく、そこに至るプロセスや個人の持つストーリーへの共感があるからだと思います。しかしながら、SNSの時代にどっぷりの若者たちは、常に批判的なコメントや低評価にさらされた時には、攻撃することが防御になるという間違った行動に走ることが少なくありません。共感に大事なのは、まず自分の価値を認め周りの評価を気にしないようにすることと、相手を知ろうとすること、そして受け入れる姿勢を持つことです。

つまり、相手を知る時には、理解できないものを排除するのではなく、理解できないものも含めて受け入れ、常に相手に敬意を払うことが大切なんです。企業内でこういった「共感の文化」を育むことができれば、若手とベテランの共感による新たなアイデアからイノベーションが起きやすい企業になるでしょう。これからの時代に求められるのは、市場のマーケティングだけではなく「共感・共創」がとても重要になるのではないでしょうか。

羽生 そうですね。プロセスやストーリーを盛り込むスポーツの手法は、企業のマーケターもぜひ真似したいところですね。そのなかに、Z世代の心を掴むヒントもあるように感じます。本日は貴重なお話をありがとうございました。

 

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