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「指定地域共同活動団体」~地方自治法改定による新たな課題

国の地方自治体への指示権が大きな問題となった地方自治法改定。しかし、それ以外にも問題含みとのこと。

それが「公共私連携」の名で導入された「指定地域共同活動団体」。今後、自治体の条例制定なども出てくるので、よく研究することが必要となる。(自治労通信には、地方自治法改定の全体像について学ばされました)

 【 地域社会や自治体の活力を削ぐ改正案   自治労通信24年5月号 】

PDF【自治労通信:デジタル版】815号2024年5月号:「【緊急寄稿】かなり「危ない」自治法改正案」ほか.pdf (j-union.com)

「改定地方自治法」の狙い 京都橘大学教授 岡田知弘さん  赤旗 8/17

https://www.jcp.or.jp/akahata/aik24/2024-08-17/20240817-003.pdf

 

1.「指定地域共同活動団体」とは・・・ 地域的な共同活動を行う自治会や町内会とその連合体、地域運営組織やNPO、企業など、「地域の多様な主体」を想定。/ 各自治体の条例が定める要件に基づいて市町村長が指定して行政サービスの一部を担わせ、その業務は随意契約で行われる

背景・・・人口減少などにより行政が従来担ってきた機能が果たせなくなるため、デジタル化や「公共私の連携組織」の活用を図るとの、第33次地方制度調査会の答申をうけたもの

 

2.懸念材料

・ある特定の団体だけが優遇されるなど地域の活動主体に順位付けがされ、共同が破壊される懸念

・目的から外れた運営が行われる懸念・・・ 指定団体の要件では、「個人」はあくまで「主たる構成員」。企業や地域外の「主体」も排除されてない/営利追求第一で、サービスの低下、競争相手がいない場合の価格の高騰の懸念

 *東京本社の企業がダミーの子会社をつくり、地域共同活動をすれば、指定を受けることが可能

・首長との癒など行政がゆがめられる懸念  随意契約、行政財産の貸与等

・チェック機能の低下 ・・改定地方自治法には随意契約期間の定めがなく、情報公開も義務付けられてない、

3.課題 

・「指定地域共同活動団体」を導入するかどうかは自治体の判断

農山村自治体では、集落単位にあるすべての地域運営組織が指定されればプラス効果が期待できる面があるが、「1」で示したような懸念がある。まず、指定することの是非が問われる~。現場で起こる課題を地域全体でどう解決するか、住民の声をどれだけ反映するか、住民自治の基本にたって、十分に議論する必要がある。

・法では指定の手続きの明文化されてない。~指定団体の審査や決定、運営のチェックの在り方~  指定管理のようなブラックボックスにしない。

・会計 仮に、指定された組織の本社が地域外にある場合、本社送金分も含め全会計を公開する仕組みも必要。

 

4.戦争する国づくりとの関連も・・・

・「敵基地攻撃能力」「軍事費2倍化」「折衝兵器の輸出」「経済版秘密保護法」「米軍との指揮統合」「地方への国の指示権」などなど急ピッチで進む「戦争する国づくり」

・1943年の「地方制度改革」が想起される~戦時下の「決戦体制」を整えるため、地域の部落会や町内会が行政の末端組織として制度化され、配給をなど市町村の業務を代行し、住民を相互監視する中央集権的な戦時統制国家の完成。

・その反省から、地方自治を憲法で明文化 /が、すべての自治体が「指定地域共同活動団体」をつくると、緩やかな統制と動員が地域に広がる可能性。さらにデジタル化で国民の情報を国に集中すれば、その危機はいっそう増す

➡ 新しい統治機構が目指している危険性を軽視しない/これらに十分注意しながら条例の内容を練り上げ、住民自治を保障する仕組みをつくる必要がある。/具体的な探求はこれから・・・

【 地域社会や自治体の活力を削ぐ改正案   自治労通信24年5月号 】

地方自治総合研究所 特任研究員 今井 照

 

3月1日、国会に自治法改正案が提出されました (これを書いている4月28日時点ではまだ審議されて いませんが、これをお読みになっている時点では何ら かの動きや結果が出ているかもしれません。その点は ご容赦ください)。

私なりに概要を別表にまとめまし た。さらっと一読すると「ふぅーん」と思われるかも しれませんが、自治法の歴史の中でも何本かの指に入 るほどとんでもない改正案かもしれません。

改正案は 「デジタル化」「国と自治体との関係の特例」「公共私 連携」という3つの項目から成り立っています。それ ぞれに自治体と地方自治にとって、すなわち地域社会 や住民にとって、さらには結果的に自治体職員にとっても「危ない」内容が含まれているのです。

例えば、「デジタル化」は自治体に対して実務的・ 技術的に大きな負荷を与える可能性があり、「国と自 治体との関係の特例」はこれまで自治法で定められて きた国と自治体との関係を反故にして、かつて存在していた自治体に対する国の「包括的指揮監督権」の復 活への契機となるかもしれません。また、「公共私連 携」は自治体内の住民や地域活動にヒエラルキーを作 るもので、地域社会の活力を奪うばかりか、市民自治 の観点からも決して見過ごすことができません。

 

  1. デジタル化

⑴ 公金の収納事務のデジタル化  

  • 自治体の長は「特定歳入等」の収納を地方税共同機構 に行わせる(義務)

⑵ 情報システムの適正な利用等   

  • 自治体の議会、長、その他の執行機関は、サイバーセ キュリティを確保するための方針(セキュリティ・ポ リシー)を定めなければならない(義務)  
  • 総務大臣は自治体に対しセキュリティ・ポリシーの指 針を示し、必要な助言を行う

 

 2 国と自治体との関係の特例(国民の安全に重大な影響 を及ぼす事態)

⑴ 資料と意見の提出の要求

  •   各大臣(市町村に対しては知事)は自治体に対し、資 料と意見の提出を求めることができる

⑵ 調整の指示(各大臣が国民の生命などを保護する必要 があると認めるとき)

  •   各大臣は、都道府県に対し、都道府県と市町村との調 整を図るように指示をすることができる

⑶ 生命の保護の措置に関する指示(同上)  

  • 各大臣は、閣議決定を経て、自治体に対し必要な指示 をすることができる(市町村に対しては知事を通じて 指示することもできる)

 ⑷ 国による応援の要求及び指示(同上)

  • 都道府県知事は、市町村長に対し、他の市町村長への 応援を指示することができる  
  • 各大臣は、都道府県知事や市町村長に対し、他の知事 や市町村長への応援を指示することができる
  • 応援や職員派遣を求められた自治体の長は、求めに応 じなければならない(義務)

 

 3 公共私連携

⑴ 市町村と地域の多様な主体の協力

指定地域共同活動団体制度の創設  

  • 市町村長は、地縁による団体、その他の団体で、次の 要件を備えるものを指定地域共同活動団体として指定 することができる    

ア  特定地域共同活動を効率的かつ効果的に行う    

イ  民主的、透明性、その他条例で定める適正な運 営する要件を備える 総務省令で定める事項を内容とする定款などを 定めている そのほか、条例で定める要件を備える 

ウ 総務省令で定める事項を内容とする定款などを定めている

エ その他、条例で定める要件を備える                      

 

・市町村は、指定地域共同活動団体が行う特定地域共同 活動を支援する(義務)  

  • 指定地域共同活動団体は関連性が高い活動との間の調 整を行うよう市町村長に求めることができ、市町村長 は調整を図らなければならない(義務)  
  •   市町村は、市町村の事務処理の委託を指定地域共同活 動団体に随意契約することができる(自治法の例外)市町村は、行政財産を指定地域共同活動団体に期限な し、契約解除なし、損失補償なしなどの条件で貸し付 けることができる(自治法、民法、借地借家法の例外)

 

〇「地方自治」「地方分権」が仮想敵?

 まずはここに至るまでの経緯を簡単に振り返ってみ ます。2021年3月22日、「デジタル時代の地方自治 のあり方に関する研究会」の第1回が開催されまし た。その際に事務局(総務省)から配布された資料に は次のように書いてあります。

○ 新型コロナ感染症対策やデジタル法案立案など に際して、「地方自治」「地方分権」が施策の円 滑・効果的な実施の支障となっているといった 指摘が、国・地方の関係者のみならず、報道や 学術研究においても見受けられたところ。この機に、地方分権改革を通じた地方への権限 移譲や地方の自主性・自律性拡大がもたらした 成果と課題を整理し、デジタル時代に適した 「地方自治」のあり方を検討したい。

 

 研究会の冒頭から「地方自治」「地方分権」が仮想 敵として設定されています。つまり、国政におけるコ ロナ禍対策やデジタル関連一括法制定の際に、「地方 自治」や「地方分権」が支障になっているという指摘 があったので、この研究会で「地方自治」のあり方を 検討したいと言うのです。

この記述から思い浮かぶこ とは、例えばコロナ禍発生当初に、当時の西村康稔担 当大臣と小池百合子東京都知事との間で休業要請の範 囲や開始時期をめぐって意見が対立したことです。ま た、それぞれの自治体が時間をかけて積み上げてきた 個人情報保護制度について、経済界などからの批判が あり(「2000個問題」)、結果的に各自治体の条例がリ セットされてしまったことも指しているようです。

いずれにしても、国政の中の一部の人たちは「地方 自治」「地方分権」が支障だと感じたのでしょう。そ の後、6月18日に閣議決定されたいわゆる「骨太の 方針2021」で、「国と地方の新たな役割分担」について地方制度調査会で検討するようにと決められまし た。それを受けて、20231221日、首相に手交された地方制度調査会答申では、自治体に対して国 が新たな指示権を持つべきと書かれたのです。

そして2024年3月1日、この答申を基にした自治法改正 案が国会に提出されました。この改正案には地方制度 調査会の議論になかったことまで書き加えられていま す。

 

〇「最後の脅し」をめざす法改正?  

具体的に改正案を見ていくことにします。新聞各紙 や知事などの自治体関係者が一番注目しているのは2 番目の「国と自治体との関係の特例」についてです が、私は3番目の「公共私連携」も地方自治や地域社 会をひっくり返すほどの大きな問題を含んでいると思 っています。それに比べて1番目の「デジタル化」は 見逃されがちですが、自治体にとってはここにも大き な問題があります。そこで、改正案とは順番が違いま すが、2番目、3番目、1番目という順番で主な論点 を整理することにします。

 

国と自治体との関係のあり方については、現在の自 治法で原則やルールが定められています(11章)。か つては機関委任事務という概念があり、それについて は自治体に対する国の包括的指揮監督権が認められて いました。俗っぽく言うと、「私の言うことを聞きな さい」という意味です。しかし、地域社会や市民生活 のことは国よりも自治体の方が熟知していますから、 一方的に国から指示されても現実の地域課題は解決で きません。  

実際にも、国の包括的指揮監督権が発動されること はありませんでした。つまり、国は包括的指揮監督権 という伝家の宝刀を懐に隠し、時にはちらっと自治体 に見せつつ国の言うことを聞くように仕向けてきたの です。でも、国と自治体とがこんな関係だから地域が よくならないのだという声が強くなり、2000年分権 改革で自治法に原則やルールが書き込まれました(これらの原則やルールについては地方自治の解説書をご覧ください)。これを「対等協力の関係」と呼びます。  

もちろんいろいろなケースがありますから、一般ルールでは収まらない場合もあるでしょう。その場合に は個別法で特例を定めることができます。コロナ禍で よく耳にした感染症法や新型インフル特措法などにも そのような特例が含まれています。  

ところが国は「個別法で想定しない事態」、つまり 「非平時」になったらどうするのかと言い出したのです。想定しない事態とはどういうことですかと問われると、想定しない事態だからわからないと答えています。改正案ではそれを「国民の安全に重大な影響を及ぼす事態」で、「生命等の保護の措置」を講じる場合 と言い換えています。そのとき「各大臣」は閣議決定 を経て自治体に対し必要な指示ができると言うので 「上下主従の関係」の一部復活です。

 法律の世界には「立法事実」という言葉がありま す。簡単に言えば、法律を制定するのであれば、その 的や手段の合理性を支える事実がなければならないということです。しかしこの改正案には、このような 法律を作らないと誰がどう困るのかという事実があり ません。そもそも「個別法で想定しない事態」とはど ういう事態なのかが明らかではないからです。地方制 度調査会の議論では「宇宙からの侵略ですか」という 疑問が委員から出たくらいです。

 

一方、現在のルールで特例を作る場合には、国会で 個別法を制定することが必要です。例えばこの改正案 が事例としてあげている「大規模な災害、感染症のま ん延」については、すでに災害対策基本法や感染症法 で特例が定められています。今回の改正案では、この ように、本来は国会で決めるべきことを「各大臣」が 決められることにするのです。しかも、例えば災害対 策基本法を根拠として特例的な指示ができるのは内閣 総理大臣なのですが、この改正案では「各大臣」にま で広げられています。

法律の言葉で「指示」は極めて重い意味を持ってい ます。「助言」とか「勧告」とは違い、そのとおりに 行動しなければならないという意味です。もちろん、 「指示」には従わないという一般的な意味での抵抗権 は広く認められますし、具体的には訴訟や国地方係争 処理委員会といった紛争処理の仕組みもあります。ただ現実的には、自治体にとってこれらの仕組みはあまり機能していません。  

その他、この項目には論点がてんこ盛りです。例えば、国が自治体に対して意見を提出するように要求で きることが決められます。今までにない、自治体に対 する新しい国の関与類型となります。自治体が国に対 して意見を提出する権利であればまだわかりますが、 なぜこんなに上から目線なのでしょう。自治体間の応援要求や職員派遣に関する指示やあっせんなども細かく決められ、自治体はそれに対して応じる義務も定められています。災害対策基本法や国民保護法などにも 似たような仕組みがありますが、それ以外の場合が起 きても(そもそも「それ以外の場合」が想像できない のですが)、「各大臣」に強い権限が付与されることに なります。  

希望的観測ですが、このような改正案が通ったとし ても、実際には使われないでしょう。使う方もかなりの覚悟が必要だからです。ではなぜ国はこのような法 改正をしようとするのか。それは地方制度調査会である委員がはからずも漏らしたように、「最後の脅しと して置いておくもの」にしようとしているのだと思います。そもそもそんな目的で法律をつくってよいのか 疑問ですが、これもまた先ほど触れた機関委任事務における「包括的指揮監督権」と同じような役割なので す。黙っていても自然と自治体が国の言うことを聞くようにするという効果を狙ってのことでしょう。

 

〇市町村長が指定する団体にさまざまな特権?  

次に3番目の「公共私連携」に入ります。一般的に 公共私連携が大切であることは当然ですし、現に地域 社会は多くの人たちの大小さまざまな支え合いで成り 立っています。ただしこれらの行為は、自分が支えたい人を支えるという自発的な志に基づいています。だからこそ社会的な活力を持ち、しかも持続性があるの です

政治や行政はこうした支え合いと並走しつつ、 そこから漏れる人たちを公費で支えるのが使命です。 そのために市民は政治や行政という仕組みを維持して いるのです。  

最近、総務省は地域運営組織づくりに力を入れています。確かに人口減少社会を迎えると、地域の支え合い組織でもあった農協なども地域から撤退し、農業な どの生業支援はもとより、売店やガソリンスタンドな どの事業活動や金融機能も地域から失われていきます。国策として進められた市町村合併によって役所も 地域から撤退し、地域内の人口減少を加速させています。

こうした事態を補完するために、一部地域での成功事例を全国化しようと地域運営組織づくりが唱えられてきたのかもしれません。

ただし、総務省が公表している地域運営組織は全国で7,710団体もありますが、主たる構成員は自治会・ 町内会や民生委員・児童委員で、「市区町村からの助成金・交付金等」を収入源とする団体が84.5%という のが実態です。今回の改正案では、こうした地縁による団体やその他の団体を「指定地域共同活動団体」と して市町村長が指定し、その団体に数々の特権を与え ようとしています。

でもこれでは自発性や直接性に魅 力がある地域活動を行政活動の一環に組み込むことになります。さらに、指定される団体と指定されない団 体、あるいは指定を希望しない団体というように地域 団体に「差」がつけられ、かえって地域活動全体の活力を失わせてしまうのではないかと危惧しています

 「指定地域共同活動団体」に与えられる特権のうち 最大のものは、同じような活動をしている団体との 「調整」を市町村長に求めることができ、なおかつ市町村長はそれに応じる義務があることです。この場合 の「調整」という意味はわかりにくいのですが、地方 制度調査会の答申や議論では「意見具申権」が例示されていました。つまり、指定された団体は市町村長に 対して意見具申できる権限が与えられ、市町村長はそれに応じることが議論されていたのです。

 逆に考えると、指定されていない団体や市民は市町 村長に何も言えないのか、言えたとしても市町村長は 応じなくてもいいのかということになってしまいま す。これは民主主義の根幹から大きく外れます。

そもそも議会の機能も無視しています。おそらく、さすが にこんなことは法律に書き込めなかったのでしょう。 そこで「調整」という言葉が出てきたのではないかと 私は推測しています。ただ、たとえ「調整」であって も市町村長が自ら指定する団体に対して特権を与え、 その他の指定されていない団体や市民との間にランク の違いを設けることに変わりありません。そもそも指 定の手続きが明示されていないので、単に市町村長の 決定だけで指定されてしまう余地もあります(指定管 理者の指定には条例制定や議会の議決などの手続きが 定められています)。  

指定される団体の要件も気になります。かなり厳格 なようにも見えますが、一方では「一定の区域に住所 を有する者を主たる構成員」とするという曖昧さも備 えています。公共私連携ですから企業などの法人も構 成員として排除されていないように見えます。その地 域に属さない人たちや東京に本社のある企業なども構 成員になれるようです。おそらく地域力の低下を一番 実感しているに違いない自治会・町内会が主たる構成 員ですから、地域外の有力な企業が参加してくれたら 組織の運営にも力になるはずです。では、そういう人 たちに特権として優先的に契約をしたり行政財産を無 期限で貸し付けたりすればどういう結果をもたらすで しょうか。市民自治の観点からも、実利の観点から も、大きな問題を抱えているように思います。

 

〇結果責任の転嫁とシステムの負荷?  

紙幅が残り少なくなりましたが1番目の「デジタル 化」も自治体に対して大きな影響を及ぼします。

すべての自治体は総務省が示す策定指針と助言に基づいて セキュリティ・ポリシーを策定しなければなりません。それがナショナルミニマムであるなら国法で定めて、必要があれば自治体が加除できるようにしておけばいいのに、なぜ自治体ごとに同じような内容を策定させようとするのでしょうか。結果責任を自治体に転嫁しようとしているように見えます。  また、現在、一部の地方税は地方税共同機構という 組織を通じて収納が可能になっていますが、これが拡大され、その他の「特定歳入等」についても自治体は 地方税共同機構を通じて収納することが義務になります。

大企業のように多くの自治体に対して税や使用料 などを納める法人にとっては大きな事務合理化になり ますが、その分だけ自治体がシステム的・実務的・財 政的・人員的に多大な負荷を被ることになります。改正案ではそこへの手当てについて触れられていませ ん

 

 以上、今回の自治法改正案について主な論点を提起 しましたが、ここでは触れられなかった問題はまだまだ山のようにあります。末尾に掲げる他の論稿を参照 するともう少し理解が進むと思います。立憲民主党の 逢坂誠二さんはブログで「大改悪」と書かれています し、全国知事会も声明を出し、はっきり反対している 知事もいます。他にも地方紙の社説では批判が多いの で、今後の推移によっては廃案も可能かもしれませ ん。組合員や市民の方といっしょに地域社会と市民生 活を守るためにぜひともお考えください。

 

【参考文献】

今井照(2024a)「『国の補充的指示』権の法制化について̶33次地制 調答申『第4-3-(1)』の論点整理」『自治総研』20243月号

今井照(2024b)「ポストコロナの地方自治――荒れる社会に何ができ るか」『月刊自治研』20243月号

金井利之(2024)「補充的指示権に見る集権型国家志向の体質」『自 治実務セミナー』20243月号

人見剛(2024)「地方自治法改正案の問題点『国民の安全に重大な 影響を及ぼす事態』に係る特例的関与法制」『月刊自治研』20244 月号

 

「改定地方自治法」の狙い 京都橘大学教授 岡田知弘さん  赤旗 8/17

https://www.jcp.or.jp/akahata/aik24/2024-08-17/20240817-003.pdf

〇「指定地域共同活動団体」 統制と動員広げる可能性も

 先の国会で成立した改定地方自治法~ 自治体の軍事動員につながる「補充的指示権」の創設とともに、「指定地域共同活動団体」制度を盛り込んでいる。

・ 「指定地域共同活動団体」~ 地域的な共同活動を行う自治会や町内会とその連合体、地域運営組織や特定非営利活動法人(NPO)、企業など、「地域の多様な主体」を想定。/各自治体の条例が定める要件に基づいて市町村長が指定して行政サービスの一部を担わせ、その業務は随意契約で行われる

→ すると、ある特定の団体だけが長期にわたり優遇されたり、「地域的な共同活動を行う」と規定された当初の目的から外れた運営が行われたりする可能性もある/ 指定団体の要件では、「個人」はあくまで「主たる構成員」とされており、企業や地域以外の「主体」が入る余地もある。 ➡ 東京本社の企業がダミーの子会社をつくり、地域共同活動をすれば、指定を受けることが可能。改定地方自治法には随意契約期間の定めがなく、情報公開も義務付けられてなく、営利企業の「ビジネスチャンス」になりえる。

・今後、以上のような問題を条例でどう扱うかが重要なテーマとなる。

・この法律の元になった第33次地方制度調査会の答申~人口減少などにより行政が従来担ってきた機能が果たせなくなるため、それを補完するためデジタル化や「公共私の連携組織」の活用を図る/その主体として「指定地域共同活動団体」を制度化。が、導入するかどうかは自治体の判断に任されている。

・農山村自治体で、集落単位にあるすべての地域運営組織が指定されれば助かるところも多いと思う。が、大都市自治体で導入すると、例えば、地域課題を解決するために多くの団体が活動しているので、指定を受けるための競争が起こりえる。首長を忖度して指定を受ける団体が増えると、地域に自助・共助の強要をもたらす懸念が生じるどのように指定団体の審査や決定を行うのか、条例をつくる自治体は、議会を含め大きな責任を負うことになる。

→ 首長が特定の団体を指定するということは、他の団体を「排除」することを意味する。社会的、政治的分断につながる可能性もあり、これをどう抑止するかも問われる。/随意契約や行政財産の貸与等もできるので特定の団体と首長とのゆ着も懸念されるす。

・会計のあり方も問題となる~ 「公の施設の指定管理者制度」では、企業が公共施設を管理し、労働者を非正規雇用とすることで、人件費を安く抑えて浮き財源ができ収益が生まれる。管理企業の本社が地域外にあると、収益は地域外に流出。同様のことがこの制度でも起こり得まるが、それをどう阻止してチェックするか、本社送金分も含め、「指定地域共同活動団体」の全会計を公開する仕組みも必要

「指定地域共同活動団体」は、住民の自治組織ではなく、何らかの地域課題に関わるサービスを行政から請け負う末端組織になると言える。現場で起こる課題を地域全体でどう解決するか、住民の声をどれだけ反映するか、十分に議論する必要がある。

 ・地方自治体にとっては本来の住民自治はどうあるべきかが問われることに~ 自治組織とは、地方自治法上の「地域自治組織」を指す。行政の末端組織ではなく、自治体内部の住民自治組織

・新潟県上越市では、合併後、市内28の地域に「地域自治区」をおき、地域協議会と事務所を設置。協議会委員は公募公選制で選ばれ、地域課題を議論し、予算を決定。市政運営についても発言でき、市長はこれを尊重すると条例で定めている~仮に、このような自治組織と今回の「指定地域共同活動団体」が併存する場合、「どちらを優先するか」という問題も生じますが、地方制度調査会で検討された形跡はありません。

・「指定地域共同活動団体」は、地方制度調査会答申の後、急きょ法案に盛り込まれた言葉~1943年の「地方制度改革」が想起される。戦時下の「決戦体制」を整えるもので、地域の部落会や町内会が行政の末端組織として制度化され、配給をはじめ市町村の業務を代行し、住民を相互監視する組織に。つまり、上は政府から足元の町内会、部落会に至るまで、中央集権的な戦時統制国家が完成。そこに「住民自治」はない。/その反省から、地方自治を憲法で明文化。現行憲法の下では、直ちにそのような統制組織にはならないが、今後、財政誘導などですべての自治体が「指定地域共同活動団体」をつくると、緩やかな統制と動員が地域に広がる可能性もある ⇔ ・デジタル化で国民の情報を国に集中すれば、住民の動きを監視することも可能

➡ 新しい統治機構が目指されているのではないかと強く危惧している/この制度がそうならないよう、自治体関係者は十分注意しながら条例の内容を練り上げ、住民自治を保障する仕組みをつくってもらいたい。

 

 

 

 

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