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マルクスと自由・共産主義と自由 メモ

 「共産主義と自由」が取り上げられているので、科学的社会主義の「自由論」について遅まきながの学びのメモ。

その前に、最初に、この間の「講義」についての感想的意見。その後にメモ。

 ・今回メモしたのは、マルクスの自由論について、少し前に出た「いまここにある社会主義」の著者である松井暁さんの2011年の論稿 https://core.ac.uk/download/pdf/71785313.pdf そして、ヘーゲル研究に詳しい広島労教協の高村是懿氏の「科学的社会主義の自由論 『資本論』「三位一体的定式」の自由論 」からは自由と必然の関係を中心に・・・

 

議論になっているマルクスは『資本論』第三部第四八章の「三位一体的定式」の記述

  「自由の王国は、事実、窮迫と外的な目的への適合性とによって規定される労働が存在しなくなるところで、はじめて始まる。したがってそれは、当然に、本来の物質的生産の領域の彼岸にある。野蛮人が、自分の諸欲求を満たすために、自分の生活を維持し再生産するために、自然と格闘しなければならないように、文明人もそうしなければならず、しかも、すべての社会諸形態において、ありうべきすべての生産諸様式のもとで、彼〔人〕は、そうした格闘をしなければならない。彼の発達とともに、諸欲求が拡大するため、自然的必然性のこの王国が拡大する。しかし同時に、この諸欲求を満たす生産諸力も拡大する。この領域における自由は、ただ、社会化された人間、結合された生産者たちが、自分たちと自然との物質代謝によって——盲目的な支配力としてのそれによって——支配されるのではなく、この自然との物質代謝を合理的に規制し、自分たちの共同の管理のもとにおくこと、すなわち、最小の力の支出で、みずからの人間性にもっともふさわしい、もっとも適合した諸条件のもとでこの物質代謝を行なうこと、この点にだけありうる。

しかしそれでも、これはまだ依然として必然性の王国である。この王国の彼岸において、それ自体が目的であるとされる人間の力の発達が、真の自由の王国が——といっても、それはただ、自己の基礎としての右の必然性の王国の上にのみ開花しうるのであるが——始まる。労働日の短縮が根本条件である」

(24/11/30加筆)

≪ 志位講演 「共産主義と自由」 について ≫

〇マルクスの言う「自由」は、共同体での自由である。今ある「自由」とは質的にことなる。が、その言及がない /自由論の「そもそも」論が欠落している。

 →労働時間の短縮・自由時間の拡大 だけでは「タイパ」的な新自由的価値観にからめとられる危惧をもつ

・「科社」の自由論は、自由(人間の意思)と必然(神の意思、機械的自然観)という対立を、「自由とは必然性を認識し自己と外界を制御する」という対立物の統一として止揚/必然の彼岸に自由という論建ては、図式的との批判がある

  

〇労働をどうとらえるか、それは本質論では・・・

・晩年の「ゴータ綱領批判」では「共産主義社会のより高度の段階」では「労働がたんに生活のための 手段であるだけでなく,労働そのものが第一の 生命欲求とな」る・・・・これは、労働が窮迫と外的目的の強制を受ける段階から、より人間性にふさわい生活、社会の建設のための自らの共同意思にもとづく労働、つまり労働が自己目的的活動として行なわれることになるということではないか(その生産は、「自由の王国」の活動を支える様々な道具、施設も含まるが・・・)

・A・スミスは,労働を「安楽,自由,および幸福の犠牲」 としてとらえた。マルクスは、労働--自然に働きかける行為が、人間自身を変化させ---人間の本質である「自由な意識的活動」と「社会的共同性」をつくりあげた行為として高く評価している。

 ・労働の成果を、享受することが自己確証となる、と言う点からも「第一の生命欲求」と言えるのでは・・(岩佐茂)

 

〇「自由時間」拡大の根拠について

  1. 資本家の労働への参画、浪費の削減に触れているが、資本家階級は全体の1%もいない。浪費はどこまで削れるのか。金融投機に関わる部門とか・・・存在はする。が、他方、くらし、文化・スポーツの充実、ハンデを持つ人の社会参加の確保、壊された自然環境の回復など、新たに拡大すべき領域も多い。また再エネで有り余るほどのエネルギーを確保できれば、リサイクルのためのコストは大きく低下し、リサイクル技術の向上とともに、生活様式の多様性を彩る製品の生産に使われる可能性も高い。

 労働時間が短縮する最大の要因は生産力(性)の向上にある。資本論の蓄積論、「相対的過剰人口」が生まれる根拠を、生産力の向上との関係で解明している。

 今まで10人が1日かけてた製品が、5人で済むようになった ⇔ 10人が半日の仕事で可能になった。

2 「剰余時間=自由時間」とはならない。

 剰余労働分の中には、社会にとって不可欠の、教育・社会保障と経済発展のための原資、社会資本の整備などが盛り込まれていて、かなりの分をそれに使わないといけない。

(現在の日本のGDPの半分は家計の消費、また社会保障分野は1/4[大門みきし])

 *本書の他の箇所で、「剰余労働分」から、社会全体に必要な部分への支出にふれられているが、統一的に説明されてない。

 

〇物質的生産(「必然の国」)の範疇 ケア労働の不在。

 たしかに「使用価値の生産」の時間は短縮されるかもれないが、ケア労働は全面的に拡張されるのではないか(社会保障制度のなかったマルクスの時代と違い、ケア労働が、社会を維持する労働が定着している現状との齟齬/

 ★ 歴史の前提条件として「生の生産と再生産」~ドイツイデオロギーは「生の生産、すなわち労働のおける自分自身の、生殖においては他人、生の生産…」と述べられている。物質的土台は、ケア分野を含むと考えるべきでは・・・

 「三位一体的定式」後に書かれた「資本論Ⅰ部」での「真の自由の国」の記述 (志位・資料集「1819)

・ 「人間的な教養のための、精神的発達のための、社会的役割を遂行するための、社会的交流のための、肉体的・精神的生命力の自由な活動のための時間」

・「社会的労働日のうちで物質的生産のために必要な部分(必然性の国)がそれだけ短くなり、したがって、諸個人の自由な精神的および社会的な活動のために獲得される時間部分(真の自由な国)が、それだけ大きくなる」

ここでは、「社会的役割の遂行、活動・交流」という、共同体の強化・発展に必要な活動が視野に入っている。/生活を維持するための労働に 対立して「彼岸」に「真の自由の国」がある、という当初の図式的なきりわけから明らかに発展している。/取り上げるとすれば、より深められた資本論Ⅰ部の記述を使うべきである。

ちなみに第三篇 絶対的剰余価値の生産 「労働日」では--- 「24時間からなる1自然日」 は、① 労働時間/②「休息し睡眠をとらなければならない」時間/③「食事をし、身体を洗い、衣服を着るなど他の肉体的諸要求をみたさなければならない」時間/④「精神的及び社会的な諸要求の充足のための時間」に区分されている 

 *家族単位で考えると、③にはケア労働が含まれるのではないか。共同社会の運営に参加する時間は④にはいるのではないか。

 ★佐々木隆治氏は、ケア労働について「私的生産」の再建として、以下のように語っている。

*“私達が再建するのは「社会的」生産における物質代謝だけではない~そもそも生産を「社会的」なものと「プライベート」な生活領域に分割したのは資本主義的生産関係。すなわち物象化による社会的生産領域の特権化 (メモ者 ジェンダー規範による「公的領域」と「私的領域」の分断、「私的領域」の軽視)

“ 私達は、物象化の克服をつうじて生活領域における労働の軽視の克服( メモ者 ケア労働 )しなくてはならない。また、生活領域における物質代謝の合理的かつ人間的な制御にも取り組まなければならない。”(

 

〇「生産力の発展」の現在的位置との関連

  生産力が発展し、労働時間が短縮。その彼岸である自由時間で「人間の全面的な発達」(後述)が、さらなる生産力の発展をもたらす・・と、いわゆる「加速主義」的な経調がなされるが、今や、地球環境から略奪が、深刻な「物質代謝の亀裂」をもたらしている。そのもとで「工業的農業・畜産」にかわる食料生産が「短時間」でおこなえるのか。プラチック・PFASなど化学物質に依拠しない「生活」とは、ただ単に「利便性」のよい生活と言えるのか・・・消費生活も「物質循環を攪乱しないものに変容するはず。

ここでも、未来社会が手にすべき自由とは何か、が鋭く問われると思う。

★旧ソ連社会での「自由の国」論 ~ 「自由時聞は、 それが人間の全面発達の可能性と、全社会の物質的・精神的カの、さらなる増大の為に利用される時に、本当に社会的富"だと言える」(ソ連共産党書記長ブレジネフ。1974)と位置づけられている。“自由時間における、国民の無為無策の「暇つぶし」を排除し、自由時間の組織的、合理的、 創造的利用にむけて、それぞれの団体の任務に応じて努力をしてゆく”(寺島善一)

➡ 国家により、組織され、利用される「自由時間」! 冒頭に述べた「タイパ」論と同じ臭いがしてくる

 

 〇文化・芸術、スポーツ。学問などの位置づけ 

人の生産の特徴…意識的に共同的に行う点。共同体の結束をたかめることは、重要な生存戦略であり、世界各地で太古から、踊り、うた、祭りなど共通して生まれているのは、必然性があったからではないか。ゴリラ研究で著名な山極寿一氏は、言葉よりさきに、踊りなど身体的な共鳴が絆を深める役割をになった、と示唆している。

➡ 「真の自由の国」では、個人の能力を思いのままに発展させる、ことが強調されるが、それらの行為は、共同して生きてきた人類の必然性が土台にあるように思う。

 「三位一体的定式」でも、必然性の国が土台であることが強調されている。この部分は、1865年に書かれた第一校であり、マルクスが完成させていれば、科学的社会主義の自由論を踏まえて、物質代謝、共同体の研究を踏まえ、より豊かに展開されていたと思う〈個人の感想だが〉。

 

 〇「個人の能力の全面的発達が目的となる」という規定

 三位一体的定式では「能力の発展じたいが目的となる」という表現で、「全面的発達が目的となる」とは言っていない。また25日の学習会の資料でも「完全で自由な発達」という表現である。

  機械の附属物とされた状態から、経済の発展の中で、様々な能力がもとめられるとして「全面的発達」の可能性について触れた部分はあるが、「全面的発達が目的」という規定は、どこで展開されているのだろう。

  だいたい歌が苦手、スポーツが苦手とか、文学が好きとか、数学が好きとか、人さまざまである。/が、「全面的発達が目的」として、すべてのことに挑戦が求められる社会とは異質なものと思う。

 

〇なにより重要なことは 「今ここにある社会主義・共産主義」

 「共産主義とは、われわれにとって成就されるべきなんらかの状態、現実がそれに向けて形成されるべき何らかの理想ではない。われわれは現状を止揚する現実の運動を共産主義と名付けている」 (「ドイツイデオロギー」)   

  労働時間の短縮、社会保障制度(いきていくためにどんなひどい条件でも働かざるを得ない事態に対し、「失業する権利」の保障)、教育、子どもの権利、女性差別禁止・・・バリ協定、「ビジネスと人権」規定、最低法人税の合意(「底辺への競争」の制限)など、新自由主義の暴走とともに、資本の横暴を規制するルール、制度づくりも大きく進歩してきた。これらは労働者階級、人民大衆の運動が築き上げたものである~ 

・それらは、未来社会への道であるとともに、この現実の運動の結果の積み重ねが決定的だと思う。

・どういう仕組みにより未来社会が運営されるかなど、新しい価値観の中で育った世代が、それまでの取り組みの到達点を引きついで創造していくだろうと思う。だから「今ここにある社会主義・共産主義の運動」がなにより大切である。

 

*紙屋高雪氏は、本書は、「搾取をなくす」ことの意味が明確に整理されてない」と指摘しているのは重要。

 剰余労働の処分権を資本が握っていることが「搾取」であり、この処分権を労働者・社会が握っていれば「搾取」ではない。労働時間の短縮にも使えるだろう、教育や社会保障の原資にあてることもできる。どう使うかは「自由」。

 

 現在の資本主義は、労働法制、税・社会保障制度、環境規制などで、剰余労働の処分につて様々な規制をかけている。この11つが生産手段の社会化のパーツをなしているのであり、だから「地続き」なのである。

 

「講義」の最後に、現在のたたかいと地続きというくだりがあったのはよかったと思うが・・・ 「講義」全体は、意図が不明だし、一面的に理解される危うさも感じる・・・ 

科学的社会主義は人類の共通財産であり、大いにオープンに議論されていくべきものであり、そのことを期待したい。

 

参考

・マルクスは『経済学・哲学草稿』の「疎外された労働」の中で、疎外を、「労働者からの労働生産物の疎外」、「労働者からの労働の疎外」、「類的生活からの疎外」、「人間の人間からの疎外」の4つに分けて論じている 、

・「人間はまさしく類的存在であることによって、意識的な存在であり、みずか らの生活を対象とする存在である。だからこそ、その活動は自由な活動なのだ。この関係が、 疎外された労働によってくつがえされると、人間は、まさしく意識的な存在であるがゆえに、 かえって、生命活動というおのれの本質を、たんなる生存のための手段にしてしまう。」(『経 哲草稿』,p. 102

 そして、意識性。共同性を特徴とする人間労働から疎外されることで、「共同社会性の喪失」=「人間からの疎外」にいたる。

➡ この疎外の原因をさぐることが経済学の探求 /自由と人間性の回復・獲得が一貫したテーマ

 

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