日本のジェンダー平等を考える ~家族モデル、政治、教育、賃金格差、DV(メモ)
この4月、ジェンダー平等にかかわり読み応えのある連載が3本、「赤旗」に掲載された。
≪日本のジェンダー平等を考える GEAHSS公開シンポジウムから 3氏の報告 4/5、12、19 ≫
≪ 男女賃金格差 公表から是正へ 早稲田大学名誉教授 浅倉むつ子さんに聞く 4/5.6.9 ≫
≪ 共同親権 その前に DV加害規制は急務 公認心理師臨床心理士 信田さよ子さん 4/27.28 ≫
これらの連載からの備忘録、メモ。
男性稼ぎ頭の家族モデル、政治面での後進性、教育面での数値化されない壁、男女の賃金格差(統計、立証責任、間接差別の課題)~形式的な法整備はあるが、不平等を固定化されている問題。そしてDV(95年の北京会議で「名前」つけられて一気に現在化)という家父長制(私的領域を切り捨て、ケア労働の軽視・無視)の名残が、相互に深く結びついている。
岡野千代「ケアの論理」での学びからか、そう感じる。人間社会の前提である「依存せざるを得ない存在」の要求に応えケアする責任を果たす存在がより傷つきやすい状況に置かれている現在の社会構造。「自立した個人」を前提としてた思想と社会構造。それらを変革していく、あらたな思想を「ケアの論理」は重要。マルクスは「生命と生活の再生産」の視点で資本主義経済を分析したが、「ケアの論理」は、それを深化し、より豊かにしている、と感じている(まだまだ、勉強中!)
≪日本のジェンダー平等を考える GEAHSS公開シンポジウムから 4/5、12、19 ≫
“ジェンダーギャップ指数”。日本は昨年、146カ国中125位に。低さの背景と課題は何か、第7回GEAHSS(ギース)公開シンポジウム( 主催=人文社会科学系学協会男女共同参画推進連絡会GEAHSS。企画=日本文化人類学会。協力=東京外国語大学男女共同参画部会、特定非営利活動法人FENICS)での各分野からの報告を3回にわたり紹介
- 男性稼ぎ主温存 企業第一を支え 形式的な法整備 不平等の固定化
三成美保・奈良女子大学名誉教授・日本ジェンダー学会会長 4/5
ジェンダーギャップ指数は、0が完全不平等、1が完全平等を示します。日本は初公表の2006年以来、0・6台を横ばい。各国が取り組みを加速する中、順位は下がり続け、ジェンダー平等の停滞国。
〇世界に逆行
・日本は、自己決定権や性別による差別の禁止、個人の尊厳と両性の本質的平等などを定めた憲法のもと、男女共同参画社会基本法が制定され、形式的な法的平等は達成。が、実質的な不平等が存在
~候補者男女均等法のようなジェンダー平等法とされる法律=候補者の一定数を女性に割り当てるクオータ制は努力義務とどまるなど、強制力がないなど、形式的
・国際条約や勧告の軽視も問題~包括的差別禁止法の制定=国連が何度も勧告。が、政府はまったく議論せず/ILOハラスメント禁止条約=経営団体の強い反対で批准のめどがたってない/選択的夫婦別姓制度も未成立
*家族主義と男性稼ぎ主モデルが温存され、女性やLGBTQへの差別はなくならず、ジェンダー平等を積極的に進める法制とはなっていない。
〇進歩と反動
・日本は戦前、天皇制の家族国家と家制度のもと家父長制が敷かれ、男女は法的にも実質的にも不平等/戦後は、法的にはほぼ男女平等に。
➡が、個人の自立は抑制され、稼ぎ主の男性家長とその一家が「企業社会」を支え、福祉を代替する構造が成立(メモ 企業内福祉による社会統合)~女性は家事育児や家計補助を担う性別役割分業のもと、高度成長とともに専業主婦が増加。それが“標準家族”として政策の基本とされ、新たなジェンダー不平等が登場。
・雇用崩壊した1990年代に入り、ジェンダー平等への取り組みが強まる~包括的性教育の動きが広がり、育児介護休業法の制定、男女雇用機会均等法改正によるセクハラ規定の導入を経て、男女共同参画社会基本法が成立/「法は家庭に入らず」という原則が否定され、2001年にはDV防止法も制定。
➡が、21世紀には共働き世帯が増えた一方、税制や福祉は男性稼ぎ主モデルのまま/“パート労働主婦”が急増し、ジェンダー不平等が固定化。性教育バッシング、教育基本法改定と、ジェンダー平等を抑制する動きも拡大。
(メモ者 賃金抑制、税・社会保険、教育負担増の結果、家計補助的労働。同時に、雇用の調整弁)
〇意思決定は
・ジェンダー平等の実現 意思決定への女性の参画を増やすことが非常に重要
・深刻なバリアー~ 国家公務員の各役職の女性比率は低く、25年の目標ですら課長補佐17%、事務次官などの指定職8%/企業役員 クオータ制のあるフランスが45%。日本は13%。/司法試験合格者 2~3割で停滞 /高校社会科教員の女性比率が低いことも、政治・経済への女性参加を遠ざける要因/学生では女性が多い学問分野でも、教授へと職位が進むほど女性は激減
*これらのジェンダーバイアス(性別による固定観念)は、自覚的に改善すべき。
〇経験を共有
・政策的には、(1)ジェンダー主流化の明示 (2)ジェンダー統計の整備 (3)ジェンダーに対応した予算編成が必要
・過去の取り組みに学ぶ~90年代、女性が積極的に活動し、法律や自治体の男女共同参画政策を進めた。このような経験を社会で共有し、すべての市民にかかわる課題としてジェンダー平等を広げることが大切。
2. 最低水準の政治分野 女性参画 阻むものは 三浦まり・上智大学法学部教授・日本政治学会理事
〇ネットワークを広く
・“ジェンダーギャップ指数”。とりわけ、政治分野は146カ国中138位と最低水準
・政治参画のジェンダーギャップ指数~国会議員(衆院のみ)の男女比などから算出/日本の衆議院の女性比率は、10%前後で推移。各国がクオータ制などで女性議員を増やす中、完全に動きが止まっている。
*世界との違い=政権交代がほとんどない ~新陳代謝がなく、新人議員の参入が困難/中道左派政党の方が女性の多い傾向。が、保守系の自民党が一党優位で政党間競争が弱いため、変化が起きにくい。
〇要因は選挙制度に
・参議院での女性比率は現在26%と、世界平均とほぼ同じ ➡ 衆参の差は、選挙制度の違い
・参議院 選挙区が都道府県単位で人口比に応じた当選者数。人口の多い複数区では多様な候補者が議席を得やすくなる/比例代表制は、候補者と政党のどちらで投票してもよい「非拘束名簿式」で、さまざまな候補者がいることが有権者へのアピールにもなる。
・衆議院 小選挙区制中心。女性が誕生しにくい構造。“必ず勝てる候補者”を擁立するので、24時間365日選挙に没頭できるような、家事育児などのケア責任のない人、つまり男性が選ばれやすい。/加えて、男性の国会議員は、地方議員が前職の人が最も多く、一つのキャリアパス(経歴の道筋)に。女性は地方議会にも少なく、パイプラインが細い。
〇意識と資源に障壁
・なぜ議員に女性が少ないのか~世界共通の障壁は、意欲を持ちにくいことと、勝ち残るための資金と時間が少ないこと ⇔ 「意識と資源」、この二つのジェンダーギャップ
・意識 “政治は男性のもの”との固定観念もあり、政治家を志す自信が持てるか、政党に公認されるか、家族を説得できるかなどの判断に影響。
・選挙運動 意識と資源の両方が影響~特に日本は、支持基盤が政党(政策)中心ではなく個人中心の傾向/人脈が重要。対面が重視され、会食や行事への顔出し、戸別訪問など、莫大な時間と体力が必要。
➡このため候補者モデルが男性化しがち/さらに自治会が地区推薦で応援するような、地元代表としての議員が求められる地域では、女性は候補者になること自体に困難がある。
〇市民社会が変える
・政治は男性のものという市民の意識は変わってきている~東京23区など人口規模の大きな地域では、議員も選挙運動も女性の躍進がみられる/が、候補者決定などの意思決定の場で、男性が多い実態は変わらない。
・政党は、候補者選定過程の改善をすべき。法律的には、強制力を持たせたクオータ制が重要。
・議員定数を増やすことも念頭に、1人区などの選挙制度の改革が必要
・候補者、議員へのハラスメントは、性的なものを含めて女性の被害が多く、議会研修・防止条例の制定も必要。
*政治分野のジェンダー平等の必要性への理解を広げるために、市民社会の役割は非常に大きい~2018年、候補者を男女同数にすることをめざす候補者男女均等法が成立。政党の努力義務にとどまったが、議会でハラスメント防止が責務になるなどの前進もある。この法律は、市民立法であり、民主主義を実践した運動の成果。法律を実効性あるものにするには、市民社会やメディアが監視の目を強めることが不可欠。
・女性議員を押し出す基盤づくりなど、とりわけ女性のネットワークを広げることがとても重要になる。
研修教材パンフレット 「政治分野における ハラスメントの防止について」 内閣府・男女共同参画局」 7頁
https://www.gender.go.jp/policy/seijibunya/pdf/seijibunya_pamphlet.pdf
3. 教育の平等はトップクラス? 小玉亮子・お茶の水女子大学教授・教育学
・教育の平等の達成度 世界47位と比較的高く、数値的には「トップクラス」と内閣府は評している。その実態は?
〇数値化できない、されない多くの課題
・教育分野での日本のジェンダーギャップ指数 近年、奇妙な推移~ 2020年、21年と90位台。が、22年に突然1位。23年にはまた47位に。 1位になったのはなぜか。
・評価指標は4つ~ 識字率、初等教育(小学校)、中等教育(中学校や高校)、高等教育(大学)の就学率の男女比/が、1位になった22年は、高等教育の就学率が反映されず(図)。
高等教育に進む男女の数に差があり、それが順位を左右。この差は、大きな問題として考える必要がある。
〇指標からこぼれた
・指標からこぼれ落ちた中に、重要な課題が隠されている~ 293人の専門家が編集・執筆した『ジェンダー事典』では、「教育とスポーツ」「学術と科学」の章で数多くの教育の課題が論じられ、数値が分析されている。たとえば―
▽運動部活動への参加率は、中学校で20%、高校で30%、男子の方が高い(16年)
▽小学校社会科で取り上げるべき歴史上の人物とされた42人のうち女性は3人(学習指導要領)
▽4年制大学の進学率は、男性60%、女性53%。他方、女性の2割が専門学校に進学(22年)
▽研究者の女性比率は18%(22年)
▽保健師は97%、看護師は92%が女性の一方、医師では22%(20年)
▽、学校段階ごとの教員全体に占める女性の割合 幼稚園で93%だが、園長は59%。段階が進むほど、女性の割合は低くなる傾向で、4年制大学では教員27%、学長14%。(グラフ)
〇良妻賢母の圧力も
・男は仕事・女は家事といった性別役割分業、男女の性別二元性、階層、家族主義、発達、学校での教育内容、子どもへの教育期待や教育投資、包括的性教育や人権、ガラスの天井、女子スポーツやアスリートの商品化など、数値化できないこと、されていないことに多くの課題がる。
・“良妻賢母”の考えも~ 『ジェンダー事典』の川島慶子さんのコラム ノーベル物理学賞などを受賞したマリー・キュリーの功罪が書かれている。その逸話が、被占領国生まれの女性でも既存の教育制度だけで世に出られると、女性の励みになった一方、キュリー“夫人”と強調され、女性はやはり妻と母になるべき、両方こなしてこそ女性として価値があるという圧力にも転化された。
➡今、理系に続いて工学系の学問や仕事に進む女性を増やそうという動きがある。大切だが、背後に女性だけが仕事と家事育児の二重負担を負うことを正当化する社会があるなら、そこにも考えるべき課題がある。
・ジェンダーギャップ指数~ 重要な問題提起となったことは間違いないが、これだけを見て、日本が教育における平等を達成しているとは決して言えない。数値の持つ意味を考えたうえで、それだけではないジェンダーの実態を丁寧に見ていくことが重要。
≪ 男女賃金格差 公表から是正へ 早稲田大学名誉教授 浅倉むつ子さんに聞く 4/5.6.9 ≫
(1) 世界と日本で大きな違い 海外は差別解消から出発 4/5
・日本の男女賃金格差の公表 ~女性活躍推進法の省令と指針の改正によるもの。女性活躍の公表項目に男女賃金格差を入れるべきだという議論は前からあったが、使用者の反対で実現できず。それが一転し、今回、実現したことは評価できるが、同時に、その限界も見極めておくべき。
〇個人救済の限界
・世界でも賃金透明化法が登場、日本もこの動きを取り入れたかにみえるが、大きな違いがある。
→先進国の賃金透明化法 カナダのオンタリオ州が1987年にペイ・エクイティ法を策定。英独は2017年から、仏は19年から、一定規模以上の企業に男女賃金格差の情報開示を義務づけ、EUは23年に、賃金透明化指令を制定。
・世界の賃金透明化法の背景~ 男女の賃金差別解消は個人からの救済申し立てだけでは限界があるとの認識/提訴には、賃金格差の事実を入手しなければならず、救済されても本人に効果が及ぶだけで、職場の労働者全体の賃金格差は是正されないという限界
➡そこで個別救済を援助するためにも、賃金格差是正のプロアクティブ(予防的)な手段とし賃金透明化法が登場
・この法律 労働者個人が使用者に、自分と同一価値労働をしている者の賃金を開示するよう求めることができる。また使用者は、比較されるべき男女間の賃金格差を公表し、一定以上の格差があれば是正する義務を負う
・一方、日本 賃金差別の個別救済の問題点の認識がないまま、女性活躍推進の必要性から、男女賃金格差の公表を行っている。賃金差別の是正と賃金格差の公表という課題が切り離されているところに、一番の問題点がある。
・賃金格差の公表から次のたたかいへ~ 日本では、男女賃金格差の公表が301人以上の企業に義務付けられたが、公表だけで、是正させる仕組みがない/是正にむけた行動計画の策定義務もない
➡ 当面の課題は、企業に格差是正を義務付けること。
・外国のとりくみ 企業に同一価値労働の男女間の賃金格差公表を義務付け、格差があれば是正義務を課すというもの /比較すべき男女間に賃金格差があれば、それは違法な賃金差別だという推定が働く
・日本のとりくみ 企業内の平均的な男女賃金格差の把握と公表だけ/その格差が違法か否かの評価はない。
→ 日本でも、労働組合と使用者が共同で、職場内での職務分析や職務評価を実施するのが望ましい。が、この主張には、日本では職務評価は難しいという反論があるかもしれない。
〇男性正規と比較
・厚労省も「同一労働同一賃金への対応にむけて」として、「職務評価を用いた基本給の点検・検討マニュアル」を発行~ ILOがいう4要素(知識・技能、責任、負担、労働環境)での職務評価も推奨。参考になる。
⇔が、マニュアルの中には、パート労働者と一般労働者の賃金について「活用係数」を設定してもよいという部分があり、問題 ~「活用係数」を使えば、パート労働者の賃金は一般労働者の八掛けでよいということになり、賃金格差をそもそも容認してしまうことになり、格差は是正できない。
・ 日本の公表制度 、「全労働者」、「正規雇用労働者」、「非正規雇用労働者」という3つの雇用管理区分内での男女比較(男性を100とした場合の女性の賃金割合)
→ この3区分の中での比較では格差の実態はわからない。
・表=今回公表された企業のなかからランダムに選んだ3企業の実情を示したもの~A、B、C各社の「全労働者」の賃金差は、A社で大きく、C社で小さい
「非正規雇用」の賃金差~B社、C社で、女性が男性より賃金が高い。
⇔ 非正規で働く女性の方が、男性より勤続年数が長いなどの要因があると思われるが、女性の大半が非正規だという差別的な事実は、C社の「全労働者」の数値からはわからない。
・公表制度の改善を ~男性の正規雇用を100とし、それに対する「全労働者」「正規雇用」「非正規雇用」の男女の賃金割合を示すなど、実態がより反映されるものにすべき
➡ 男女の正規・非正規の労働者数を同時に示すようにして、適切に実態を分析できるようにする必要がある。
・高齢女性の貧困率が高さ~現役時代の賃金差が、年金の格差にも跳ね返るからで、現役時代のパートや有期雇用などによる低賃金が反映。この点からも、男女賃金差の是正が大切
(2) 立証責任 使用者側に 4/6
・日本の男女賃金差別の救済制度の課題~日本では、労働基準法4条が「使用者は、労働者が女性であることを理由として、賃金について、男性と差別的取扱いをしてはならない」と、性を理由にした差別を禁止。非常に重要な条文だが、性以外の理由によって生じた格差は4条違反だと判断されにくい問題もある。
→ コース別雇用における男性総合職と女性一般職の賃金格差、正社員男性と非正社員女性の賃金格差は法的にどう評価されるのか。労基法4条だけでは救済されるか否かが明確ではない。
・改善策 現行の賃金に関する性差別禁止原則を労基法4条1項として、新たに2項で「同一価値労働同一賃金原則」を定めるという法改正を提案。さらに3項で、性に中立的な職務評価制度により「同一価値」の判断はなされる、と規定することもあるでしょう。韓国ではそのような法改正を実施。
・賃金差別の裁判での立証責任 ~賃金差別を立証する責任は原告側・労働者側にあり、使用者に情報開示を請求することができない/ たとえ「同一価値労働同一賃金原則」が規定されたとしても、男女の労働の価値が同一かどうか、同価値の仕事をしている比較対象労働者は誰か、その人の賃金はどれだけか、などの情報をもとにした立証を行うことが労働者に課されていれば、それを果たすのは難しい。
➡ 立証責任の軽減の仕組みが必要/。原告が賃金格差の存在を明らかにすれば、格差を正当化する証明責任は使用者に転換するという仕組み。/諸外国ではこうした仕組みがあっても、労働者の負担が大きかったため、労働者から使用者に格差に関する情報開示を請求できる賃金透明化法にすすんだことは教訓的。
(3) 間接差別広く禁止を 4/9
・日本のジェンダーギャップ指数 146カ国中125位。経済分野の不平等は大きく、男女賃金格差は、男性100に対して女性75・5 → 厚労省の説明 格差の二大要因として、勤続年数の男女差、職階の男女差
・が、重要なのはその要因~強固な性別役割分業と、日本企業の内部システムに問題がある ~ 日本の女性 男性の5・5倍もの時間を家事・育児・介護に費やしている/ 企業における働き方はワーク・ライフ・バランスからはほど遠いもので、いまだに長時間労働の実態は変わってない。
・高度経済成長期 管理職になろうとする労働者に、労働時間や勤務地が無限定であることが期待され、そのときに作られた日本企業の雇用管理システムは、いまだに改善されていない
➡ コース別雇用における総合職の働き方は、ケア責任を担っている女性には大きな不利益をもたらす間接差別と言える
・間接差別禁止 法制度の問題~ 男女雇用機会均等法7条が間接差別を禁止。が、対象となる行為は、均等法の施行規則が定めている三つの行為類型だけに限定。条文の効果は薄い/間接差別の概念をより幅広く認めさせることも必要
・体系的な法制を求める議論も ~ 日本は、憲法14条で法の下の平等を明記、が、それを具体化する「差別禁止法」がないと、国連の女性差別撤廃委員会からは、再三、指摘されている
・最近では、「包括的差別禁止法」を作るべきだという議論も登場~人権保障のためには、性差別の禁止だけでなく、障害、人種、年齢など、さまざまな事由にもとづく差別を禁止する包括的な法制が必要だという議論で重要。
・包括的差別禁止法では、差別とは何かという定義をおくこと、直接差別や間接差別、ハラスメントなどの行為を禁止して、効果的な救済制度を設けることなどが要請される。将来的には大きな法律を作る必要がある。
≪ 共同親権 その前に DV加害規制は急務 公認心理師臨床心理士 信田さよ子さん 4/27.28 ≫
■DV加害規制は急務
・DV被害者のカウンセリングに長年取り組んできた公認心理師・臨床心理士の信田さよ子さん 「共同親権の前にすべきことがある」と法案に反対を表明し、DV対策の抜本的見直しを求めている
・支援の側から見た法案の問題点~法案は「共同親権」を申請しても「急迫な場合」は裁判所が認めないとし、政府は「急迫」にDVや虐待を含むとし、裁判所が適切に判断すると説明。が、暴力の実態を理解したものではない。
〇家庭内支配が本質
・DVの本質は家庭内の支配~ ▽「殴る、蹴る」の身体的DV ▽子どもを傷つけるぞと脅す、人間関係を孤立させる精神的DV ▽生活費を渡さず、経済的自立を阻む経済的DV ▽性行為を強要する、避妊に協力しない性的DV―などがある/加害者は外部に気づかれないようDVを巧みに使い分け、被害者を従属させている。/ 子どもの前でふるう面前DVは虐待でもある。強い従属のもとでDV被害者が子どもを虐待する加害者になる危険もある。
➡が、政府のDV対策は被害者の「避難」と、学校などへの「啓蒙」/DVの相談件数 02年以来、右肩上がりで現行の対策だけで状況は改善しない。
・「共同親権」導入の前に、DV対策を根本的に改めるべき。加害に対する抑止・規制を導入することが不可欠。
〇「プログラム」必要
・加害を抑止・規制すべき理由 ~ 暴力をエスカレートさせないため/ カウンセリングを受けに来る被害者の多くは女性。一般的には、妻が反抗、逃亡して夫が「夫婦間の問題」に気付くケースが多い。
⇔ が、自らの加害を認識しない夫が、妻の反抗を「非がないのに攻撃された」と捉えて被害者意識から妻を攻撃したり、子連れで逃げた(子連れ別居の)妻を「実子誘拐」のように捉えるケースがある。離婚になれば「妻が家庭を壊した」という考えから復讐心も生まれ、離婚後に元妻や子どもを殺害した事件も起きている。
・カナダや欧州など加害者規制が進む国 「加害者プログラム」を徹底。カウンセリングを通じて自身の支配性に向き合わせ、暴力に至る習慣を改め更生させる
➡そこに共通しているのは「女性や子どもを守る」という姿勢。裁判所が夫にプログラム参加を命じて中断や拒絶には罰則を科し、成果を上げている。適切な強制力は暴力の歯止めになる。日本でも加害者プログラムの導入が急務。
■国家の“DV”やめよ
・離婚後の「共同親権」を導入する前に取り組むべき課題~ 離婚した元親が子どもを監護する親に養育費を支払わない問題/ 政府の2021年度の調査 養育費を受け取った親は28・1%。支払った場合も2~3年の短期間、非常に少額
・離婚後の親権者の9割は女性~社会問題になっているシングルマザーの経済的困窮は、養育費の不払いが一因。今回の法案では養育のための必要最低限の金額などを定めるが支払い義務はない。法律で義務化すべき。
・政府は「高校授業料無償化」などの支援制度で判定基準になる親の所得について、「共同親権」になった場合には元親の所得も合算して判定する~ひとり親の収入が支援基準を満たしても、元親の収入次第で切られる危険があり、法案は、シングルマザーをさらに追い込む、国家による“DV”のようです。
〇ジェンダーの問題
・DVはジェンダーの問題でもある~「男らしさ」の分析から男性のDV被害に焦点が当てられるなど、ジェンダーの視点を抜き考えることはできない。
・「DV」という言葉が日本で広がったのは1990年代~それ以前も多くの女性がカウンセリングで夫の加害を訴えていた。支援側では、妻の被害をケアする一方、夫の加害については「アルコール依存症」の症状や人格の問題とみなして治療に任せる傾向があった/社会的に、夫婦間の暴力は国や社会が積極的に介入する問題とみなされていなかった影響もある。
〇「家父長制」の名残
・95年の第4回世界女性会議(北京会議)が転換点~参加した女性たちは夫の加害に「DV」という名が付いたことを歓迎。支援者が見聞きしてきた夫の加害は、女性の人権を侵害する「女性に対する暴力」であり、「やはり規制が必要だった」と。「DV」という言葉は、瞬く間に全国の支援現場に広がった。
・北京会議から超党派によるDV防止法の制定(2001年)に~ 私たちは当時から加害の抑止・規制を求めた。拒んだのは自民党の男性議員 「『暴力』とは大げさだ」「妻をたたくなんて男じゃない」としてDVを「特殊な家庭」の問題に矮小化するか、否認し、DV対策は被害者保護の対策に限定されてきた。
・DVが示す家庭内の支配関係は、明治憲法由来の家父長制を体現している~夫の力と支配を肯定する家族の価値観はそれほど変わってない。その人たちには支配をなくし、対等・平等の実現を目指すDVの議論は邪魔なだけ。
・DV対策が進まない背景~ジェンダー差別を利用する日本の政治のゆがみ
➡このゆがみを正さずに「共同親権」を導入すれば、女性や子ども、弱い立場への暴力は強まるばかり。ジェンダー平等を求める政治の姿勢は不可欠
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