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最高裁元判事のコメント・考 ~「司法における固定観念化とジェンダー差別」克服の重要性

「夫婦は同じ名字にするという制度」について、最高裁の大法廷は2度「合憲」の判断をしているが、「初めて合憲判決を出したときの裁判官に話を聞くことができました。」として、違憲、合憲の判断を下した2名の話を軸にNHKが取り上げている。

合憲の判断の元判事(男性)は「ちょっとの不合理さや不便さを理由に、違憲判断はできない」、違憲の判断の元判事(女性)は「明らかに女性に不利な状況をもたらしているので、夫婦同姓を求める規定は差別的」と述べた。

 女性差別撤廃委員会が「司法制度における固定観念化とジェンダー差別」が、「公平性と完全性を損ない」「誤審につながる可能性がある」と、その排除のとりくみを勧告しているが、名前を変えずにすんだ男性判事と当事者としの女性判事の刻み込まれた生活実感からくる意識の違いに、あらためて「勧告」の重要さが「よくわかる」記事となっている。

【元最高裁判事2人に聞いた 結婚後の名字の制度どうなる? NHK24/5/2

【女子差別撤廃委員会 一般勧告第 33 号 女性の司法へのアクセス (内閣府 仮訳) 2015.8.3

ⅡC 司法制度における固定観念化とジェンダー差別及び能力構築の重要性

 

【元最高裁判事2人に聞いた 結婚後の名字の制度どうなる? NHK24/5/2

・合憲の山本庸幸元判事。「パスポートや運転免許証な どを変えなければならないのは面倒ですが、『結婚して姓が変わりました』と言えばいいだけの話で、どうしても耐えられないという程度の問題ではないですね。対応策はいくらでもあるわけです。ちょっとの不合理さや不便さを理由に、違憲判断はできないと思います」

「違憲というのはもう耐え難い状況で、違憲判断するしかないというときに発動すべきで、今の規定があるから結婚できないというものでもないでしょう。憲法で保障される婚姻の自由や両性の本質的平等を阻害していると思うことはできません」

 

・違憲の櫻井龍子元判事 「確かに表面上はどちらかの姓を名乗ればいいことになっていますが、社会状況や慣習の中で女性が夫の姓を名乗り、いろいろな不利益を被っています。こうした実態や現実、結果に立脚すると、明らかに女性に不利な状況をもたらしているので、夫婦同姓を求める規定は差別的です」

「最高裁判事になった時、『どこの馬の骨か分からない』と言われ、経歴や実績が切れた悲哀を味わいました。旧姓使用はダブルスタンダードみたいなもので、相手が認めるか認めないかで決まる不安定なものです。今も海外などでは、旧姓を使っても身分証明が非常に難しいなど、不便どころか大変な問題が生じることもあります」

 

 

【女子差別撤廃委員会 一般勧告第 33 号 女性の司法へのアクセス (内閣府 仮訳) 2015.8.3

C 司法制度における固定観念化とジェンダー差別及び能力構築の 重要性

  1. 司法制度における固定観念化とジェンダー差別は、女性による人権の完全な享受に対して広範囲にわたる影響をもたらす。法律のあらゆる分野において女性の司法へのアクセスを妨げ、暴力の被害者や生存者である女性に対して 特に悪影響を及ぼす可能性がある。固定観念化は認識をゆがめ、関連する事実 よりも先入観による信念や誤った通念に基づいた決定に至る。往々にして裁判官は、女性にとって適切な行動と考えるものについて硬直した基準を採用し、こうした固定観念に従わない者を処罰する。固定観念化はまた、当事者及び証人としての女性の発言、主張、証言に対して与えられる信頼性にも影響する。 このような固定観念化は裁判官に法律を誤って解釈させたり、適用させる可能性がある。これは広範囲にわたる影響をもたらす。例えば刑事法においては、 加害者が女性の権利侵害に対して法的責任を負わされない結果となり、それによって不処罰の風潮が支持される。法律のあらゆる分野において、固定観念化は司法制度の公平性と完全性を損ない、その結果、告訴人の再度の被害を含め、 誤審につながる可能性がある。

 

  1. 固定観念を当てはめ、強化し、永続させる司法制度の行為者は裁判官、治安判事、裁定人だけではない。検察官、法執行官及びその他の行為者も往々にして、固定観念が捜査や裁判に影響を及ぼしている。特にジェンダーに基づく暴力事件においては固定観念が被害者の主張を崩すと同時に、被疑者の抗弁に裏付けを与える。したがって固定観念化は捜査及び裁判両方の段階に浸透し 終局判決を方向付ける可能性がある。

 

  1. 女性は誤った通念や固定観念のない司法制度、そしてその公平性が偏った思い込みによって損なわれることのない裁判に頼ることができるべきである。 司法制度における固定観念化の排除は被害者に対して平等と正義を保障するための極めて重要なステップである。

 

  1. 本委員会は締約国に対し、以下のことを勧告する。

(a) ジェンダー固定観念化を排除し、司法制度のあらゆる側面にジェンダー視点を取り入れるために、全ての司法関係者及び法学生向けの意識向上及び能力構築プログラムを始めとする措置を講じる

(b) 女性に対する暴力事件及び家族問題において潜在的に重要な役割を果たすその他の専門家、特に医療提供者やソーシャルワーカーを意識向上及び能力構築プログラムに参加させる。

(c) 能力構築プログラムでは特に以下の問題に取り組むよう確保する。

 (i) 当事者及び証人としての女性の発言、主張及び証言に対する信頼 や重みの問題。

 (ii) 裁判官や検察官が往々にして女性にとって適切な行動と考えるものについてもっている硬直的な基準。

(d) 司法制度における固定観念化とジェンダー差別の悪影響及び暴力の被害者である女性のために司法結果を改善する必要性についての対話促進を検討する。

(e) 固定観念化とジェンダー差別の悪影響についての意識を向上させ、司法制度、特にジェンダーに基づく暴力事件における固定観念化とジェンダ ー差別に取り組む運動を奨励する。

(f) 裁判官、検察官、弁護士及び法執行官向けに、本条約や本委員会の法学を始めとした人権に関する国際的な法的手段の適用、並びに女性に対する差別を禁じる法律の適用に関する能力構築プログラムを実施する。

 

 

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