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連合政権での「政府=自衛隊合憲」論への発展・考

 志位さんの「新綱領教室」(22年4月)で、民主連合政権においても、政府としては自衛隊と共存する時期は、“理の必然として、「自衛隊=合憲」の立場をとり”と、野党連合政権での「不一致はもちこまない」というレベルの「合憲論」を超えた、新たなレベルの「合憲論」を展開している。が、13年の「綱領教室」から180度転換した「政府として合憲」の立場について「理の必然」という一言で、それ以上の解明がない。

そこで、あらためて、15年の安保法制廃止の国民連合政権構想以来の大会、中央委員会、都道府県委員長会議を調べてみたが、「政府として合憲の立場」についての理論的・政策的な発展に言及した部分がない。見逃しているのだろうか。

 党の文書で初めて触れられているのは、「22年参院選政策〈6月〉」。平和外交、経済・5つの提案につづいて綱領的立場・展望を語る“「国民が主人公」の民主主義日本をめざします”の段に、まとまった記述がある。

その中では、自衛隊「活用論」についても、「政府として自衛隊合憲」の立場なので、以前のような「あらゆる手段を使って、国民の命を守る」のは当然という論理から「自衛隊合憲の政府が自衛隊を活用することに何の矛盾はない」と大きく変化している。〈ちなみに8カ月前の21年衆院政策には、この展開はない〉

この変化・発展の内容は、党大会で議論決定すべきレベルではないか、それだけの認識の発展を求める内容と思う。野党共闘の場でも、重要な話となるのだから・・・ 以下は、整理のためのメモ

〈「自衛隊論」の変化・発展の軌跡 〉

〇22年参院選政策  22年6月

 日本共産党は、「国民が主人公」の民主主義日本をめざします

――自衛隊については、憲法9条と自衛隊との矛盾を、憲法9条の完全実施(自衛隊の解消)に向かって、国民多数の合意で段階的に解決していきます。わが党が参加した民主的政権ができた場合にも、自衛隊をすぐになくすことはありません。民主的政権が、憲法9条を生かした平和外交によって、世界とアジアのあらゆる国ぐにと友好関係をつくり、日本をとりまく安全保障環境が平和的に成熟し、国民の圧倒的多数のなかで「もう自衛隊なしでも安心だ」という合意が生まれ、熟したときに、憲法9条の完全実施にむかっての本格的な措置にとりくみます。そこに至る過程(自衛隊と民主的政権が共存する時期)で、万が一、急迫不正の侵害を受けた時には、国民の命と人権、国の主権と独立を守るために、自衛隊を含めあらゆる手段を活用します。憲法9条を将来にわたって守り生かすことと、どんな場合でも国民の命を守り抜く――その両方に対して政治の責任を果たすということが、日本共産党の立場です。

 ――日本共産党としてはいっかんして「自衛隊=違憲」論の立場をつらぬきますが、党が参加する民主的政権の対応としては、自衛隊と共存する時期は、理の必然として、「自衛隊=合憲」の立場をとります。「憲法違反の自衛隊を活用するというのは矛盾している」という議論がありますが、民主的政権としての憲法判断が「自衛隊=合憲」である以上、その政権が自衛隊を活用することに、憲法上、何の矛盾もありません

 

〇21年衆院選政策  21年10月   個別政策 安保・基地・自衛隊

自衛隊と憲法の矛盾解決は国民合意で段階的にすすめる

 日本共産党は、憲法9条に照らせば、自衛隊が憲法違反であることは明瞭だと考えています。しかし、憲法と自衛隊の矛盾の解決は、一挙にはできず、国民の合意で一歩一歩、段階的にすすめます。

 ①まず海外派兵をやめ、軍縮の措置をとります。②安保条約を廃棄しても、同時に自衛隊をなくすことはできません。安保条約と自衛隊の存在は、それぞれ別個の性格をもつ問題であり、安保条約廃棄の国民的合意が達成された場合でも、その時点で「自衛隊は必要」と考える国民が多数だという状況は、当然予想されることだからです。③安保条約を廃棄した独立・中立の日本が、世界やアジアのすべての国々と平和・友好の関係を築き、日本を取り巻く平和環境が成熟し、国民の圧倒的多数が「もう自衛隊がなくても安心だ」という合意が成熟したところで初めて、憲法9条の完全実施に向けての本格的な措置に着手します。

 かなりの長期間にわたって、自衛隊と共存する期間がつづきますが、この期間に、急迫不正の主権侵害や大規模災害の発生など、必要に迫られた場合には、自衛隊を活用することも含めて、あらゆる手段を使って国民の命を守ります。

 

〇29大会 24年1月  除名再審査・山下報告

わが党の綱領は、「国民の合意で憲法第9条の完全実施(自衛隊の解消)に向かっての前進をはかる」と、自衛隊を憲法違反とし、国民の合意で段階的に解消していく方針をとっている。この方針のもとで、わが党が参加する連合政権ができた場合に、連合政権の対応としては、自衛隊と共存する時期は「自衛隊=合憲」の立場をとるが、日本共産党としては一貫して「自衛隊=違憲」の立場を貫くことを明らかにしている。「政党としての共産党は自衛隊合憲論をとるべきだ」という松竹氏の主張が、綱領と党の方針に反する主張であることは明瞭である。

→ 「明らかにしている」とは、22年参院政策のことと思う。この報告も結論だけをのべたものだし、拍手で確認しただけであって、大会として採決されたものではない(大会4文書に入っていない)

 

★これが、この間の流れだと思う。私としては、結論には異論はないが、ただし「政府合憲・党違憲」では、国会議員の対応や地方議会で活動で自衛隊の関係する予算や活動への対応について探求すべき内容があり、課題を整理する必要がある、と思う。(2月のメ続き続き)

日本共産党の「安保破棄・自衛隊解消」論  学習・探求メモ 2024/02

 

 

 

  ≪自衛隊論   大会などでの言及部分≫

〇 日本共産党第27回大会決議   2017年1月

党綱領は、「自衛隊については、海外派兵立法をやめ、軍縮の措置をとる。安保条約廃棄後のアジア情勢の新しい展開を踏まえつつ、国民の合意での憲法第九条の完全実施(自衛隊の解消)に向かっての前進をはかる」とのべている。

 ――わが党は、憲法9条にてらせば、自衛隊が憲法違反であることは明瞭だと考える。この矛盾をどう解決するか。世界史的にも先駆的意義をもつ憲法9条という理想に向かって自衛隊の現実を改革していくことこそ政治の責任であるとの立場に立つ。

 ――憲法と自衛隊の矛盾の解決は、一挙にはできない。国民の合意で一歩一歩、段階的にすすめる。(1)まず海外派兵立法をやめ、軍縮の措置をとる。(2)安保条約を廃棄しても、同時に自衛隊をなくすことはできない。安保条約と自衛隊の存在は、それぞれ別個の性格をもつ問題であり、安保条約廃棄の国民的合意が達成された場合でも、その時点で、「自衛隊は必要」と考える国民が多数だという状況は、当然予想されることだからである。(3)安保条約を廃棄した独立・中立の日本が、世界やアジアのすべての国ぐにと平和・友好の関係を築き、日本を取り巻く平和的環境が成熟し、国民の圧倒的多数が「もう自衛隊がなくても安心だ」という合意が成熟したところで初めて、憲法9条の完全実施に向けての本格的な措置に着手する。

 ――かなりの長期間にわたって、自衛隊と共存する期間が続くが、こういう期間に、急迫不正の主権侵害や大規模災害など、必要に迫られた場合には、自衛隊を活用することも含めて、あらゆる手段を使って国民の命を守る。日本共産党の立場こそ、憲法を守ることと、国民の命を守ることの、両方を真剣に追求する最も責任ある立場である。

 

*志位報告    わが党は、「国民連合政府」を提唱していますが、この政権は、「安保法制廃止、立憲主義回復」という国民的大義を実行する政権です。その他の国政上の課題については、「相違点は横に置き、一致点で合意形成をはかる」という原則にたって、責任をもって政策調整をおこなうことを呼びかけています。そのさい、この政権に、日米安保条約や自衛隊についてのわが党の独自の立場を持ち込まないことを、私たちは、繰り返し明らかにしています。

 綱領や将来像が違うものが共闘するわけですから、野党と市民の共闘は、当然、多様な思想・信条・政治的立場をもつ政党、団体、個人によって構成されることになります。それをもって政権・与党は「野合」との攻撃をおこなっています。しかし、野党と市民の共闘における多様性は「弱み」でしょうか。そんなことは決してありません。

 

〇 28大会第一決議   20年1月

 日本共産党は、自衛隊や安保条約について独自の見解をもっている。自衛隊は憲法9条に明確に違反しており、日米安保条約をなくしてこそ、日本は本当の独立国といえる国になると考えている。

 しかし、こうした日本共産党の見解を政権に持ち込むことはしない。野党連合政権の安全保障に関する共通課題は「集団的自衛権行使容認の閣議決定の撤回と安保法制の廃止」であり、それを実行すれば、この法制を強行する前の憲法解釈・法制度・条約上の取り決めがあらわれてくる。したがって、政権としては安保法制強行以前の憲法解釈・法制度・条約上の取り決めで対応することになる。

 

〇 参議院選挙勝利・全国総決起集会(都道府県委員長会議) 志位委員長 報告 22年4月7日

それでも、憲法9条を生かした日本政府のまともな外交努力がないもとで、「外交だけで日本を守れるか」というご心配もあるかもしれません。それに対しては、東アジアに平和な国際環境をつくる外交努力によって、そうした不安をとりのぞくことが何よりも大事だということを、重ねて強調したいと思います。同時に、万が一、急迫不正の主権侵害が起こった場合には、自衛隊を含めてあらゆる手段を行使して、国民の命と日本の主権を守りぬくというのが、日本共産党の立場であります。

 わが党は、綱領で、憲法9条の完全実施に向けて、国民多数の合意で、自衛隊問題を段階的に解決していく方針を明確にしています。その重要な第一歩は、安保法制を廃止して、海外派兵の自衛隊を、文字通りの専守防衛を任務とする自衛隊に改革することにあります。こうした立場で、急迫不正の主権侵害にさいしては自衛隊を活用します。

 ここで強調しておきたいのは、憲法9条は、戦争を放棄し、戦力の保持を禁止していますが、無抵抗主義ではないということです。憲法9条のもとでも個別的自衛権は存在するし、必要に迫られた場合にはその権利を行使することは当然であるというのが、日本共産党の確固とした立場であることも、強調しておきたいと思います。

 世界に誇る憲法9条を将来にわたって守り生かすことと、国民の命と日本の主権を守りぬくための政治の責任を果たすことの両方を、統一的に追求するというのが、日本共産党の立場であります。9条も命もどちらも守りぬく――全党のみなさん。わが党のこの立場を、広く国民に伝えていこうではありませんか。

 *志位・討論のまとめ 22/4/7

それでも、幹部会報告でものべたように、"外交だけで国が守れるのか""万が一の時にどうするのか"という質問も出てきます。その時には、報告でのべたような、自衛隊問題の段階的解決(自衛隊の段階的解消)という党綱領の方針を話していくことが必要です。万一の時には自衛隊を活用するということもはっきり言っていく必要がありますし、さらに幹部会報告でのべたように、憲法9条は無抵抗主義ではない、憲法9条のもとでも個別的自衛権は存在するというわが党の立場を伝えることも重要であります。

 そうなりますと、やはり学習が必要です。たとえば、自衛隊問題の段階的解決という方針を決めたのは、2000年の第22回党大会ですから、もう22年もたっています。その後、党に入った同志は、くわしく学習されていない方もいると思います。憲法9条と自衛隊の矛盾をどのように解決するのか、万が一、その解決の途上で急迫不正の主権侵害が起こったらどうするのかなどについて、わが党は確固とした方針を持っているわけですが、その方針をしっかり身につけてこそ、国民からの疑問に縦横に答えることができます。

 

〇28大会6中総結語 22/8/1

 日本共産党の自衛隊政策――討論での疑問にこたえて

 討論では、日本共産党の自衛隊政策についての疑問が出されました。4月7日の参議院選挙勝利全国総決起集会への幹部会報告で、わが党が参加した民主的政権がつくられた場合、自衛隊と共存している期間の対応として、「急迫不正の主権侵害」などが起こった場合には「自衛隊を活用」すると表明したことについて、「なんで今この瞬間に」「『攻められたらどうする』という議論に乗るものではないか」という趣旨の疑問が出されました。そこでこの問題についてお答えしておきたいと思います。

4月7日の幹部会報告での表明は、大逆流を押し返すうえで重要な力となった

 「万が一、攻められたらどうする」という議論を、わざわざなぜやるのかという疑問ですが、それは国民のなかから――とくにロシアの侵略開始直後の状況の下では――、そうした疑問が出されるからであり、この疑問に答える力をもってこそ、わが党の安全保障政策が本当に力あるものになるからです。

 4月7日の幹部会報告では、9条を生かして東アジアに平和をつくる「外交ビジョン」を抜本的対案として前面に押し出しつつ、「それでも、憲法9条を生かした日本政府のまともな外交努力がないもとで、『外交だけで日本を守れるか』というご心配もあるかもしれません」とのべ、「それに対しては、東アジアに平和な国際環境をつくる外交努力によって、そうした不安をとりのぞくことが何よりも大事だということを、重ねて強調したい」と重ねてのべつつ、「同時に......」と続けて、「万が一、急迫不正の主権侵害が起こった場合」にどう対応するかについてのべています。

 東アジア地域で紛争問題が存在していることとともに、日本政府がそれを解決するまともな外交努力をやっていないもとで、「攻められたらどうする」という疑問は国民から繰り返し出されてきます。それに対して、わが党が、明確に答えてこそ、国民に安心していただけるのではないでしょうか。党員の側も、どんな質問が出ても答えられることになるわけで、「それなら安心して対話に踏み出せる」となるのではないでしょうか。現に、幹部会報告で解明した内容を語り、「それなら安心だ」という反応がたくさん生まれたことも、全国から報告されました。

 私は、4月7日の幹部会報告でのこの表明は、大逆流を押し返すうえで重要な力になったと考えるものであります。

当面の憲法闘争でも、綱領路線実現にとっても、語る力をみんなが身につけよう

日本共産党の自衛隊政策は、自衛隊と憲法9条をめぐる激しい論戦のなかで練り上げられ、2000年の第22回党大会で決定し、綱領に盛り込まれたものであります。その内容の詳しい解説は、『新・綱領教室』や『ウクライナ侵略と日本共産党の安全保障論』でものべており、ここでは繰り返しません「自衛隊は憲法違反」という立場を貫きつつ、将来にわたって9条を守り生かすことと、国民の命を守る政治の責任を果たすことを、統一的に追求しようとすれば、この道が、論理的にも、実践的にも、唯一の道理ある道になることを強調したいと思います。この道こそが最も責任ある立場であることに確信をもって、堂々と語っていこうではありませんか。

 もう一つ、強調したいのは、この道でこそ、改憲勢力の激しい攻撃から憲法9条を守り抜けるということであります。改憲勢力は「9条のもとで攻められたらどうするのか」、こう攻撃してきます。それに対して確たる答えを示し得なかったらどうなるでしょうか。「それなら9条を変えるのが一番だ」という攻撃になるのではないでしょうか。そうした攻撃にどうやって反撃できるでしょうか。

 この方針にしっかり立ってこそ、当面の憲法闘争もたたかい抜けるということを、私は、訴えたいのであります。

 日本共産党の自衛隊政策にたいして、広い国民の理解と共感を得ることは、今のべたように当面の憲法闘争でも、さらに綱領路線実現にとっても、避けて通ることはできません。それを語る力を、みんなが身につける、しっかり学んで身につける――このことを心から訴えたいと思います。

 

 

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