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下水道事業の企業会計導入をめぐって

県内の市で、12月議会に、来年度から下水道の公営企業会計移行の条例が提案された。

こうした移行は、事前に検討会などが設置され、課題が整理され、また現在の状況を企業会計で扱った場合の試算なども報告されるなど、議会や住民への理解をすすめる作業をして、それにもとづき、「いよいよ移行する」となるのが常道だと思っている。

 市の担当者は、「赤字補てん」も含めて、「何も変わらない」と、議員に説明しているようだが、何もかわらないのなら移行する必要はないわけで、新人の議員さんから相談があり、ただすべき基本点と思われる点について、整理したメモをおくった。以下がその内容。

いづれにしても、人口減の進む地方都市では、浄化槽中心の分散型の汚水処理に抜本的に切り替えることが大事になっている。

【下水道会計  公営企業会計への移行にあたり質すべき点】

現制度は値上げ抑制に一般会計繰入が可能

 現在の下水道事業特別会計は、自治法209条が定める特別会計で、地方財政法第6条及び施令46条にもとづく公営企業。現制度は使用料の値上げを抑えるため、自治体の政策判断で一般会計繰り入れが可能。公営企業会計は使用料収入による「独立採算制」が原則となり、繰り出し規準で定められた以外は、「赤字補てんのための一般会計繰入できない」という圧力が強まることになり、使用料高騰につながりかねない。

国が企業会計を推進 法適用は自治体の任意

 国は「人口減少等による料金収入の減少、施設・設備の老朽化に伴う更新投資の増大など厳しさを増す経営環境を踏まえ地方公共団体が公営企業の基盤の強化や財政マネジメントの向上等にさらに的確に取り組むために、公営企業ない会計の適用を」と推進。15年度から20年度を法適用の集中取組期間とし、人口3万人以上の自治体は20年4月までに公営企業会計への移行を求めてきた。

しかし、地方公営企業法が法適用を義務付けているのは、水道事業などの7事業(第2条)であり、下水道事業は適用外です。下水道事業を公営企業会計に移行するには、地方公営企業の設置(第4条)にもとづき条例制定が必要であり、あくまでも任意。

大きく制度が変わることから、慎重な検討が必要であり、何よりも市民への説明責任を果たさなければならない。

*メモ者 拙速すぎる、判断できる資料がない。反対する。同時に 担当課と勉強会など実施する。

 

◆公営企業会計の導入の意義

将来の施設更新費も含めて、経営計画で見える化し、事業の安定的運営を目指すものであるが、その中で、使用者負担分が、会計基準にもとで明確化され、使用料改定、値上げの根拠として活用されている

が、過疎な地方にまで、下水道事業を拡大(本来、大都市でしかペイできない)した失政によるもので、2000年代から、政府の従来計画の見直し、小規模の処理場、合併浄化槽などへの切り替えをすすめている。

 単純に計算すると、とんでもなく使用料が高くなるという矛盾があり、さまざまな財政制度(繰り出し規準の拡大)をするとともに、汚水処理の使用料単価の目安 150円/㎥ を示すにとどまっている。赤字補てんは続いている

 

*その場合、設備の償却期間30年と実際約50年のずれから、世代間の負担の不公平~30年~50年は償却費用がゼロとなる一方、現在の使用者の料金が高くなりすぎるので、それを是正するため、国の制度で、資本費標準化債・高資本費対策(交付税措置ありがある。

が、この対策を利用できるのは「経営安定化計画(仮称、計画期 間を10年程度都市、料金の適正化、維持管理費の削減等の経営の健全化を目標とするもの。)を策定している団体で、 その計画が妥当と認められる団体を対象となっている。の施策を利用するために、企業会計にして、計画を明確化するつもりではないか。 ➡ これは長期には、国からの財源が入るので市民負担は軽減できる。

 

  • 市が下水道事業の公営企業会計全部適用を選択する根拠の資料 ・・・現在の下水道事業を、企業会計した場合の試算。将来の投資計画と企業債の返済、減価償却の見通し、使用料収入の不足額などがあると思うが・・・

公営企業会計について簡易な説明(岡崎市のもの)

ダウンロード - e4b88be6b0b4e98193e4bc81e6a5ade4bc9ae8a888e38080e5b2a1e5b48ee5b882e8aaace6988e.pdf

 

≪以下、関連する報告、通知より

◆地方財政法第6条

公営企業で政令で定めるものについては、その経理は、特別会計を設けてこれを行い、その経費は、その性質上当該公営企業の経営に伴う収入をもつて充てることが適当でない経費及び当該公営企業の性質上能率的な経営を行なつてもなおその経営に伴う収入のみをもつて充てることが客観的に困難であると認められる経費を除き、当該企業の経営に伴う収入(第五条の規定による地方債による収入を含む。)をもつてこれに充てなければならない。但し、災害その他特別の事由がある場合において議会の議決を経たときは、一般会計又は他の特別会計からの繰入による収入をもつてこれに充てることができる。

 

◆繰り入れ可能な場合  ・・・ メモ者

① 性質上、経営に充てることが適当でないもの経費(基準内)

② 経営に伴う収入だけで充てることが困難な経費(基準外)

 

・下水道事業における基準内・基準外の解釈は、総務省が定めていまる。

①(基準内)

(ア)雨水費・・・本来は、汚水と分離して一般会計で対応するものだが、雨水 と汚水を分離して事業をすることは困難なため、雨水処理の経費を特別会計に繰り入れることができる /汚水処理の一部も公益的機能があると繰り出し対象になっている。

(イ)地方債償還金・・・交付税措置された借入金の元金、利子分等/高資本費対策の一定部分

(ウ)耐震化工事など一定部分 最大1/2が交付税措置される

 

②(基準外)・・・繰入額から基準内経費を除いた経費  赤字補てん

 

メモ者  令和5年度の地方公営企業繰出金について(通知) 4月3日

公営企業等への一般会計からの繰り出し--政府が認めている、つまり国の財政措置がある「繰り出し規準」を示したもの。これについて、現在の繰り出しがきちんとされているか。資料の提供と説明を求めるべき

 

◆「人口減少下における維持管理時代の下水道経営のあり方検討会」 報告書

―持続可能な下水道事業経営の実現に向けてー

令和2年7月 国土交通省水管理・国土保全局下水道部

【現状】

使用料単価は漸増しており、平成 30 年度時点で 137.6 円/㎥となっている。なお、汚 水処理原価は、地方公営企業法に基づく公営企業会計を適用している事業では 130.1 円 /㎥、公営企業会計を適用していない事業では 165.9 円/㎥で、直近 10 年間はともに漸 減しており、汚水処理原価(資本費)が減少傾向にある一方で、汚水処理原価(維持管理 費)が増加傾向にある。

 

【中長期収支見通しの作成が不十分゛】

経営戦略は、各公営企業が将来にわたって安定的に事業を継続していくための中長期 的な経営の基本計画として、総務省より平成 32(令和2)年度までの策定要請がなされ ているが、平成 30 年度末時点で経営戦略の策定に「未着手」が 15%(総務省調べ)と なっている。 また、損益情報及び資産情報の把握による適正な経営計画の策定等を可能とし、期間 損益計算による使用料対象原価の明確化を通じて適正な使用料の設定に役立つことか ら、公営企業会計の適用を進める意義も大きい。 平成 31 年4月1日時点の公営企業会計適用状況をみると、人口3万人未満団体の公 営企業会計の「適用済」及び「適用に取組中」は約 35%に過ぎない。(広義の下水道。 総務省調べ)

 

平成 31 年4月1日時点の公営企業会計適用状況をみると、人口3万人未満団体の公 営企業会計の「適用済」及び「適用に取組中」は約 35%に過ぎない。(広義の下水道。 総務省調べ)

 

「基本的考え方」では、公共料金としての安定性、長期間設定による予測の不確実性を 考慮し、使用料算定期間は3年から5年が適当としており、さらに当該期間の経過を一 つの目安として見直しの必要性等について検討すべきと記している。 総務省の「経営戦略策定・改定ガイドライン」(平成 31 年3月)においても、10 年超 を計画期間とする経営戦略について、3~5年ごとの見直し(ローリング)が必要とされ ていることとも整合的である。 しかしながら、実態調査では、現行の使用料体系の使用料算定期間が不明とする事業 が約半数を占めている。

 

➡メモ者 /企業会計  使用料収入の見通し、投資と借金返済計画の中に、減価償却費を設定することで、施設更新による支出予定(資産維持経費)を明確化。3~5年の計画策定し、使用料水準や投資計画の見直しを通じで、中長期的な安定的な運営を行う。下水道ストックマネジメント計画の策定も、その一環

 

【多くの事業体で、収支均衡の見通しが立っていない】

本来、使用料対象経費として、公費で負担すべき費用を除き、維持管理費と資本費の全 額を計上することが公営企業たる下水道事業での基本原則であるが、実態調査では、実 際に使用料対象経費に全額を計上していると回答した事業体は、わずか約 14%にとどまっている状況にある。

 

 また、公費で負担すべき費用を除き、維持管理費と資本費の全額を使用料で賄う(経費 回収率 100%)見通しについて、8割以上の事業体が、実現するか否かは未定と回答して いる。

➡メモ者 大都市など人口密集地域でしか、実質的に経営がなりたたない下水による汚水処理方式を、国をあげて進めてきた矛盾。このしりぬぐいを全部住民に求めるのは無理がある。自治体の計画・見通しの失敗でもある。

/ 国も2000年代から計画の見直しに舵をきってきた。浄化槽の性能向上とともに、下水にたよらない自治体も出ている(高知県では津野町、戸別の浄化槽を町営で運営)

米 雨水処理は別にして、汚水処理は、浄化槽の切り替えなどで下水道事業は縮小していくべき➡ 計画はあるか

 

【個別原価に基づく使用料体系の設定が適切に行われていないおそれがある】

基本的考え方」は、下水道法第 20 条第2項に定める使用料算定の基本原則を踏まえ て作成されており、使用料体系の設定は、各使用者の使用実態に応じて配分された個別 原価に基づいて行うことが必要とされ、具体的には、使用料対象経費を需要家費、固定費 及び変動費に分解した上で、当該経費の性質に応じて各使用者群に配賦することが合理 的と解説されている。

実態調査では、「基本的考え方」の存在を知らない、あるいは、知っていても参考にし ていない事業体が半数以上となっており、参考にしていない理由としては、約 43%が「使用料が高額になるため」、約 28%が「現行の使用料設計方法との乖離が大きいため」、そ して約 15%が「内容が難しいため」と回答している。 使用料原則の1つである「使用者の使用の態様に応じて妥当なものであること」を確保する上でも、個別原価に基づく使用料体系の設定が重要となるが、調査結果からは適 切に設定されていないのではないかとの懸念がある。

 

➡ メモ者/公費で賄う部分以外は、使用料で賄うという「基本的考え」にもとづく会計処理により、赤字補てんの繰り出し部分が鮮明となり、料金値上げの根拠となる。それを3~5年の計画の度に見直しをしていくこととなる。

 

使用料収入に占める基本使用料の割合が、支出に占める固定費割合に比して、 低水準となっており、人口減少の進行等により、下水道サービスの維持が困難 となるおそれがある

費用構造に占める固定費の割合が9割以上を占める中、収入に占める基 本使用料収入の割合は3割に過ぎず、費用構造に比して、非常に不安定な料金体系となっている。今後の人口減少等による使用水量の減少が見込まれる中で、下水道サービスを維 持していくためには、基本使用料に配賦する固定費の割合を漸進的に高めていくことも視 野に入れた使用料体系の設定が必要と考えられる。

➡ メモ者 /使用料のうち、基本料金部分の値上げが特に焦点となると思われる

 

◆公営企業の料金にかかる総務省通知  

1. 平成27年4月14日総財公第78号 総務事務次官通知

第一章 地方公営企業法の施行に関する取扱いについて

第三節 財務に関する事項 四 料金

地方公営企業の給付について、地方公共団体は料金を徴収することができるものである(法第21条第1項)が、当該料金は公正妥 当なものでなければならず、かつ、能率的な経営の下における適正な原価を基礎とし地方公営企業の健全な運営を確保することが できるものでなければならないものであること(法第21条第2項)。この場合の原価は、営業費、支払利息等経営に要する費用であっ て、いわゆる資金収支上の不足額をそのまま料金原価に含めることは適当でないこと。また、地方公営企業が健全な経営を確保する 上で必要な資金を内部に留保するため、料金には、適正な率の事業報酬を含ませることが適当であること。 なお、地方公営企業の料金には、地方自治法第225条の使用料に該当するものがあるが、使用料に該当する料金に関する事項は 条例で定めなければならないものであること(地方自治法第228条)。また料金の決定については、他の事業法等の法令の適用を排 除しているものではないこと。

 

  1. 公営企業の経営に当たっての留意事項について (平成26829日総財公第107号、総財営第73号、総財準第83号 総務省公営企業課長等通知

②ア 公営企業の料金

  • 料金の算定に当たっては、原価(減価償却費や資産維持費等を含む。)を基に料金を算定することが必要である。住民福祉の 増進のために最少の費用で最大の効果をあげるためには、経営改善・合理化をより一層徹底することにより、原価を極力抑制すべきであること。(以下略

 

3 下水道使用料の水準(目安)  平成17年1月21日全国財政課長・市町村課長合同会議資料

使用料の適正化について 各団体においては、以下の考え方を参考として使用料の適正化を図られたい。

 <参考>

 ① 汚水処理原価の算出にあたっては、地方公営企業法非適用事業にあっても、資本費平準化債の活用などにより世代 間負担の公平化を図り、適正な原価を算出すること。

② 現在の使用料単価では汚水処理原価を回収できない事業にあっては、水道の使用料単価が176円/㎥(家庭用使 用料3,119円/20㎥(家庭用使用料3,075円/20㎥・月)(H15決算値)であること等にかんがみ、まずは使用料単 価を150円/㎥(家庭用使用料3,000円/20㎥・月)に引き上げること。特に、資本費等汚水処理原価が著しく高くか つ経費回収率の低い事業にあっては、早急な使用料の適正化が望まれること。なお、汚水処理原価が150円/㎥を下 回る場合は、使用料単価は当該汚水処理原価を上限とすべきであること

注)汚水処理原価:汚水処理経費を年間有収水量で除したもの

使用料単価:使用料収入を年間有収水量で除したもの

 

➡ メモ者 /全国的な赤字構造のもと、使用料で汚水処理原価(費用から基準内の公費の繰り入れを省いた分)を、賄えない場合、使用料単価は 150円/㎥ をめざすとなっている。これは大都市部の料金とほぼ同等

  この水準が地方財政措置の条件となっている。

「平成26年8月29日付総務省公営企業課長等通知

下水道事業における使用料回収対象経費に対する地方財政措置については、最低限行うべき経営努力として、 全事業平均水洗化率及び使用料徴収月3,000円/20㎥を前提として行われていることに留意すること。」

 

➡ メモ者 /政策的減免について  「受益者負担」と言うが、憲法25条の生存権の規定があり、減免のための一般会計からの繰り入れが禁止されているわけではありません。

 広島市 生活保護、障害者・寝たきり高齢者のいる世帯、ひとり親の減額を

名古屋市 生活保護、障碍者世帯、国民年金のみの受給者、児童扶養手当受給世帯で減額

 

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