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世界経済の構造転換(メモ)

今年(23年)8,9月に「赤旗」で連載された山田博文群馬大学名誉教授の論考「世界経済の構造転換」のメモ。各回のタイトルは以下のようになっている。

  • アジア圏が最大に成長 ~ 米金融の源泉

(2) 地球規模の搾取と収奪

(3)中国に追い抜かれる米  ~ GDP既に逆転

(4) 日本の貿易 中国に依存 ~ 奇妙な政冷経熱

(5)アジア諸国の共栄こそ ~ 対立で生活崩壊

 

 他に、中国の科学技術、再エネ・温暖化ガス削減にかかわる積極的な取り組みも・・・。  

アメリカの「民主主義VS権威主義」 政策が、イスラエルのガザ虐殺支援で、その本質が透けてくる中、日本は、アメリカべったりから決別し、アジア・グローバルサウスをともに綾無多角的な取組が求められていると思う。

≪世界経済の構造転換 群馬大学名誉教授 山田博文さん≫

(1)アジア圏が最大に成長  8/29

19世紀の産業革命以来の世界経済の構造の大転換が進展 ➡ 日本の21世紀の明暗を決する問題に

・21世紀初頭100兆ドル(約1京3149兆円)に達した世界経済(各国GDP合計額)は、主に三つの経済圏

➡19世紀の産業革命を境に世界経済のシェアはアジアから欧米経済圏に移行/が、21世紀に入り、アジア経済圏が逆転し、最大の経済圏に成長(図1、2)。アジア経済圏の急成長を牽引したのは中国。それにインドも続く

 〇米金融の源泉も

・超大国・米中の実体経済の規模は身近な自動車で確認できる~ 自動車の生産・販売台数(2021年) 生産台数=中国2608万台対米国916万台、販売台数=中国2627万台対米国1540万台。中国は米国のほぼ2倍。しかも今後の伸び代は、14億人の中国と3・3億人の米国の人口差で決する

・利益追求が資本の本質 ~ 世界の自動車メーカーだけでなく、製造業も金融業も中国に吸い寄せられている ~ 製造業は利潤・剰余価値の生産 ⇔ 剰余価値(付加価値)は多種多様に派生し、配分される。/ 米国が得意とする金融ビジネスは価値は生産できず、その配分に参加するだけ

21世紀の金融ビジネスの利益の主要な源泉は中国などアジア経済圏。ウォール街が中国に傾倒する背景

・「米中新冷戦」の騒ぎ ⇔ が、米中貿易額は記録更新続き➡資本の論理の当然の帰結。アメリカが資本主義を放棄しない限り、続く

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成長寄与率70%

・IMFの世界経済見通しのデータを基にブルームバーグ社は、今後5年間の世界の国内総生産(GDP)増加に対する各国の寄与率を試算~ 中国は22・6%、続いてインドが12・9%、米国は11・3%

・世界銀行 13~21年の世界経済成長への平均寄与率~ 中国 38・6%、G7の合計25・7%

IMF ~ 中国とインドが23年の世界経済成長の約半分を占め、アジア経済圏全体では、世界経済の成長率への寄与率は70%を上回ると予測 /世界経済におけるアジアの比重の高まりと影響力は目を見張るものがある

・米6大銀行の10年間の利益~初めて1兆ドル(約133兆円)に達した/が、その価値の源泉はアジア経済圏を中心にした製造業の生産現場

・世界経済は構造転換した~アジアがくしゃみをすると世界が風邪をひく時代に。

*日本 この30年間、成長するアジア経済圏に位置していながら、経済的没落を続けている。それは世界経済の構造転換を見落としているからなのかもしれない

(メモ者 異常な対米従属、戦犯政治の継続で、真の協力関係をつくれない)

 

(2) 地球規模の搾取と収奪 8/30

 現代経済は、一国で商品が生産され販売されるといった、単純な実体経済が支配的な経済ではない/地球を舞台にした現代経済の特徴は、グローバル化・情報化・金融化の三つのキーワードで読み解くことができる

 〇あらゆる領域に

・現代経済~原材料の調達・加工・製造・輸送・販売などが国境を越え、地球規模のグローバル・サプライチェーンのもとにある/多国籍企業 安い国で原材料を調達・加工・製造し、完成品は高く売れる国で販売、独占的高利潤を獲得。

・グローバル化は、モノだけでなく、カネ・ヒト・技術・情報などあらゆる領域に拡大

・グローバル化の主な推進主体 ~、市場原理主義・新自由主義政策を世界各国に普及するアメリカ政府・大企業・金融業・国際通貨基金(IMF)・世界銀行など/日本など各国の巨大資本もグローバル化の大波に乗って多国籍化し、高利潤を得ている。

・他方、多国籍企業の搾取と収奪を受けた国々~ 深刻な貧困問題や環境破壊が発生/2021年現在、1日1・9ドル(197)以下で生活する極度の貧困状態にある人々は7・7億人(10人に1)/さらに地球温暖化などの環境破壊で、人類が地球に住めなくなる危機的事態も進展 

➡ 経済のグローバル化の限界が表面化し、その見直しの動き ~国連 30年までにSDGs(持続可能な開発目標)を加盟国全体で達成することを決定

・現代の経済活動 ~ ICT革命に支えられ、時間と空間の制限を超越/企業・団体・個人は、デジタルプラットフォーム(インターネット上の経済活動基盤)を利用することで、地球の裏側との取引もリアルタイムの速度で実施。記録されたビッグデータは人工知能(AI)で解析され、多様な需要にマッチした新しいビジネスチャンスが提供 /が、企業・団体・個人の情報が、GAFAMなど)の提供するデジタルプラットフォームを介して第三者に知れわたるリスクも発生

 〇金融化の進展で

 現代経済のグローバル化・情報化のメリットを最大限引き出したのは、銀行・証券・各種投資ファンドなどの金融業~ 金融とはマネーの融通のことで、現代のマネーの大半は銀行預金(預金通貨)として、グローバルに連結された銀行のコンピューターの中の数字情報として存在 ~ 国境を越えた数百億円の売買取引でも、マネーの受け払いは銀行口座を利用し、一瞬で完結。一瞬で空前の利益が得られる一方、失敗すれば大資本でも破綻するハイリスク・ハイリターンの経済

・実体経済の規模を表す世界のGDP 約100兆ドル。が、世界の金融資産の規模 約320兆ドル ~ 人類の生存に不可欠な実体経済が、金融資産のバブリーな動向に振り回される不安定経済―これが現代経済の特徴。

 

(3)中国に追い抜かれる米  8/31

 米中対立が激化~ 攻撃するのは米国、反撃するのが中国 ⇔ 戦後の既得権益を脅かされつつある国の危機感と、追いつき追い越そうとする国の立ち位置の違いが見える。

 〇GDP既に逆転

 購買力平価(ビッグマック指数)での比較~ 米国のGDP 2016年に中国に追い抜かれ、危機感をもった米国は中国へ圧力をかけ始めた/ 22年 中国のGDP 30・2兆ドル、米国は25・4兆ドル/日本 09年にインドに抜かれる。

中国の対外戦略 ~ アジア―中東―ヨーロッパ―アフリカを網羅する広域経済圏構想「一帯一路」政策(17年) /陸と海のシルクロードを現代的にバージョンアップしたこの政策は、ユーラシア大陸の全域・世界人口の6割ほどの経済圏を形成する。

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・ 「一帯一路」政策~ 中国市場の拡大、エネルギー・食料資源の確保、国内余剰労働者問題の解決、外交上の安全保障の強化など、多方面で中国経済と影響力を拡大するもの ⇔ すでに米国の貿易総額の20%は中国に依存。米国の世界支配の既得権益は著しく侵されはじめた。これが米中対立の基本的な背景

中国 科学技術の基礎的な指標である論文数・研究者数・政府の予算額などで、米国を追い抜いている。企業の特許数でも中国のアリババがトップ➡ いずれ研究内容も高度化する。米国の危機意識はいやが上にも高まる

米国による中国たたき ~ 中国のIT最先端企業・ファーウェイ(HUAWEI)の排除など、科学技術をめぐって展開 /科学技術は世界の公共財であり、その発展を止めることは中国だけでなく世界にとって不幸なこと。米国の既得権益を守ろうとする「アメリカ・ファースト」戦略は、中国だけでなく世界にとって不利益をもたらす。

 〇独自決済網重視

・歴史上、覇権国家は自国の弱点を周辺国のせいにし、周辺国の犠牲で覇権を維持してきた~ 戦後の「日米貿易摩擦」、「プラザ合意」や現在の「米中貿易摩擦」はその身近な例

 ・戦後、米ドルは、国際取引の決済や各国の外貨準備の主要通貨=基軸通貨として機能 ~ が、1999年にユーロ、最近では中国のデジタル人民元の登場などで、米ドルの地位が低下/ 各国外貨準備に占める米ドルの割合は、戦後の9割台から5割台に低下。

・米ドルの脅威・・・中国のデジタル人民元~ 人民元が米ドルに代わる国際通貨になることでなく、「一帯一路」の広域経済圏に米ドルの入り込む余地がなくなる脅威

中国がデジタル人民元の使用を重視する意図~ ウクライナ侵略への経済制裁として米欧諸国がロシアの銀行を国際銀行間通信協会(SWIFT)の国際決済ネットワークから排除する措置をとったから。インドもこの措置に反応し、インド・ルピーの独自の決済網を重視し始めている (メモ BRICSの拡大、独自の決済通貨の模索)。

  

(4) 日本の貿易 中国に依存  9/1

・日本は戦後、最大の貿易相手国だった米国に依存することで、世界第2位の経済大国に → が、21世紀に入ると、世界経済は構造転換し、日本の最大貿易相手国も米国から中国に交代。日本の貿易相手国の構造は根本的に変化。

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〇米国わずか14%

・日本の経済成長を支える貿易相手国~2004年以来、中国(中国+香港)が最大と /21年、日本の輸出入総額168兆円 うち中国25・2%、米国14・1%。ASEAN10カ国14・9%と米国越え。台湾(5・8%)、韓国(5・5%)も主要相手に

→ 日本の輸出入総額の過半(51・4%)は、アジアの主要国に依存する時代に

・欧米に土砂降り輸出し、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」との賛辞をあびた世界一の貿易黒字大国の日本はもはやなし

➡ 日本が「先進国」としての経済的地位を維持したいのなら、対外経済関係は欧米から成長著しいアジアにシフトすること以外にない。それが21世紀の日本が生き残る道といえる。

・が、自国の最大の貿易相手国を「仮想敵国」に見立て、「台湾有事」に参戦するなど、常識的には理解不能

➡米国の最大の貿易相手国も中国・貿易総額の20%(日本は5%)、米中間の戦争となれは双方が壊滅的な打撃を受ける。むしろ、米中貿易は年々増大し、昨年は過去最高(約7600億ドル)を記録

 

〇奇妙な政冷経熱

・米日対中国の政権間の対立が表面化~が、この3カ国の経済界はますます相互依存を深め、貿易額を増やしている

・「政冷経熱」の奇妙な事態は、それぞれの政権の内部事情による~ ライバル国を勇ましくたたき、外に「敵」をつくることで内部を固め、政権の持続を図ろうとする外交戦略に見える/迷惑するのは、原材料不足と物価高に直撃される米中日3カ国の企業と国民

・観光庁 ~19年の訪日外国人数は3188万人、インバウンド消費額は4兆8135億円 /賃金や年金の実質削減で、日本の国内消費は長期停滞状況。インバウンド消費は、とくに生活雑貨・観光・サービス産業など、停滞を余儀なくされてきた地域経済の活性化に貢献

➡ この貴重なインバウンド消費をけん引するのはアジアからの訪日客~最大は、中国からの959万人。1兆7704億円(全体の36・8%)を消費/他方、日本に兵器を爆買いさせる米国の貢献度 172万人(3228億円、全体の6・7%)で、中国の5分の1以下。

※ 足元の経済で構造的な変化が起きていることに、もっと目を向ける必要がある

 

(5)アジア諸国の共栄こそ  9/2

世界最大の経済圏に成長したアジア諸国との共存共栄を実現するため、なにはさておき大軍拡を止めること~ 日本の21世紀の展望は、軍拡をストップすることでしか開けない

 戦前の日本軍によるアジア諸国への帝国主義戦争の負の遺産を、現代の軍拡によって想起させることは、世界最大の経済圏になったアジアで日本が孤立し、排除され、経済が崩壊しかねないリスクを抱えこむことに

・「台湾有事」をあおり、日本を米国主導で戦争に巻き込む日米軍事同盟は解消する必要がある~ 日本全土に米軍基地の建設を容認(日米安全保障条約第6条)する国では、他の国は警戒し、日本の国益に沿ったまともな外交は不可能

・日本が米国の覇権維持に協力することは、構造転換した世界経済において、日本企業と国民生活の権益を損なうことになる。

 〇対立で生活崩壊

・日本の最大の貿易相手国 米国から中国に交代 ~中国との対立は日本経済と国民生活の崩壊につながる

⇔ 仮に、中国から2カ月間8割の輸入が途絶 ~ 部材など1・4兆円が調達できず、生産額で53兆円、GDPの約1割が消失(図)。食料輸入の激減で、食料不足と物価高で生活は破壊 /日中対立は、企業も、国民も望まないでしょう。

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・そもそも日本経済の4・2倍の経済大国・中国と開戦するなど、かつての小国がその3倍もの経済大国・米国に開戦し、敗戦した歴史と同じ過ちを犯すことになるでしょう。しかも日中は引っ越しのできない隣国

・採るべき日本の当面の対外戦略 ~ EUにならい、東アジア連合(EAU)の結成にあるのかもしれない/すでに、10カ国によるASEANが結成され、武力でなく話し合いで多様な問題を処理。そこに日中韓の3カ国が加わる地域協力関係(ASEAN+3)も発展してきた。

 〇21世紀の展望も

・日本の役割 ~ アジアで真っ先に経済大国になった成果と戦後の平和国家の実績をもとに、武力でなく話し合いで東アジアをまとめること/ 幸い「中日韓協力国際フォーラム2023」で、中国もアジアの平和と繁栄は3カ国の協力・交流にあると主張。日本と中韓とは領土問題があるが、それは国境がある限り不可避なので、話し合いで解決するしかない

・中国の覇権主義的な海洋進出や北朝鮮の拉致・ミサイル発射など、一朝一夕に解決できない難問もある~ だからこそ戦後の平和国家日本がアジアにおける平和的な対外関係を創出し、東アジア連合の実現に果たす役割は大きい

・東アジア連合が結成できたら、その見返りも大きく、アジア諸国とウィンウィンの関係を構築することで、脆弱化する日本の21世紀の展望が開けるのではないか/米国との間で対等・平等の関係を築いてゆく外交も不可欠

  

 

【中国で「グリーンエネルギー」が急増 気候変動対策にプラス効果=報告書 2023630日】

https://www.bbc.com/japanese/66054224

マット・マクグラス、マーク・ポインティング、BBCニュース気候・科学

中国で風力や太陽光による発電が急増しているとする報告書が公表された。地球上の二酸化炭素(CO2)排出を、想定をはるかに上回る早さで抑制できる可能性があるという。

・独立調査グループ「グローバル・エナジー・モニター」(GEM)の報告書によると、中国でソーラーパネルの設置が急増している。そのペースは、世界の発電容量を2025年までに85%増加させるほどだという。GEMの調査結果は、世界銀行、国際エネルギー機関(IEA)、各国政府なども利用している。

中国は、2030年の達成を目指しているグリーンエネルギー目標を、予定より5年早くクリアする見通しだという。

一方で、石炭を使う火力発電所も増加している。風力や太陽光を利用する発電所の予備としての役割を担っていることが、理由の一部とされる。

中国はしばしば、炭素排出を抑制する世界的な取り組みにおいて、鍵を握る存在とされる。炭素排出は、気候変動の根本原因となっている。

中国の石炭消費は世界最大で、主な用途は発電だ。中国のCO2排出量の約69%は、石炭の使用によるものだ

しかし、今回の報告書からは、中国が風力や太陽光による発電能力を急速に高めていることがうかがえる。そうした発電は、気温上昇の影響を抑えるうえで大きな役割を果たす可能性がある。

報告書は、中国の現在の設備によるグリーンエネルギーに加え、今後2年間に建設予定の設備に関しても予測している。

それによると、中国が大規模プロジェクトで設置したソーラーパネルの数は、世界の他の国々で設置されたものをすべて合わせた数よりも多い。風力発電に関しては、中国は2017年と比べ、発電能力を2倍に伸ばしている。

ただ、これは始まりに過ぎないようだ。GEMによると、中国はこの領域を急速に成長させている。2025年末までには、風力と太陽光の発電容量を2倍以上にする予定だという。

その結果、中国は世界の風力タービンを50%、世界の大規模太陽光発電設備を85%、それぞれ現在より増やすことになるという。

こうした急増は、20年以上前に作られた計画の成果だ。

この20年近くで、中国は世界有数のソーラーパネルの供給元となり、サプライチェーン全体にわたってコストを引き下げた。それにより、中国における太陽光と風力の発電設備の設置は、経済的な競争力をもつに至った。

補助金も一定の役割を果たした。各省にグリーンエネルギー目標の達成を義務づけた規制も、一役買ってきた。

世界では昨年、風力と太陽光の発電に絡んで、計5000億ドル(約72兆円)以上が投じられたが、その55%を中国が占めた

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習近平国家主席は2020年、中国の太陽光と風力による発電について、2030年までに1200ギガワット以上にすると表明した。今回の報告書によると、この目標は予定より5年早く達成されそうだという。

報告書の著者の一人、マーティン・ワイル氏は、「再生可能エネルギーの急増は、(中国の)炭素排出を2030年より前にピークに到達させる根拠になると考えている」と述べた。

こうしたことは、地球温暖化の抑制にとって重大ニュースかもしれない。しかし、中国の石炭使用は依然として大きな課題となったままだ。

中国は昨年、石炭火力発電所を週約2基のペースで新設した。その多くは、新たにつくられた太陽光および風力発電所の敷地内にあり、予備電力の供給や、エネルギーの継続的な供給を確実にする役割を担っている。

「今後の大きな問題は、これらの石炭火力発電所を実際にどう使うのかということだ」とワイル氏は言う。

「石炭に対する再生可能エネルギーの比率を、できるだけ高めるように使われることが期待される」

このほか、蓄電池の開発や水素利用の拡大も重要指標となる。いずれも、中国の石炭からの移行を促すのに重要だ。

(英語記事 China's green power surge offers hope for climate 

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実は中国が圧倒的。日本では報道されない世界の最先端テクノロジー開発状況、分野別ランキングから見えた3つの真実 MONEY VOICE23/12/16 高島康司 

https://www.mag2.com/p/money/1389996

世界の最先端テクノロジーの開発状況を詳しく紹介する。日本の主要メディアでは、最先端テクノロジーのニュースは高性能半導体の開発に限定されており、全体的な状況が伝えられることはまずない。報道されている通り半導体や不動産といった分野では中国は出遅れているかもしれないが、他の産業分野では中国の状況はどうなのだろうか?日本で喧伝されているイメージとはあまりに異なる状況が見えてきた。

 世界の最先端テクノロジーの開発状況

現在、高性能半導体、AI、量子コンピューティング、ロボット、ブロックチェーン、指向性エネルギーなど第4次産業革命と呼ばれるテクノロジーの歴史的な転換期にある。その中で、最先端テクノロジーの世界的な開発競争が始まっており、これまでのアメリカを筆頭にした西側諸国のテクノロジー覇権の状況が覆りつつある。

しかし日本の主要メディアでは、最先端テクノロジーのニュースは高性能半導体の開発に限定されており、全体的な状況が伝えられることはまずない。

高性能半導体では3ナノや2ナノという極小チップを製造可能な台湾の「TSMC」が頂点にいるが、台湾有事の危機に対応して半導体のサプライチェーンを多様化する必要から、アメリカに生産拠点を構築している。また韓国の「サムソン」も「TSMC」を追いつつある。一方、「IBM」も2ナノのチップを開発しており、将来的には「インテル」と米国内で生産する可能性もある。また高性能半導体の製造装置では、オランダの「ASML」が市場を席巻しつつある。

高性能半導体の製造では、中国は出遅れている。「ファーウェイ」の米国市場からの排除、さらに半導体製造装置の禁輸などの制裁から中国の半導体産業は自立性を高めているものの、やっと7ナノの半導体の製造と製品化に成功した段階だ。中国のメーカは3ナノ、2ナノといった最先端の半導体を開発する計画はあるものの、まだ実現してはいない。中国の半導体産業は明らかに出遅れている。

他方そうした中、中国経済は急速に地盤沈下している。中国のGDP40%は地方政府が主導する不動産開発投資によってけん引されていたが、政府の金利の引き上げと不動産業者への融資制限などが引き金となり、不動産バブルは崩壊しつつある。地方政府の不良債権を抱えた銀行が増加し、貸し渋りや貸しはがしが横行して、実体経済を圧迫している。これはバブル崩壊後の日本に見られた現象と同じで、中国は長期的に低迷する可能性が高くなっている。

おそらくこれが、中国経済とテクノロジーの一般的に喧伝されているイメージだ。第774回の記事に詳しく解説したが、中国の日本化がいまの中国を象徴するキーワードとして使われるようになっている。

 本当にそうなのか?世界の先端技術の現状

筆者は日本の主要メディアが喧伝するこのようなイメージを見ると、ある疑問が沸いてくる。確かに半導体や不動産といった分野はこのイメージ通りなのかもしれないが、他の産業分野では中国の状況はどうなのだろうか?

いまは半導体のみならず、AI、ロボット、ブロックチェーン、量子コンピューティング、再生可能エネルギー、指向性エネルギーといった第4次産業革命の真っ只中にいる。これは30年前にPCとインターネットが急拡大した時代を上回る変化をもたらしつつある。

であるなら、そうした最先端テクノロジー全体では世界のテクノロジーの開発状況はどうなっているのだろうか?半導体産業のように、中国はすべての分野で出遅れているのだろうか?先端的テクノロジーの開発状況を全体的に俯瞰したいという思いが強くなった。

しかし、さまざまなシンクタンクのレポートを見ても、先端的テクノロジー全体を俯瞰できるレポートはほとんどなかった。すべて特定の分野に限られたレポートばかりであった。

そうしたとき、オーストラリアの政府系シンクタンクが包括的なレポートを出していることを発見した。おそらく先端的テクノロジーの開発では、このレポートがいまのとこと唯一のものであると思う。

  • 「オーストラリア戦略政策研究所」

このシンクタンクとは「オーストラリア戦略政策研究所(ASPI)」である。ここは、70%の運営資金をオーストラリア国防省を始めとした政府の省庁から得ている政府系のシンクタンクである。アメリカには「戦略国際問題研究所(CSIS)」というシンクタンクがあり、米政府に安全保障や軍事情勢の分析を提供し、アメリカの外交政策の立案に大きな影響力を持っているが、「オーストラリア戦略政策研究所(ASPI)はこれとほぼ同じ役割をオーストラリアで果たしているシンクタンクだ。

ここは今年の3月にASPIのクリティカルテクノロジーのトラッカー、未来のパワーをめぐるグローバルな競争」というレポートを発表した。レポートの内容は9月の後半にさらにアップデートされている。これこそ、第4次産業革命の先端的テクノロジーの世界的な開発状況を俯瞰したレポートである。いまのところ、世界でもこれが唯一のものかもしれない。全文は以下からダウンロードして読むことができる。

ASPIのクリティカルテクノロジーのトラッカー、未来のパワーをめぐるグローバルな競争
https://www.aspi.org.au/report/critical-technology-tracker

このレポートは、4次産業革命の中核となる44の産業分野における世界の開発状況をリスト化したものである。各技術に関連する合計220万件の論文、さらに、様々なキャリアステージ(大学、大学院、就職)における各国間の研究者の流れに関するデータを収集・分析し、各分野をリードする国をランク付したリストである。

また「技術独占リスク」とは、その分野の首位となっている国がテクノロジーの供給するリスクを「低、中、高」の3段階でランク付したものだ。もし中国が首位のテクノロジー分野で「技術独占リスク」が高い場合、この分野のテクノロジーは中国の供給に全面的に依存することになる。

 

〇44の先端的テクノロジーの開発状況

以下が、44の分野のグローバルな開発状況である。

先端産業分野  主導国   技術独占リスク

<最先端素材と製造業>

  1. ナノスケール材料と製造   中国 
    2.
    コーティング      中国 
    3.
    スマート素材      中国 中
    4.
    先端複合材料      中国 中
    5.
    新規メタマテリアル   中国 中
    6.
    ハイスペック加工過程  中国 中
    7.
    高度な爆薬とエネルギー材料 中国 中
    8.
    重要鉱物の抽出と加工  中国 低
    9.
    先端磁石と超電導体   中国 低
    10.
    先進保護技術      中国 低
    11.
    連続フロー化学合成   中国 低
    12.
    積層造形        中国 低

 

<人工知能、コンピューティングと通信>

  1. 高度無線通信        中国
    14. 高度光通信       中国 中
    15.
    人工知能        中国 中
    16.
    ブロックチェーン技術  中国 中
    17.
    高度なデータ分析    中国 中
    18.
    機械学習        中国 低
    19.
    サイバーセキュリティ  中国 低
    20.
    高性能コンピューティング 米国 低
    21.
    先端集積回路の設計と製造 米国 低
    22.
    自然言語処理      米国 低

<エネルギーと環境>

  1. 電力用水素・アンモニア    中国
    24.
    スーパーキャパシタ    中国
    25.
    電気と電池        中国
    26.
    太陽光発電        中国 中
    27.
    核廃棄物管理とリサイクル 中国 中
    28.
    指向性エネルギー技術   中国 中
    29.
    バイオ燃料        中国 低
    30.
    原子力          中国 低

<量子テクノロジー>

  1. 量子コンピューティング    米国 中
    32.
    ポスト量子暗号      中国 低
    33.
    量子通信         中国 低
    34.
    量子センサー       中国 低

<バイオテクノロジー、遺伝子技術、ワクチン>

  1. 合成生物学        中国
    36.
    生物学的製造     中国 中
    37.
    ワクチン・医療対策  米国 中

<センシング、タイミングとナビゲーション>

  1. フォトニックセンサー   中国

<防衛、宇宙、ロボット、輸送>

  1. 先進航空機エンジン     中国  中
    40.
    ドローン、協働ロボット 中国 中
    41.
    小型衛星        米国 低
    42.
    自律システム運用技術  中国 低
    43.
    先端ロボット技術    中国 低
    44.
    宇宙打ち上げシステム  米国 低

 

これを見て驚くかもしれないが、44分野のうち中国が37分野で首位である。アメリカが首位なのは、半導体に関連した7分野だけであった。そして8つの分野では、中国はテクノロジーを独占している。つまり、世界はこれらの分野では、中国の供給するテクノロジーに全面的に依存しているということである。

 

  • 各国のランキングと開発状況

中国の圧倒的な優位性は分かったが、ではその他の国々の開発状況はどのようになっているのだろうか?

次 のリストは、44の分野のうちもっとも重要と思われる分野におけるトップ10の国々をランク付したものである。このリストを理解するためには、いくつかの用語を知らなければならない。先にそれを説明する。以下である。

・%の表示:各国のランキングは%で表示されている。これは、調査対象となった各分野の220万の研究論文のうち、それぞれの国が占める割合を%で示したものである。

・技術独占リスク:首位の国が技術を独占する可能性。研究開発の最先端を担う10の研究機関のうち、首位の国にある研究機関の数。

・主導機関:その分野のテクノロジーの研究開発を主導する研究機関。

AUKUSランク:AUKUS」とはアメリカ、イギリス、オーストラリアのもっとも近いアングロサクソン同盟のことである。このレポートでは、中国の拡大に対処するためには「AUKUS」が連携しなければならないとし、「AUKUS」諸国の総合的なランキングを示している。

 

・・・・ リスト 略

 

  • このリストから分かること

簡略化したが、これがリストの概要である。中国の躍進がいかに凄まじいものであるのか理解できたのではなかろうか?先端的半導体の製造に出遅れ、不動産バブルの崩壊から長期的な停滞が決まったかのようなイメージは、中国崩壊を密かに願う日本の主要メディアが作り上げた都合のよいイメージであるように思う。

日本は過去30年間、自分たちに都合のよい中国崩壊論のイメージを信じ、現実の中国を直視することをしなかった。今回も同じ過ちは犯してはならないだろう。現実の中国をはっきりと直視し、対応して行かねばならないだろう。

このリストからは、次の3つのことが明らかになる。

 

1. 中国のテクノロジーの製品化>

このリストで分かるように、中国は先端的テクノロジーで圧倒的な地位を築いている。どんなにがんばっても将来この地位が覆ることはないだろう。

おそらくこれから、いま開発されている先端的テクノロジーをベースにしたまったく新しいコンセプトの商業用製品群が登場し、世界市場を席巻する可能性がある。1990年代にPCとインターネットが登場し、2000年代にスマホやタブレットが登場して世界が変わったように、これからは中国の最先端テクノロジーをベースにした製品群が登場し、世界に衝撃を与えるのだろう。

2. 予想していなかった国々の躍進>

このリストのトップ10には、サウジアラビア、イラン、そしてパキスタンのような国々が入っていることに驚く。これまで先端的テクノロジーの競争では日本と欧米諸国の独壇場であったが、状況は根本的に変化しつつある。多様化と欧米先進国の退潮である。

3. 影の薄い日本>

そしてこのリストではっきりしているのは、日本の影の薄さである。トップ10を列挙した24分野のうち、日本がランクインしているのは7分野に過ぎない。この状況を逆転するためには、相当な時間と戦略が必要だろう。

このリストは、世界の最先端テクノロジーの研究開発状況を俯瞰した唯一のリストである。このリストからははるかに多くのことが分かるが、それはまた記事を改めて書くことにする。

 

 

 

 

「中国テック企業の台頭」が米国防総省の懸念となる理由

Loren Thompson によるストーリー  • Forbes JAPAN 12/18

イノベーションに関して言えば、米国経済は「二都物語」だ。アマゾンやマイクロソフトなど、米国最大のソフトウェアやサービスを提供する企業は世界的なイノベーターである。一方、 米国のハードウェア製造企業は外国の競合他社と互角に渡り合うのがやっとだ。

米国防総省が最近の防衛産業基盤評価で指摘したように、米国経済の「着実な産業空洞化」により、同省は軍事関連で使用される重要な鉱物や部品の国内生産を強化することに、ますます関与せざるを得なくなっている。

あまりに多くの企業が製造拠点を国外に移したため、軍需サプライチェーンの大部分において、生産に不可欠なものの国内供給源は1つしか残っていない。例えば、フェアバンクス・モース・ディフェンスは、軍艦に使用される大型ディーゼルエンジンを米国で生産する唯一のメーカーだ。かつては6社が手がけていた。

米国内の一部の製造業者は新しい技術に多額の投資を行っているが、中国との競争に敗れつつあることを示す根拠がある。中国企業は往々にして米企業より先にドローン(無人機)のような新しい市販品の市場投入を行ったり、米企業が張り合えないような価格で商品を販売したりしている。

これは米中間の軍事競争の将来にとって良い兆候ではない。米国防総省は、軍事的ライバル国より一世代先行し続けることを可能にするイノベーションを求めているが、米国の製造業がそうした優位性を提供できる可能性は低そうだ。世界の製造業に占める中国のシェアは今や米国、日本、韓国の合計より大きい。

国防総省は、ソフトウェアやサービスを提供する米国企業に頼ることで、軍事分野での優位性を維持できると考えていた。デジタル革命により、賢いソースコードを用いてクラウドコンピューティングや人工知能(AI)などの分野で世界をリードするイノベーターのエコシステムが米国内にできた。

ソフトウェアの世代は年単位ではなく月単位で移り変わっていくため、最先端のソフトウェアによって米軍が戦場で敵軍の数十年先を行くことはないだろうが、少なくとも AIなどの分野では米国が中国に先行し続けられる可能性はある。

だが、中国企業は中核市場において米国のビッグテック(超巨大テクノロジー企業)に挑み始めている。その最もよく知られている例が、中国発SNSTikTokによる、これまで同業界を支配していたインスタグラムへの挑戦だ。TikTokは数年連続でダウンロード数が世界で最も多いアプリとなっている。

軍事計画担当者にとってTikTokはさほど大きな懸念ではないが、他の中国企業による挑戦はより厄介だ。アリババ、ファーウェイ、テンセントは現在、多くの市場でアマゾンやグーグル、マイクロソフトにクラウドコンピューティング事業で積極的に挑んでいる。これらの中国企業はすでにオーストラリアや日本、英国などでクラウド事業を展開しており、東南アジアのような地域では市場を支配しようとしている。

クラウドコンピューティングは近年、アマゾンやマイクロソフトなどの企業にとって最大の成長分野となっている。そのため、この部門における中国企業の台頭は、国防総省が当てにしているイノベーションへの投資を縮小させる可能性がある。

それだけではない。1213日付のフォーブスの記事で、寄稿者のニーナ・シアンは、中国でスマートフォンOSのシェアを支配しているAndroidから、ファーウェイがその座を奪おうとしていると報じた。その試みが成功すれば、ファーウェイのスマートフォンがアップルのような競合他社の製品よりもはるかに安価で売られていることが多い他の市場にも、ファーウェイは自社OSを間違いなく持ち込むだろう。

米国のビッグテックは世界をリードするイノベーターであり続けているが、中国は米国の多くの製造業に対してすでに行っていることを、巨大テクノロジー企業にも行おうとしている。

米国のビッグテックが失速すれば、重要なテクノロジーで中国より優位であり続けようとする国防総省の計画は、もはや成し遂げられなくなるかも知れない。国防総省が最優先で取り組むべき将来の課題として挙げている新興テクノロジーのほとんどは、ソフトウェア主導の商業的なイノベーションだ。

こうした背景を見れば、米国の独占禁止当局による巨大テクノロジー企業への継続的な嫌がらせは時宜を得ておらず、米国の安全保障に破壊的な影響をもたらす可能性がある。

軍はこの10年間、AIソフトウェアのような最先端のイノベーションに莫大な投資を行う民間企業を頼りにしているが、莫大な投資には巨大な企業が必要だ。

米シンクタンクの企業競争研究所(CEI)が1213日付の報告書で指摘しているように、独占禁止の執行で大手テクノロジー企業を攻撃することは、技術革新競争において中国が米国を追い越す手助けになりかねない。バイデン政権は、安全保障と規制の目的をもっとうまく調和させる必要がある。

forbes.com 原文

 

 

【注目論文数、過去最低の13位 低迷続きイランに抜かれる】

https://nordot.app/1061554991645492194?c=39550187727945729

研究内容が注目されて数多く引用される論文の数で、日本はイランに抜かれて前回12位から過去最低の13になったことが8日、文部科学省の科学技術・学術政策研究所が公表した最新ランキングで分かった。日本は年平均論文数では中国、米国、インド、ドイツに続き5位で約7万本だが、注目論文は新興国などの躍進で相対的に順位が低下したと分析している。

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 日本は2021年公表のランキングではインドに、22年はスペインと韓国に抜かれた。イランは博士学生の数を増やし、エネルギー、工学分野で論文数を増やしているという。

 各国の1921年の平均論文発表数などを分析した「科学技術指標2023」によると、日本の注目論文数は横ばいの3767本で、イラン(3770本)に追い抜かれた。中国(54405本)が1位、2位は米国(36208本)、3位は英国(8878本)。

 注目論文の中でも引用数が極めて多い「トップ1%論文」でも、1位は中国、2位は米国。日本は、スペインと韓国に抜かれ、前回の10位から12位と過去最低になった。

 

 

【ファーウェイ最新スマホに国産7ナノ先端半導体-米制裁に対応. bloomberg.9/4

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-09-04/S0G7Z2T0AFB401?srnd=cojp-v2

【「ファーウェイ、米制裁にもやり遂げた」「iPhoneと同水準」の製品に米専門家ショック 中央日報9/4

https://news.yahoo.co.jp/articles/9a85650b6d456e053e16abf5f8c24a3a4189761d

 

 

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