ASEAN訪問 「平和と協力」の地域へ 「対話の習慣」と安全保障
志位委員長と田村副委員長らのアセアン訪問。「平和と協力」の地域づくりの課題と展望をつかみ、可能な協力と連携を探求することが目的としている。アフガン・イラク戦争につづき、ウクライナ侵略、ガザ虐殺などの逆流に対し国際ルールにのっとった平和の秩序づくりがますます重要になっているだけに、アセアンの取組をリアルにつかむことは大変意義あるとりくみとなる。赤旗のHPにも意見交換の記事が公開されている。
“対話の習慣”を東アジアに インドネシア政府と志位委員長が意見交換 12/22
https://www.jcp.or.jp/akahata/aik23/2023-12-22/2023122201_01_0.html
東アジアの平和創出へ 政党・市民社会との協力を 志位委員長、ASEAN事務局次長と会談 12/23
https://www.jcp.or.jp/akahata/aik23/2023-12-23/2023122301_02_0.html
ところで、米軍などが東南アジアでの活動を活発化している記事が、23日付けで載っている。当然、米軍が勝手にしているほけではない。これをどう統一的につかむか・・・研究課題である。
“対話の習慣”を東アジアに インドネシア政府と志位委員長が意見交換 12/22
【ジャカルタ=井上歩】日本共産党の志位和夫委員長は20日、インドネシア政府のアダム・トゥギオ外相特別補佐官とインドネシア外務省で会談し、東南アジア諸国連合(ASEAN)の平和の地域協力の取り組み、ASEANインド太平洋構想(AOIP)、焦眉の国際問題について意見交換しました。
〇政府と市民社会が協力して
志位氏は、ASEANが徹底した対話で東南アジアを「分断と敵対」から「平和と協力」の地域に変えるとともに、この流れを域外に広げ、東アジアサミット(EAS)での協力などを通じて戦争の心配のない平和の地域協力を推進していることに言及し、「日本で活動する私たちにとって大変心強い」と表明。その最新の到達点であり、インドネシアがイニシアチブをとったAOIPについて、「対抗でなく対話と協力」の推進、排除でなく包摂の追求、ASEANの中心性(自主独立と団結)を貫くなどの点で、「たいへん理にかなっており、現実に多くの国に賛同を広げています」と、この構想に強く賛同する立場をのべました。
志位氏はそのうえで、日本共産党がこの間、東アジアに平和をつくる「外交ビジョン」を発表し、日本の国会、アジア政党国際会議(ICAPP)、日中両国関係の前向きの打開をめざす提言などでAOIPの推進を訴えてきた活動を紹介。この点で「AOIPの成功のためには、政府間のとりくみとともに、政党を含む市民社会の協力が不可欠だと思います。可能な協力を強く願っています」とのべました。
〇年1500回もの会合
アダム氏は、AOIPへの支持に謝意を表明し、日本・インドネシア関係の発展に触れるとともに、ASEANとインドネシアがAOIPを提案したのは、「安定と繁栄がとても重要」だと考えているからだとのべ、安定によりASEAN諸国は社会・経済的な発展の恩恵を得られるということを強調しました。さらに、ASEANが東南アジアを超えてEASなどで域外の国ぐにとの連携を包摂的に進めているのは、「紛争の危険、火種があるもとで、“対話の習慣”を推進したいからです。対話により誤解や誤算を回避できます」と強調しました。
志位氏が、「“対話の習慣”が前進の秘訣(ひけつ)ですか」と尋ねると、アダム氏は「少なくとも誤解や誤算を防止するうえで重要です」とのべるとともに、EASなど東アジアの平和の地域協力について、“対話の習慣”を推進するものであり、ASEANだけでなく域外諸国にとっても意義があるものとの考えを示しました。
志位氏が、徹底した対話という点にかかわって、10年前、ASEAN事務局を訪問したさいに「ASEANでは域内で年1000回の会合を行っていると聞いて驚きました」とのべると、アダム氏は、「今では1500回以上です」と応じました。
アダム氏はまた、AOIPを推進するうえでの政府と市民社会の連携について、地域の平和と発展にはすべてのステークホルダー(利害関係者)が貢献すべきであり、市民社会は“対話の習慣”のプロセスに貢献できるとの考えをのべました。
ガザ危機と核兵器禁止条約でも意見交換
志位氏はガザ地区の人道危機について、インドネシアも提案国である即時の人道的停戦を求める国連総会決議(12日)を実施することが重要だと強調。アダム氏は「パレスチナ問題では私たちは国際社会が持続的な停戦を実現するために声を一つにすることを促しています」とのべ、ダブルスタンダード(二重基準)に反対するインドネシア政府の立場を表明しました。
双方は核兵器禁止条約をめぐっても意見交換。「核兵器なき世界」へ各国やさまざまなステークホルダーが連携していくべきとの考えを共に表明しました。
ASEANインド太平洋構想(AOIP) ASEANが2019年、インド太平洋を「対抗でなく、対話と協力の地域」にしようと提唱した外交指針。紛争の平和的解決を義務づけた東南アジア友好協力条約(TAC)を基盤にして、対立する米中を含め地域の各国が参加するインクルーシブ(包摂的)な多国間枠組みの中心となってきたASEANが、広域協力を主導するとしています。
東アジアの平和創出へ 政党・市民社会との協力を 志位委員長、ASEAN事務局次長と会談 12/23
【ジャカルタ=井上歩】インドネシアを訪問中の日本共産党の志位和夫委員長は21日、田村智子副委員長らとともに、ジャカルタ市内にある東南アジア諸国連合(ASEAN)本部を訪問し、エカパブ・ファンタボン事務局次長と会談しました。
志位氏のASEAN本部訪問は2013年9月以来、10年ぶり。ASEANの平和創出に向けたとりくみの発展やASEANの発想とアプローチ、ASEANとの連携で政党と市民社会が果たせる役割などのテーマで活発に意見交換しました。
志位氏は、徹底した対話で平和の地域協力を域外にも広げてきたASEANの成功への注目に触れたうえで、ASEANが行っている年間1500回に及ぶ会合について、具体的にどう実施されているのかを尋ねました。
エカパブ氏は、年間1500回に及ぶ会合について、対話の積み重ねや域外国との意思疎通の重要性に触れるとともに、「いまでは量とともに質も大切になっています」として、会合を整理し順序だてたものにする努力を語りました。また、ASEANが地域協力で中心性(中心的役割)とASEANの結束を保持してきたことが成功につながったとの認識を示しました。域外国に積極的に関与しつつ、どちらか一方の側にくみすることなく、中立的でバランスのとれた立場をとること、平和と安定の促進にとりくむことが重要だと述べました。
エカパブ氏は、ASEANは、緩やかな組織であり、家族の一員として受け入れ合い、助け合い、支える関係であること、域内でも不一致は時にはあるが、すべての問題を家族の一員として解決していくと強調しました。さらに域外のパートナーとの関係について、大国が話し合いの席につき、ASEANの考えを受け入れない場合でもASEANの見解を共有していくことの重要性を強調しました。
志位氏は、ASEANが特定の国や外部の大国を排除するのではなく、すべての国ぐにを包み込む包摂的なアーキテクチャー(地域構造・枠組み)を進めていることが成功のカギとなっていると感じていると強調。日本共産党が、ASEAN諸国と手を携えて東アジアに平和を創出する「外交ビジョン」の提唱、日中関係の前向きの打開のための提言など、ASEANインド太平洋構想(AOIP)を支持し促進する活動を行ってきたことを紹介したうえで、「東アジアに平和をつくるうえで、政府間のとりくみとともに、政府と政党を含む市民社会の連携・協力が大切です。可能な協力をぜひ強めたい」と語りました。
エカパブ氏は、日本共産党の「外交ビジョン」の考え方は、地域の平和安定を促進するASEANと同じ線上にあるものだと高く評価。地域の国際関係に政府レベルだけでなく、政党レベルなどさまざまなチャンネルがつくられることは重要だとし、ASEANはそうした“人と人との連結性”を重視していると応じました。
23日付け11面 「米海兵隊の即応態勢 東南アジアでも強化 対中国想定し多国間訓練」より
・米海兵隊 沖縄を拠点にした海兵沿岸連隊を新編し、東南アジアにも新たに管轄司令部を配置。即応態勢の強化を進めている
・沖縄の第3海兵遠征軍司令部が担ってきたインド太平洋地域での作戦 ~ うち、東南アジア地域を第1海兵遠征軍司令部(加州)が管轄する体制に昨年から移行。
➡狙いは、遠征前進基地作戦(EABO)を担う部隊(相手国の長距離火力射程内での作戦を実行する「スタンド・イン部隊」)を、中国が設定する防衛ライン「第1列島線」内に迅速に投入する体制づくり
*EABO ~ 離島を奪取して地対艦・地対空ミサイルを配置。米海軍艦船と連携して制海権を確保し、ヘリやオスプレイへの武器・燃料補給拠点や前進基地を構築する作戦
・11月9~17日にフィリピンで行われた多国間演習「カマンダグ7」 ~ 第1海兵遠征軍の下で、米本国の第11海兵遠征隊(MEU)と、昨年ハワイで新編された第3海兵沿岸連隊(MLR)が「海兵隊巡回部隊―東南アジア」(MRF―SEA)を編成し参加/日本、韓国、イギリスも参加。/
*MEU、MLRはEABOを担う部隊~ 同演習では、急襲偵察、ジャングルでの生存、海岸防衛、化学・生物・放射性物質・核への対処などの訓練を実施/ MRF―SEAは昨年9月、初めて東南アジアに展開し、フィリピン、インドネシア、シンガポール、ブルネイで訓練を実施。
また、米国と同盟をむすぶフィリピン、タイの動きやアセアン6の軍事費増額なども視野に入れる必要がある。
◆米比相互防衛条約
1951年8月にアメリカ合衆国とフィリピンの間で締結された、相互防衛の為の軍事同盟の安全保障条約。有効期間は無期限となっている。
1989年12月の冷戦終結から1991年12月のソビエト連邦の崩壊によって見直しが図られ、緊張緩和によるアメリカ軍兵力の削減・1991年6月のピナトゥボ山大噴火による基地の被災で基地協定は期限延長がなされず、両政府間で在フィリピンアメリカ軍の撤退が決定した[3]。まずはクラーク空軍基地から始まって1992年11月にスービック海軍基地からも撤収し、フィリピンにおけるアメリカの軍事的な影響は著しく減少した。またアメリカのビル・クリントン大統領が軍事費削減を政策とした為、1995年以降共同軍事演習が取り止めとなった(後に再開・後述)。
このアメリカ軍撤収の直後から南シナ海で、中国と東南アジア各国が領有を主張する南沙諸島(スプラトリー諸島)において中国人民解放軍の活動が活発化し、フィリピンが領有権を主張する環礁を占領して建造物を構築した。またアメリカ軍・アメリカ政権内でも中国脅威論が提唱され始め、1998年2月に「訪問米軍に関する地位協定」が締結され[3]、1999年5月に共同軍事演習を再開した[4]。
2001年9月にアメリカ同時多発テロ事件が発生すると、同年1月に就任したフィリピンのグロリア・アロヨ大統領はクラーク・スービック両基地の再使用を承認し、アメリカの対テロ戦争に協力した。また2000年半ばからマニラなどで頻発していた爆弾テロをイスラム原理主義過激派「アブ・サヤフ」による犯行と見ていたアロヨは軍による掃討作戦を実施していたが、アメリカ軍もこれに参加して陸軍特殊部隊などがミンダナオ島などで軍事活動を行っている。
2016年3月に両国は中国の人工島建設などに対抗して、アメリカ軍がフィリピン国内の5箇所の基地を利用する協定を締結した。パラワン島のアントニオ・バウティスタ空軍基地、ルソン島のバサ基地、フォート・マグサイサイ基地などが対象である[5]。(WIK)
◆タイの安全保障政策と脅威認識
米国の同盟国でありながらも中国から潜水艦を調達するなど、「バンブー・ディプロマシー」 1とも呼ばれる全方位的外交を展開する
・タイ国防省が2020年9月に発表した、『2021年度緊急ポリシー(Immediate Policy of the Minister of Defence)』 5は、「ニューノーマル」における国防省の役割---- タイは米国の条約上の同盟国であり、軍事顧問団がタイに常駐している。アジア太平洋地域最大級の多国間軍事演習「コブラ・ゴールド」を毎年、共同開催している。また、ウタパオ空軍空港には頻繁に米軍が立ち寄っている。それにもかかわらず、同盟に対する評価も、今後の米国との協力方針についても記述がない。
南シナ海問題をめぐるASEAN加盟国内での意見の相違が露わになったのは2012年であり、東南アジア諸国が米中の板挟みになりたくないと発言しはじめたのは2015年頃である。タイは、それよりもはるかに前から、近隣諸国、特に国境を接するミャンマー、カンボジア、ラオスに配慮し、安全保障に関する公式文書では米国に言及せず、近隣諸国との平和的共存とASEANの尊重を前面に掲げてきた。
( 木場紗綾・公立小松大学国際文化交流学部准教授)
(2022 年 6 ⽉ 24 ⽇ 大国間競争時代の ASEAN と日本外交 慶應義塾⼤学 神保 謙)
なお、アセアンは、内政不干渉を原則としている。日本共産党が提案している北東アジア平和協力構想なのだが、人権問題は、内政問題ではなく国際問題と規定した28大会のもとで、どう両立させるのか、勉強していきたい。
以下の論考も学ばされる。
共産党のASEAN認識は間違っていないか 阿部治平 2312
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