国保料水準の統一にむけた条例改定 「手続き的にも内容的にも県民不在」と反対討論
12月県議会で、県は、市町村長と、国保料水準の統一について基本的な合意ができたとして施行条例の改定を提案。
保険料水準の統一とは、医療費水準の地域差を反映させないこと。これまでの仕組みとまったく違うベクトルの仕組みとなるうえ、34自治体中25自治体で値上げが予想される。しかも、これらの事実を、県民にはほとんど知らされていない。
こうした行政の独走に「まった」をかけるのが県議会の役割である。
日本共産党は、細木県議が反対討論(反対は日本共産党の6名のみ)にたった。これから市町村段階でのたたかいとなる。統一の目途は、2030年なので、値上げが予想される自治体を軸に、住民運動をひろげていきたい。
以下、討論と22年度の県内の国保の状況の一覧
日本共産党県議団を代表し、第14号高知県国民健康保険法施行条例の一部を改正する条例議案に対し、反対の立場から討論を行います。
改正案は、2030年度を目標に、県内市町村の保険料水準の統一をめざすもので、具体的には、市町村から県への納付金の算定において、医療費水準の地域差を反映させないためのものです。
つまり、これまで各市町村が、健診の充実、活き活き100歳体操や人との交流の促進など健康づくりに努力し、結果として医療費を抑制し、保険料・税負担の軽減に努力してきた取り組み、また国や県としても、その成果に応じて財政支援をしてきた取り組みと違い、医療費の多寡にかかわらず負担を同じにするというコンセプトに変わることを意味します。
また、一人当たりの調定額を見ますと、2022年度の県平均は9万2392円ですが、平均以下は、四万十市の6万9592円、土佐清水市8万5668円、宿毛市7万7734円など25自治体にも及び、医療費が低かった自治体では大幅な負担増によって暮らしを直撃することになります。
このように今回の改正は、制度の大きな改変であり、大幅な負担増となる住民が多数存在するにもかかわらず、その具体的内容は、ほとんど県民に知らされておらず、市町村長が基本方針を確認したからといって、県議会が条例改正を認めることは、主権者である県民をないがしろにすることであり、到底容認できるものではありません。保険料が現在の水準からどのように変更するのか、説明責任を市町村に任せていることも問題です。
県がやるべきは条例改正ではなく、まず県民に県の考えを説明し、1回かぎりのパブリックコメントでなく、しっかり意見を聞くところからはじめるべきだと県の姿勢をただすことが県議会の役割ではないでしょうか。
また、健康づくりをつうじて、結果として医療費を抑制するインセンティブをどう確保するのか。努力してきた医療、介護、住民組織の方々にどう説明するのでしょうか。
条例改正についての県の説明資料には、「規模の小さな市町村では高額医療費の発生に伴い財政運営が不安定になる」と理由を示していますが、そもそも保険財政共同安定化事業の全医療費拡大の際には、医療費水準の差は半分を反映する、高額医療費については80万円を越える医療費については県内市町村のプール会計で対応し、医療費抑制のインセンティブの確保と小さな自治体の財政の安定化に配慮する設計となっていました。それを県単位化の際に、医療費水準の差を全額反映する、高額医療費のプール会計対応を420万円以上に引き上げ、小さな自治体の財政運営に困難が増すように制度改定をすすめた結果がもたらしたものであり、「小さな自治体の財政の不安定化」は保険料水準の統一の根拠にはなりえません。まず、高額医療費のプール会計制を、従来水準にもどすことに着手すべきです。
また、財政安定化基金と別に、保険料水準の統一後に、保険料があがる自治体の激変緩和につかうために40億円を財政調整基金にため込んでいます。まだ決定もしていない保険料水準の統一にそなえ、県民に過度な負担を密かに強いるなどあってはならないことです。そもそも激変緩和というなら上がるところも下がるところも同じように対応すれば、新たな財源はいらず、40億円は物価高で苦しむ県民の負担軽減に使えるわけで、高知県市長会も活用を求めています。この点でも順序がまちがっています。
高知県市長会は、今年10月、2030年度統一保険料の推計値が、現行の保険料率と「乖離が大きい」「あまりにも高い」「低所得層への影響は必至である」と懸念を表明しています。
国民健康保険は、国民皆保険の基盤であり、憲法25条で定められた健康で文化的な最低限度の生活を、医療面から支える極めて重要な制度ですが、年金生活者や非正規の労働者、フリーランスなどが加入者の主体となり、収入が低く、病気にかかりやすい年代が集中していることから、保険料・税の負担が被用者保険に比べて極めて高いという「構造的な問題」を抱えています。所得に対する保険料負担は、事業主負担を考慮すると国保は、他の被用者保険の3~4倍となり、滞納世帯が1割近くに上るなど、暮らしを圧迫しています。さらに子供が生まれると保険料が増える、「傷病手当金」と「出産手当金」がないなど被用者保険と大きな格差を抱えています。
こうした、構造的な問題の解決には、公費、とくに国庫負担を増やす以外に抜本的な解決の道はありません。全国知事会は1兆円規模の公費負担増によって協会けんぽ並みに保険料を引き下げるべきと要請してきましたが、今、県議会に求められているのは、知事、市町村長とも力をあわせ、県民の暮らしを守るために、国庫負担の抜本的な増額をもとめ、県民運動、さらに国民運動の先頭にたって奮闘することではないでしょうか。
手続き的にも内容的にも県民不在の条例改正には、待ったをかけるのが県議会の責務であるということを重ねて訴えて討論とします。
高知県市長会の要望
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