高知市長選 なせ岡崎市長の支援を決めたか
11月26日投票で高知市長選。日本共産党は、現在の岡崎市政とは、対決を繰り返してきました。しかし、今回、自民党が、岡崎市政を見限って、本格的に市政奪取に乗り出す中、市民団体、労働組合などとつくる「みんなの会」での協議、市民と野党共同を推進する「憲法アクション」と岡崎市長との協定などを踏まえ、岡崎氏を支援する支援することを決定した。
無謀な開発計画(ことごとく阻止)など市政の負の側面をリードしてきた勢力が離脱したことで、本来持っている革新市政以来の積極面が本格的に前面に出てくる市政へ脱皮させる大きなチャンスと言える。
以下の論考は、まだ全体の構図が固まらないなかで開始した「高知民報」(週刊)に9月10日号から4回にわたり連載した「どうなる高知市長選」の全文である。
11月26日投票で高知市長選が行われます。今回の市長選の最大の特徴は、自民党の本体が本格的に市政の奪取に乗り出してきたことにあります。市長選まで1年以上ある昨年10月、自民党県議の桑名龍吾氏が出馬する意向を表明しました。地元紙は「中谷元衆院議員の義弟で、自民県連幹事長も務めた実力者の初名乗りは県都に波紋を広げ、市議会では歓迎と警戒の声が交錯か」(高知新聞22/10/6)と報じました。市議会で、長らく分裂してきた自民党系会派が、一本化したのも何らかの強い力が働いた結果とみられ、自民党県連の構えのあらわれでしょう。
私は、松尾市政の途中から20数年にわたり、市政と主に政策面で向き合ってきました。今回の市長選について、その意義や争点をどうとらえたらよいのか、主に政策面から考えてみたいと思います。
桑名氏の主張は「あたらしい風を」という多選批判を意識したもので、具体的政策は準備中(8月30日時点)ですが、県議会や地元国会議員の自民党と直結した市政になることは明白でしょう。街頭での訴えなど限られた情報で見ると、桑名氏は、市民の要望の強い中学生の医療費無償化を「すぐにやります」と述べ、財源の2億円が確保できないのは「事業のスクラップ.アンド.ビルドが出来ていないからと考えます」と述べています。無償化の拡充は、私たちも繰り返し述べている要求です。問題は、何を「スクラップするか」です。スクラップには「民営化」も入るでしょう。保育所、学童保育など福祉の部門でしょうか、公務の役割発揮と市民の協働で中核市トップくらいの効率性を誇っているゴミ行政でしょうか。そんな懸念とともに、高知市が子どもの医療費の無償化の拡充で苦労しているのは、県の制度が、就学前の無償化の半分しか支援しない状況でとどまっていることが大きな要因です。高知市の小学生までの医療費無償化予算は8.6憶円。うち県負担は、1.6億円弱にすぎません。県が半分を負担すれば、高知市は2.7憶円の財源が生まれ、無償化の拡充は実現できています。桑名氏は、2億円は高知市の一般会計1500億円の0.13%だ、と指摘していますが、県制度(県と市町村折半)を小学生まで無料化するのに必要な予算は約5.4億円。県の一般会計予算4600億円の0.11%です。県議会で絶対多数をしめる自民党県議団の幹事長まで務めた同氏に批判の資格があると思えません。同時に行われる県知事選で県制度の拡充を問うことになるでしょう。また、桑名氏は、「高知市の人口は10年間で20,000人が減少。まずは、将来への不安を解消することが求められています」と述べています。それは事実ですが、全国の地方が抱える問題であり、自民党政治の責任こそ問われなくてはなりません。
桑名氏は、寄せられる3大要望として「中学生の医療費無償化」「教育不安」「高台移転の推進」をあげています。1つめの要望だけ妙に具体的で、「教育不安」とか、何をするのか、まったく不明です。「高台移転」は、企業の話でしょうか。必要性は否定しませんが、用地・用水の確保など、それこそ全県的視野で考える課題です。また、大規模な財政支出もともないます。高知市の自民党系市議団が、最も直近で「都市計画税」を導入した滋賀県野洲市への視察にいくとの情報があります。開発のための財源確保の模索ではないか。「道の駅」、鏡石灰開発など、この間の市の無謀な計画の火付け役、推進役だった自民党系の市議か桑名氏の陣営についたことが、その危険性を端的に示していると思います。また、山本有二衆院議員を先頭として「四国新幹線」推進(並行在来線の廃止、莫大な財政負担などの懸念がある計画)の動きが活発化しています。高知市は「中核市」という区分で.一般市と違い、保健・保育・介護の分野ともに開発行為・.建築の許可などの権限を委譲され、県の権限が及ばないことも無関係ではない気がします。
改憲は自民党の党是ですが、桑名氏もコロナ禍を口実とした改憲、「緊急事態条項」の必要性を説く質問(20年6月県議会)をしいます。また、「日の丸、君が代」の押し付け、学テ偏重など県教育行政のゆがみの震源地である自民党県議団の教育観が、市政に直接持ち込まれることも大きな懸念材料と言えます。市民の力で推進してきたパートナーシップ制度、「平和の日」記念場など平和行政への逆流の持ち込みも心配されます。
現在の岡崎市政はどうか。岡崎市長は、03年の市長選で、松尾市政の後継者として誕生しました。「松尾市政の後継」として市長の第一の役割は、大型公共事業を野放図に推進し、松尾氏自身が「「これから借金返済の山が押し寄せる」など「財政破綻」の言葉も出て来るような深刻な財政危機への対応でした。そこに小泉「改革」による地方交付税39億円削減(単年度)が直撃。岡崎市長は、「財政の非常事態宣言」を発しました。「平成の大合併」による鏡・土佐山、春野との合併による新たなまちづくりの課題も重なりました。それから今日まで、財政再建を「理由」とした市民負担、職員犠牲を許すのか、財政再建と市民の願い実現を両立させる道はないのか。また、財政危機の原因となった箱もの事業の在り方、年間10億円の同和関連予算などにみられる特定団体などに偏った行政の見直しなどを巡り、市民本位の姿勢を築くために岡崎市政と鋭く対峙をしてきました。
岡崎市政の「財政再建」策の1つの柱は、革新市政の成果である国保の独自減免制度の廃止、手数料・使用料の値上げなど市民への負担の押し付けです。家庭ゴミ袋の有料化、都市計画税の導入打ち出されました。第二は、職員削減。機械的な「中核市平均」の数字をかざし、「腰だめの数字で400名減」を掲げ、新規採用の抑制、学校給食調理の民間委託などが行われました。また、財政危機の原因となった大型事業についても、「時期が集中した」との説明にとどまり根本的な反省はありませんでした。「同和」を冠し課の創設もしました。
同時に、これらの過程は、党市議団の論戦力、高知市民のたたかいの力が発揮された歴史でもあり、「民主市政をつくるみんなの会」が岡崎氏の支持を決定した理由もここにあると考えます。
まず、松尾市政時に計画された「かるぽーと」につながる高架橋建設を中止させ、その後も、全国報道もされた道のないところへの「道の駅」計画、敢えて県と共同せず市単独で進めようとした「仁井田産業団地」計画、「賑わい広場」となっていた追手前小学校跡地(西敷地)を民間高度利用計画に変更し固執し続けている問題、190億円かけて県道拡幅させることを前提とした鏡石灰開発など、行政論的にも粗雑な計画が相次ぎましたが、ことこどく中止。一旦白紙に追い込んでいます。新社会福祉会館計画も中止させました。「道の駅」問題の中で、地域の学校をなくさない、と明言(04年度にも同様の答弁)させたことも重要です。下水道整備では、人口減のもと、災害にも強い合併浄化槽との併用による計画の縮小・見直しを求めた提案も生かされました。また、3町村と合併した新市のまちづくりとして西部健康福祉センター、青年センター、総合あんしんセンター等の整備やその後の県市合築図書館「オーテピア」、新庁舎建設については、時期、規模と内容など改善提案を対置してきました。
同和関係予算見直しは、時間はかかりましたが、市民会館の職員配置の中止、住宅、就労支援など一般施策への移行、市営住宅公募方法の特別扱いの改善など大きく改善をさせてきました。
市民負担増をめぐっては、家庭ゴミ袋有料化と都市計画税導入では、「有料化はゴミ減量にならない」「市のごみ行政は市民協働の結果、きわめて効率的」「市財政は、借金返済のペースを落とせば乗り切れる」などの解明を行い、署名運動など市民のみなさんと力をあわせ断念に追い込みました。国保会計への一般財源の繰り入れも復活させています。
市
民要求の実現では、財政的裏付けを示し小学校までの医療費無料化、中学校給食、学校のエアコン設置を実現、議員提案で公契約条例制定なとの前進も築いており、この9月議会では、中学生の医療費無償化の実施を表明しました。同時に、「どんな相談も決してことわらない」と全国誌(週刊ダイヤモンド2015.1.15)で紹介された生活困窮者支援センターの設置と活動、公営の放課後児童クラブの増設、医療ケア児への支援など福祉分野のきめ細かい対応は、革新市政由来の市役所の力が発揮された事例です。また給食費の無償化など学びを支援する就学援助制度の利用者は、市民運動の力もあり3割を超え、県下の他自治体の1.5倍と積極的な対応をしています。
職員削減の矛盾は、時間とともに顕在化していきます。防災事業の予算が担当者不足で執行できない、福祉のケースワーカーが基準を大きく超える担当を抱え手がまわらない、新規採用抑制で保育の専門性・経験の継承ができないなどのゆがみが噴出しました。「役割を果たせないのが、もっとも非効率だ」と厳しく対決する中、「職員削減計画」を「適正化計画」に改組させています。現在、想定以上の早期退職などで100名もの欠員が生まれており、その解消は「喫緊の課題」(6月市議会答弁)と、問題意識は共有されています。同時に、職員削減の方針のもとでもゴミ行政・清掃工場の直営を維持したことは、市民との協働での効率的運営の維持、災害への備えとして見識を示したと言えます。他都市の同時期に整備された焼却炉は耐用年数25年を迎え。メーカー言いなりに巨額の建替え事業が議論されていますが、高知市は職員が中心となり、2度の改修工事で50年動かすという効率的運営が追求されています。
市長の政治姿勢では、新庁舎にも非核平和宣言を掲げ、「核兵器禁止条約の批准」をもとめる平和市長会に参加し、市民参加の「平和の日」記念事業を継続していること、パート―シップ制度のいち早い導入やレインボーフラッグの掲揚、中学生のジェンダーレス制服の積極的対応などは、自民党政治とは一線を画するもので、高く評価できるのではないでしょうか。
岡崎市政とは、時々の市長選などでゆがみを正すために厳しく対峙するとともに積極的な提案をぶつけてきました。その結果、市民の力で、問題点のかなりの部分を是正し、少なくない前進面を築いてきました。市民の運動がカギを握る市政と言え、今後、借金返済額が減少していくので、その条件をどういかすか、市民の要求実現の展望が広がっています。
だからこそ、自民党は、こうした「弱腰」に見切りをつけ、本格的に市政奪取に乗り出してきたのです。「道の駅」など市政の問題部分をリードしてきた市議会自民党会派が、岡崎市政を見限ったことは、市政改革・市民要求実現を進めるチャンスでもあります。岸田政権と直結する民意無視の自民党市政の誕生を許してはならない。ここに、今回の市長選をめぐる対決点があります。
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