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日本学術会議 総会声明 4/18 「説明」ではなく「対話」を、「拙速な法改正」ではなく「開かれた協議の場」を

 岸田政権 4/17日本学術会議の総会に対し、今国会提出をめざす日本学術会議法改悪案の条文を提示

・会員・連携会員以外の第三者が会員選考に関与するために新設する「選考諮問委員会」の委員は5人とし、首相が議長を務める総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)の議員と、日本学士院の院長と協議の上、学術会議会長が任命する

・法改正後3年と6年をめどに、会員に関する制度や、会長の権限・選任方法などを含め組織のあり方を総合的に見直し、法改正などの必要な措置を講じる

・改正法に基づいて会員の次期改選を行うため、10月の改選は来年4月に延長し、現会員の任期も半年延長する

 内閣府の担当者は、“同案に示した制度的改革を進めなければ「国の機関であり続けるのは難しい」と発言”(4/20赤旗)。先の大戦の反省から権力からの独立性・自主性を原則とする学術会議の在り方を、「敵基地攻撃能力」の保有、「戦争できる国」づくりへ、放送法の解釈改悪によるメディア支配につづき、学問の世界も権力が支配するためのもの

 G7の中で、権力が介入する仕組みがある国はない。世界のアカデミー、61名のノーベル賞受賞者から危惧が表明されている。

日本学術会議|わが国の科学者の内外に対する代表機関 (scj.go.jp)

*海外のノーベル賞受賞者による共同声明 4/13 「私たち61人は、8人の日本人科学者が表明した憂慮と希望を共有する。科学は人類の崇高で知的な努力であり、その発展が人類の進歩と幸福の実現に不可欠。日本はアカデミアを通じて人類に貢献する国で、世界に知的存在感を示すだろう」

 以下 総会声明

日本学術会議第187回総会声明

 日本学術会議法にはこのような前文があります。

「日本学術会議は、科学が文化国家の基礎であるという確信に立つて、科学者の総意の下に、わが国の平和的復興、人類社会の福祉に貢献し、世界の学界と提携して学術の進歩に寄与することを使命とし、ここに設立される。」

 これが昭和24年に設立された日本学術会議の基本的精神です。

 第25期(2020年10月から3年間)における日本学術会議の活動は、総理大臣による理不尽な任命見送り問題の解決への取り組みから始まりました。政府による任命見送りは、透明性を欠いた決定と言わざるを得ず、その理由も示されていない点で、最低限の説明責任も果たされていません。そして、今日にいたっても解決していません。このような状況の下ではありましたが、世界の変化が著しく加速しつつある21世紀におけるアカデミーの役割を改めて明確にするために、日本学術会議は自らの改革についても検討を開始しました。

 その際、日本学術会議はアカデミーの本質的要件として5要件((1)学術的に国を代表する機関としての地位、(2)そのための公的資格の付与、(3)国家財政支出による安定した財政基盤、(4)活動面での政府からの独立、(5)会員選考における自主性・独立性)を提起し、今後のアカデミーの果たすべき役割、現行体制のもとでの日本学術会議の改革方策などを包括的に検討したうえで、2021年4月に「日本学術会議のより良い役割発揮に向けて」を公表しました。そして、ここに記した改革方策を着実に実行するとともに、科学技術担当大臣との対話も開始しました。

 しかし、政府の考え方を示した方針の公表という当初の約束が果たされないまま、2022年8月に担当大臣が交代し、その後、新たに日本学術会議担当となった大臣のもとでも政府方針は公表されず、実質的な対話のないままに推移しました。そして、2022年12月に唐突に日本学術会議法の改正という政府方針が一方的に通告されたのです。

 われわれは、何の対話もないまま突如政府方針が公表され、その後直ちに1月から始まる通常国会に法改正案を提出するというやり方は拙速であるとの声明を出し、改めて広く学術に関わる関係者を交えた開かれた協議の場を設けて、われわれの報告書も踏まえ、真に日本の未来の学術の発展のために必要な改革の方策について議論すべきであると主張してきました。しかしこの提案は一顧だにされず、内閣府の担当者から、今通常国会に提出を予定されている法改正案についての一方的な「説明」を受けるのみの状況です。われわれは法改正案の検討状況の「丁寧な説明」を求めているのではなく、日本学術会議がより良い役割発揮をするためにどうあるべきかについて「真摯(しんし)な対話」を求めているのです。

 われわれの懸念は、日本学術会議法の前文にあるように「科学者の総意の下」に設立された本会議に関する法改正案を当事者との真摯な対話のないままに内閣府が独自に策定するという手続上の正統性の問題に加えて、提案されている法改正案に含まれる選考諮問委員会の設置、中期業務運営計画の策定そして日本学術会議の存在自体を否定するかのようなフォローアップ方針などが日本学術会議の独立性を毀損(きそん)する可能性があります。この点で、国内外の研究者や学術団体からは、日本学術会議が提起する懸念を共有する声が届いています。

 17世紀にヨーロッパ各国でアカデミーが設立されて以来、学術の健全な発展のためには時の権力や宗教の介入を遮断することが重要という認識がはぐくまれてきました。そしてその際に考えられていたことは、政府などの権力から独立し、自律的に発展する学術がもたらす多様な見解によって、われわれの社会や世界の理解が豊かになり、そのことを通じて人類の福利への貢献が期待できることでした。学術は学術固有の時間軸のもとで編み出された論理と判断によって正当とされる見解を生み出します。この独立と自律を旨とする営みとしての学術を社会の中に備えること、これは文明の作法ともいうべき事柄です。それゆえ、今回の日本政府の法改正によって、日本の国際的な評価や信頼が傷つけられるのではないかという懸念が生まれます。また、国内的にも政府と学術界の信頼関係を蝕み、研究力の低下を引き起こし、さらには学術が社会に貢献するという役割が損なわれるおそれがあります。

 もとより、アカデミーの設立に際しては、それぞれの国の歴史や社会、法制度を踏まえたうえで、先に述べた5要件を実現していくことになり、その姿は多様になります。われわれは、この点も踏まえたうえで、日本における「より良き」アカデミーのあり方についての報告書を取りまとめ、その実現に取り組んでいます。このような考え方のもとでわれわれは政府に対して、今回の拙速な法改正の提案をいったん取りやめ、日本学術会議のあり方を含む学術体制全般の包括的・抜本的な見直しのために、幅広い関係者の参画による開かれた協議の場を設けることを求めているのです。今回の法改正を「日本の学術の終わりの始まり」にしてはならないと考えるからです。

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