「戦争プロパガンダ10の法則」 ~ 今こそ学ぶべき警告
「戦争プロパガンダ10の法則」
1.われわれは戦争をしたくない
2.敵側が一方的に戦争を望んだ
3.敵の指導者は悪魔のような人間だ
4.われわれは偉大な使命のために戦う
5.敵はわざと残忍な行為に及んでいる
6.敵は卑劣な兵器や戦略を用いている
7.受けた被害は小さく、敵に与えた被害は甚大
8.芸術家や知識人も正義の戦いを支持
9.我々の大義は神聖なものである
10.この正義に疑問を投げかける者は裏切り者である
第一次世界大戦時、アーサー・ポンソンビー卿という英国議員が、当時の英国政府を厳しく批判し、著作『戦時の嘘』で「戦争プロパガンダ10の法則」を分析した。それを「発見」したベルギーの歴史学者・アンヌ・モレリは、この「衝撃的」法則を用いて、2つの大戦から湾岸戦争、NATOのコソボ爆撃、アメリカのアフガニスタン空爆までの嘘を、著作『戦争プロパガンダ10の法則』であぶりだした。
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これと共鳴するのが、ヘルマン・ゲーリング〔ナチス政権下の国家元帥〕の発言(ニュルンベルク裁判)
「……もちろん、国民は戦争を望みませんよ。運がよくてもせいぜい無傷で帰って来る位しかない戦争に、貧しい農民が命を賭けようなんて思うはずがありません。一般国民は戦争を望みません。ソ連でも、イギリスでも、アメリカでも、そしてその点ではドイツでも同じ事です。政策を決めるのはその国の指導者です。そして国民は常に指導者の言いなりになるように仕向けられます。
……反対の声があろうがなかろうが、人々を政治指導者の望むようにするのは簡単です。
国民にむかって、われわれは攻撃されかかっているのだと煽り、平和主義者に対しては、愛国心が欠けていると非難すればよいのです。そして国を更なる危険に曝す。このやり方はどんな国でも有効ですよ。」
そして、クウェート、イラク、コソボ・・・、その手のプロパガンダで「活躍」をしてきた。
今の世界を見るうえで重要な警告と思う。
国際紛争の現場で活動してきた伊勢崎賢治氏は上記の「10の法則」にふれ、相手を「悪魔化」する手法として、今回のウクライナ危機に言及している。
①「われわれは戦争はしたくない」、②「しかし敵側が一方的に戦争を望んだ」――ウクライナ戦争は、今年2月24日に突然、宇宙から火星人が攻めてきたかの如く始まったものではない。ウクライナは2014年から8年間ずっと内戦状態であり、その延長として今の戦争がある。侵略は許されないことだが、そこには理由がある。その理由について考えさせない。
③「敵の指導者は悪魔のような人間だ」――プーチンだけが悪魔化されている。プーチンだけが悪魔か? それを非難する側のアメリカはどうか? 僕が関わったアフガニスタンでは8万人も殺し、イラクでは20万人だ。死者の数だけで比べることはできない。だが、ロシアの侵攻を問題にするのなら、大量破壊兵器の所在を偽装してまでイラクへの侵攻を正当化したアメリカと相対化されるべきだ。だが、そのように相対的に悪魔を見ようとするだけで「プーチンの味方をしている」といわれる。
僕を攻撃する人たちは、プーチンだけを「絶対悪」「抜きんでた悪魔」と見せたいのだが、それは日本にとっても好都合なわけだ。軍備増強のために。それにリベラル護憲派と称する人たちも乗っかっていると言わざるを得ない。
④「われわれは領土や覇権のためではなく、偉大な使命のために戦う」――使命とは何か? 自由と民主主義? その自由と民主主義のためにNATOとアメリカが20年戦った顛末について後述する。
(メモ者 米ブラウン大学の研究では、対テロ戦争20年のコスト8兆ドル、死者90万人。しかもアフガンではタリバンが復活し、米軍は、NATOの条項にもとづく唯一の共同行動だったにもかかわらず、同盟国に相談もなしに一方的に撤退した)
⑤「われわれも意図せざる犠牲を出すことがある。だが敵はわざと残虐行為におよんでいる」、⑥「敵は卑劣な兵器や戦略を用いている」、⑦「われわれの受けた被害は小さく、敵に与えた被害は甚大」――今情報は西側からしか入ってこない。ロシア側からの情報は完全にシャットアウト。情報統制だ。それに異議を唱えるメディアがない。おそらく第二次世界大戦もこんな状態だったのだろうが、僕は65年生きてきて、こんな状態を目の当たりにするのは初めてだ。まして日本で。
⑧「芸術家や知識人も正義の戦いを支持している」、⑨「われわれの大義は神聖なものである」、⑩「この正義に疑問を投げかける者は裏切り者である」――悪魔を相対的に見るというだけでも「裏切り者」扱いされる。ロシアを外交的に利するかもしれないという政治的思惑を優先し、非力な被害住民の側の視点に誰も立とうとしない。
「悪魔」があらわれるたびに「この悪魔はこれまでの悪魔とは違う」という理屈で、これがくり返され続けるのだ。
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印象に残るのは、「ただちに殺傷をやめよ」「停戦を」という呼びかけも、侵略の現状を追認するものとして非難される、と平和構築の難しさを語っていること。
「ソ連」崩壊後、アメリカにとっての脅威は、「日本」「悪の枢軸」「対テロ戦争」そして「中国脅威」と、つねに「脅威さがし」が、続いている。経済的なチャレンジャーの排除、アメリカの覇権維持、それと呼応した膨大な軍事費・軍産複合体の利益擁護という深いところからの衝動が見て取れる。
今回の「台湾有事」「敵基地攻撃」も、「10の法則」にもとづき捉える必要を感じる。
なお、戦争「PR報道」、さらにプロパガンダについての考えさせられるレポート
【世界中が衝撃を受けた「戦争広告代理店」の実態と教訓 そしてトランプは何を変えたのか?
伊藤 剛 asobot inc.代表 19/3/8 現代ビジネス】
https://gendai.media/articles/-/60220?imp=0
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