政策メモ 22/7-8 社会保障、ジェンダー、教育、デジタル
3 社会保障、ジェンダー、教育、デジタル
【社会保障】
◇「社会保障に」どころか 消費税を財源に病床削減 21年度は予算倍増 医療破壊進む 7/9
・「病床機能再編支援」 2020年度新設。21年度に予算を195億円に倍増。同年5月の法改悪で消費税による支援を法定化。減床数に応じて1床あたり114万~228万円を支給。
・国が募集している「重点支援区域」では、統合する関係病院に1・5倍多く1床あたり最大342万円を支給。すでに計12道県18区域が選定されており、半数超の9道県10区域で統合を決定しています(6月末時点。実施済み含む)。
医療従事者の絶対的な人手不足には目を背け。「働き方改革」ですら、「周産期医療の提供が不可能となる」という地域が出ている深刻な実態/ 総務省調査では、最寄りの医療機関まで1キロメートル以上の場所に住む高齢夫婦世帯は18年に120万世帯で08年比4割増
◇医師 絶対数増やせ 12県の「知事の会」が提言 7/17
・「地域医療を担う医師の確保を目指す知事の会」(会長・達増岩手県知事/青森県、岩手県、秋田県、山形県、福島県、茨城県、栃木県、群馬県、新潟県、長野県、静岡県、宮崎県 12県)。15日、「『地域医療崩壊』の危機的状況」とし、絶対的な医師不足や地域・診療科間で医師数が偏っている問題の根本的解消を求める提言を決議
・提言~ 感染症大流行への対応のためにも医師の絶対数を増やすべき。大学医学部の臨時定員増の延長・恒久化とともに、さらなる大幅定員増や医学部新設を可能とするよう要求。特に医師が少ない県には、地方で働く医師を増やすため設けられた「地域枠」の優先配分・恒久化などを求めている。
・2024年度から導入される時間外労働の上限規制にも言及。影響調査や、大学病院の医師派遣への財政支援を行うべきだと明記。研修医の採用先が都市部に集中する現行制度の見直しも「速やかに」行うよう要望。
・決議に先立つパネルディスカッションでは、政府が求める中核病院への「集約化」で「医師少数県では地域医療の維持が困難になる可能性がある」(青森県内の病院長)との懸念の声。
◇利用料2倍になれば3割「中止」「回数減」 デイサービス利用者 7/24
・協会調査 ~ 日本デイサービス協会の調査結果(19日公表)~ 財務省の財政制度等審議会は今年春、2024年度から、介護サービスの利用料について、「原則2割」負担に引き上げるよう政府に提言。調査は、デイサービス利用者3020人を対象に、アンケート形式で行ったもの
・、「原則2割」負担が導入された場合のデイサービス利用に与える影響について
→ 「今と変わりなく利用する」(46・6%)/ 「利用回数を減らす」(17・8%)、「利用時間を短くする」(5・6%)、「利用を中止する」(3・9%)、「加算サービスをやめる・減らす」(3・1%) ~ 、3割の人が利用を抑制すると回答
・利用を抑制するとした人の理由~ 66%が「負担金額が大きい」/別の質問で利用料について、65%の人が「現状(1割)を維持してほしい」と回答。
・利用を抑制した場合に一番心配なこと~ 「筋力低下等による体調悪化」(30・4%)、「外出する機会が少なくなる」(21・9%)、「人と会わなくなるので生活意欲が落ちる」(18・9%)の順/利用抑制が心身の機能や意欲の低下が懸念
・利用者の声~ 「家族が仕事に行けなくなる」「2割になると、毎月3万円近く費用があがる」「物価は上昇しつづけ、年金は下がる中、介護サービスも上がる。この先どうやって生活を維持していくのか」「政府の無策を高齢者にしわ寄せしないでほしい」など多くの反対意見
◇介護施設の人員配置基準 引き下げ反対7割 都内特養 サービスの質“維持できず”8/14
都社会福祉協議会の高齢者福祉施設協議会(高齢協)の調査/ICT活用などで、員配置基準を、現行の「3対1」から「4対1」に引き下げる検討について/今年3~4月、特養512施設対象に実施し、371施設から回答
・回答施設の平均人員配置は「2・01対1」~国基準の「3対1」より手厚い人員配置でケアを実施
⇔ 理由(複数回答)/「3対1」では「介護サービスの質を維持できない」(85・7%)、「シフト(勤務)が組めない」(81・4%)、「有給休暇の取得ができない」(80・3%)の順
・新基準で、現在と同じ水準のケアを提供できるか~ 92%が「不可能」と回答
⇔た理由(複数回答)/「ICT機器などは職員の現状の負担軽減や業務省力はできても人の代わりにはならない」(85・2%)、「ナースコールが同時になった場合駆け付けられない」(70・4%)、「職員1人にかかる負担が増大する」(69・5%)
*高齢協 「『3対1』でも成し得ない状況下で、ICT機器が人員配置基準緩和の条件にはならないことを裏付けている」
岸田政権が狙う人員配置基準の引き下げについて 68%が「反対」。「賛成」6%
⇔ 「反対」の理由(複数回答) 6割以上が「介護人材不足を配置人員削減で補うことに限界がある」(64・4%)、「利用者の安全の確保が困難になる」(63・6%)
◇負担増議論 加速警戒 介護保険部会 複数の委員 8/25
社会保障審議会介護保険部会~、9月下旬にも負担の原則2割化など「給付と負担」の議論に入る見通しで、複数の委員から警戒する声が出た。
・認知症の人と家族の会常任理事の花俣氏 「本人や家族が何より不安に思っているのが給付と負担の事項だ。多くの人が知らないうちに、十分理解できないまま、負担増やサービス削減が決まることがないよう、慎重かつ丁寧な運営を」
・連合の小林氏、財政制度等審議会の建議に盛り込まれたケアプラン有料化について「サービス利用抑制の懸念や適切なケアマネジメントの利用機会確保の観点から慎重に検討すべきだ」と主張
・新型コロナウイルス感染症の第7波をめぐっても意見が出され
花俣氏「介護事業所のクラスターが全国的にまたしても拡大している。これまで以上に介護労働者を支える方策を考えてほしい」と要望 / 日本医師会常任理事の江沢氏「死者の多くは虚弱な高齢者で、早期の治療介入の遅れが原因の一つだ」と指摘し、次期改定に向け施設入所者への医療支援など感染症対策を議論するよう求めた。
◇外来再編で受診制限狙う 岸田政権 窓口負担増で患者誘導 受診控え・健康悪化の危険 7/30
・来年1~3月ごろに都道府県が公表する「紹介受診重点医療機関」(以下、重点機関)=近所の診療所などから紹介状をもらってきた紹介患者への外来を「基本」とする医療機関を明確にする。
・年1回の外来機能報告を病院と有床診療所に義務付け(無床診療所は任意)~抗がん剤治療や日帰り手術を行う「重点外来」の基準を満たす医療機関に担わせる考え
・政府は「フリーアクセス」を以前から「医療費の増大を招きやすい」と敵視。「緩やかなアクセス制限」を狙ってきた。
→ 制限に利用するのが患者の負担増/一般病床が200床以上の重点機関に対し、紹介状なしで受診⇔窓口負担とは別に▽初診時7千円以上▽再診時3千円以上の追加負担の徴収を義務付け(救急患者らは除外)= 厚労省は200床以上の病院の4割が重点機関を担えると評価/重点機関に行くため紹介状を書いてもらう場合も 原則750円の負担増
・保険給付削る仕掛けまでも
・追加負担徴収が従前から義務付けられていた大病院~ 患者の2割が「行きやすい場所にあっ」と回答/200床以上の中規模病院では患者の5~6割も同じ理由」(ともに厚労省の18年度調査)~医療機関が少ない地方で受診控えの懸念
★今回の負担増~保険給付(7~9割)を削減する仕掛けも/新たな負担増への「アリの一穴」に
→6月「骨太」 重点機関以外の「かかりつけ医」機能の制度整備を明記/財政制度等審議会 5月の建議 患者情報を事前登録せず認定「かかりつけ医」を受診した患者への窓口負担増を迫る。財界は、すべての患者に対する外来受診時の定額(ワンコイン)負担の導入を再三要求
→ 窓口3割負担(現役世代)=7割給付を将来も維持するとした健康保険法の規定を実質的に葬り去る考え
・7/20 厚労省の有識者検討会~医療関係の委員「持病がある人は複数の診療科にかかっている。かかりつけ医の登録制は現実的ではない」とクギを刺す意見。
・政府/外来患者減で医師の「勤務負担を軽減」と正当化~が、絶対的な医師不足は放置。医療費抑制ありきの姿勢
◇物価高 つづく食品高騰 病院給食を直撃 国は食事療養費引き上げを 8/25
北海道釧路市にある釧路協立病院(108床)。給食る直営で、病院のほかサービス付き高齢者住宅など3事業所に1日あたり計約400食を提供。
「コメ以外ほぼすべての食材が値上がりしている」 「目立つのは魚介類と植物油で、昨年同時期に比べて約2割増。油は3~4年前に比べて2倍に。一部の冷凍野菜は15%、鶏・豚肉も7月から10%上がりました」
・ 民医連道央事業協同組合給食事業 札幌市内で2カ所のセントラルキッチンなどを運営。病院や介護・福祉施設などに1カ月で約15万食を提供。 「4~6月は、昨年同時期比で1食あたりの食材費が5%上がりました。年額に換算すると材料費増だけで2千万円超に。大変な打撃です」 「1円でも安い代替品を探し栄養バランスを保った食事を提供するために、懸命に努力しています。コロナ禍で経営困難な病院や介護事業所に値上げを求めることはできません」
・食材費も増加 ~ 根本には、国が1994年以降28年間、医療機関への食事療養費を据え置き/病院の給食部門の多くは直営、委託の運営形態を問わず赤字構造。他方、患者の自己負担額は増
⇔病院・介護事業所への食事は、厚生労働省が5年毎に改定を行っている「日本人の食事摂取基準」に基づいて提供。
現在の2020年版では「誰もがより長く元気に活躍できる社会を目指」すとされ、とくに高齢者の低栄養予防の観点からエネルギーやたんぱく質の目標量が引き上げられた。
→ 指針に基づいたバランスのよい献立には、当然食材費も増える/が、国による手当なし
*国は基準を守っている医療・介護現場の努力と苦労に真摯に向き合い、しっかりと手当をしていくべき
◇政府賃上げ方針 看護師の4割のみ 現場に分断 医労連が見解 8/27
24日、中央社会保険医療協議会が10日に答申を示した看護師の賃上げ補助事業に関する診療報酬上の評価について見解を 出した。
・今回の診療報酬改定で約3%(月額1万2千円)の賃上げとなっており、一定の評価に値する/が、賃上げ対象が就労看護師の4割弱、施設数でわずか1・5%程度。対象を看護職員に絞り、医療現場に差別と分断を持ち込むと指摘。
【労働・ジェンダー】
◇着替えは労働時間 労基署が是正勧告 フジオフード 未払い額 年3億円 7/15
・首都圏青年ユニオン飲食業分会(飲食店ユニオン)~ 飲食大手、フジオフードシステムの着替え時間の未払い賃金を労働基準監督署に申告し、是正勧告が出たと発表。推計で週2回勤務で年5万7000円、総額は3億円に
・フジオフード(グループ本社・大阪市、正社員498人、アルバイト6264人)~ 「まいどおおきに食堂」「串家物語」など多数の飲食チェーンを展開
・会社は、制度を見直すと言うも、過去の未払い分の支払いは拒否。団体交渉が続けられている。
着替え時間については、2015年2月、日本共産党の吉良よし子参院議員が国会で追及/当時の安倍首相が認め、17年1月の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」に明記されている
◇情報開示を義務化 男女賃金格差、法改正を施行 7/10
・ 厚生労働省は8日、女性活躍推進法の省令・告示の改正を施行し、男女賃金格差の情報公開を義務化
・ 義務化の対象~ 常用労働者301人以上の企業、1万7650社/事業年度が4~3月の場合、同年6月末までに公表
・ 男性労働者の賃金の平均に対する女性労働者の賃金の平均を割合(%)で示し/「全労働者」「正規雇用労働者」「非正規雇用労働者」の区分での公表が必要
◇日本の男女平等116位 主要7カ国で最下位 労働参加下落 賃金差も低下 7/13
・ 「世界経済フォーラム」 2022年版の「ジェンダーギャップ報告書」を公表 /146カ国を対象に、各国の教育・健康・経済参画・政治参画の4分野での男女平等の達成率(ジェンダーギャップ指数)を調査
・日本 65・0%で、前年の65・6%から後退し、順位も下位の116位。主要7カ国では最下位
・日本が後退した要因 ~ 経済参画の達成率が前年の60・4%(117位)から56・4%(121位)、「2016年と同じレベル」に下落/コロナ禍に伴う休業や倒産、解雇が急増するなか、女性労働者の減少が男性よりも大きかったため、労働参加の達成率が84%から75%に大きく落ち込み、同一労働における賃金格差の是正も65・1%から64・2%に低下。管理職の女性比率は17・3%が15・3%と、もともと低かった達成率がさらに悪化
・国会議員や閣僚の男女比など政治参画 前年と同じ6・1%で、世界平均(22%)を大きく下回ったまま
*、世界全体の達成率 68・1% 、前年の67・9%からわずかに前進/ トップは、13年連続でアイスランド(90・8%) 主要7カ国 ドイツ10位、フランス15位、英国22位、カナダ25位、米国27位、イタリア63位
東アジア・太平洋地域でも最下位 経済・政治分野で達成率下落
・東アジア・太平洋地域では19カ国中13カ国が前年から達成率を向上させるなか、日本は最下位に
~ 1位はニュージーランド、2位がフィリピンだったほか、タイやベトナムなども達成率70%超え。
・WEFは、ジェンダーギャップが解消されるまでにかかる年数も試算~ 世界全体では132年を要し、東アジア・太平洋地域は8地域のなかで2番目に長い168年かかる見込み/報告書で、日本を名指しし、「さらなる努力が必要」と指摘
◇労働者“強ストレス下”5割超 厚労省調査 原因「仕事量」が最多 派遣の6割超「安定性」原因 7/11
・厚労省5日発表 2021年の「労働安全衛生調査」 ~ 労働者の53・3%が仕事上で強いストレスや不安を感じている/ 年代では30代が59・5%と最も高く、50代、40代が続く
・ストレスの内容~
「仕事量」43・2%で最多。ただ、20歳未満と60歳以上では「仕事の失敗、責任の発生等」が最多
セクハラ・パワハラを含む「対人関係」 男性で22・6%、女性で29・1%と6ポイント以上の差
「雇用の安定性」 正社員9% が、契約社員17・7%、パートタイム労働者26・7%、派遣労働者65%と大きな開き
・メンタルヘルスの不調によって過去1年間に1カ月以上休業もしくは退職した労働者がいた事業所 10・1%
常用労働者のうち休業・退職した労働者の比率は0・7%で、事業所規模が大きくなるほど高まる傾向
比率が最も高かった業種は「情報通信業」「金融業、保険業」の1・5%(休業1・2%、退職0・3%)、次いで「電気・ガス・熱供給・水道業」が1・4%(同1・2%、0・2%)
【教育】
◇教科書 政府介入(昨年の閣議決定)を憂慮 日韓2団体呼びかけ 声明 7/13
子どもと教科書全国ネット21と韓国の市民団体「アジアの平和と歴史教育連帯」が共同で呼びかけた「教科書記述に対する日本政府の政治介入を憂慮する」声明を発表(7/12)/日本176団体、285人、韓国8団体、213人の賛同
・日本政府 昨年、「従軍慰安婦」の「従軍」や朝鮮人の「強制連行」などの言葉を不適切と閣議決定。文科省は教科書検定で、これらの用語を削除させた。
・声明~「日本政府の権力的な介入に深い憂慮を表明せざるを得ない」とし、▽教科書に対する政治介入を直ちに中止▽「従軍慰安婦」「強制連行」「連行」などの用語使用禁止の撤回▽被害者の人権を大切にし、アジアと世界の平和に向けた歴史教育の支援―などを要求
・歴史教育連帯の李信澈(イ・シンチョル)常任共同運営委員長 「日本政府が、日韓関係に対して改善する意思がないのではないかと憂慮している。多くの韓国の市民や教員は、心の底から日韓関係の回復を願っている
・教科書ネットの鈴木敏夫事務局長 「一定の政府の見解が出ると教科書の中身が変わることは、近代的な国家の姿ではない。これが横行すれば、集団的自衛権でも憲法問題でも、政府の顔色を見て教科書をつくることになる」と批判
◇教職員欠員1028人 「教育に穴があく」 19都道府県・4政令市 全教が調査結果発表 8/3
・未配置~小学591人、中学240人、高校70人、特支90人など/欠員・定数477人。代替・病休110人、産育休70人
・実態の報告 「副校長を仮担任として発表」「72歳の代替教員に担任をお願いした」(小学校)、「技術・家庭科の欠員に、他校の教員への兼務依頼で対応」(中学校)、「代替教職員が見つからない状態のまま」(高校)、「特支3校、各学部合わせて19名が不足している」(特別支援学校)など
・結果について、「教育に穴があく」深刻な実態が明らかになった。「国が正規教員を抜本的に増やすための施策をとってこなかったこと、人件費抑制のために正規教員を臨時採用や非常勤に置き換えてきたことに原因がある。現場の働き方は限界に達しており、改善を求めて国や文科省に申し入れていく」 / 4年前の調査結果と比較しても病休や定年前退職などが増えており、「管理的・競争的な施策が過密な課題を押し付け、多忙化に拍車をかけている。抜本的増員とともに、管理的・競争的な教育施策の見直しも求めていく」と強調。
≪溶ける公教育 デジタル化の行方 第2部 7/19-≫
・シリーズ第2部では、経産省が教育のデジタル化で描く「天下国家」論の実態を追う。
(1)経産省教育産業室の野望
・「日本株式会社の司令塔」と呼ばれた通産省の役割~76年には米IBM社の大容量半導体メモリの開発計画に対抗するため、国内で競合している富士通、日立製作所、三菱電機、NEC、東芝の技術者を糾合した「超LSI技術研究組合」の設立を主導。80年代に日本企業が世界の半導体市場を席巻する原動力になった。
・転機は80年代後半の日米貿易摩擦~ 通産省主導の産業育成政策が米側から「日本異質論」と批判され、司令塔機能が大きく後退/ 90年代、「政治改革」「行政改革」の嵐の中、98年の中央省庁等改革基本法成立~ 新たなる経済産業省は個別産業振興政策から決別し「市場原理を尊重した施策に移行する」と宣言
→ 元経産官僚の古賀茂明/自由化で許認可権を手放した同省が見いだした“活路”= 他省庁の所管に口を出し、規制緩和を求めてその分野に進出すること。
「課の新設には政令改正が必要で閣議決定事項です。他省庁の分野だとその役所の大臣が閣議で反対しつぶされるので、まずは経産省単独でできる省令で『室』をつくり、そこに有識者による研究会を組織する。研究会のトップには学者を据え、委員にはベンチャー企業などの人間を入れる。経産省の天下り先として業界団体をつくらせ、政界へのロビー活動もやらせて課の立ち上げにつなげる。一種の法則です」
・2017年、経産省サービス政策課に新たに「教育産業室」設置~ 初代室長・浅野大介氏 同省が厚労省の所管に踏み込んだヘルスケア産業課(11年発足)を参考にした(『教育DXで「未来の教室」をつくろう』)
→経産省内閣と呼ばれた安倍政権/ ヘルスケア産業課長を務めた人物が、経産省の肩書をつけたまま厚労省医政局統括調整官を拝命した時代。浅野氏「表向きの所掌事務は『教育産業の振興』と小さく、しかし本当の狙いは大きく『学校も含めた日本の教育改革』」(前掲著)
・なぜ経産省が教育政策を立案するのか。取材(2月)に答えた浅野氏 ~ 「工場労働者のように均質で従順な労働力を大量に生産するなら昭和の学校モデルでいい。だけど、それでは日本から世界に衝撃を与えるイノベーションは起こらない。これからの時代に必要な力を一人ひとりの子どもに育てるには、外部の力を借りなければならないし、デジタル環境の整備が必須だ。文科省の所管だからほかの役所は考えなくていいとはならない。縦割り打破だ」
(2)新しい資本主義と稼ぐ校舎
・世界有数の金融街ロンドン・シティーで5月、岸田首相は格差や気候変動に対応するため資本主義の「バージョンアップ」を呼びかけた~ 同地は巨大なタックスヘイブンで知られ、世界中の富を収奪し市場原理を振りまく新自由主義の震源地/その住人に向けて岸田氏の口から真っ先に出てきた言葉は「インベスト・イン・キシダ(岸田に投資を)」
・社会課題 巨大金融資本に反省を求める代わりに岸田氏が「新しい資本主義」の柱としたのは、行政が担ってきた医療や介護、教育など「社会課題」の市場化~市場化により社会課題の解決と経済成長が可能になると主張
⇔ 芝田英昭立教大教授 / 経営リスクは行政、収益は企業という「新しい資本主義」を批判~ 2000年代に民間参入が進んだ介護では近年、倒産件数が増え続け、低い介護報酬では高収益は見込めないので、介護をデジタル機器やロボットの市場に変えた方が確実にもうけられると企業経営者たちは学んだと指摘 /「デジタル化が悪いわけではありませんが、政府の目的はデジタル化を口実にした人減らし。医療、教育でも同じ
→ 岸田首相は新自由主義への反省と言うが、発想は新自由主義そのもの。『新しい弱肉強食』」
・実際、介護現場ではデジタル機器の導入と引き換えにした人員配置基準の引き下げ
・「『未来の教室』とEdTech研究会」で2度の提言を発表。EdTech(エドテック)は英語のエデュケーション(教育)とテクノロジー(技術)を組み合わせた造語。
→ 第1次提言に描かれた「未来の教室」のラフスケッチ/民間と公教育の壁は完全になくなり、「教室で自分の好きな学習塾の先生のオンライン講義動画をタブレットで見て、自分の進度に合わせて個別に学ぶのが一般的になる」「午前中は学校に通い、午後はフリースクールや学習塾に通う」「必ずしも全員が『教える先生』ではなくなる」「個々の生徒がどんな教材で学びどのような様子なのかをデータで把握し、生徒一人一人のカルテを頭に入れ個別に対応する役割になる」
・「学習室」~ 従来の教室風景は「一律・一斉・一方向授業」として否定。教室は学び合いの場から、単なる「学習室」となり、教師は教育の専門家から子どもの「思考の補助線」を引く存在に姿を変える。
→ さらに昨年、産業構造審議会に教育イノベーション小委員会が発足~初会合に事務局が用意した論点整理 「稼ぐ校舎」の打ち出し~教室や体育館、プールなどの施設を学習塾やスポーツクラブに貸すことで資金を稼ぎ、教育予算として還流する構想。校舎やタブレット、教材に企業広告を載せることも提案
*校舎の外壁や掲示板に民間教育産業の広告があふれ、教室では子どもたちがばらばらにタブレットの動画を見つめ、校長はいかに利益を上げるかに追い立てられる― そんな学校の未来像が浮かぶ
(3)学習履歴が格差固定に
・デジタル庁が中心となり1月にまとめた「教育データ利活用ロードマップ」~ 教育のデジタル化の所管は文科省。が、実証事業は経産省と総務省も予算を持つ~ この3省1庁の共同文書として発表されたロードマップは、明らかに経産省色
・経産省が18年と19年にまとめた「未来の教室」の提言~デジタル化の目的は「誰でも、いつでも、どこでも、何歳でも」/「どこでも」の核心は「自宅でも学校でも学習塾でも」の言葉。学校は学びの場の一つの選択肢になる。
・中央教育審議会が昨年まとめた答申~ デジタル技術を「学校教育を支える基盤的なツール」と位置づけ/経産省の議論を横目で見ながら、あくまで教育活動の中心は学校にあるとした。
記録収集
・ロードマップの標語は「誰もが、いつでもどこからでも、誰とでも、自分らしく」~ 「学校は児童生徒が学校で集うことでしかできない学びを行う。それ以外の学びは、学校でもそれ以外の場所でも、本人に最適な場所で学ぶ」の文言
→ 「中教審の議論より先鋭的に見えるかもしれませんが、文科省の人たちだって本当はそう思っているということです」。
→ 浅野大介教育産業室長の話/ ロードマップは、新型コロナ危機で進んだ小中学校での1人1台パソコンも使って学びの記録を収集し、最終的には「生涯にわたり自らのデータを蓄積・活用できるようにする」 / 蓄積される情報は、幼児期から生涯教育に及び、学校の履修記録や成績、塾など民間教育機関での学習履歴、学校の出席状況、健康や体力の情報、保護者との関係まで多岐にわたる/子どもの不利益になる記録がいつまでも残る懸念
→ デジタル庁の説明 学習履歴をの利用はあくまで本人、データが民間には渡らない仕組みにする ⇔ が、ロードマップには小さな字で「本人の同意があれば」「匿名加工情報であれば」学校のデータも提供可能と記載
・経団連 20年発表の「新成長戦略」 将来的には「採用、処遇、評価」に学習履歴を活用すると明記。
家庭で差 ~ 3~18歳の子どもを持つ母親を対象としたベネッセの調査 ~ スポーツや芸術を含む学校外教育活動費用 年収400万円未満の世帯では月8千円。800万円以上では2万5千円と3倍以上の開き。都市部ほど支出大。
・現状の格差のもと、学校が教育活動の中心から外れれば・・・・
⇔、蓄積される学習履歴の内容はいっそう家庭の経済力に依存/「企業には自分が見せたい学習履歴だけ見せればいい」(浅野氏)といっても、家庭の経済力や地域で厳然たる差が出てくることは不可避
→それが就職などその後の処遇にまで影響すれば、格差固定の仕組みに
(4)校舎に入り込む企業社会
・前川喜平氏~ 同省は、民間教育産業には関知しない立場をとってきた/ が、「文部省が所管を主張しないので教育産業はいわば“無主物”でした。そこに通産省(現経済産業省)が目をつけ1980年ごろから占有権を主張しだした」
→ 文部省が積極的にかかわらなかった背景/ 60年代以降、「受験戦争」の名で社会問題化した受験の過熱化に、教育産業が一役買っているとの認識があった。受験で追い詰められた子どもをめぐり様々な事件が起きるなか、過熱化解消を政策目標とする文部省の基本的な考え方は「塾はない方がいい。学校で事足りるというものだった」
→ 70年代 深夜や休日に及ぶ長時間の塾通いが「乱塾」と問題になると、文部省は繰り返し過度な塾通いの弊害を指摘。99年の生涯学習審議会(文相の諮問機関)の答申も、過度の塾通いとその低年齢化を警鐘。
★前川氏 「教育産業が公教育を乗っ取る動きには文科省として抵抗しなければいけない」と苦言を呈す。
・児美川孝一郎法政大教授 ~ 2016年の第5期科学技術基本計画を境に、極めて短期間に公教育と教育産業の壁が消失しようとしていると指摘/ キーワードは、中西宏明日立製作所会長(当時、後に経団連会長)が提唱し計画に取り入れられた「ソサイエティー5・0」という概念
→ インターネットを産業基盤だけでなく、社会課題解決策と捉える点が特徴/ 「新しい資本主義」の理論的支柱
人材育成
・産業界の求める人材育成への期待に留まらず、ソサイエティー5・0では公教育を含むあらゆる分野が市場化の対象とされ、公教育は「教育産業」だけでなく「企業社会」からの干渉と参入にさらされることに(児美川氏)
→ 経産省や文科省が実施している教育のデジタル化の実証事業 / デジタル機器メーカーのソニーやコニカミノルタ、人材派遣のパソナやリクルート、凸版印刷や住友商事、JTBなど多様な業種から企業が参加
→ 経産省の審議会/ 教員免許状を持たない外部人材の教員採用の拡大が提案され、企業が公教育に参入する利点として、学校を市場の調査や開拓に利用できるとの声があけすけに語られている。
・児美川氏 ~ 教科学習だけでなく特別活動や生徒会活動を通じて学校が培ってきた子どもたちが主権者として育つための力は、経産省の「未来の教室」では絶対に身につけられない/ 「経産省も協働的な学びを重視するといいますが、それはせいぜい学びを一緒にやるだけ。これまでの学校の共同・協同の学びの豊かさとはレベルが違う」
⇔ 同時に、不登校の急増、理不尽な校則、教師の長時間労働の原因となっている部活動など、現在の公教育の弱点を経産省が巧みに取り上げ、子どもや保護者、教職員らの一定の支持を集めている / 学校が抱える問題点を直視しなければ、それによって苦しんでいる子どもや保護者を経産省や教育産業の側に押しやることになりかねない危険。
◇生徒指導提要」改訂案を大筋了承 子どもの権利条約明記 校則見直し必要性言及 8/27
・文科省有識者会議 26日、生徒指導の基本文書「生徒指導提要」の改訂案を大筋で了承~現行の提要が校則や学校の規律に関して子どもの尊厳や人権に全く触れていないのに対し、改訂案は子どもの権利条約を紹介し「児童生徒の基本的人権に十分配慮」するよう求めている。
改訂案 「生徒指導の取り組み上の留意点」
・第一に教職員の子どもの権利条約についての理解が重要と強調し、子どもの意見表明権など同条約の4原則を紹介
実態に合わない方針や基準が硬直化して運用されると子どもの成長にマイナスに働くことがあると指摘
・校則の制定にあたっては子どもの権利の視点が重要とし、一度定めた校則も絶えず見直しが必要と指摘
~見直しに子どもが主体的に取り組むことは教育的意義があると指
・日本共産党 提要を子どもの尊厳と基本的人権の尊重を土台とするものに見直すよう主張。約3千人から回答が寄せられた校則アンケートの結果を文科省に手渡し、改訂作業に生かすよう求めていた。
【デジタル】
◇マイナカード普及へ圧力 総務省方針 交付率低い自治体は地方交付税算定に差 7/20
・交付率が平均を下回るなどの自治体を「重点的フォローアップ対象団体」に選出~ 7月は963団体を指定し、都道府県知事や副知事らを通じて市区町村長らに普及促進の取り組みを求めている。
・マイナンバーカードの取得は任意 が、政府は今年度末までに全国民のカード取得を目標に ~が、 7/14時点の交付枚数 5766万6371枚、交付率は約45・5%
・焦る総務省~ 重点フォローアップ団体を設置/全国の自治体交付率一覧表の提供も5月分から開始
6月、金子恭之総務相~マイナンバーカードの交付率に応じて、来年度から、国が自治体に配る地方交付税の算定に差をつける方針を明らかにした ~ 交付税の目的ゆがめるもの
◇自治体システム標準化 事業者団体 弾力的運用求める 7/21
・25年度末の実施を目指す自治体情報システムの「標準化」⇔民間のIT事業者の団体が見直しを求める異例の提言
・ソフト開発会社やプログラマーなど国内のIT事業者ら538社(全IT従業員数の約3割が所属)で構成する「一般社団法人情報サービス産業協会(JISA)」~月14日に、デジタル庁に提出
・理由①~介護保険や生活保護など基幹20業務の情報システム統一化する方針に対し/ 「住民生活に極めて密接したデータを扱い大規模な作業が発生する」「目標時期にこだわりすぎると安定した住民サービスを提供できなくなる」と指摘
②~現状の自治体の業務システム~各地の中小事業者(地域ベンダー)が運用/小規模自治体では、ITに精通した職員が少なく、標準化業務は地域ベンダーに頼らざるを得ない状況だとも強調。情報サービス業界では人材不足が恒常化し、全国約1700の自治体が一斉に標準化作業に入ると、要員不足となり、十分なサポートができなくなると警告。
③~標準化システムと標準化対象外のシステムの運用が併存するため業務が大幅に増え、住民サービスへの影響が懸念され、国、自治体と地域の事業者との連携や協力体制の構築を求めている
・自治体側の反応~「指定都市市長会」 委託費用の高騰や人材不足を理由にスケジュールの柔軟対応を要望 /小規模自治体やIT企業など29団体や企業で構成する「自治体DX協議会」 財政支援やデジタル人材支援の拡充を要望
◇介護保険 ICT活用で基準緩和 社保審部会 懸念の声相次ぐ 7/27
・来年度の介護保険制度改定~ 6月閣議決定の規制改革実施計画~ 一部の高齢者施設でICTなどを活用した配置基準の「柔軟化」を進める方針を打ち出し、厚労省は基準緩和を見据え、特養などでの見守り機器の効果検証を開始
⇔部会で懸念、批判の声
「テクノロジーの活用でケアの手間が省けるかというと違う。配置基準の緩和については極めて慎重に検討されないといけない」(日本看護協会)
「人が足りないからICTでカバーするという発想は本末転倒だ」(高齢社会をよくする女性の会)
「ケアの質や職員の負担への影響を丁寧に検証・把握し、基準緩和の取り消しも排除せずに検討すべきだ」(連合)
認知症の人と家族の会の花俣常任理事~コロナ禍や人手不足で介護従事者には相当な疲労が蓄積しているとし、「その渦中で生産性の向上やデジタル化による配置基準緩和の提案が出ていることに違和感がある」と批判
日本介護クラフトユニオン会長~組合員への調査で、国基準の「3対1」(入所者3人に対し介護職員1人)より手厚い人員配置でも問題があると認識している職員が3割を占めていると述べ、「介護施設は工場ではない。実証の実施は慎重かつ丁寧に進めてほしい」
日本医師会の江沢常任理事~ICT化による配置基準緩和の「検証はまだまだ不十分だ。ケアの質、職員の労務負担、離職率など、第三者による評価が必要だ」
◇デジタル庁 議事録公開 入札制限ルールを攻撃 コンプライアンス委の役割問われる 8/22
・職員の法令順守を徹底するため、弁護士や会計士らで構成するコンプライアンス委員会(委員長・名取俊也弁護士)の4回目会合(7月22日)の議事要旨を公開・その役割が問われる事態に。
・デジタル庁 職員約730人のうち約250人が民間企業出身~ 民間企業と兼業で働く非常勤職員が入札業務を行う場合、兼業先の企業やその親会社と子会社の入札を原則禁止しており、資料によると6月時点で関係職員の登録案件は53件だと判明。/が、当人とのやりとりの禁止や接触履歴の提出など、一定の要件を満たせば入札制限を解除できる例外措置がある。また、兄弟会社などの関連会社は入札制限の対象外~ 不正行為が起こる可能性は否定できない
・会合で委員から~入札制限ルールに対して「必要な情報収集や情報交換は妨げられるとか、やりにくさがある」「そこがバリアー(障壁)になって必要な仕事ができないということがないようにすべきだ」と攻撃
◇デジタル庁発足1年 報告説明会 8/23 マイナカード押し付け方針
・ 医療DX~ 保険証の代わりに利用できるシステムの導入 2023年4月から義務化/顔認証付きカードリーダーの運用を始めた施設は26・8%(8月14日時点)
・中央省庁や地方自治体 「ガバメントクラウド」は、アマゾン・ウェブサービス(AWS)と米グーグル・クラウドプラットフォーム(GCP)2社のサービスを採用。「他の事業者が追加で参入することもある」
・11月 キャッシュレス法施行 ~四つの手数料等で導入検討。同法では、個別の法令改定なしで導入可~ 支払い件数が年間100万件以上の手数料等を対象に検討。自動車検査登録手数料を今年度中、旅券発給手数料を今年度以降順次、登記関連手数料を24年度以降、交通反則金を24年度末以降 /交通反則金はコンビニ決済も可能となる予定
*翌日の会で、情報システムの調達問題では、これまでは請負契約が多く、業者丸投げやベンダーロックイン(プログラムがブラックボックスで既存開発者しか取り扱えない)、契約価格の高止まりといった弊害がある、、「議論を公開すると逆に混乱を与える」なとど、「情報システム調達改革検討会」の議論を「非公開とする」と表明。
◇ デジタル 構造的問題・脆弱性を指摘 8/19
「通商白書」~「世界規模でデジタル変革が急速に進展」/が、構造的問題や脆弱性への指摘⇔ 国際的には「デジタル変革を実現する上では、国家間で公平かつ公正な競争環境が整備されていることが重要」とし、「巨大化したプラットフォーマー企業に対して、適正な市場活動を行ってもらうべく、横断的なルール整備を進めている」
・「情報通信白書」~「経済分野でグローバル・プラットフォーマーの市場支配力は一層高まりをみせて」/ 「膨大な経済的価値を有するデータの所有が一部のグローバル・プラットフォーマーに集中する」ことで、市民の「行動や嗜好が特定の企業によって管理されるような状況への懸念」があると警告
→ こうした状況に同白書は/EUが産業データへのアクセスに関する域内統一ルールの整備を行って2月に「データ規則案」を公表したと紹介
・国際通信の99%は海底ケーブルを経由~「情報通信白書」は、ケーブル終端の陸揚局が、日本では千葉県房総半島に一極集中し、地震や「意図的な損壊」による通信途絶の「リスクが顕在化している」と指摘
・「情報通信白書」 「ハイテク分野を中心に経済活動と安全保障の関係が現実の政策テーマとして意識されるようになった」として、デジタル化に関する経済安保を強調
~ 情報通信産業の生産額 2014年時点で1位が中国、2位が米国となり、米中の「技術覇権争いを背景」に、米国が「対米投資審査」や「輸出規制」を強化していると指摘。/ 米国の軍事・経済的な対中世界戦略に日本を組み込む「経済安全保障法の成立」を紹介し、総務省として先端技術に対する「国の集中投資による研究開発の加速化を図る」
格差の拡大に ~ 岸田首相目玉政策として、経済安保法に加え、「デジタル庁」「デジタル田園都市国家構想」「日本周回の海底ケーブルの敷設」などの政策を推進
・ 「通商白書」~ 日本がデジタル化で「投資額等で他国に比べ劣後」「産業全体で競争力を喪失」として、国主導の推進強化を提唱。
・「情報通信白書」~ デジタル化が「あらゆる社会経済活動を支える最も基幹的なインフラの一つ」になっているとして、教育分野で「GIGAスクール構想に基づき、全国ほぼ全ての小・中学校において1人1台端末及び校内通信ネットワーク環境が整って」いるなどと解説。
→ 困窮家庭の学習や居場所支援を行うNPO団体からは、最新調査でネット接続できない家庭が調査対象の半数に上ったとして、格差・貧困の新たな拡大を警告。自治体や研究者からは、地方のデジタル化推進によって人的削減や住民サービスの低下が起きると批判が上がっています。
【地方自治・民営化】
◇「命の水」を守るには 自治体学校 水道広域化で分科会 8/10
・立命館大学の仲上健一名誉教授~ 自治体の水道事業は人口減による経営基盤の弱体化や管路の老朽化、専門職員の減少などの課題に直面。18年改定の水道法=「広域化」を最重点課題に位置づけるが。経営の観点だけでなく「命の水」を守る視点が重要だと強調
・広域化を検討する視点~ (1)必然性があるか (2)効果と住民負担の検証があるか (3)広域化で事業運営が困難になった場合や課題が生じた場合、参加自治体の離脱ルールが明確か (4)地理的条件を生かし災害対応の取り組みが万全か―といった観点が必要/ 「水道ビジョン」の策定に市民が深い関心を持つことから出発を、と訴え
・自治労連公営企業評議会 近藤夏樹事務局長~ 香川県善通寺市や大阪市、浜松市などで水道事業の「民営化」は阻止できたが「広域化」は議会の議決が不要と指摘/「広域化すれば民営化するのは容易になる。国は自治体が持っている水道事業体を10分の1に減らし、一事業体のシェアが大きくなった時点で、民営化を狙っている」と警告。
・奈良県の水道事業の広域化計画~井上昌弘奈良市議(日本共産党)、「国からの期限付き補助金目当てで急いでいる」「県の財政シミュレーションでは経費が安くなるとあるが、再計算では財政メリットがないことが明らかになった」と指摘。
◇クローズアップ 香川県 全国初・水道事業の全県一元化 導入4年 問題続出 8/25
■渇水・災害 緊急時に水の保障なし
■広域化により安全危惧の声届かず
■委託業務はや7割 技術継承できず
・全国初の全県一元化・・・18年の改悪水道法にもとづく広域化の矛盾や民営化への危惧が見え始ている。
・2018年4月、市町で水道事業と県の用水供給事業を一元化。水道事務所は県内5カ所のブロックセンターに統合、県知事を企業長とする水道企業団が運営主体(一部事務組合、自治体扱い)
・香川県の背景・・・年間降水量が全国平均の約6割。1974年、高知県の早明浦ダムを水源に香川用水が通水開始(現在 県内の約5割を占める)。が、94年、05年、08年にダム貯水率0%となる異常渇水という「不安定な水源」。させに要注意断層がある阿讃(あさん)山脈を通っていおり、大地震による被災の懸念も/各自治体は、ダムやため池などの自己水源の確保に努めてきた
⊛広域化を強行したが
県は14年、県内自己水源の浄水施設を半分以下に廃止縮小し、香川用水の活用を優先する基本方針を決定。「施設を統合し縮小することで経営基盤の強化を図る」として、全国初の全県一水道の広域化を強行
→ 自己水源廃止は、渇水や災害などの緊急事態に対応が困難となり、「基盤強化」とは言えず、住民から懸念の続出
・市町議会で水道問題が議論できなくなる・・・ 県内2カ所で水源地上流に産廃処理施設の問題がおきていますが、住民の水の安全性を危惧する声は、広域化のため直接届かない
・実質的な民営化・・・広域化を機に浄水場運営業務委託はに70%に拡大/地域の水源地を知る職員が減り、水道事業の技術継承が困難になっている。
⊛見える化を・・・住民ネットワーク「いのちの水を守る会 香川」/企業団に住民が参画する審議会等の場を求めて申し入れを(20年6月)行い、「地区別意見交換会」への公募による住民参加を実現。さらに、各ブロックセンターに浄水場の稼働状況を調べるアンケートを実施するなど、住民に見える水道事業を目指して運動を展開
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