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政策メモ 22/7-8 経済 アベノミクス総括、経済安保

政策メモの(2) 経済関係

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2 経済 アベノミクス総括、経済安保

【 検証 アベノミクス 】

 安倍晋三元首相のアベノミクス(経済政策)は、消費者物価を2%上げて円安と株高を実現すれば、雇用や消費も増え、経済再生が実現するというものでした。結果は、大企業の内部留保が増え、雇用は不安定になり、賃金も上がらず、消費も増えないという失政でした。

 

◇マクロ政策 東京工科大学名誉教授 工藤昌宏さん  7/20-21

  1. 取り残された日本  自立回復できず

・日本経済~ 08年リーマン・ショック、11年東日本大震災に見舞われ、以後長期の停滞状況に

⇔背景 雇用、所得環境の悪化+増加する国の債務とそれによる国民負担の増大+年金、医療など将来不安の高まり

・13年から本格的に始動したアベノミクス  実質GDP(前年度比)~12年度の0・6%増から13年度には一気に2・7%増を記録/が、巨額の財政支出、東日本大震災の復興需要、消費税率引き上げ前の駆け込み需要によるもの。

・14年度 消費税率8%により、実質GDPは一気に0・4%減/15年度 1・7%増も、前年度のマイナスの反動と財政支出、輸出増に支えられたもの。

・16年度 0・8%増に減速。しかも研究開発費を設備投資項目に組み込んでかさ上げしたもの

・17年度 1・8%増 財政支出、オリンピック、+ 輸出という外的な要因/低金利政策だが住宅投資は落ち込み

・18年度 0・2%増に減速。/ 19年度 消費税率10%により、0・7%減。ついにマイナスに

*他の先進国がほぼ2%台の成長を続けているのとは対照的に、日本だけが自律的回復できず取り残された形に

 

⊛「日本化現象」に

・ 日本経済~雇用、実質賃金、消費支出、消費者物価も低迷

失業率は2%台・・・非正規労働者が就業者の4割近く

実質賃金 、12~20年度 16年度 0・5%増、18年度の横ばいを除きすべてマイナス。

家計の実質消費支出 13年度の0・4%増、17年度の0・7%増を除き20年度まですべてマイナス

消費者物価 消費税率引き上げ14年度に2・9%増となった以外はすべて1%未満、16年度 0・1%減

設備投資も低迷、経済停滞による税収減・国の累積債務の増加

⇔各国の金融担当者 ~ このような長期停滞現象を「日本化現象」と表現/日本のようにはなりたくないというわけ

 

2 政策 的外れで矛盾

 アベノミクス失敗の原因~ 的外れで矛盾した経済政策。その根底に誤った経済認識

⊛失敗七つの原因

第1 経済実態に対する誤った認識~ 経済停滞は世の中にお金が流れてないからと考え、そこで思考停止/なぜ流れないか・・統計数値を見れば、停滞の原因が国民生活の劣化による需要不足なのは明白。それを看過した。

第2 世の中にお金を流せば停滞から抜け出せるという短絡的思考に/が、国民生活劣化によりお金の流れる道筋の修復なしに、金融緩和しても政策は空回り

第3 世の中にお金を流し込めば物価がつり上がり、それを起点に経済は回復するという誤ったシナリオに固執

 虚構の「物価上昇による経済回復」の道筋~ (1)国民に経済が回復しているとの錯覚をもたらし消費を拡大・・・「将来の値上がりを避けるため消費の前倒しが広がる」 (2)企業収益が増大し設備投資を刺激 (3)資産(土地や株)インフレを引き起こし投資を刺激 (4)実質金利(名目金利から物価上昇率を差し引いた値)を引き下げ投資を刺激―というもの

→が、お金がまわらないのは国民生活の劣化。お金を流し込んでも国民生活は改善しない。

第4 金融政策の効果に対する過信と執着~金融政策で世の中にお金が流れ込み、経済は回復するという思い込み

第5 矛盾した経済政策~国民生活劣化のもと2014年、19年の2度にわたる消費税率の引き上げで停滞に拍車

第6 株価や円相場の操作に固執~株価や円相場は実態から乖離し、経済実態を覆い隠した。

第7 18年1月に発覚した実質賃金のかさ上げ偽装に象徴される統計偽装を繰り返し~実態を隠蔽、問題を深刻化

 

⊛国民生活の軽視 ~ アベノミクスのさまざまな弊害

・日銀による大量国債購入~6月には日銀の長期国債保有額は発行残高の50%超に。~ 国の財政が日銀頼みになっていること、国の財政規律が緩んでいること、そして、将来の国民負担増のリスクを高めることを意味

・日銀による長短金利を力ずくで抑え込むやり方~ 金利変動を通じて資金の流れが調整される本来の金融市場の機能を破壊。さらに、日銀による株価操作は、経済を映し出す鏡としての株式市況の機能も奪った。

・肝心の雇用、所得問題を放置し、誤った認識、誤った経済政策をとり続け、さらに操作や偽装を繰り返した

⇔ 結果、日本経済は構造的な停滞に突入/ 身動きが取れない状況に陥り、自ら幕を引くことに

⇔失政の背景には、大企業優遇主義と表裏一体となった国民生活軽視の政治姿勢

 

◇ 消費税 元立正大学教授・税理士 浦野広明さん  ~ .法人税減税など穴埋め  目的税ではない

 NHK「日曜討論」(6/19) 自民党の高市政調会長「消費税は法律で社会保障に使途が限定されている」と発言

~根拠は消費税法1条2項/「年金、医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための施策に要する経費に充てるものとする」

→が、法律で使途を規定しても、消費税は特定の経費に充てる目的で課す目的税ではない/使途を特定せず一般経費に充てる目的で課す普通税。高市氏 全くの的はずれな発言

 

◇次元金融緩和 群馬大学名誉教授 山田博文さん

1 「日しずむ国」に転落

 異次元金融緩和政策・・・日銀主導で株式の官製バブルを引き起こした~上場投資信託(ETF) 36・9兆円買い入れ、株価をつり上げ/中央銀行の民間企業株購入は世界では禁じ手

→その効果は抜群/日経平均株価は2・5倍、株式時価総額も2・3倍に増大~「バイ・マイ・アベノミクス」、「インベスト・イン・キシダ」と、二人の首相による世界の投資家へのトップセールスがニューヨークとロンドンで行われた。

 

・政府と日銀に支えられ、株式の配当金や大企業の内部留保金も大幅に増加~ 日銀が株を買って資本金を供給するので、経営悪化でも会社は倒産しない、株式の売買差益も入ってくる/海外投資家・金融機関・富裕層など大もうけ

→  経団連などの財界は、「アベノミクスの推進により、力強い日本経済の復活を成し遂げた」と大歓迎/が、復活したのは大企業だけで、99%の企業と国民にとって、経営と生活はむしろ悪化

 

⊛政策こそが原因

・この間の物価高~ 国内の異次元金融緩和政策に主要な原因/この10年間で円は35・2%も安くなった

・深刻なのは6割以上を輸入に依存する食料品価格の高騰~ 帝国データバンク/国内105社の食品メーカーが実施分も含め年内に1万5257品目、平均13%の値上げの予定

・輸出で稼ぐ大企業に為替差益をプレゼント~トヨタの場合、1円の円安で約400億円の営業利益が発生(為替レートのリスクヘッジにより、生産拠点を各国に分散。結果、米など輸出で利益は変わらず、円に交換した場合に「利益」が増加)

)するようです。

・日本経済 アベノミクスの下で縮小~ 円表示で・GDP 5004兆円から5569兆円へ11・2%増大、「日本経済の復活」「強い経済」の証とされた/が、国際通貨のドル表示では・・・IMF 日本のGDPは6・27兆ドルから4・91兆ドルへ21・6%も縮小、世界経済は38・2%増大~世界経済に占める日本経済の割合 8・3%から4・7%に/経済が脆弱化

⇔世界の日本を見る目線 「日いずる国」から「日しずむ国」に転落、海外メディアは日本を取り上げなくなった

 

. 退くも、進むも地獄

・アベノミクスの負の遺産が日本経済と国民の肩に降りかかってくるのは、むしろこれから。その検証。

・政府債務の重圧

・普通国債発行残高 705兆円から1026兆円へ1・4倍化、残高がGDPの262・5%に/主要国最悪の債務大国に転落

→ 政府債務の重圧/歳入面では消費税の増税圧力。歳出面では社会保障関係費などの削減圧力に

・GDPの262・5%の政府債務の水準~日銀の直接引き受けで軍事国債が増発された第2次世界大戦直後と同水準

→この債務は、国民大収奪で解消~国民の預金・不動産に最高で90%の財産税、3年で100倍というハイパーインフレ

 

⊛第1の矢の結末

 欧米 コロナ禍からの景気回復なとでインフレ・物価高に/各国中央銀行は金利を引き上げなど抑制の役割発揮

⇔ が、日銀はまったく身動きでず。物価は上がるがままに放置

・もし日銀が金利1%引き上げ⇔ 国内の金利は連動して1%上昇→ 政府一般会計の8・2兆円の国債利払い費は、理論上最終的には国債発行残高1026兆円の1%に当たる10兆円ほど増え、18・2兆円に

・国債541・8兆円を保有~金利上昇に伴う国債価格の下落で、巨額の含み損が発生(自己資本10兆円程度)

→ 「円」の信用が揺らぎ、円安が加速され、輸入物価が上昇し、国内物価も上がり、生活破壊の危険

・日銀の指し値オペなど結果、日米の金利格差は3%に拡大~ 金利格差の拡大/世界の投資マネーは日本を捨てて高金利国へ逃避し、円安はさらに進行/これがアベノミクスの「第1の矢」を担った異次元金融緩和政策の結末

・しかも、「格差社会」を深化~日本の5400万世帯の約3割 金融資産なし/ はわずか2・4%の富裕層世帯(純金融資産1億円以上世帯)・・・ 異次元金融緩和政策で資産を1・8倍にし、145兆円増加

 

◇経済と軍事一体化 同志社大学教授 浜矩子さん 8/3-6

1 21世紀版 大日本帝国を企て

・アベノミクスの最大の問題点は  日的な富国強兵路線

 安倍 15年4月 笹川平和財団アメリカで講演~「私の外交安全保障政策はアベノミクスと表裏一体であります」

→政治的狙いを達成する手段として経済政策を使うという宣言。ここに最大の問題がある/政治的狙いは「戦後レジーム(体制)からの脱却」であり、戦前の世界に戻ること。21世紀版大日本帝国構築の企て

 

⊛世界大戦の教訓  経済政策と外交安全保障政策が表裏一体というのは、たいへんな不規則発言/理由は二つ

  • 経済政策や対外的な経済関係に戦略性を持ち込んだために、世界がブロック経済化、WW2に突入

→その反省、共通認識で戦後のGATT(関税貿易一般協定)体制構築/経済の世界に戦略性を持ち込まないルールに

⇔ そうした戦後の出発点に真っ向から反することを、安倍氏は主張

  • 経済政策には固有の使命がある

 第一の使命~経済活動の均衡を保持し、崩れた均衡の回復

第二の使命~ 弱者の救済/人間の生存権に関わる絶対的な使命

⇔ これ以外の目的を持ち込んではいけない。政治的・戦略的目的のために使うのは絶対に許されないこと

*二つの角度から考えて、安倍式経済運営は容認しがたい政経一致路線

 

⊛ウクライナ便乗 ~ 安倍「功績」を引き継ぐ岸田政権 軍事費倍増と改憲の路線を突き進んでいる

・現行憲法を持つ日本にふさわしい軍事問題への関わり方はどういうものかということを全然踏まえず、財源をどうするかも示していない。/国民の生活と生命を守り、国民に尽くすために存在するのが政府だという構図を全く理解してない/自民党という政党がいかにまともな政治家の集団ではないかということを示している

 

⊛弱者の命の危険 ~ 経済政策の第一の使命が経済活動の均衡の保持と回復という意味

・経済の均衡が崩れたときに、一番に傷つくのは弱者/第二の使命・弱者救済に忠実であろうとすれば、経済活動の均・衡を保持しておかなければならない

・日本経済の均衡がデフレ方向に崩れたことで、多くの弱者に痛み ~物価下落以上のペースでの賃金下げ。経済活動縮小による失業。もともと危うい立場にいた人たちの生活破壊、究極的には生命の危機に

~ インフレ方向に崩れても同じ ・・・いま直面。食べる物などを節約、増えたコストを価格に転嫁できない中小零細企業の経営難と賃金の下方圧力。やはり弱者が傷ついている。

*「表裏一体」というならば、経済の均衡保持と弱者救済はまさに表裏一体/これが表裏一体という言葉の正しい使い方

 

2 「リフレ政策」 弱者救済の思想ない

・アベノミクス 「デフレ脱却」をめざす「リフレ政策」といわれた~ 浜さんは2013年5月に「これは『リフレ政策』ではない」(『「アベノミクス」の真相』)と指摘/資産インフレと実物デフレが同居することになるだけと警告。その予言通りの状況に

 

・リフレーション=「もう一度膨らます」という意味/その考え方は、それ自体が悪いわけではない

・が、アベノミクス~しぼんだ実物経済の風船に空気を送り込むリフレ行為ではなく、隠れみのだった

→安倍氏の狙い①/当初から、財政ファイナンスのために日銀にがんがん国債を買わせること。日銀を政府の打ち出の小づちにすることを正当化するために「リフレ派」といわれる論者を集めて体裁を整えただけ

 

 安倍氏の狙い② /日銀をバブル製造装置にすること ~ 21世紀版大日本帝国づくりに協力してくれる大企業の株が上がれば仕事がしやすくなる、という発想/まともな政策の考え方でない

・大量の国債購入でて供した資金は、実体経済にむかわず、株式市場など資産バブルを高進

・異次元の金融緩和」と称した株式投資信託や不動産投資信託の大量購入

→ 金融政策ではない/世界の中央銀行は株てばありえない無節操な行動

・金融政策の最大の使命~ 通貨価値の安定/ その使命を担う中央銀行にとり、価値の安定しないリスク資産への投資は明らかにふさわしくない/ 黒田日銀は本来の使命を果たそうという意志を最初から全く持っていなかった

 

⊛下は冷たいまま ~ アベノミクスで実物経済が膨らまない原因

・日銀の財政ファイナンスにより、湯水のごとくカネを使える状態をつくりだそうと考えた/その大きな一角が、軍備増強、ほかにも「地方創生」(デジタル化)、「観光立国」など

・教科書通りなら金融緩和と拡張財政に経済は反応⇔ が、そうならず/弱者救済の思想が政策の中に全然ないから

*日本経済の大きな問題~ 豊かさの中の貧困/6人に1人が貧困者

大企業に大盤振る舞いをしても、冷たいところにいる人たちには恩恵なし/これでは実物経済が力強く回るはずがない

 

3 円安神話 神風頼みの浦島太郎

・円安がアベノミクスの狙いの一つだったことは、安倍発言から明らか。発想が時代遅れ ⇔高度成長期のイメージに固執し、昔の日本を取り戻そうとした/ 21世紀版大日本帝国の強い経済基盤という目的のために

 

・高度成長時代 ~ 1ドル=360円。1ドル=100円割れの水準を転換して円安に持っていけば、日本経済に神風が吹くと信じた/ 長い時間がたつうちに状況がまるで変わったことを見過ごしてた

・高度成長期の日本化~ 戦後の発展途上、輸出主導型成長の国(しかも、根底に対米従属化の反共の砦構築、米国の2つの戦争の特需。人口増)/が、現在GDP世界3位、インフラが整い、経済は育ちあがっている(さらに人口減)

 

⊛輸入依存度高く~ 輸出の割合は低下、輸入依存度が高進 /多様な生活物資の輸入、サプライチェーン(企業の供給網)もグローバル化~輸出企業も輸入部材に大きく依存

→ 値段が上がっても、生活物資や生産財の輸入を減らすわけにはいかない構造

・成長神話と円安神話を信じるアベノミクスの異次元金融緩和⇔ 円を過剰供給状態にし、円の価値を低下させて円安を実現/ 輸入物価が上がれば輸入は減ると考えたのでしょう。しかし輸入量は減らず、輸入の円建て金額が大きく膨らんだ  (⇔ 値上がりを見越して消費の前倒しが生まれ、消費不況が解消すると夢想したが、幻におわった) 

・高度成長期の日本 高品質のものを低価格で輸出し成長/が、いまや低価格品の生産拠点は海外に移転。日本の輸出品目は値段の安さに依存しない高付加価値品が主流に主に/円安でも輸出量は増えず。神風は吹かなかった。

・日銀は緩和に固執~退くことも進むこともできない袋小路に

 

⊛国債保有5割超

・海外の機関投資家が本気で国債売りに動けば、国内の機関投資家も逃げたい気持ちが強まる。すごく危うい状況

~ 最終的には、国債価格暴落・金利急騰を阻止するために、資金の国際移動を凍結して金融鎖国をするほかなくなる恐れ /  筋違いな政策運営を続けたから。アホノミクスという言い方をしてきたゆえん

 

4 憲法の精神 狼は子羊と共に宿る

二分極化した姿~  21世紀に入ったころから、日本経済は「壊れたホットプレート状態に

⇔ 熱が均等に行き渡らず、アツアツスポットと冷え冷えスポットに二極分化した姿

・壊れたホットプレーの灼熱地帯に陣取るのが富裕層~ 株価が上がれば盛り上がり、高額商品が飛ぶように売れる

・永久凍土に閉じ込められているのがワーキングプア層~一度落ちこむと脱出は至難の業

⇔ この格差を埋めるために必要なのは、分配。鉄板全体に熱を上手に行き渡らせるのが分配機能

 

  • 三つの出会い

・経済活動のあるべき姿と日本国憲法の関係~ 人間のための経済活動の基盤となるのは、三つの出会い

  • 多様性と包摂性の出会い

 多様性が大きく包摂性が高い空間では、人の痛みが理解され、異なる者たちが受け入れられる。分かち合いの精神が芽生え、富の偏在を是正する力学が働く。多様性と包摂性の出会いは、個人の尊重と分配の充実を可能にする

  • 正義と平和の出会い

 旧約聖書に「正義と平和は抱き合う」という一節~胸を打つ美しいフレーズだが、実はとても難しいことをいっている

~誰かの正義が誰かの正義と出会うとき、生まれ出るのは平和ではないケースがあまりに多い/それでもわれわれは、正義と平和の出会いをめざさなければ幸せになれない

  • 狼(オオカミ)と子羊の出会い

 これも旧約聖書に登場する題材~「狼は子羊と共に宿り、豹(ヒョウ)は子山羊と共に伏す」/狼は強い肉食獣であり、子羊は餌食となる草食動物。が、現代のグローバルジャングルは、狼のような大企業も子羊のような中小零細企業のお世話にならなければ生きていけない。

* この三つの出会いの実現している場所が日本国憲法

 「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」

 相手の公正と信義にすべてをゆだねるという大胆にして美しい精神。これこそは正義と平和の出会いを可能にする認識であり、正真正銘の積極的平和主義です。多様性と包摂性の出会い。異なる発想や文化を持つ者同士が互いを受容するので、強い国も弱い国も狼と子羊のごとく助け合って共生することができる。

 これら三つの出会いがベースになって人間を幸せにする経済活動の姿ができる

 

◇TPP 農民運動全国連合会常任委員 真嶋良孝さん 7/29.30

. 「断固反対」ウソだった 過去最悪の協定

・「ウソつかない。TPP断固反対。ブレない。」というポスターを全国に張りめぐらした2012年12月の総選挙。政権を奪還した安倍氏が真っ先に行ったのは、公約を裏切り、13年2月の日米首脳会談でTPP交渉入りを米国に誓約

~3月に交渉参加を正式に表明、せめてもの“担保”として4月の国会決議=「重要5品目」(米、麦、牛・豚肉、乳製品、砂糖)は対象から「除外する」こと、これが「確保されないと判断した場合は、交渉からの脱退も辞さない」

→が、国会決議も無視/「重要5品目」の3割、それ以外の品目では98%で関税をゼロにする過去最悪の協定に

アベノマジック

・TPP交渉入りにあたり 「政府統一試算」(13年3月)を公表~ 食料自給率が40%から27%に下がり、農業産出額は32%減、小麦生産は壊滅、米生産も3分の1減という悲惨なもの

⇔ 批判をかわすための詐術/ TPPが大筋合意した15年12月、政府は改定試算を公表 ~ 農業生産減少額2・7兆円という2年前の試算を0・16兆円に捏造。さらに「影響が出ないように対策を打つから、影響はない」として、農産物の生産減少はゼロ、自給率も下がらないと強弁する荒唐無稽なもの

~ 安倍元首相は15年10月のJA全国大会、「国益にかなう最善の結果を得ることができた」と強弁

 

⊛総「自由化」体制

・18年9月の国連総会 トランプ前大統領「グローバル化拒絶」を宣言/安倍「自由貿易の旗手として立つ」

→ 米国が脱退してTPP11となった協定が発効したのは18年12月。翌年2月には日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(日欧EPA)、20年1月には日米貿易協定が発効 /安倍政治のもと 農産物の総「自由化」体制に突入

*その結果~ 20年度の食料自給率は史上最低に/17~20年の農畜産物生産額3400億円減(農水省「生産農業所得統計」)/政府は、3FTAによる生産減少額を10~15年後に3700億円と試算。が、発効後1~2年で同規模の被害

 

. “企業活躍しやすく”と…

・TPP大筋合意直後の全国農業協同組合長アンケート~ 9割を超える組合長が「TPPは国会決議違反」「安倍農政を評価しない」(日本農業新聞2016年1月4日付)。/これに対し農水省幹部、「安倍さんを怒らせたら農業対策費が1円も出なくなる」と忠告(「日経」15年10月15日付) →JA指導部は、潮が引くように撤退

 

・第1次政権時「戦後レジームの解体」/政権復帰後、「世界で一番、企業が活躍しやすい国」を目指す

→ 農政における「戦後レジーム」・・・農地改革で創出された家族農業経営を支えるための制度・政策的枠組みで、(1)大企業の農地支配を許さない農地法 (2)農業協同組合制度 (3)価格保障 (4)農産物の輸入コントロール (5)種子・市場制度―など  ⇔ 安倍「農政改革」は、TPPを手始めに、これら全ての解体を進めた/戦後、最も大規模で最悪の攻撃

 

⊛農協解体の攻撃

・「世界で一番、企業が活躍しやすい国」づくりにとって、農民の協同組織は邪魔物、であり、TPPに反対したから

・その狙い 

(1)共同販売と共同購入を崩して、農産物の買いたたきと生産資材価格のつり上げをもくろむ企業の要求に応え

(2)信用・共済事業を単位農協から引きはがして総合農協をつぶし

(3)最終的には、農協が行っている事業と140兆円の農協マネーをアグリビジネスと金融・保険資本に引き渡す

~狙いのほとんどは、強力な抵抗によって道半ばになっているが、規制改革推進会議などで火種はくすぶり続けている

⊛コメ暴落の引き金

・民主党政権 価格保障に軸足を置いた戸別所得補償をスタートさ/が、安倍政治は2年がかりで廃止し、代わって米の生産調整廃止を打ち出した。

⇔ 米の需給、価格安定への国の責任放棄、農民の「自己責任」による究極の新自由主義政策が18年スタート

・コロナ禍 コメ価格3年連続暴落 / 米国のトランプ前政権は農家から農産物を買い上げて所得の低い人たちに配給し、農産物価格の維持に努める

・安倍元首相の常用句 ~ 「息をのむほど美しい棚田の風景」。これに「輸出農業の育成に重点を置く攻めの農業政策」が続く/ が、「攻め」られるのは8割の家族経営と棚田を含む中山間地。食料自給率37%の日本が5兆円=世界第3位の農林水産物・食品輸出国をめざすというナンセンスな目標

 

◇2022参院選 目でみる経済  アベノミクス失政 足かせ  7/7

・日銀の黒田総裁 講演(6月6日)で、金融緩和を維持する3つの理由を提示

(1)日本の実質GDPが欧米諸国のような回復に至っていない

(2)日本は資源輸入大国なので資源価格の高騰で所得が流出し経済に強い下押し圧力がかかっている

(3)企業収益と雇用と賃金が増えて物価が上がるという好循環が起きていない

→つまり、日本が不況だから金融緩和をやめられない/アベノミクスと自公政権の経済政策の大失敗だったことの証左。

 

⊛歴代政権の責任

(2)のような輸入依存大国になったのは政策の失政 →輸入自由化・農業をつぶして食料自給率を37%に低落、再エネ普及を怠りエネルギー自給率は1割程度の低迷。

(1)(3)のような悪循環に陥った原因→ アベノミクス「3本の矢」の失政。コロナ禍で大きな打撃を受けた米英仏3カ国と日本の実質GDPがどう推移したかを比べれば、日本の大失敗は明らか

・コロナ最初の報告 米英仏のGDP減は、2020年1~3月期(第1四半期)に入ってから/が、日本 コロナ前の19年10~12月期にがくんと落ち込み = 10月に強行した消費税率10%への大増税

・英仏両国 GDPは20年4~6月期に急減。が、21年10~12月期には19年1~3月期を上回る水準に回復。米国 21年1~3月期から急回復。その後19年1~3月期を約5%上回る水準に増加 

⇔が、日本 一向に回復せず、19年1~3月期の水準を約3%下回ったまま。大増税による消費不況

 

・アベノミクスの「3本の矢」(金融政策・財政政策・成長戦略)~円安と株高、法人税減税、労働法制の規制緩和などを推し進める富裕層優遇政策/日経平均株価は約3倍、大企業の株主配当は約1・6倍に急成長。が、庶民には、5%から10%への2回の消費税増税 年13兆円、度重なる年金削減で年4兆円の実質可処分所得を奪う。

不況を理由に金融緩和に固執する日銀~異常円安と物価上昇で実体経済を下押しする悪循環に/ 断ち切るためには、国民の可処分所得を増やして実体経済を立て直す以外にない

 

 

【 白書が描く経済 】

*前提・・・ GDP回復 数字のマジック   8/19

 2022年4~6月期の国内総生産(GDP)が発表された15日、山際大志郎経済再生担当相は記者会見でGDPの水準が「コロナ前の水準に達した」と発言。が、19年10~12月期は消費税増税を強行した時期。実質GDPは前期比2・9%減という大幅なマイナス。 消費税増税前と比べれば、実質GDPは年換算で15兆円も落ち込んだ水準のまま。

 

◇物価高騰 中小企業7割が利益減  8/9

〇経済産業省「通商白書」~「世界的な供給制約の高まり」のあらわれとして物価高騰に触れ/その要因として

  • 新型コロナウイルス感染拡大の影響。「ロックダウン等の感染拡大防止のための行動制限、渡航・移動制限といった対策に起因する経済の停滞や人手不足による影響のみならず、大規模な財政措置による急激な需要喚起もあいまって、物流の遅延や価格の高騰を招いている」
  •  食料 天候要因も指摘し、「世界各地での豪雨、ハリケーン、寒波、干ばつ等の異常気象によって資源・食料等の不足や不作が起き、食料価格の上昇も見られる」/
  • 拍車をかけたのがロシアによるウクライナ侵略 ~「ロシアやウクライナは一部の資源やエネルギーの主要な供給国であることから、世界全体での供給量に直接与える影響は大きい」

⊛為替相場変動~ 同時に日本では為替相場の変動が物価高騰をさらに深刻化

~ 通商白書「足下では円安ドル高の状況が続いており、我が国にとっての資源・エネルギーを含む製品の輸入価格が押し上げられている」/が、この円安を生み出している日銀の異次元緩和についてはなにも触れてない。

 

〇物価高騰が国内産業への影響 経済産業省「ものづくり白書」~企業へのアンケートから営業利益の減少要因を分析。「売上原価の上昇」(52・9%)、「コストの増加」(22・9%)などが上位に/白書は「上昇したコスト等の適切な転嫁対策を進めるべく『パートナーシップによる価値創造のための転嫁円滑化施策パッケージ』を取りまとめた」などの対策を紹介

 

企業努力のみ 中小企業庁「中小企業白書」~ 原油・石油製品の価格高騰によるコスト上昇分の価格転嫁について「まったく転嫁できていないとする割合は全体の約7割を占める」

さらに「コスト変動を価格転嫁できなかった際の対応」~最大は「利益の減少(対応なし)71・4%と紹介。

・取引価格や単価の交渉の機会のきっかけ~「自社から提案する」「販売先・自社の双方から提案」が合わせて9割超であり、「交渉機会を設けるためには、自社から積極的に提案する姿勢が重要」と中小企業自身の努力に期待するだけ

 

〇資源・エネルギー庁「エネルギー白書」~ 世界的なエネルギー価格の高騰について天然ガス、石油、石炭などエネルギー源ごとに分析/ 同時に中長期的な対応策として「原子力や石炭を含む化石資源に対する評価が見直される傾向にあります」などと言及。世界の流れに逆行する石炭火発と原発への依存を国民に押し付けるものに

 

◇エネルギー  価格高騰 一過性でない 8/10

・経済産業省「エネルギー白書」~エネルギー価格の上昇は「一過性のものにとどまらない可能性」があると指摘

・「白書」~ 日本の一次エネルギー自給率 2020年 11%/ 米国106%、カナダ179%、英国75%、フランス55%、ドイツ35%、イタリア25%と主要7カ国(G7)の中でも突出して低い

・日本 原油。LNGのほぼ全量を輸入/原油の91・7%は中東、LNGも豪州やマレーシア、カタールなど特定の国から調達/ ロシアからの原油、LNGの輸入 ~日本の輸入量全体の3・6%、8・8%

・エネルギー資源の海外依存~価格高騰問題に直結。

→ 日本の国内企業物価 21年2月に前年同月から9・3%増/ 1980年12月の第2次石油危機(10・4%増)以来の歴史的な上昇率/ 輸入物価(円ベース)も同34・0%増え、リーマン・ショック直前の08年8月以来の高水準を記。

 ⇔のウクライナ侵略以降、22年3月の日本の電気代、ガス代、ガソリン代 19年1月と比べ約1~3割上昇

 

⊛複合的な要因 ~ 世界的なエネルギー価格高騰の背景があると分析。具体的に・・・

  • 上流投資不足 (2)エネルギー消費量の回復 (3)電力供給構造の変化 (4)各国の電力需給逼迫 (5)欧州の天然ガス貯蔵量減少―の5点を列挙

・脱炭素の流れを受け、14年以降、化石資源開発への投資が縮小/そんな中、コロナ禍での経済活動の停滞により、20年の世界の一次エネルギー消費量は4・5%減。第2次世界大戦後最大の減少/ その後、経済が回復し始めた21年を境に天然ガスをはじめとしたエネルギー需要が急増。供給が追い付かない状態に

・同時期、世界的に天候不順や災害が多発し風力や水力の発電量が低迷。穴埋めとして主に天然ガスの需要が増/日本も21年1月に寒波に見舞われ、燃料が不足して需給が逼迫、LNGと卸電力前日のスポット価格が高騰

・追い打ち ウクライナ侵略~ 再エネ拡大の調整弁として低炭素の天然ガスを使用してきた欧州/ロシア依存が足かせとなり、需給が著しく逼迫、世界的なエネルギー価格の高騰に拍車

*「白書」~「エネルギー価格が継続的に高い水準で推移すれば、製品価格の上昇と購買力の低下等を通じて、各国の経済活動の大きな足かせになるのみならず、政治・経済・社会にさらなる悪影響を及ぼしかねない」と警鐘(原発、石炭火発の推進の「口実」も)

 

◇白書が描く経済 ウクライナ侵略 経済的危機 今後何年にも 8/13

「防衛白書」~「わが国としては、欧州と東アジアを含むインド太平洋の安全保障は不可分であるとの認識の下、その戦略的な影響を含め、今後の欧州情勢の変化に注目していく必要がある」「米中の戦略的競争の展開やアジアへの影響を含め、グローバルな国際情勢にも影響を与え得るものである」と動向の注視を求めている。

「通商白書」~ ロシアに対する大規模な経済制裁に「冷戦後かつてないほどに経済的分断への懸念が高まって」。「自国中心主義や経済安全保障の重視」により、「国際経済秩序の歴史的な転換点となる可能性」に言及

・日本貿易振興機構(ジェトロ)の「世界貿易投資報告」~「ウクライナの経済的な損失は壊滅的」、22年の実質GDP伸び率 前年比マイナス35%としたIMFの見通しを紹介。戦闘の終結後も「今後何年にもわたって経済活動を著しく妨げる」

/ また、ロシアの侵略が「世界経済成長の減速度合いを強め、脆弱な成長とインフレの高進が長引きかねない状況に入りつつある」とした世界銀行の見通しを引用。「スタグフレーション」の懸念を指摘

 

⊛金融市場にも~ IMFは食料、鉱物、資源商品を中心に「商品市況価格の高騰を通じて、世界経済と金融市場に大きなショックを与える」と見通す

・19年、「ひまわり油、サフラワー油及び綿実油」でロシア・ウクライナ両国 世界輸出シェアの55・6%/ FAOの食料価格指数・・・今年3月の植物油価格指数が過去最高を記録。小麦の先物価格は侵略前に比較し62・7%上昇(3/7時点)

・石油価格の国際的指標の一つである米国産WTI原油~侵攻直前と比べ34・3%上昇(3/8時点)。天然ガスでは、オランダガス価格(TTF) 同じく2・6倍(3/7時点)

 *「通商白書」~ 価格高騰は「企業活動や国民生活への影響は重大」「特に新興国及び途上国の貧困層の国民生活に甚大な影響を及ぼす」と警告。

 

⊛家計に大打撃~ 「通商白書」 商品市況の高騰が、資源国には交易条件の改善、日本やドイツなど非資源国には交易条件の悪化として作用すると指摘。/資源輸入国での家計の購買力低下や企業収益の圧迫につながると指摘

・さらに日本では、円が影響~「通商白書」 円安の背景について「日米における金利差」、「エネルギー価格の高騰を受けて貿易赤字が定着していること」など指摘/海外依存度の高さと円安で「交易条件の悪化につながっている」と強調

 

【経済安保】

◇動き出したIPEF

1.中国への対抗 念頭に

・バイデン米国大統領 5月23日、日本でインド太平洋経済枠組み(Indo―Pacific Economic Frameworkの頭文字をとってIPEF=アイペフ)の立ち上げを発表/米国主導の新たな経済枠組み

~共同声明には明記されてないが、インド太平洋地域に米国主導の中国包囲網を形成することが狙い/ トランプ前政権 TPPから離脱。その間隙をつく形で中国はTPPへの参加を申請し、影響力を強めている

・IPEF 現在、米国、オーストラリア、ブルネイ、フィジー、インド、インドネシア、日本、韓国、マレーシア、ニュージーランド、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナムの14カ国が創設メンバー /米国 「今やIPEFは北東および東南アジア、南アジア、オセアニア、および太平洋諸島のすべての地域的多様性を反映することになった」と歓迎

*四つの柱

(1)貿易・・・デジタル経済における協力を含む、貿易・技術政策において創造的なアプローチを発展するよう努める

(2)サプライチェーン 強靱で統合されたサプライチェーンの構築に向け、危機対応策の調整、事業継続をより確実にするための協力の拡大、物流の効率、主要原材料・加工材料、半導体、重要鉱物、クリーンエネルギー技術への参入の確保

(3) クリーンエネルギー・脱炭素化・インフラ パリ協定の目標達成に向け、技術の開発と展開を加速

(4) 税・腐敗防止 租税回避および腐敗を抑制することを目的に公正な経済を促進

 

⊛岸田首相 強い関与を示す 「バイデン大統領がこの地域を訪問し、ここ日本で自らIPEFの立ち上げを宣言されたことは、この地域への米国の強いコミットメントを明確に示すものです。バイデン大統領の力強いリーダーシップを高く評価します」、「日本は、IPEFに参加し、米国と緊密に連携し、また、ASEAN諸国を始めとする地域のパートナーと手を携えて、新たな枠組み作りに協力して参ります」と表明

 

  1. 同盟関係 足掛かりに 危機感がにじむ 

・今年2月11日 バイデン政権、「インド太平洋戦略」発表~「米国はインド太平洋地域大国である」「米国は長年にわたり、インド太平洋地域を米国の安全保障と繁栄にとって死活にかかわる地域と認識してきた」と強調。

→ 同構想/米国は第2次世界大戦後、オーストラリア、日本、韓国、フィリピン、タイとの同盟条約を通じてインド太平洋地域との関係を強固なものにした。が、同盟国およびパートナー国とともに同地域の発展に貢献しなければ、国益を増進させることはできない、と危機感をにじませていた。

・さらに、中国について、次のように指摘 

 「アメリカの関心が高まっている背景には、インド太平洋が中国を中心とした大きな課題に直面しているという事実がある。中国は、経済、外交、軍事、技術力を結集して、インド太平洋での勢力範囲を拡大し、世界で最も影響力のある大国になろうとしている。中国の強要と攻勢は世界中に及んでいるが、インド太平洋では最も顕著だ」

~規則や規範が中国によって変更されるかどうか、今後10年間の集団的な取り組みが左右する、とし

 

⊛ 軍事的性格持つ

 オースティン米国防長官 6月11日、シンガポール「インド太平洋はわれわれの優先作戦地域である」「21世紀の世界の道筋を決定する地域は、この地域以外になく」「インド太平洋はわれわれの戦略的中心である」と強調

⇔ 一方で、「一方的な現状変更に反対するという共通のコミットメントを再確認しなければならない」と、会議参加各国・地域に呼び掛け、中国をけん制~ IPEFが、対中戦略の一環であることを裏付けたもの

⇔ さらに、/インド太平洋地域に米軍兵士が30万人以上駐留、2023年度予算に米軍の能力向上を目的とした基金「太平洋抑止イニシアチブ」に61億ドルを積み上げたことを例示/ パートナー国と新興技術の研究成果などを共有するためにもサプライチェーンの安全性・強靱性を確保することの重要性を訴え、宇宙領域やサイバー領域のイノベーション、人工知能(AI)や極超音速技術などの新興技術は安全保障の観点からも重要とし、宇宙領域やサイバー領域を含むすべての領域への投資の必要性を強調。そして、ステルス機、無人プラットフォーム、長距離精密兵器など、攻撃をより確実に抑止できる新しい能力の開発に取り組むことなどを強調

 

◇動き出す経済安保法 米国の対中戦略の先兵に 8/2

 政府の有識者会議 7/25 基本方針・指針の政府両案を大筋了承。8/1内閣府に「経済安全保障推進室」が設置

 

⊛ 財界と公安調査庁シンポ 6/2

・会場・オンラインあわせて企業、大学関係者ら470人。中国による「技術窃盗」に対抗するための体制強化が強調

・古川法相ビデオメッセージ 技術流出に対する「官民一丸」の対応が不可欠、米国との「連携や知見の共有が重要だ」

・経団連の大林外交委員長 「国家が関与する情報窃取に、一企業だけで立ち向かうのは困難」「日米両国の情報機関」との情報共有など、「官民一体」で取り組むと応じた。

・和田公安調査庁長官 同庁と米連邦捜査局(FBI)が「緊密に協力している」/ 竹田同庁調査第二部長「流出」の「多くが投資・買収、人材リクルート、共同研究等といった合法的な経済活動、研究活動を通じて行われる」と強調

・あいさつしたラーム・エマニュエル駐日米国特命全権大使 中国を念頭に置いた知的財産の窃盗対策など「重要課題における日米協力は極めて重要」だと言及

・基調講演を FBIのボイデン法務官~ 中国による米国の先端技術分野での「技術窃盗」の事例をあげ、「今日、われわれの経済安全保障にとって中国政府が最大の脅威」と明言。中国政府が「無慈悲で容赦ない経済スパイ」の方針と人材、能力を持っていると中国敵視をあおった。

 

⊛ 経済・軍事的な争い激化

・ 米国のレイFBI長官 今年1月にカリフォルニア州・レーガン大統領図書館・博物館で「中国政府が米国内でもたらす脅威への対抗」と題し講演~ 「巨大な国となった中国がもたらす脅威は複雑である。中国はその能力を使い、窃盗や脅迫を文字通り毎日、ここアメリカで行っている」 さらに、中国が米国の経済活力とイノベーションにとって最大の脅威だとして、企業・大学の資産や研究開発、技術の窃盗問題に対抗する官民の「共同防衛」の必要性を訴え

・ブリンケン米国務長官 5/26ジョージア州・ワシントン大学での講演~対中国が「最も深刻な長期的課題」。「中国は国際秩序を再構築する意図と、それを実現する経済力、外交力、軍事力、技術力を併せ持つ唯一の国」と指摘

・米戦略の先兵となっているのが日本~5/23 日米首脳会談の共同文書 「経済安全保障を強化するためのさらなる協力を追求していくことで一致した」と明記~岸田政権は経済安保法成立を受け、国内体制強化を急いでいる

 

⊛ 公安の機能強化を公約

・年々予算が増えている公安調査 4月、経済安全保障特別調査室を立ち上げ

→ 和田長官 7/7長官訓示~中国を念頭に機微技術などの「獲得に向けた懸念国」の動きの活発化をあげ、(1)官民連携の推進(2)国内外の関係機関とのさらなる連携強化(3)公安の機能・体制強化―に取り組むと表明。経済安全保障に関わる情報収集活動を活発化させる方針を打ち上げ

⇔ 公安調査庁の諜報活動体制が強化されるほど、国家による国民監視がいっそう露骨になる危険

参院選 自民党公約 「経済安全保障等を戦略的・機動的に推進」。さらに「公安調査庁をはじめとする関係省庁における情報収集・分析に係る能力・体制をさらに強化」と明記

*日本にとり、中国は最大の貿易相手国/が、現場である企業を経済安全保障戦略に動員することによって中国との経済関係、ひいては日本の経済外交に深刻な亀裂と分断を持ち込むことになる

 

⊛ 思想信条の自由を奪う ジャーナリスト 斎藤貴男さん

 公安調査庁はスパイ組織です。日本共産党や体制に同調しない市民団体の活動の規制を主目的として1952年に制定された破壊活動防止法(破防法)が根拠法とされています。

 そんな裏の活動をする組織が経団連とシンポジウムを共催し、公然とあいさつしていることに驚きました。

 公安調査庁の竹田公政・調査第二部長は基調講演で、技術・データが流出する事例に「人材リクルート」を挙げています。経済安保の文脈でこの言葉が持ち出された意味は大きい。企業の関係者や、これから就職する人の家族、交友関係の素性まで洗って、“適格性”を評価する「セキュリティー・クリアランス」に直結するのではないか。

 つまり思想による人間の格付け、選別です。経団連が公安調査庁と組んで大々的にアピールしたということは、「権力に従順でない者は排除する」というメッセージでもあります。

 これは、民主主義社会において「禁じ手」です。こちらが批判するほど「お上には絶対逆らってはいけないのだ」と社会が萎縮する恐れがあるからです。若者達の思想信条の自由が実質的に奪われていきかねない近未来を危惧しています。

 

◇大軍拡の正体  極超音速ミサイル開発 JAXAを組み込む  8/13

⊛ 軍民両用 衣の下に鎧

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)が7月、観測ロケットを打ち上げ、「スクラムジェットエンジン」に関する燃焼飛行試験を実施しました。極超音速ミサイルの開発をめざす防衛省防衛装備庁から18億円超の契約額で委託された研究業務の一環です。宇宙探査や地球観測衛星など民生分野で世界的な活躍をしてきたJAXAが、兵器開発にどこまで組み込まれていくのか―。(中村秀生)

 「所望のデータの取得ができ、満足のいく成果があがった」

 岸信夫防衛相(当時)は、飛行試験の2日後の記者会見でこう称賛しました。「今後、防衛省が進める極超音速誘導弾の研究開発において、スクラムジェットエンジンの性能等、評価・検討するにあたり、こうした成果を活用できるものと期待している」

 開発をめざす極超音速ミサイルは、敵に迎撃されにくい高度を軌道変更しながら極超音速(マッハ5以上)で飛翔(ひしょう)できる巡航ミサイル。装備庁は「相手方の脅威圏外から対処するスタンド・オフ能力を飛躍的に向上させ、戦闘様相を一変するゲーム・チェンジャー」と位置づけます。まさに憲法違反の“敵基地攻撃兵器”です。

 

⊛ 培った技術

 その実現に不可欠な重要技術が、極超音速で飛翔しながら空気を取り込むスクラムジェットエンジン。超音速の気流に含まれる酸素を使って燃料を安定的に燃焼させることが技術的な課題です。

 そこで装備庁が目をつけたのが、JAXAが培ってきた技術や試験設備です。JAXAは、将来の宇宙往還機などのため、スクラムジェットエンジンの研究を進めていました。装備庁は、そんなJAXAとの協力体制を最大限活用し、低コストで早期に極超音速ミサイル開発を図ります。

 今回のJAXAの飛行試験は「安全保障技術研究推進制度」の一環。将来の防衛装備品開発に役立ちそうなテーマで、装備庁が大学・研究機関などに研究を委託する制度です。

 装備庁は2017年の公募テーマの一つとして「極超音速領域におけるエンジン燃焼特性や気流特性の把握に関する基礎研究」を設定。JAXAが応募し採択されました。分担研究機関は東海大学と岡山大学です。装備庁によると、総経費は約18億4853万円で契約。期間は昨年度までの5年間の予定でしたが、新型コロナウイルス感染症の影響で1年間延長しました。

 

⊛「平和」削除

 日本の宇宙開発はもともと、国会決議で非軍事分野に限定されていました。しかし08年に成立した宇宙基本法は、宇宙開発利用を「我が国の安全保障に資するよう行われなければならない」と百八十度転換。12年にはJAXA法が改悪され、業務を「平和の目的に限り」行うと定めた規定が削除されました。

 井原聰・東北大学名誉教授(科学技術史)は、現在のJAXAにとって「安全保障が重要な任務に切り替わった」と指摘。安全保障技術研究推進制度について「装備庁は『軍民両用ではあるが、基礎研究だ』と言い張ってきたが、衣の下の鎧(よろい)がもう見えた」と話します。

 「極超音速ミサイル開発は目下、米国、中国、ロシアがしのぎを削っている。米軍と一体の自衛隊はこの分野でも貢献したいと、大軍拡路線でJAXAを活用すると思われる」と井原さん。貧困な科学・技術政策と、経済安全保障法に関連する「特定重要技術」への巨費投入で、大学・研究機関の軍事研究への誘導がいっそう進むことを心配しています。

 

【 科学技術衰退 】

◇日本の研究者雇い止め「深刻」 『サイエンス』誌が報道  田村智子議員の質問を紹介 7/13

 国立大学や国立研究機関の多数の非正規雇用の研究者が来年3月末に雇い止めで失職する恐れがある(無期雇用転換を逃れるため雇用期間が10年となる非正規の研究者を解雇しようとしている)ことについて、世界で最も権威ある米国の科学誌『サイエンス』が5日付のニュース欄で報道。

・サイエンス誌の記事~ 代表的な例として世界最高性能の放射光を生み出すことができる「スプリング8」やスーパーコンピューター「富岳」などを有し、脳科学や量子コンピューティング、予防医学などさまざまな分野の研究に取り組んでいる理化学研究所を取り上げ、現在2893人の同研究所の研究者の77%が有期雇用であり、うち203人が2023年3月末までに雇用期間10年に達すること/ その中には、42人のチームリーダーがいて、これらの人々が雇い止めされると、グループが解散するため、そのグループに属する177人の雇用が危険にさらされることになると報道

・サイエンス誌の記事~ 理化学研究所労働組合のこの問題への取り組みなどにふれるとともに、田村議員の分析によれば最大4500人が雇い止めの危険にさらされていると記述。「日本の研究開発に深刻な長期的影響を与える可能性がある」とする田村議員の言葉を紹介している

 

◇行政eye 細る日本の研究力 歯止めきかない論文数低迷  8/19

国の科学技術・学術政策研究所 9日に発表 「科学技術指標2022」~ 自然科学系の学術論文のうち引用数が多いトップ1%の論文数/日本 20年9位→21年 10位へ後退。トップ10%の論文数~10位から12位へ転落

・20年前 トップ1%論文数、トップ10%論文数とも、日本は、米国、英国、ドイツに次ぐ4位(1998~2000年平均)

・21年 中国が初めて上位1%論文数で米国を抜いて1位/インドが日本を抜いて9位に浮上~日本の落ち込みは突出

・特徴的なのがトップ10%論文数

米国 98~2000年の平均3万710本→18~20年 3万8680本へ8千本近く増/英国も1300本以上、ドイツも1500本近く増えるなか、日本だけは600本近く減

 

⊛不安定な研究職 

・40歳未満の国立大学教員の7割近くが任期付き/博士号を取得しても不安定な研究職で未来が描けない

→博士課程の入学者数 03年 1万8232人をピーク→ 21年 1万4629人へと減/博士号取得者数でも米国、英国、中国が増加基調で推移するなか、日本は減少基調

・永岡桂子文科相 10日の就任会見で、日本の研究力低下について「若手研究者が本当に厳しい環境に置かれ、諸外国と比べて研究開発費が必ずしも十分でない」と発言

 が、方策は10兆円の大学ファンド/ リスク資産含めた運用益だのみ。対象は5~7校、事業成長3%がノルマ

 

⊛資金獲得に時間奪われる 魅力感じられない研究環境

・「科学・政策と社会研究室」代表理事・榎木英介さん~米国では競争的資金の獲得などを支援する専門の職員がおり、研究者は研究に専念します。日本では04年の国立大学の法人化前後から研究資金に占める競争的資金の比重を高めてきましたが、研究者の支援体制はむしろ弱めてきました。研究者は資金獲得のための書類作成に多くの労力を割かれ、研究や論文を書く時間が奪われています。大学ファンドも、支援を受ける大学では統制が強まり、それ以外の大学はじり貧になる姿が見えはじめています。表面的に英米をまねしたことが、日本の研究力を奪ってきました。これまでの「選択と集中」の見直しこそ必要です。

・学生~ 教員の過酷な働き方や雇い止めの姿を見ており、博士課程に進もうとは思わない。/『サイエンス』『ネイチャー』といった世界的な科学雑誌で雇い止め問題が紹介された国に、海外の研究者が魅力を感じるか。矛盾だらけの方針

◇科学の注目論文 日本の国際的地位さらに低下 過去最低  産経8/9

文部科学省の科学技術・学術政策研究所(NISTEP)は9日、日本などの世界主要国の科学技術に関する研究活動を分析した「科学技術指標2022」を公表した。他の論文に多く引用され、注目度のより高い論文を示す指標「Top1%補正論文数」で、中国が米国を抜いて初めて1位となった。一方で、日本は10位で過去最低。研究活動の国際的な地位低下を改めて示す結果となった

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