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『経労委報告』を読む~春闘に対する財界の指針分析~ (メモ)

 「経団連」が22年春闘の財界側指針となる「経営労働政策特別委員会報告」を提出。労働運動総合研究所(労働総研)の藤田実事務局長による分析(「経労委報告」を読む 赤旗 5回連載 2/17192223)からのメモ

1)不都合な真実を見ない ~格差拡大、賃金低迷

(2)生活を守る賃上げ必要 ~先進国最低水準

(3)最賃上げ 全国一律制に ~生計費に見合わず

(4)正規雇用の流動化狙う ~ 「日本型」を攻撃 

(5)「日本型雇用」造り替え ~自営業化

1)不都合な真実を見ない

・総資本として春闘に対峙する立場を明らかにする『経労委報告』)~毎年の基調/賃上げ抑制の観点と労働者を自由に使役したいという観点から、資本の要求を前面に出すもの。

・が、今年は、世論の批判が強い事柄には第三者的に言及する一方、その原因である自らの行動を省みない={不都合な真実}を見ようとしない特徴をもつ

 ◆格差拡大の責任

・序文に「行き過ぎた資本主義がもたらした社会課題の一つとして、格差問題が挙げられる。無期雇用労働者と有期雇用労働者、大企業と中小企業、大都市圏と地方など、様々な局面で格差拡大が指摘されている」と言及

⇔ 客観的に事実を述べているような表現/だが、格差を拡大させ、それを利用してきたのは経団連を構成する企業

・経団連 毎年のように派遣労働の規制緩和を要望 ~ 「日雇い派遣の原則禁止の見直し」「グループ企業内派遣規制の廃止」「離職後1年以内の労働者派遣の禁止の撤廃」「労働契約申し込みみなし制度の撤廃」等/弱い立場を規制の撤廃

・「同一労働同一賃金」~ 経団連の提言(16年7月) 「日本型同一労働同一賃金」として、「職務内容や、仕事・役割・貢献度の発揮期待(人材活用の仕方)など、様々な要素を総合的に勘案し、自社にとって同一労働と評価される場合に、同じ賃金を払うこと」を基本的な考え方とすべき /極めて狭い範囲に限定するように主張

→これにより、適用範囲が、非正規労働者はごく少数に限定された。

★正規労働者と非正規労働者との格差是正には後ろ向き、格差拡大の原因をつくってき自らの行動を見ようとしてない

 ◆賃金の停滞続く

・賃金~ 経団連 労働生産性の国際比較をして日本の低さを論じている 

⇔が、G7の中で日本だけが賃金が停滞、OECD諸国でも低位にあることを見ようとしない

・外国人労働者~ 経団連、「高度人材の受け入れ拡大を図る必要がある」、地域経済の担い手である中小企業の人手不足に対応して「外国人材の受け入れ拡大や定着に向けた取組が引き続き課題となっている」と主張

⇔が、人権侵害的な扱いをされている技能実習生の実態には目を向けようとしてない /技能実習生=大企業やその下請け企業でも多く雇用 /中国・新疆ウイグル自治区の強制労働によって生産された原材料を使用する企業に世界の人権団体や市民から批判/企業はサプライチェーン(下請け構造)に組み込まれている労働者の人権にも配慮する必要

★経団連は「人権を尊重する経営」などの抽象的な表現ではなく/ 技能実習生などの外国人労働者の実態に関して警鐘を鳴らすべき。不都合な真実に目をつぶってはならない

 

(2)生活を守る賃上げ必要

・日本の賃金~ 1990年代後半から停滞が続く/2000年以来の欧米の先進国が緩やかに上昇しているにもかかわらず、経団連の賃金抑制方針で、ほとんど上昇なし

 ◆先進国最低水準

・日本の賃金~G7中 イタリアと並んで最低レベル(OECDデータ)

・OECD平均 4万9200ドル 日本3万8500ドル/韓国(4万1900ドル()よりも低賃金/豊かな先進国とはいえない状況

・多くのマスコミでも研究者レベルでも、日本の賃金の停滞が続いていることに危機感を持ち、その原因を追究

→が、「経労委報告」は、日本の賃金水準の低さに対する危機感の表明なし

 ・22年春闘に対する経団連の基本スタンス~ 「社内外の考慮要素を総合的に勘案しながら、適切な総額人件費管理の下、自社の支払い能力を踏まえ」「各企業が賃金を決定する」と述べ、「賃金引き上げ」と「総合的な処遇改善」に取り組んでいく

→社内外の「考慮要素」~「経済・景気・物価の動向などの外的要素と、自社の業績や労務構成の変化などの内的要素」/日本の賃金がOECD平均を下回っているという国際的な視点はない

 ・批判を無視できず~ 昨年と異なる点/コロナ禍でも過去最高益や継続的に利益を出し続ける一方、内部留保だけを積み上げていることへり批判を前に “賃上げ抑制を続けることは困難である”ことを認めるようになっている点

 ◆働きやすさとは

・次の分析角度~ 「経労委報告」のいう「総合的な処遇改善とは何か」

・報告 「働き手の『働きがい』を高め、『働きやすさ』に資する」

・「働きがい」では、労働者の能力開発や成長支援など

→が、労働者にとっては、自分の働きが正当に評価され、それが賃金に反映することも重要

・「働きやすさ」~ 柔軟な労働時間制度の導入や育児・介護の支援など

→労働時間を短縮し、自由時間を増やすという施策なし/賃上げや、賃下げなしでの労働時間の短縮こそ、「働きがい」「働きやすさ」に資することを経団連は認識すべき

 ・賃上げ~国民生活を守るという観点からも重要

→日銀の超金融緩和政策で円安が長引き、輸入価格が上昇/企業が価格転嫁に

→値上げは一時的なものではない/、アメリカの中央銀行(FRB)が金利引き上げを表明、さらに円安が進む

★今年の消費者物価上昇率 2%を超える懸念/最低限、物価上昇率を超える賃上げを獲得しなければ、確実に生活水準は低下。22年春闘では、先進国最低になった賃金を引き上げ、国民生活を守るためにも、大幅な賃上げは必要

 

(3)最賃上げ 全国一律制に

・2000年代に入り、非正規労働者が急増/21年 2064万人、雇用者の36・6% ~うち年収200万円未満の非正規労働者  1489万人(7~9月期) 非正規労働者の7割以上/低賃金の非正規労働者 雇用者の26・5%(7~9月期)

・非正規労働者の賃金を底上げ、生活の安定には、最低賃金の引き上げが重要

⇔地域ごとに分断されたものではなく、全国一律の最低賃金制度の導入が必要 /全労連の生計費調査~地方も首都圏も生計費に大きな違いはないから

 ◆生計費見合わず

・例)東京都の最低賃金1041円(時間額)~月収16万314円(1041円×1日7時間×月22日)。「家計調査」単身勤労者世帯の消費支出 17万1593円にとどかない

・「家計調査」 実支出23万5812円~ 時給1531円(23万5812円÷22日÷7時間)が必要。「1500円」は根拠のある数字

・『経労委報告~ 最低賃金引き上げ反対の姿勢 /改定後の最低賃金を下回る賃金で働いている労働者の割合を示す影響率を上げ、「最低賃金額で働いている労働者が多く、最低賃金引き上げが企業経営にダイレクトに影響を与える」と問題視

⇔が、「影響率が高い」とは、逆に「効果が大きい」ということ (メモ者 「合成の誤謬~ 1企業にとって低賃金は氏益確保につながるが、社会全体で実施すると消費不況、さらに「成長できない国」をもたらす。日本の現状が証明)

 ◆中小に支援必要

・中小零細企業が最低賃金引き上げに伴うコスト増を価格に転嫁できる環境の整備、なにより政府による直接支援が必要

→ 経団連は、そうした環境整備に積極的に協力することが必要(メモ者 例えば下請け叩きの根絶 )

・『経労委報告』~ 毎年のように特定最低賃金が地域別最低賃金を下回るという事実をあげ、その廃止を主張

⇔「特定最賃」 賃金が企業別で決められている日本で、産業別に賃金を決めるという点で大きな意義をもつ/その地域の産業別最賃となり、同一産業で働く労働者の最低水準を決めるもの

★特定最賃~ 企業別の労働条件を産業別で同一にするという産業別労働条件の平準化の突破口になりえる/労働組合は特定最賃の引き上げにも力を入れる必要がある

 

(4)正規雇用の流動化狙う

・以前の「経労委報告」~ 新卒一括採用、長期勤続雇用、OJT(職場内訓練)を中心とする企業内人材育成などからなる日本の雇用システムを「人間尊重の経営」として、高く評価し、維持すべきと主張

 ◆「日本型」を攻撃

・日本型雇用システムからの転換の打ち出し/、「2020年版」~「転換期を迎えている日本型雇用システム」。「Society5・0」の時代では問題点が顕在化し、その見直しが求められていると提起/「2021年版」~「『自社型』雇用システムの検討」を求める。

⇔「21年版」、日本型雇用システムについて、より批判的に 

〇新卒一括採用~中途採用や再チャレンジを困難にし、中小企業やスタートアップ企業の振興を阻害と断定

→ 若年層の失業率を低くさせ、社会を安定させる効果。企業も採用コストや研修コストを抑えられるメリット

〇長期勤続雇用~定年までの勤続を当然と認識し主体的なスキルアップや自己啓発への意欲を阻害している可能性を指摘

→自己啓発の取り組みの少なさは、企業や社会のあり方に原因/日本企業の人的投資はOJT中心、Off―JT(職場外訓練)への投資は少ない(国際比較調査) ~企業外部のリカレント(学び直し)教育やリスキング(再教育)する基盤が脆弱 /さらに仕事に直結する資格などが少なく、資格を取っても評価・賃金に結びつかないという企業の人事管理上の問題も/ こうした実態を無視し。「長期勤続雇用に安住している」とするのは一面的な議論

〇年功型賃金~ 実際に発揮した職能や賃金水準の間に乖離(かいり)が生じやすいと主張

→が、現実の賃金=年齢・勤続年数が決定要因となの年功型の要素は、若年層以外では少なく、役割・成果給の割合が高い

★「経労委報告」主張~事実の曲解、都合よく解釈したりして、日本的雇用システムを「攻撃」

 ◆ジョブ型の狙い

・日本経団連の狙い~「4.円滑な労働移動の推進」/企業戦略、事業構造の変化に応じ自由に正規労働者も移動させたい

・「ジョブ型雇用」の導入~ 、ジョブ(職務)の変化に合わせて自由に労働者の入れ替えを進めることがねらい

★「経労委報告」が想定する雇用システム~ 長期勤続の労働者は経営幹部層など一部に限定。労働者の多数は企業戦略や事業構造の変化に対応して流動的にするというもの/非正規労働者増加とあわせ、正規労働者も含めて、日本の労働市場を企業の都合に合わせて流動的なものにしていくということ

 

(5)「日本型雇用」造り替え

 ・「日本型雇用システムの見直し」に関連して、注視すべきは副業・兼業に対する積極的な方針提起

 ◆副業と兼業促進

・「副業・兼業は、スキルアップや自己研鑽(けんさん)、社外での幅広い視野・経験の獲得を可能にするなど働き手の主体的なキャリア形成を支援する施策として」積極的に位置づけ

⇔ 2021年10月 「副業・兼業の促進」という報告書に基づいたもの/報告書は「働き手のエンゲージメントを高め、働き方改革フェーズIIを推進する」施策の一つとして位置づけ

 ・経団連が副業・兼業の促進を打ち出す背景として上げられているのが、コロナ禍でのリモートワークの推進で、都市と地方の2拠点居住や都市在住者の地方からの仕事の請負が可能になったというもの/インターネット環境が整備され、在宅でも利用することでオフィスと同じ執務環境を作り出せ、仕事をする場所を選ばないということ

・情報通信産業分野~単発の仕事を請け負う「ギグワーク」という働き方で国境を越えて外国からの仕事を請け負う事例すら登場 /この意味では、経団連が主張するように、企業さえ認めれば、副業・兼業がやりやすくなったのは事実

・副業・兼業という仕事自体に注目すれば、労働者のスキルアップや社外での幅広い視野・経験の獲得につながることは否定でないし、それによって労働生産性向上をもたらす可能性もある

 ◆「自営業者化」へ

・経団連のねらい~「経労委報告」/副業・兼業などによって「社内のみならず社外にも通用する職能やスキル・経験を持つ多様な働き手が増えていくことが、社会全体での円滑な労働移動の実現にもつながるものとして期待される」

⇔ 流動的な労働市場に変えていく一助になるという認識

 ・副業・兼業を促進で、企業や社員のあり方を変えることに

・副業・兼業先では「インディペンデント・コントラクター」(独立自営業者)という位置づけで仕事を請け負うこともできる/労働者ではなく、雇用関係によらない働き手が増えてくれば、実際に仕事を行う社員の多くを自営業者化できることに。

→ 企業を自営業者の集合体にすることも可能に/

★副業・兼業の促進~労働市場の流動化を促すとともに、労働者の自営業者化にもつながる可能性があることに注意すべき

⇔ 経団連が本格的に日本型雇用システムの造り替えに乗り出すことの意思表明と言える

⇔労働組合 格差のない生活に見合った賃金を受け取れる、真に多様性のある労働社会の構築に向けて取り組み強化を

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