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世界と日本経済スケッチ 22年1~3月

「けいざい四季報2022Ⅰ」 赤旗3/304/2 等よりのメモ 

コロナ禍からの景気回復による物価高をウクライナ危機が拍車。さらに日本と欧米の金融政策の差(日本の「異次元金融緩和」の継続)で「悪い円安」が追い打ち。一方、企業へのサイバー攻撃が増加  など世界と日本の経済の動きのスケッチ

(1)世界経済 食料・資源に供給不安  

(2)国内景気 冷え込む消費者心理 

 非消費支出、特に介護保険料負担の高まり

(3)物価上昇 格差広げる恐れも 

(4)サイバー攻撃 自動車・アニメ産業も標的 ~ 政府に新組織次々

1)世界経済 食料・資源に供給不安  

・ウクライナを侵略したロシアに対し、各国が経済制裁を発動。ウクライナ情勢は世界経済へさまざまな影響を及ぼしている。

 

(1)ウクライナを侵略したロシアに対し、各国が経済制裁。その影響が国際経済に

・欧米など「対ロシア経済制裁」~金融取引停止、資産凍結、禁輸など/規模は15日現在、対イラン制裁の約2倍

・米国~ 2月28日、ロシアの中央銀行、政府系ファンド、財務省との取引禁止、ロシア中銀が米連邦準備制度理事会(FRB)に持つドル資産を事実上凍結

・EU~1日、世界の銀行決済取引網である「国際銀行間通信協会(SWIFT)」からロシアの主要銀行排除で合意

・バイデン米大統領~ 8日、ロシア産の原油・液化天然ガス、石炭などの輸入禁止の大統領令に署名、即日発効

・その他、ロシアへの最恵国待遇の適用停止、ロシアの政府要人・企業家の在外資産凍結/外国企業も相次いでロシア撤退⇔ ロシア通貨ルーブル暴落/ ロシア国内の物価高騰、外貨建ての国債がデフォルト(債務不履行)の危機に

 

(2)資源大国ロシアへの経済制裁で供給不安が増幅。多くの商品が記録的価格高騰

・コロナ禍からの景気回復で資源・エネルギー需要拡大の中/資源大国ロシアへの経済制裁

→ 穀物や資源・エネルギーの供給への不安をより高め、多くの商品が記録的な価格高騰に

・原油~ 6日、英北海ブレント 1バレル=139ドル台、米WTI 1バレル=130ドル突破。ともに約13年8カ月ぶりの高値

・ロンドン金属取引所(LME)~ 7日、ニッケル 前週末比約90%高の1トン=5万5000ドルの史上最高値。アルミニウム 史上初めて一時4000ドルを突破、 銅 1万845ドル 昨年5月の史上最高値を更新

・穀物価格 シカゴ商品取引所(CBOT) 8日、小麦 1ブッシェル(約27キロ)=13・635ドル、14年ぶりに史上最高値更新

 

(3)米欧が金融緩和を転換し、インフレ抑制へ。米利上げは途上国債務膨張の懸念

・米FRB 16日、20年3月に導入した事実上のゼロ金利政策を解除。政策金利を0・25%引上げ ~利上げは18年12月以来、本格的にインフレ対策へ /10日発表の2月の消費者物価指数  前年比7・9%上昇。ウクライナ情勢の影響でエネルギー価格が高騰。上昇率が前月(7・5%)からさらに加速、1982年1月(8・4%上昇)以来40年ぶりの高さ

・欧州中央銀行(ECB) 10日、量的金融緩和縮小ペースの加速を決定。早ければ今年7~9月に終了へ。/物価上昇への懸念の高まり /2月のユーロ圏の消費者物価指数 エネルギー価格高騰の影響で前年比5・8%上昇。1月の5・1%を上回り、過去最高を更新

・英イングランド銀行 17日、0・25%の利上げ決定。21年12月以来3会合連続の利上げ

⇔米国の利上げ~ドル建て債務を抱える途上諸国は、自国通貨安、ドル金利上昇で債務負担がさらに膨張するリスク

 

〇世界経済の主な出来事(1~3月)

1/27 米21年10~12月期GDPが前期比年率換算6.9%増と発表

  31 ユーロ圏21年GDP発表。前年比5.2%増で2年ぶりプラス

2/28 米政権、ロシアの中銀・政府系ファンド・財務省との取引禁止

3/1  EU、国際銀行決済取引網からロシアの主要銀行排除で合意

  2  2月のユーロ圏の消費者物価指数発表。前年比5.8%上昇

  8  米大統領令、ロシアの石油・天然ガス・石炭の輸入を禁止

  10 欧州中銀、緩和策縮小ペース加速を決定。7~9月にも終了

  10 米労働省、2月の消費者物価指数発表。前年比7.9%上昇

  15 EU、ロシアへの最恵国待遇の適用を停止

  16 米FRB、ゼロ金利を解除。約3年ぶりに0.25%の利上げ

  17 英中銀、0.25%の利上げ。21年12月以来3会合連続で利上げ

 

(2)国内景気 冷え込む消費者心理 

(1)新型コロナウイルスの感染拡大と生活必需品の値上がりで消費者心理が冷え込む

・2月の消費動向調査~消費者態度指数(2人以上の世帯、季節調整値) 前月比1・4減の35・3。3カ月連続で悪化/基調判断 前月「足踏みが見られる」から「弱含んでいる」と、2カ月連続で下方修正

・2月の景気ウオッチャー調査~街角の景況感を示す現状判断指数(季節調整値) 前月比0・2減の37・、2カ月連続で悪化

・2月の月例経済報告~景気の全体判断を下方修正、「持ち直しの動きが続いているものの、新型コロナウイルス感染症による厳しい状況が残る中で、一部に弱さが見られる」と、5カ月ぶりの判断引き下げと

 

(2)コロナ禍で完全失業率も上昇し、ロシアのウクライナ侵略で先行き不透明感増大

・コロナ禍で、勤め先・事業の都合による離職が増加~ 1月の労働力調査 「非自発的な離職」=前月比6万人増、「完全失業者数(季節調整値)」=4万人増、191万人。完全失業率 0・1増 2・8%、2カ月ぶりに悪化

・休業者数(原数値) 59万人増の249万人~デルタ株流行の昨年8月(250万人と同水準に

~宿泊業・飲食サービス業などで増。総務省「感染者数の増加やまん延防止等重点措置適用の影響がみられる」

 

・ロシア 2/24ウクライナへの侵略~先行きの不透明感が拡大

・3月の月例経済報告(3/25) 景気の基調判断を据え置く一方、先行きは、原材料価格の上昇、供給面での制約を挙げ、「下振れリスクに十分注意する必要がある」 と警戒感を示す

 

(3)日銀の大規模金融緩和で円安が加速し、物価が一層上昇することへの懸念が拡大

・外国為替市場~ 円安・ドル高が加速、輸入物価の一層の上昇に懸念/3/28 外国為替市場 一時1ドル=125円台に急落

⇔背景 インフレ対策で金融引締めに動く米欧、大規模緩和を続ける日本の違い/金利差拡大による円売り・ドル買いの進行

・「悪い円安」への懸念が拡大 ~ ウクライナ危機による原油・原料高の打撃を円安が増幅

⇔が 日銀・黒田総裁「円安が全体として経済・物価をともに押し上げ、わが国経済にプラスに作用している」(3/22記者会見)/ 物価上昇に苦しむ国民の実態との深刻な乖離

 

〇国内経済の主な出来事(1~3月)

1/9  政府が広島、山口、沖縄の3県で「まん延防止等重点措置」を実施

  17 みずほフィナンシャルグループがシステム障害多発を受け金融庁に業務改善計画を提出

  21 政府が「まん延防止等重点措置」を16都県に拡大

2/9  トヨタの2021年4~12月期連結決算で純利益が過去最高の2兆3162億円に

  15 台湾積体電路製造(TSMC)とソニーグループが熊本県に建設する半導体工場の総投資額を約9800億円に増額すると発表

3/9  農林水産省が輸入小麦の価格を4月1日から17.3%引き上げると発表

  10 2月の国内企業物価指数が前年同月比9.3%上昇

  21 政府が「まん延防止等重点措置」を終了

 

家計の非消費支出 割合高まる 3/31

・非消費支出~ 直接税(所得税と住民税)・社会保険料(健康保険料、公的年金保険料、介護保険料など)の合計額

・総務省「家計調査~ 「消費支出と非消費支出を合わせた実支出」に占める「非消費支出」の割合

⇔ 2人以上の世帯のうち勤労者世帯 2021年 26・7% /比較可能な00年以降で最高

・非消費支出の内訳の推移

・直接税が非消費支出に占める割合 00年45・5% →21年の41・9%へ低下/社会保険料の割合 54・4%→58%へ上昇

~とりわけ介護保険料 05年の1・5%→21年3・3%へ倍加/実額 05年1264円→21年 3701円へ3倍近くに

・介護保険の給付費~保険料と公費が半々/国の負担は公費の半分で約4分の1 

→ 65歳以上の保険料 21年4月 全国平均月額6000円超え/保険料抑制、給付充実には国負担の引上げが不可欠

 

(3)物価上昇 格差広げる恐れも  

 商品やサービスの価格引き上げが相次ぎ、家計を直撃。景気を冷え込ませるとともに、格差拡大を深刻化。

 

 (1)商品・サービスなど次々値上げ。

・今回の値上げの特徴 ~ エネルギー、食料品、日用品など多岐にわたる

・電力大手10社、ガス大手4社 3月からの家庭向け料金を引き上げ

・丸大ハム、日本ハムなどハム・ソーセージ大手4社 2月、3月で値上げを実施/味の素、キユーピー マヨネーズをはじめとする調味料を3月から2~10%値上げ

・王子ネピア、日本製紙、大王製紙など製紙大手 ティッシュやトイレットペーパー、花王 紙おむつメリーズの値上げ。

・消費者物価指数~生活実感に近い「帰属家賃を除く総合」で前年同月比6カ月連続上昇。2月1・1%増

 

 (2) 背景に需給不均衡による商品市況の高騰、ロシアのウクライナ侵略が原材料高に拍車し

・値上げの直接の要因~原材料高

・農水省 3/9 政府が買い付けて国内の製粉業者に売り渡す輸入小麦価格 4月1日から17・3%引き上げと発表

・商品生産・流通・販売に関わる費用も上昇~ 菓子などを企画・販売するやおきん 4月から「うまい棒」の価格を現行10円から12円に引き上げ。理由を「原材料、運送費などの高騰」

 

・原材料高騰の背景~需給の不均衡から生じる世界的な商品価格の高騰/ロシアによるウクライナ侵略が長引けば食料品を中心に高騰はさらに続くとみられる

→ロシア、ウクライナ 世界の小麦輸出量の約3割 /ロシアの産出資源が世界輸出に占める割合 原油12%、天然ガス25%、石炭18%など。ステンレスの製造に欠かせないニッケルは世界生産の7%、包装などに使われるアルミニウムは6%

 

 (3)円安の進展による輸入物価の上昇を日銀は放置。格差拡大を深刻にする恐れ

・円安の進行で輸入物価が上昇~ 欧米の中央銀行 インフレ抑制のため金融緩和から脱却し、利上げへ /政府・日銀は低金利政策維持のために大規模な金融緩和を継続

→ 金利差から円売り、ドル・ユーロ買いの流れ。歴史的な円安が継続/「異次元の金融緩和」が元凶

 

・生活必需品の値上げ 貧富の格差を拡大 ~ 内閣府 「日本経済2021―22」(ミニ経済白書) エネルギーや食料品の価格高騰が家計に与える影響について、年間収入分位別に試算 「低所得者に対してより大きな影響を与える」と指摘

→ 格差拡大をこれ以上深刻にしないためにも、消費税減税をはじめとする経済対策が求められている

 

(4)サイバー攻撃 自動車・アニメ産業も標的  

(1)自動車産業や製菓、アニメ産業でサイバー攻撃を受ける。システム障害など発生

・ブリヂストン 2月27日、米子会社ブリヂストンアメリカスの社内ネットワークに不正アクセス、身代金要求型ウイルスに感染

・トヨタ自動車 2月28日、取引先部品メーカー・小島プレス工業でシステム障害、国内の全14工場で3月1日の稼働停止

・自動車部品大手のデンソー 3月10日、ドイツのグループ会社でネットワークへの不正アクセス

・森永製菓 3月13日深夜、社内のシステムに障害が発生。不正アクセスを確認、社内サーバーと外部のネットワークを切断。

・東映アニメーション 3月18日、4月公開予定の「ドラゴンボール超スーパーヒーロー」の延期を発表。3月6日に社内システムが不正アクセスを受け、作品製作が難しくなったことが原因

 

(2)1カ月以内に約3割の企業が経験。ロシアによるウクライナ侵攻後に多くなる

・帝国データバンク サイバー攻撃についてアンケート調査(3/1114) 企業の28・4%が1カ月以内に攻撃を受けたと回答

~ 企業から「不正メール受信が特にロシアのウクライナ侵攻後に多くなった」/同社「強固なセキュリティー対策が求められる」

・3月1日、内閣サイバーセキュリティセンター、経済産業省や警察庁などが連名で、対策の強化を呼びかけ~ 企業単体ではなく、サプライチェーン(供給網)全体を俯瞰(ふかん)した取り組みを要請

 

3)国家レベルの関与が明らかになった事例も。自衛隊、警察、公安で新組織の相次ぐ

・警察庁 2/10発表「2021年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情報」

~身代金要求型の被害が拡大=国内の医療機関が標的となり、市民生活にまで重大な影響を及ぼす事案も確認/政府機関や研究機関などが不正アクセスを受け、職員の個人情報などが盗まれた可能性のある事案も発生/国家レベルの関与が明らかになった事例もあったと報告

・公安調査庁 3/8、サイバー特別調査室を4月1日(予定)に立ち上げることを発表~サイバー攻撃による機微技術・データなどの流出や重要インフラへの被害の発生への脅威が増大していることに対応するため、としている。同庁の和田雅樹長官「同庁の強みである人的情報源を活用」する

・防衛省 3/17、「自衛隊サイバー防衛隊」を立ち上げ~約540人体制で名称は。陸海空の自衛隊の共同組織。

・警察庁 「サイバー警察局」を4月に新設

 

【経済安保法 ~ サイバー攻撃への軍事的対応と直結】 

・経済安全保障法の必要性強調  岸田首相~「特にサイバー攻撃によって、国家および国民の安全が損なわれる恐れがある」(3月17日、衆院本会議)

 ・米国~サイバー攻撃に対して軍事的対応の方針/国家安全保障戦略(2017年12月)=サイバー攻撃が現代戦の重要な特徴になっており、場合によっては相手を抑止、防御、打ち負かす必要がある/米国防省の国家防衛戦略(18年1月)=サイバー防衛などへの投資拡大を表明 /国家サイバー戦略(18年9月)=ロシア、中国、イラン、北朝鮮を名指ししてサイバー攻撃、知的財産の盗用に対処するとして同盟国との協力促進を掲げる

 2019年 日米安全保障委員会(2プラス2)~サイバー攻撃が日米安全保障条約第5条に基づく「武力攻撃」に該当し得ると共同文書に明記 ~日本共産党の井上哲士議員の質問に、当時の岩屋毅防衛相の答弁

 「サイバー攻撃であっても、物理的手段による攻撃と同様の極めて深刻な被害が発生し、これが相手方により組織的、計画的に行われていると判断される場合には武力攻撃に当たり得る」「自衛隊は必要な武力を行使することができる」「必要な武力の行使として物理的な手段を講ずることが排除されているというわけではない」(同4月25日、参院外交防衛委員会)

→ 自衛隊の武力行使にまで踏み込む 

・サイバー攻撃に対応する経済安保法案は、軍事的緊張を高める危険をはらむ

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