物価高騰 もろい日本経済 ~ 構造的弱点(メモ)
インフレ・物価高が世界を襲う中、日本経済の脆弱性が際立ってる。その現状と原因について・・・
群馬大学の山田博文名誉教授の「赤旗」への寄稿(2022/4/21-23)、さらに関連して、 「物価高騰 日本経済の構造的弱点」 22/4/26-29 からのメモ。
(1)日本の低成長(賃金・設備投資のカット、内部留保の積み増し) + 食料、原油高による内需への打撃 (2)アベノミクス・異次元金融緩和 (3)企業の生産拠点の海外シフトによる「円の実需の減少」 という、日本経済の構造的な弱点のあらわれ。 自公の経済政策の「成果」の現在地
なお、3月の消費者物価指数が「前年同月比0.8%上昇」が実感とかけ離れている要因の解説も・・・
≪ 必需品ほど値上がり激しく 消費者物価指数 ≫
・総務省 3月の消費者物価指数(価格変動の大きい生鮮食品を除いた総合指数) 前年同月 0・8%上昇
⇔ が、「0・8%の物価上昇」 は、国民の生活実感からかけ離れたもの
・指数には「持ち家の帰属家賃」という架空の数字が含まれている~ 持ち家世帯が住んでいる住宅を借家と仮定した家賃相当額のこと/国際比較などのために消費者物価指数、GDPなどに算入
⇔ 「持ち家の帰属家賃」を除く、3月の消費者物価指数 前年同月比1・5%増
・指数は、世帯が購入する商品やサービス価格の平均的な変動を示したもの/ 電気代や食料など必要性の高い品目だけでなく、外国パック旅行費など世帯の嗜好による選択的な品目も含まれる
⇔ 必要性の高い「基礎的支出項目」 前年同月比4・5%増 /「選択的支出項目」 同3・3%減
★賃上げの実現、消費税減税(世界84国・地域で実施)が求められる
[もろい日本経済]
1.インフレ・物価高が襲う
・最近の消費者物価~ 米 40年ぶりの前年比8・5%、EU諸国 過去最高 7・5%の上昇。従来1~2%台、深刻なインフレ
・国連食糧農業機関(FAO)~ 世界の食料価格指数(14~16年=100) 3月、過去最高159・3まら。国民生活を直撃
・日本~燃料・原材料・食料等の多くを輸入に依存/物価高騰が企業物価指数を直撃/2月、前年同月比9.3%増、41年ぶりの高水準。⇔ 店頭の食料品価格高騰に パン7・2%、マーガリン9・5%、コーヒー・ココア5・6%などと高騰
ダブルパンチ
・世界中がインフレ・物価高に襲われる背景
- リーマン・ショック、コロナ禍に直面した各国政府と中央銀行が歴史的に例をみないほど拡張した財政金融政策を実施
・各国の財政支出と中央銀行の資金供給量は世界の実体経済(国内総生産=GDP)の成長を大きく上回った。
→ 増大した中央銀行の資金供給は、民間銀行の企業・家計・投資家などへの貸し出し原資を増やし、実体経済が必要とする通貨量を超えて過大な通貨が流通し、通貨価値は下落させ、全般的な物価高=インフレが発生
・中央銀行の資金供給量の増大 ~中央銀行の資産(保有国債や貸出金など)の増大となり表示される。
~リーマン・ショック以降、主要中央銀行の資産が激増/日銀 約6倍、米FRB 約10倍、欧州中央銀行(ECB)で約6倍/一方、世界経済(GDP)の規模 1・6倍どまり。
→ 過剰に供給された資金/世界各国の各種商品、株式などの金融資産、不動産などに向かい、インフレ、バブルを発生
ロックダウンなど新型コロナ対策としての人と物の移動制限が、グローバル化した供給網を切断。商品の供給量が減、一方、需要サイドは各国の財政金融膨張 ⇔ 需要が供給を上回り、商品価格の上昇に/通貨価値の下落によるインフレとは区別 ~国民生活からすれば、インフレに加えて需給のアンバランスによる価格上昇というダブルパンチ
生命維持深刻
- 今年2月末、ウクライナ危機~ 世界の原油・天然ガス・各種資源大国の対外輸出減と供給減を招き、価格が高騰
・基幹エネルギー価格の高騰→川中の企業物価を押し上げ→川下の消費者物価に転嫁。世界的な物価高を誘発
・ウクライナとロシア~世界の穀物取引の4分の1を占め、国連FAO 世界が食料難に陥り、すでに過去最高値にある食料品価格が今後さらに22%上昇する恐れがあると推測
→ 穀物は生命維持のための代表的な食料/食料自給率が低く輸入に依存する日本への影響の深刻化の懸念
2.身動きできない日銀
・インフレ・物価高に対し、各国中央銀行は、政策金利を引き上げ、量的緩和(QE)の縮小、金融引き締め政策に転換
→ 中央銀行の本来の役割 インフレを防止する「物価の番人」だから
・米FRB 、政策金利を3月に0・25%引き上げ。今後連続利上げを予定、来年半ばには3・5%超の見通し/8兆9000億ドル(約1100兆円)に膨らんだ資産を来年末までに約2兆ドル圧縮する予定
・英中央銀行(BOE) 昨年末から連続利上げ 現在0・75%/欧州中央銀行(ECB)も利上げを予定
★が、日銀は「物価の番人」として身動きできない事態に追い込まれている~アベノミクスの悲惨な末路
金利格差拡大
・日銀 マイナス0・1%の政策金利に固執、世界各国との金利格差は拡大する一方~ 日米の長期金利格差は2%超に拡大/日銀 長期金利を目標値0・25%以下に抑え込むため、長期国債を利回り0・25%の指し値オペで無制限に買いまくり
・世界の投資マネー 金利の高い金融商品に向かい、日本からの資本逃避が進み、円安が加速
・日本の対外金融資産残高 外貨準備・直接投資分を除いても796兆円/ 4月に入り、20年ぶりに1ドル=129円台に。経済界からも「日本が独り負けしていることの象徴」「大変大きな問題」との声/輸入コスト高騰で、企業収益に打撃
⇔ ただ、大企業は一時的に受けるこの打撃を商品価格に転嫁することで軽減している
★円安が日本経済を活性化させる時代は去っている/かつて対外輸出で貿易黒字を稼ぎ出していた大企業の多くが海外に生産拠点を移転。貿易黒字大国だった日本は貿易赤字国に転落している
円安で生活苦
・高騰した輸入物価は、最終的に消費者物価に転嫁/円安が進むほど、国内物価上昇、生活が苦しくなる悪循環に
⇔ 日銀が身動きできないのは、アベノミクスの負の遺産に縛られているから/異常な低金利水準を維持しないと、財政破綻や株式バブルの崩壊を引き起こし、場合によっては日本発の大恐慌が発生するから
・アベノミクスの異次元金融緩和政策を担った黒田日銀総裁/ 目前のインフレ・円安問題よりも重視している事柄
- 国債金利の低位固定化(国債の加重平均金利は0・83%)を継続し、日本政府の財政破綻を先延ばしすること
日銀が異次元金融緩和で国債を買いまくり、国債を大増発~国債発行残高は約1000兆円に達し、日本は世界トップの「政府債務大国」に/ 国債金利が上昇すると、政府の国債利払い費用は数兆円規模で増え、財政危機が深刻化する
- バブルの夢を見続けること~ 異次元金融緩和政策で、国債・株式などの金融資産バブルを引き起こした/ 大企業・富裕層・内外投資家に巨額の利益。経済界から支持を集めた、という夢 /国民 格差拡大の悪夢でしかない
3.沈む日本からの脱却策
・コロナ禍、ウクライナ危機など、危機的事態に直面し、隠されていた矛盾が表面化
⇔ 証明されたのは/ 新自由主義政策と異次元金融緩和政策にまい進したアベノミクスが貧富の格差を拡大し、政府債務を膨張させ、日本経済そのものを脆弱化させたこと/ 安倍政権と、それを継承した菅・岸田政権の責任は重大
世界で位置低下
・昔日の日本は見る影もなく、世界経済における日本の位置は驚くほど低下
・日本経済(GDP) 世界経済に占める割合 94年17・8%がピーク。21年 5・3%に落ち込む/為替相場、インフレを排除した購買力平価比較 日本 GDP(5・6兆ドル) 中国(27・0兆ドル)、アメリカ(22・9兆ドル)、インド(10・1兆ドル)に次ぐ第4位
・日本経済の脆弱化を加速した要因 / 大資本の目先の利益を優先し、国内の設備投資を怠り、賃金を削減する新自由主義を推進。さらに異次元金融緩和で資産バブルと政府債務の膨張を招いたアベノミクス
⇔ 日本はもはや各国から注目されなくなり、海外メディアの日本記事は激減/代わって中国、インドが注目されるように
★21世紀に入り、先進国が高い経済成長率を誇る時代は終焉 ~ ゼロ金利とは「貨幣が資本として増殖しない=経済成長しない」状態
(メモ者 金利は、資本の平均利潤率を基礎とする。 1億円投資しても、利潤が生れない状況/ 利潤率の傾向的低下の法則、過剰資本を生み出す )
→00年~20年の実質経済成長率平均 新興国のトップランナー中国8・6%、米国1・8%、OECD平均1・6%、日本0・6%
対外関係見直し
・この事実と歴史的傾向を踏まえ、沈む日本からの脱却方向 ~ むやみに「成長」に走ることではなく /ましてアメリカに代わって日本の最大貿易相手国になった中国を仮想敵国にして軍備を増強することではない
⇔ 新自由主義政策、アベノミクスからの大転換 / 塗り変わった世界経済地図にふさわしい対外関係の見直し
- 新自由主義政策とアベノミクスによって失った「99%の人々の経済利益」の回復
消費税率5%への減税。賃上げ、各種保険料の引下げで国民の懐を温めること/消費不況からの脱出に直結
・社会保障・教育関連政策を充実させ、安心と夢を与えること/財源は大資本や富裕層などの応能負担で調達
- 目下のインフレ・物価高から国民生活を守ること
・円安で高騰した輸入物価を安易に消費者物価に転嫁させない大企業の努力が求められる~ 非常事態の今こそ、大企業がため込んできた466兆円の内部留保金を吐き出してもらう
- 世界最大の経済圏に成長したアジアに目を向け、中国、韓国、ASEANとの共存共栄を実現し、対米従属的な対外関係から脱却すること
★問題は、このような政策に向かわせる政府を実現できるかどうか
[物価高騰 日本経済の構造的弱点] 22/4/26-29
(1)格差が拡大するもとで
・物価高騰は「もろくて弱い」日本経済の構造的弱点を浮き彫りに
~帝国データバンクの企業アンケート/64・7%の企業が主要商品やサービスの値上げを実施済み、あるいは実施予定 /食品主要105社を対象にした調査 4月14日までに累計6167品目で値上げの計画
・今回の物価高騰 生活必需品を中心としていることが特徴/低所得者層ほど強烈な痛みを押し付けている
労働者に犠牲 富裕層に利益
・新自由主義、とりわけアベノミクス~日本社会に貧困と格差拡大を押し付け
・大胆な金融緩和 ⇔ 円安と株高を引き起こし、一部の輸出大企業と大資産家を潤した
~米経済誌『フォーブス』 日本の上位10人が保有する総資産 12年 4兆4126億円⇒22年 12兆1389億円と2・75倍に
・大企業 経常利益を増やす一方で、設備投資、賃金を抑制
~大企業の内部留保 12年度 333・5兆円 ⇒ 20年度 466・8兆円 133・3兆円も増加
~ 労働法制の改悪などの結果、不安定雇用の労働者が増加、実質賃金 12年 年401万円⇒21年 381万円 20万円減少
消費税増税に加えてコロナ
・安倍政権 2度の消費税増税の強行(14年4月、19年10月)~ 格差拡大、消費低迷
・加えてコロナ禍 外出自粛などで対人サービス業に打撃。サプライチェーンの寸断による生産活動の停滞
→ その矛盾は女性や非正規雇用など経済的に最も弱い部分に集中/社会保障の削減、年金削減も暮らしと経済を直撃
→・この深刻な貧困と格差拡大のもとに、現在の物価高騰が追い打ち/ 帝国データバンク 値上げを実施・予定している食料品メーカーの値上げ幅は平均11%/生活必需品の値上げは低所得者を直撃、格差をさらに拡大
・みずほリサーチ&テクノロジーズの試算~22年に予想される食料・エネルギー価格の上昇に伴う支出増の収入に対する割合/ 年収1000万円以上の世帯 0・5% 同300万円未満の世帯では1・8%に
(2)アベノミクスの呪縛
投資マネーが日本から逃避
・3月7日 114円台(対ドルの円相場) ⇒ 4月20日 一時129円台まで下落/ひと月半ほどで約15円、円安
→ 大きな要因 日米金利差の拡大/ 長期金利の指標となる10年物国債の利回り~ 米国 3/7 1・7%台、4/20一時2・98%まで上昇。他方、日本では0・25%以下の低水準を維持 ⇒ 日米金利差 2・7ポイント程度に拡大
・投機マネー 金利の高い金融商品を求め、日本から逃避して米国に向かい、ドル高円安が進んできた
・長期金利の上昇/米国だけでなく、G7の10年物国債利回り(日本を除き) 3/7以降 0・6~1ポイント上昇。日本0・1ポイント→対ユーロの円相場 3/7 125円台 ⇒ 4/20 138円台へ急落
・円安が輸入物価を押し上げ~ 経済同友会・桜田代表幹事(SOMPOホールディングス社長) 「現在の(円安)水準が適切だとはとても思えない」と、輸入コスト増が、コロナ禍で苦しむ運輸・飲食業をさらに圧迫していると指摘(3/29記者会見)
・日本と米欧の金利差拡大~ 原因は金融政策の違い
~米FRB 物価高騰を抑えるため、3月に政策金利を0・25%引き上げ/欧州中央銀行(ECB) 量的金融緩和の縮小に着手、利上げを予定/英 中央銀行(BOE) 昨年12月以降3回の利上げを実施、政策金利は現在0・75%
~ 日銀 マイナス0・1%の政策金利に固執/ 10年物国債利回りを0・25%以下に抑えるため、10年物国債を利回り0・25%で無制限に買う「指し値オペ」を実施/さらに黒田総裁「(円安は)わが国経済にプラス」(3/22会見)と円安の火に油を注いだ
政府経済政策 全面的転換を
・日銀の混迷~ アベノミクスの呪縛にとらわれているから
・2%物価上昇をめざす異次元金融緩和策 ~ “経済低迷の原因はデフレなので日銀が大胆な金融緩和を採用して物価を上げれば経済は成長する”という誤った理論が根底に
~異次元緩和を9年間続け、経済は低成長から脱せず、日銀は自縄自縛に/ 「デフレは低成長の原因ではなく、結果」(白川方明前日銀総裁『中央銀行』)というのが真相
★日本を経済成長できない国にした元凶 自公政権による誤った経済政策
~ 雇用破壊・社会保障改悪・消費税増税という新自由主義政策を進めて国民の可処分所得を減らしてきた/コロナ禍以前から個人消費が落ち込んでいたため、欧米諸国と違い、ワクチン普及後も景気が急回復できなかった
・2021年通年の実質GDP成長率(前年比)~ 米国5・7%、EU27カ国 5・3%。日本 1・6%と置き去り状態
・日銀を自縄自縛から解き放ち、「物価の番人」としての役割を果たさせるには、政府の経済政策の全面的転換が必要
(3)輸入に依存するもろさ
・ウクライナ危機~円安による輸入物価の上昇と相まり、食料、飼料、肥料、燃料などを輸入依存の脆弱性を浮き彫りに
食料自給率は37%まで下落
・日本 食料自給率(カロリーベース) 史上最低 37・17%まで下落/ウクライナ危機で、食の安定供給に懸念も
・穀物価格の国際的指標=シカゴ商品取引所(CBOT) 3/8小麦の先物価格 14年ぶりに史上最高値を更新 /世界の小麦需要の高まりのなか、主要輸出国のカナダ、米国などで天候不順のために収量減少し、値上がりが続いていたところへ、ウクライナ危機で供給不安が増幅したため /ロシア、ウクライナ 世界の小麦輸出量の約3割
・政府 4/1 輸入小麦の売り渡し価格 17・3%引上げ。ウクライナ危機以前の国際価格上昇分/今後さらに上昇する懸念、
・国連食糧農業機関(FAO) 4/8発表 3月の世界の食料価格指数 過去最高を更新/ FAOの試算 ロシア、ウクライナの穀物輸出の減少は、他の諸国の輸出余力では補いきれず、食料の国際価格が8~22%上昇する恐れがある
→ 日本はロシアとウクライナから穀物をほとんど輸入してないが、他国の代替需要が日本の主な輸入相手国である米国、カナダ、オーストラリアなどへ向けられ、争奪戦に/日本が買い負ける可能性も十分にある(メモ 円安が直撃)
・飼料穀物の国際価格も上昇/ 日本 飼料穀物の多くを米国、ブラジル、オーストラリアなどから輸入。飼料自給率 25%
~ 日本 トウモロコシ 米国68%、ブラジル 19% / 大麦 豪州 64%
・トウモロコシの国際価格~ 中国における需要増、南米産の作況悪化懸念などで上昇、ウクライナ危機を受けてさらに高騰
~ トウモロコシ輸出 ウクライナ 世界4位(14・5%) /大麦輸出 ウクライナ1位(13%)、ロシア2位(13%)
・ 化学肥料の原料も値上がり~ 人口増加による食料需要増に加え、ウクライナ危機の影響
~日本 尿素の輸入 マレーシア47%、中国37% /リン酸アンモニウム 中国1国で90%/塩化カリウム ロシア16%、をベラルーシ10% 経済制裁に伴い調達先の変更を迫られている
石油価格上昇 影響広範囲に
・石油製品価格の上昇・高止まり~ 農業、漁業はじめ、国民の営業と暮らしに広範囲で深刻な影響
~ コロナ禍からの景気回復に伴う需要増に加え、/世界3位の産油国ロシアのウクライナ侵略と対ロ経済制裁で供給不安に/プラス 円安によって輸入価格が上昇 まさに「三重苦」
・政府は、石油元売り会社へ補助金(メモ者 原油高で大儲けしている元売りへの補助金?効果のほどは不明 )
(4) 海外移転で円の需要減
・物価高に拍車をかけている円安~ 要因は金融緩和だけではない/日本経済の構造変化で、円の実需が減少
~ 特に重大な変化 / 大企業が生産拠点を海外に移転し、貿易収支を悪化させたこと
・貿易収支~ 今年3月、赤字4124億円。8カ月連続のマイナス、赤字基調が定着/21年度・貿易収支 赤字5兆3749億円
・2000年代半ば頃から世界的な需要増加、供給抑制により、原油、LNGの輸入額は高止まり
~そこへ①新型コロナウイルス禍からの景気回復 ②ウクライナ危機 ③円安 で、輸入価格が高騰、貿易収支の赤字幅拡大
輸出促進効果 移転で低下へ
・円安~ 輸出企業の価格競争力を高めて輸出を促す面をもつ/が、効果は下落
⇔ 生産拠点の海外移転(メモ者 分散させ為替リスクのヘッジ面も)、輸出数量増に結び付かない
・製造業企業の子会社・孫会社による海外生産比率 19年度 37・2%(経済産業省「海外事業活動基本調査」)。他社への外部委託を含めれば、海外生産比率はさらに高まるとみられる
・ニッセイ基礎研究所 上野剛志経済研究部上席エコノミスト~ これらの要因により 「2000年代半ばごろまで10兆円前後の黒字を維持していた日本の貿易収支がこの10年程度はほぼゼロに落ち込み、外貨を円に交換する円転需要の減少につながった」(「まるわかり“実質実効為替レート”」)と指摘
需要増えない「再投資収益」
・経常収支は大幅な黒字が継続 ~ 企業の海外投資の増大に伴い、海外子会社からの配当金、証券投資の利子収入など「第1次所得」が増えたため
⇔ 経常黒字/通常、外貨を売却して円に換金する需要を高めるため、円高を招く /が、「第1次所得」黒字額の14~64%(21年度)を占める「再投資収益」= 海外子会社などの内部留保金。円の需要を増やさない
・企業の海外投資の活発化~ 円を投資用の外貨に交換する需要を増大させるため、円の下落につながる
・経常収支の黒字自体が急減~ 昨年12月 2675億円の赤字に。今年1月 1兆1964億円の赤字に拡大
⇔ 原油高、円安で輸入額が増加 /一方、輸出の回復が遅れ、訪日外国人の激減が継続
~ 季節要因がある経常収支/2月には1兆6483億円の黒字に回復。が、前年同月比 1兆2177億円(42・5%)減少
・上野氏の指摘 (1)日本の低成長 (2)日銀の金融緩和 (3)企業の生産拠点の海外シフト (4)原油価格の高止まり―で「円の実需が減少した」
★現在の円安~ 日本経済の構造的な弱点が現れている~ 低賃金労働力を目当てに生産拠点を海外移転し、国内の雇用・産業・経済を破壊してきた大企業の責任は重大/ 「自由貿易」の推進や海外進出企業優遇税制によって製造業の空洞化を招いた自公政権の政策の転換が必要
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