My Photo

« アジアの緊張高める「経済安全保障」 ~軍事研究に動員させる仕組み「シンクタンク」「協議会」 | Main | 世界と日本経済スケッチ 22年1~3月 »

金融と新自由主義(メモ) 

「世界各国の金融市場を支配し、新自由主義の政策を企業と国家の双方に押し付けている巨大金融資本について、山田博文・群馬大学名誉教授に「聞く」からのメモ (2022/2/1-4)と参考記事

(1)破壊された防壁 (2)外資が日本経済改造  (3)資本逃避で国を脅迫 (4)異次元緩和のリスク  (5)99%のための経済に。それに追加し「税逃れの防止 ~ 納税情報公開の意義」  

 その他、格差問題(オックスファム報告、「愛国的な百万長者」グループの声明)

【金融と新自由主義(メモ)】 

(1)破壊された防壁

規制緩和の嵐

〇新自由主義は金融分野で推し進めた「改革」

・資本の自由を最優先する新自由主義のイデオロギーが各国の政策に取り込まれたのは1980年代以降/金融資本の利益追求の障害となる規制を緩和・撤廃する「金融の自由化・国際化」が世界を席巻 ~ 主な柱は、3つ

①資本の国際移動を自由化すること

日本では▽外国投資の事前許可制を廃止する▽外国の証券会社に口座を開設して外国の株式や債券に投資できるようにする▽外国資本に国内投資の門戸を開く―などの規制緩和が行われた

②独占禁止法を緩和して金融持ち株会社を解禁し、銀行業・証券業・保険業の垣根を取り払うこと

③証券売買手数料を自由化し、デリバティブ(金融派生商品)や各種投資信託などの金融商品を全面解禁すること

 

大恐慌の教訓

 〇なぜ、資本の国際移動や銀行・証券の兼業が規制されていたのか

 ・マネーは経済の血液なので、日本で稼いだマネーは国内で循環させ、日本経済の成長に使うという考え/ 外国投資で出血させるなんてとんでもないという考え

・銀行の倒産が続出した1930年代の世界大恐慌の教訓も重要 ~ 銀行業務と証券業務の兼業禁止は最大の焦点だった

→ 世界大恐慌は米国の株式・不動産バブルの崩壊から端緒 / バブルの原因は、不特定多数の企業と個人から預金を集める銀行が金もうけに走って株や不動産を買いまくり、投資したいという個人や企業にもどんどん資金を貸した /膨れ上がったバブルが崩壊し、銀行取り付け騒ぎが起こって金融システムが破綻し、世界に恐慌が波及

 

・銀行が担う決済業務 ~ 個人や企業の経済取引に伴う金銭上の債権債務関係を清算する業務 /決済業務が機能しないと個人も企業も金銭の受け払いができず、商品売買などの経済活動が停止する

⇔ 公的な性格を持つそんな大切な業務を、利益優先の民間銀行に委ねるのが資本主義体制の矛盾 / 銀行が価格変動リスクのある株式投資に走って株価の下落で倒産し、預金者の預金引き出しや決済業務に支障を来すと、経済社会全体が大恐慌に陥いるので、預金者を保護し、銀行の健全性を保証するために、銀行業務と証券業務の間に防壁が築かれた

→ 銀行・証券の兼業禁止規制は世界大恐慌の渦中の33年にアメリカの連邦法(グラス・スティーガル法)制定 / 戦後世界に影響を与えた ~ 銀行と証券の間にチャイニーズウォール(万里の長城)を築くべきだといわれた。

 

金融コングロマリットの支配

〇その防壁を新自由主義は台無しにした

・金融資本の動向 ~ 70年代以降、低成長経済への移行で、利益の薄くなった銀行の貸し出し業務より、株式・債券などの超高速売買で巨額の利益を稼ぐ証券業務に傾注

→米国は金融資本の要求に沿った規制緩和を繰り返し、99年には銀行・証券分離規制を事実上撤廃するグラム・リーチ・ブライリー法を成立。

・金融コングロマリット(複合企業)の登場・・・全て金融業務を自由に遂行し、国境を越えた金融ビジネスから利益を獲得 

→現在、日本の3メガバンク(三菱UFJ・三井住友・みずほ)を含む「大きすぎて潰せない」約30社が世界中から利益を吸い上げて独占

・金融コングロマリットは全世界の大手企業の資金繰りを支配する圧倒的な力を保有 ⇔ 企業には新自由主義的な経営を、政府には新自由主義的な政策を迫る、主権者のごとく振る舞っている ~ 巨額の資金を動かして投機的取引を主導し、バブルの発生・崩壊の元凶にも  ⇔ これが、金融分野における新自由主義のグローバルな帰結

 

(2)外資が日本経済改造

米国要求に沿って

〇米国の要求に沿って進められた日本の金融自由化・国際化

・米国は80年代以降、レーガン・中曽根会談や「日米円ドル委員会」(83年)で、日本の金融市場の規制緩和、外資への門戸開放、金利規制の緩和などを迫った / さらに「日米の新たなパートナーシップのための枠組みに関する共同声明」(93年)以来、日本改造の年次要望書を毎年提出し、貿易・企業経営・金融・労働など規制緩和を要求

⇔ 多国籍化を意図する日本の大資本も規制緩和を後押し、対米従属的な日本政府も米国の要求を受け入れ / 「金融システムの改革」(日本版金融ビッグバン)が1996年から2001年にかけて実施

 

・金融ビッグバン ~ 戦後日本の金融経済システムを抜本的に改造。米国の大資本が日本に進出して自国と同じやり方で金融ビジネスを展開できるようにする内容 /金融持ち株会社を解禁したため、日本の金融機関も銀行・証券・保険などの子会社を持つ巨大な金融コングロマリット(複合企業)へ変貌

・日本の金融経済システムは「間接金融から直接金融へ」構造的に転換 ~資金の調達者と提供者の間に銀行が介在するのが間接金融 ~ 融資を行う銀行が不良債権のリスクを負う /他方、銀行を介さず資金の調達者が証券市場で債券や株式などを投資家に直接買ってもらうのが直接金融~投資家がリスクを負う

・英米仕込みの金融ビッグバンは証券市場を活性化させ、直接金融を金融システムの主役に据えて、外資の参入を容易にすることを狙った 

→ 直接金融は、使い方次第で企業の民主化に役立つ可能性がある。が、「自由化・国際化」の中で巨大金融資本の支配力を増大させた

→ バブル崩壊後に大量の不良債権を抱えた日本の金融機関は融資を渋る一方、株式・債券やそれらを組み込んだ多様な金融商品を組成し、証券市場で売買する証券業務に傾注

 

侵略のノウハウ

〇金融ビッグバンの恩恵を受けたのは、多国籍的な大資本・投資家・富裕層

・外資に門戸を開放した途端に「ハゲタカファンド」が乗り込んでき、不良債権を抱えた日本の金融機関や企業を安く買いたたき、リストラして株価をつり上げ、高く販売して大もうけした

・日本企業の株主構成の変化 ~ 外国人投資家の割合 90年の4・7%から2020年の30・2%へ激増 /「株式会社日本」の最大株主は日本の企業・金融機関・個人でなく、外国人投資家に交代

・日本株に投資する外国人投資家の目的 ~ 日本の会社に資本を供給し、育成することではない/高い配当金を引き出し、株価をつり上げ、株式売却益を稼ぎ出すこと ⇔ 「もの言う株主」として最高意思決定機関の株主総会に乗り込み、目的を実現へ。とくに大手金融機関の大株主になって株主総会で自分たちの意思を通すことに注力

 

・もともと直接金融は英米が最も得意とする分野 ~ 英米の投資家は、金融機関を押さえてその国の経済全体を効率よく支配するノウハウを知っている = 「金融侵略」

・日本の3メガバンク、2大証券(野村・大和)の大株主は外国人投資家 ~ 大手金融機関の大株主になれば、取引関係にある多数の主要日本企業の経営方針に口を出せる / 経営に必要な資金を手配する条件として、終身雇用・年功序列賃金・企業福祉などの日本的な制度を廃止し、効率的な成果主義を導入するよう迫ってきた

⇔ その結果、雇用に責任を持たない新自由主義的な経営が短期間で日本企業全体に普及 / リストラ、非正規雇用が広がり、戦後の「安定的」な雇用環境を破壊 

・日米欧の多国籍的な金融資本~日本の経済社会を支配し、新自由主義的改造で、日本の労働者を徹底的に搾取

 

(3)資本逃避で国を脅迫

・外国人投資家を中心とする大株主の論理~ 「企業の使命は株主に報いること。雇用や国のあり方に経営者が責任を負う必要はない」 = 野蛮な資本の論理、新自由主義のイデオロギー/この資本の論理が日本の企業経営のあり方を変えた

 

配当金が最優先

・新自由主義の企業経営が最優先するもの~ 高額の配当金の支払い

→この10年、企業の純利益や株主への配当金は2倍以上に増え、内部留保金といわれる利益剰余金も大幅増 /他方で、減ったのは従業員給与と従業員数  

・バブル崩壊後、売上高・本業の営業利益は長期間にわたり低迷/が純利益・利益剰余金が増大する「減収増益」体質に

→その要因 (1)従業員給与を大幅に削減 (2)自公政権が法人税減税を繰り返したこと (3)大企業が金融ビジネスに傾注し、有価証券投資による金融収益(営業外収益)を増大 (4)海外投資から還流する利子・配当金などの金融収益が円安下で増大 

 

★日本企業は正社員を減らして非正規雇用を拡大し、効率よく利益を増やす「新時代の『日本的経営』」(日本経営者団体連盟・1995年)を実現 /ため込まれた利益は国内の設備投資や給与支払いではなく、グローバルな直接・間接投資へ

 

・経営権の取得を伴う直接投資の圧倒的部分 ~人件費の安い中国やアジア諸国での工場建設に /大企業が海外に投資先と生産拠点を移したことで、日本国内の製造業と雇用は空洞化

→対外進出した日本の企業数 2019年度現在、2万5693社、現地で雇用する従業員数は564万人

・利子や配当の獲得を目的とする間接投資(有価証券投資) ~欧米の株式・債券など高利回りの金融商品に

→ 企業は本業に打ち込むよりも、手持ちの資金をグローバルに運用して稼ぐ体質に

 

わが亡き後に…

〇金融収益の増大と労働者の貧困化は表裏一体

・マルクス『資本論』の解明 ~ 資本主義経済の目的は飽くことなき利益追求/労働者が生み出す剰余価値の搾取と収奪

⇔ が、剰余価値を実現する工程は、原材料の調達・生産・販売のすべての場面で時間と空間に制限され、生活向上を求める労働者のたたかいと衝突して非効率(メモ者「資本にとって」)に

⇔そこで資本の論理は、海外移転・外部委託・雇用の非正規化などで生産工程の搾取率を高める一方、巨額のマネーを地球的規模で高速に運用し、世界中から効率的に利益を収奪する金融ビジネスを活性化させた

・インターネットなどの情報通信技術の発展が時間と空間を超越した金融ビジネスに道を開いた / 加えて、資本の自由な運動を拘束する国内外のあらゆる規制を緩和・撤廃する新自由主義の政策を各国で普及させ、巨大金融資本は24時間いつでもどこでも、自由に巨額の利益を収奪できるようになった。

 

・巨大金融資本は投資先の雇用や経済に責任を負わない ~ 景気後退や相場の悪化が見込まれるやいなや、「わが亡き後に洪水よ来たれ」とばかり、一瞬で安全圏の国外に逃避 

→ 資本に逃避された国ではバブルが崩壊し、工事現場は放置され、企業倒産と失業の嵐が吹きまくる 

⇔ 資本逃避の可能性は企業と国家への強い脅しとなり、大株主の利益を最優先する新自由主義的な経営・政策の推進力に

*「金融の自由化・国際化」~ 巨大金融資本の権力を著しく強め、英米の投資家や大株主の下に世界の富を手っ取り早く集める「カジノ型金融独占資本主義」となって、人々の暮らしや地域経済を衰退させてしまった

 

(4)異次元緩和のリスク

〇新自由主義が掲げる「自由」は、人民の自由や権利と敵対 ~その本質を見せつけた出来事

チリを実験国に

・米シカゴ大学で新自由主義の代表的学者ミルトン・フリードマンの教えを受けた経済学者はシカゴ・ボーイズと呼ばれ、彼らは1973年、アジェンデ政権を軍事クーデターで倒したピノチェト独裁政権下で、チリを新自由主義改革の実験国にた

・共産党と社会党を中心とする人民連合に支えられ、民主的な選挙で誕生したアジェンデ政権 ~ 外資を含む大企業の国有化を進め、選挙を通じた社会主義建設をめざした/が、米CIAの支援を受けたピノチェト将軍がクーデターを起こし、大統領府を爆撃し、アジェンデ政権を打倒。そのニュースが流れたとき、シカゴ・ボーイズは学内で歓声をあげた

⇔それを目撃した宇沢弘文は激怒し、「以後一切シカゴ大学とは関係しないと決意した」と、後年語っている

・ピノチェト政権~ 新自由主義的な民営化・規制緩和を進めると同時に、多数の労働組合員、市民活動家を虐殺 /チリの悲劇には、米国の支配と新自由主義の本性が現れている

 

・フリードマンの経済学はマネタリズムとも呼ばれる~ 中央銀行が供給する貨幣供給量を増減することで経済や物価動向を管理できるとする貨幣数量説に立つのがマネタリズ

・第2次安倍政権下の金融政策を担った黒田日銀総裁 2013年4月、「供給する資金量を2年間で倍増させ、物価を2%上昇」させると宣言 ⇔ 「異次元金融緩和政策」は、貨幣数量説に立つ新自由主義の金融政策

→が、2年間で2%物価上昇という公約は8年間たっても未達成/新自由主義の破綻は十分すぎるほどに証明されてる

 

・そもそも、日銀が増やせる貨幣供給量は、民間銀行保有の国債を買い入れて供給するマネタリーベース(民間銀行の日銀当座預金と現金)だけ

⇔ 物価や経済動向に影響を与えるマネーストック(企業や家計が保有する現金と銀行預金)は増やせない / マネーストックが増えるのは、家計や企業が消費や投資を活発化させるために民間銀行から現金を引き出すか、借り入れを増やす場合だけ /深刻な消費不況の日本では、家計も企業も消費や設備投資を増やさないので、マネーストックは増えない

 

予測不能の危険

〇それでも、日銀が異次元金融緩和政策を続ける「理由」~ 野蛮な資本主義の姿の現れ

①国債入札に参加資格を持つ内外の巨大金融機関約20社(国債市場特別参加者) ~ 安く落札した国債を日銀に高値で売りつける日銀トレードで、国債売却益を稼いでいる

→ 巨大金融機関が12兆円以上の国債売却益を稼ぐ一方、日銀は約12兆円の国債償還損を抱え、その分、日銀の国庫への納付金が減り、国民負担が増えることになる。

②日銀による国債の大規模買い入れで国債金利・長期金利は下落し、ゼロ%近傍やマイナスの水準に低下

→ 政府の国債利払い費や企業の借入金利の引き下げに貢献

③他国と違い、日銀の異次元金融緩和政策は株式ETF(株価連動型上場投資信託)の買い入れを実施

→ 株価をつり上げ、会社と株主の利益に大貢献

 

*その結果が、日銀が抱え込んだのは異次元のリスク

→ 日銀保有の国債521兆円、株式36兆円の価格が何らかのきっかけで下落すれば、日銀に損失が発生

→「日本円」の信用にヒビが入り、円暴落のリスクが表面化 / 輸入品の値上がりで深刻な生活破壊の広がりに

*新自由主義の異次元金融緩和政策~ 内外の大資本・投資家には巨額の利益をもたらす一方、国民生活と日本経済には予測不能の危険な事態を招いている

 

(5)99%のための経済に

〇新型コロナウイルス危機の下で貧富の格差が拡大

・3・8億人の感染者と571万人の死者を出したコロナ禍~ 生活関連の中小零細企業を中心に、大規模な企業倒産と失業を誘発 / ILO:世界中で2億2000万人が失業し、約1億人が極度の貧困に 

→ 人類の生存権が脅かされ、生活破壊が進行

・約2750人の超富裕層 ~ コロナ禍の間に増やした富は3兆6000億ユーロ(約470兆円):世界不平等研究所の調査

→2021年に世界の上位1%の超富裕層が個人資産の37・8%を独占、下位50%は2%程度/資産格差は一層深刻に

 

驚異的株高記録

・その要因・・・コロナ禍の2年間に主要国の株価、債券価格が驚くほど上昇

~アメリカ ダウ平均株価 2万3000ドル台から3万6000ドル台、日本 日経平均株価は2万3000円台から2万9000円台へ

⇔ 実体経済指標である世界の名目GDP 合計額は87・39兆ドルから94・94兆ドル。ほぼ横ばいの1・08倍 / 金融経済指標の株価、債券価格は異常な上昇

・株価、債券価格が上昇した要因~ コロナ禍対策で各国中央銀行が歴史的に例を見ない超金融緩和政策を発動 ~ 株式、債券に買い向かう投資用マネーが膨張

  • 目先の利益を追求する新自由主義の金融経済が、人類の生存に不可欠なモノやサービスを生産・販売する実体経済から乖離し、世界のGDPの3~4倍も肥大化する投機マネーの暴走をもたらした

 

〇求められる政策転換  99%ための経済へ

・新自由主義政策がつくり出した「1%の富裕層や株主のための経済」/ 国民生活は貧困化し、国民経済と地域経済は疲弊し、貧富の格差が拡大する弱肉強食の新自由主義と決別し、「99%のための経済」に転換することが火急の課題

 

投機には課税を

〇金融分野の自由化・国際化の見直しが不可欠

①モノの取引を伴わない投機的な金融取引には課税し、実体経済から乖離したマネーの暴走を抑え込む 

~ 国境を越えた投機目的の国際通貨取引にも課税(トービン税)し、円・ドル・ユーロなどの為替相場の変動を抑え込み、安定化させる /低率の課税でも投機抑制効果は大きく、巨額の税源が生まれるうえ、金融資本の権力削減につながる

②国や地域の経済活動の中で稼いだマネーの一定割合はその国や地域の発展と安定のために再投資し、循環させる仕組みを成立させる

⇔ 金融機関に集中したマネーがグローバル市場や首都圏に流出したら、国民経済・地域経済は疲弊する / 米国にはマネーの地域循環を明記した「地域再投資法(CRA)」という先行事例がある

③中央銀行の独立性を保証し、「物価安定」の大目標を実現すること

→ 実体経済が安定して営まれるためには物価の安定が不可欠/世界大恐慌の教訓である銀行業務と証券業務の分離に立ち返るべき

④21世紀の人類的視点に立ち、国連総会で採択された「持続可能な開発目標」(SDGs)の方向へ金融政策や民間金融機関の経営を転換すること

→ 貧困撲滅、健康と福祉、質の高い教育、クリーンエネルギー、ジェンダー平等、気候変動対策、不平等と格差の是正、平和、持続可能な生産と消費、安全な街づくりなど、SDGsの17の目標達成を支援する金融システムを確立すべき

 

■ 税逃れの防止 ~ 納税情報公開の意義   

◎多国籍企業の税逃れが横行する背景 ⇔ 納税情報の不透明性

~ 国別の利益や納税額が公表されないため、大企業は租税回避地に利益を移してひそかに課税逃れが可能に

 ◎近年、国別の納税額を自ら開示し、消費者や投資家にアピールする企業が出現

・花王~ 納税主体となっている33カ国・地域の会社名や、国・地域別の事業実績と納税額を公表/「国際的租税回避のための税務ストラクチャー(構造)の利用は行いません」と強調

・20社以上の日本企業が国・地域別の納税額の開示に踏み切っている(「日経」 1月21日付)

⇔ 納税額の開示が企業のアピールポイントになるのは、税逃れへの社会的批判が高まり、情報公開を求める世論の力

 ◎経済協力開発機構(OECD)を中心とする税逃れ対策の取り組み

・多国籍企業の国別報告書が導入~国・地域別の事業実績と納税額を税務当局に報告させるもの。

 ◎日本共産党の大門実紀史参院議員 (2016年11月17日、参院財政金融委員会で開示を要請

国別報告書の一部を公開すれば「透明性を高めて市民ベースでチェックできる」と指摘し、「政府としても積極的に検討してほしい」

⇔ 多国籍企業の納税情報の不透明さは、課税を逃れて巨額の利益を得る反社会的な企業が国際競争で有利になる/情報公開は、不公正な競争に歯止めをかけるもの/自主的取り組みにとどめず、政府の責任で公開を進めるべきもの

 

 

■格差是正

【 「格差が人を殺す  国際NGOオックスファム報告書2022年1月  】

・新型コロナウイルスの感染拡大が始まってから、世界では26時間ごとに、新しく1人のビリオネア(資産10億ドル以上を所有する富裕層)が誕生 /一方、格差のために4秒に1人が死に至っていると告発。ワクチンを接種していれば助かった命が、大手製薬会社がワクチンの技術を独占的に管理しているため死に至っている。「経済的暴力」と指摘

 

〇報告書が紹介した「驚きの数値」

▽世界のトップ10人の資産は、2021年11月の時点で1兆5000億ドル。20年3月から倍に▽一方、1億6千万人以上が貧困に▽上位10人の資産は、下位31億人の資産を合わせた額よりも多い

▽上位10人が毎日100万ドル使っても414年かかる

▽上位10人の資産を米ドル紙幣で積み上げ、その上に座った場合、地球から月への距離のほぼ半分の距離に到達―

 

・新型コロナの感染対策として各国政府は16兆ドルを投入~ が、この資金の多くが富裕層の資産を拡大させた

⇔ その背景/ 独占の強化と民営化、法人税の引き下げと規制の弱体化、労働者の権利と賃金の低下という経済システム/しかも人種差別によって強化されている、と指摘~ 40年にわたる新自由主義の政策

 

・日本でも21年のトップ10人の資産は、20年から6兆円以上増え、16兆8500億円に

 

 

 「われらに課税を」声あげる富裕層 22/01/19 】

「今こそわれらに課税を」と公開書簡を発表 ~ 「愛国的な百万長者」グループ /米娯楽・メディア大手ウォルト・ディズニー共同創業者の孫アビゲイル・ディズニーさんら欧米などの102人が書簡に名を連ねた。

・不公平の根源は、課税制度~ 資産100万ドル以上の富豪に2%、10億ドル以上の大富豪に5%の富裕税を導入したら、毎年約287兆円の税収確保が可能

→ 23億人を貧困から脱出させ、世界中のワクチン確保も可能に。中低所得国の36億人に国民皆保険、社会保障を提供

 

« アジアの緊張高める「経済安全保障」 ~軍事研究に動員させる仕組み「シンクタンク」「協議会」 | Main | 世界と日本経済スケッチ 22年1~3月 »

経済・政治・国際」カテゴリの記事

備忘録」カテゴリの記事

December 2024
Sun Mon Tue Wed Thu Fri Sat
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        
無料ブログはココログ