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21年度軍事費 NATO基準ではGDP 1.34%程度か 

  財務省・財政制度分科会の防衛予算の分析は興味深い点がある。

①NATO基準では、20年度当初予算53400億円は、GDP比 1.2% 

②日本の「防衛関係費(19年度決算)は、税収の規模で比較した場合、諸外国と遜色ない水準」で「防衛関係費の水準を考えるに当たっては、この点も考慮した上で議論するべきではないか」と指摘している。

  日本5.4%で第5位、核保有国フランス5.7%。イギリス7.5

①では補正をふくんでいない。補正0.4兆円を含めると1.27

 →21年度は当初と3次補正7700億円の計61100億円。1.34

②日本はNATO基準でない(と思われる。注釈がないので)

  NATO基準で計算すれば、6.8%程度となり、フランスを抜き、イギリスに迫る

(あくまで①をベースにしての推計。GDPの変化は無視。というか、安倍政権がGDPの計算方法をかえ、盛られた数字になってるのでスケッチ的で「よし」とした)

 【財政制度分科会(令和31115日開催)防衛関連資料】

 

以前にもこんな記事があり、「GDP比0.9」だが、といっているので、この比率なら、1.48%となる

【防衛費、GDP比最大1.3% 防衛相、NATO基準で  日経19/4/9

 

実態を知るうえで・・・参考になる・

「防衛費GDP2%」は平和ぼけタカ派の空公約 ダイヤモンド 田岡俊次 2021/11/11

【自衛隊がいまだに突撃訓練をやめられない「日本人ならでは」の理由  「銃剣道」の伝統に縛られている 2020/9/10  PRESIDENT Online 二見 龍陸上自衛隊 元幹部】

 

【財政制度分科会(令和31115日開催)防衛関連資料】

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◆主要国の国防費対GDP比(2020年度)資料P7

我が国の防衛関係費は対GDP比で0.9%程度であり、NATO基準では1.2%程度と推計。
○ NATO
加盟国は、2024年度までに2%水準に引き上げることを目標に設定(2014年の会合にて決定)。

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★メモ者/ が、正面装備費を巨額の補正にすべりこませ当初予算を小さくみせている。

❶20年度補正計4千億円。20年当初5.31兆円。

合計で、当初の 107.5% ⇔ GDP比1.01  。NATO基準 +.26%を足せば。 1.27

❷21年度 当初5.34兆円と20年度3次補正0.77兆円。6.11兆円  20年当初の1151%  GDP 1.08% 

NATO分+0.26で、1.34 %

~ 年度で括れば❶となるが、実際は❷21年度当初と20年度3次補正を一体すすめている

  よって、22年度当初は、21年度当初を上回りそうなので、もっと大きくなる

 ・20年度補正

1次 121億円  コロナ対応

2次  63億円  コロナ対応

3次 3867億円 後年度負担の前倒し2800億円、C2輸送機600億円となど
・21年度補正 7700億円  

 

 ◆国防費(対税収比)と国民負担率(2019年) 資料P8
我が国の防衛関係費は、税収の規模で比較した場合、諸外国と遜色ない水準。
我が国の国民負担率は諸外国と比べて低いが、防衛関係費の水準を考えるに当たっては、この点も考慮した上で議論するべきではないか。
・こちらの方は決算額。が、NATO基準では、フランスを抜くのではないか。

 ★メモ者 本質的な問題

ドローンによる飽和攻撃、サイバー戦による、金融機関や発電所などのインフラに対する攻撃などの方が遥かに危険性が高いにも関わらずほとんど対策はとられていない(自衛隊はサイバー戦では自衛隊しか守らない)。

現代戦ではほとんど不要なった戦車や日露戦争以来の突撃戦に固執。各種の調達も、どんな戦略・戦術のもと、いつまで、にどれだけやいくらでそろえるのか、など他国では当然の計画もない。いじめ体質、海外派兵もあり隊員も定数を欠いている。

なお、調達計画などの問題点は、清谷信一氏の評論が適格かつ詳しい

【財務省が指摘した問題、防衛費を議論するよりも先に防衛戦略の議論が必要 清谷信一 21/11/19

 ~メモ者/自衛隊の存在を当面認めるのだから、「専守防衛」の任に徹せるよう具体的分析にもとづく杜撰さの追及、効率的な運営による無駄排除の提案が重要に思う

 

 

 

 

 【「防衛費GDP2%」は平和ぼけタカ派の空公約 ダイヤモンド 田岡俊次 2021/11/11

 「公約」は実現されるのか 日本は世界第3位の軍事大国に?

  高市早苗自民党政務調査会長が衆議院議員選挙の公約として「防衛費を国民総生産(GDP)の2%水準にする」ことを掲げたが、総選挙で自民党が単独過半数を確保したから、この公約が実現することになるのだろうか。

 今年の日本のGDP595.5兆円と政府は見積もっており、その2%は11.9兆円だ。今年度当初予算の防衛費は5.1235兆円だから、公約を実現しようとすると、6.77兆円の「増額枠」を認めることになる。

 仮に「GDP2%水準」になって日本の防衛費が11兆円余り、約1000億ドルになれば、ストックホルム平和研究所の計算では、昨年の米国の防衛費が7780億ドル、中国が2520億ドルだから、日本の防衛費は世界第3位になる。ロシアは617億ドルだから、その約1.6倍だ。

 「棚からボタ餅」に当惑 自衛隊の規模拡大は不可能

  防衛費をGDP2%以上にすることは、米国トランプ政権が2020年にNATO諸国など同盟国に要求したものだ。

 中国との対決姿勢を示す一方で、「米国第一」で米軍の海外駐留経費を減らしたい思惑からだった。NATO(北大西洋軍事機構)加盟の30カ国中11カ国はそれに達しているが、ドイツは1.56%、イタリアは1.39%などにとどまっているのが現状だ。

 一般的には予算要求は各省庁が計画している事業の経費を積算して行うが、防衛省にとっては、突然、防衛費が2倍以上になるというのは棚から巨大なボタ餅が落ちてくるような形だ。

 防衛省の高官に使途を尋ねると、戸惑いながら「少なくとも来年度は防衛予算が急増することはありません。来年に次の中期防衛力整備計画(2024年から5年)や「防衛計画の大綱」を見直す中で考えることになる」という。腰の引けた応答になるのも当然だろう。

 防衛費が急増しても自衛隊の規模を拡大するのはほぼ不可能だ。自衛隊は隊員の募集に苦労し、現在でも大きな定員割れになっている。

 防衛省設置法では自衛隊の総人員は247154人だが、それほどは集められないとみて、今年度の「予算定員」は246748人に減らしている。だが昨年末の実際の隊員数は227442人で予算定員より19306人も少ない

 定員割れが続く中で2018年からは一般の隊員の採用を「18歳以上33歳未満」に広げた。

 32歳の新兵2士(2等兵)で入隊すると、その前年に18歳で入った隊員は1士(1等兵)に昇任しているから13歳も年下の先輩の指導を受けることになる。

 感情的に難しいことも起きそうだが、自衛隊はとにかく員数を合わせることに必死にならざるを得ない。

 特に海上自衛隊は法的定員が45329人に対して、いまの隊員数は42850人で2479人の定員割れだ。艦艇の乗組員は持ち場がそれぞれ決まっているから、定数より少ないまま出港するのは危険を伴うこともありうる。

 このため従来の2000トン級の小型護衛艦は120人が定数だったが、その後継の護衛艦は3900トンに大型化しつつ定員は90人にする省力化を行っている。

 また女性の応募者を増やすため、女性幹部(士官)の登用を進め、「第1護衛隊群」(横須賀)の「第1護衛隊」(軽空母1隻、護衛艦3隻)の司令に女性1佐(大佐)が任じられたこともある。

 安保法制の成立の結果 隊員募集は一層、難しい

  安倍政権時代の20147月に閣議で憲法解釈を変更し、集団的自衛権行使を容認したことは自衛官の募集を一層困難にした。

 内閣府が行っている世論調査では、20151月には、「身近な人が自衛隊員になりたいと言ったら賛成するか、反対するか」の問いに対し、「賛成」が70.4%、「反対」が23.0%だった。

 だが2018年の調査では、「賛成」が62.4%で8%減、「反対」が29.4%で6.4%増となった。

「日本が戦争を仕掛けられたり戦争に巻き込まれたりする危険があると思うか」の問いに対しては、「危険がある」と答えた人が75.5%から85.5%に増え、「危険はない」と思う人は19.8%から10.7%に減っている。

 政府や与党が北朝鮮のミサイル発射や中国の海洋進出などに危機感をあおるほど、子弟が自衛隊に入ることに反対する人々が増えるのは自然だろう。

 それでは米軍の駐留経費を増やすことになるのだろうか。

 駐留米軍に関する日本の負担は今年度で、すでに米軍のグアムへの移転や再編成などを含め6603億円(国有地提供に対する推定地代を含まず)に達し、米国の計算でも日本は駐留経費の74.5%を負担している。

 これ以上、負担を増やすには米軍人の給料や訓練経費も支払うしかなく、そうなれば米軍人は日本の傭兵と化するような状況になってしまうから増加はできそうにない。

 「増加枠」の大半は 装備費にあてられる

 防衛予算の42.8%を占める人件・糧食費22000億円や駐留米軍経費はあまり増えないとすれば、年間6兆円も増える防衛費の大部分は装備費に使われることになるだろう。

 今年度予算では、装備などの購入費は9186億円(防衛費の17.9%)、研究開発費は1133億円(同2.2%)で計1319億円だが、それに6兆円の「増加枠」が加わればいまの7倍になる計算だ。

 例えば、米海軍の最新鋭の原子力空母ジェラルド・フォード(10.1万トン)の建造費は14000億円、艦載機を含むと2兆円余りになる。バージニア級の原子力潜水艦は13000億円だ。

 日本が毎年、原子力空母1隻と原子力潜水艦5隻を発注すると、計35000億円だから、装備費の「増加枠」の半分強に当たる。

 こうした装備拡張を10年も続ければ米海軍をしのぐほどの海軍戦力になる。もちろんこれは冗談で、空母1隻だけでも船乗りと航空要員計約5000人を乗せるから人手が足りない。

 「敵基地攻撃」の効果は疑問 ミサイル発射準備の監視は至難

  岸田文雄首相は選挙公約で、「相手の領域内で弾道ミサイルを阻止する能力を保有し、抑止力を向上する」と公表している。自民党議員にも「敵基地攻撃」を唱える人々が多い。

 この状況を考えると、急増する装備費の大半は敵基地攻撃能力を整備するのに向けられそうな形勢だ。

 だが攻撃をするにはまず敵の精密な位置を知ることが不可欠だ。自衛隊の将官の中にも偵察衛星で北朝鮮が日本に対し弾道ミサイルを発射しようとする状況が分かるように思っている人がいた。

 だが、偵察衛星は時速約27000キロで南北方向に地球を約90分で周回し、毎日1回同じ時刻に同地点上空を通過するから、目標地点を撮影できるのはカメラの首振り機能を生かしても11分程度だ。

「静止衛星ではだめなのか」と質問されることも多いが、答えは「ノー」だ。

 静止衛星は赤道上空約36000キロメートル、地球の直径の約3倍の高度で周回し、その高度では地球の自転の速度と同調するから、地表からは止まっているように見える。

 無線の中継などには有効だが、当然その距離ではミサイルが見えるはずがない。発射の際に出る大量の赤外線を感知できるだけだからミサイル発射前に攻撃するには役に立たない。

 ジェットエンジン付きの大型グライダーのような無人偵察機を、例えば、北朝鮮の上空で旋回させておけば常時監視が可能だが、領空侵犯だから対空ミサイルで簡単に撃墜される。無人偵察機が役に立つのは大型の対空ミサイルを持たないゲリラに対してだけだ。

 領空外の海上などから無人偵察機が撮影しようとしても、日本海から北朝鮮の北部山岳地帯までは300キロもある。山腹のトンネルに潜むミサイル発射機が谷間に出てミサイルを立て発射するのは山の陰になるから発見できる公算は乏しい。

 まして中国を想定すれば、はるか内陸に配備されたミサイルを監視することはほぼ不可能だ。

 小型の衛星を多数周回させる案も米国ではあるが、24時間中の1分ほどしか目標地域の上空にいない衛星で常時監視をするために10分ごとに撮影するとすれば百個以上の衛星が必要だ。

 しかも小型衛星のカメラやレーダーは解像力が低く、相手はダミーを使うから実効性は疑わしい。

 発見できたとしても意図は分からず 法律論だけの「机上の空論」

  1991年の湾岸戦争でイラク軍はソ連が開発した短距離弾道ミサイル「スカッド」の改良型「アル・フセイン」88発を発射した。

 米英空軍は1日平均64機の戦闘機などを「スカッド・ハント」に出動させ、イラク南部と西部のミサイル発射地域を監視、また特殊部隊を丘に潜伏させて見張らせたが、発射前にミサイルを破壊できたのは1基だけだった。

 特殊部隊への補給のため夜間飛行をしていたヘリコプターがミサイル発射の火柱を目撃、そちらに向かったところ、もう1基が発射準備をしているのを発見し、機関銃で処理したのが唯一の成功例だ。

 それ以来30年間で精密なミリ波レーダーや赤外線探知などの探知手段が発達したが、一方で北朝鮮の中距離弾道ミサイルは液体燃料から固体燃料になり、移動や即時発射が容易になったから、発射前に弾道ミサイルを発見し破壊するのは一層困難になった。

「ミサイルが日本に向けて発射されようとしている際に、攻撃するのは自衛権の範囲内」との説は法律論としては成り立つが、効果は期待できない机上の空論だ。

 相手のミサイル発射機がトンネルから出て、ミサイルを立てているところを仮に発見できたとしても、訓練や整備をしていることもある。実験のために海上に発射しようとしているとか、日本以外を狙っていることもあるから、日本に向けて発射しようとしているのか否かは知りようがない。

 「朝鮮半島有事」となれば 米軍・韓国軍がミサイルを叩く

  すでに北朝鮮軍と米軍・韓国軍が戦争を始めている場合には、日本の米軍基地も弾道ミサイルの目標となる公算が大だから、日本が狙われている確証がなくても日本が攻撃するのは現実的には許容されるだろう。

 だがそのような状況では米軍、韓国軍は必死になって北朝鮮のミサイルを破壊しようとしているだろう。

 北朝鮮は200300基ほどの弾道ミサイルを持つと言われるが、韓国は射程300キロの「玄武A型」から射程800キロの「玄武2C型」まで計約2000基の弾道ミサイルのほか、射程1500キロの巡航ミサイル「玄武3C型」も造っている。

 韓国空軍は戦闘機、攻撃機計約500機を持つのに対して北朝鮮の空軍はもはやなきに等しい。このため、韓国空軍は防空の必要が低く、対地攻撃を主な任務としている。

 米軍も日本に駐留する米空軍、海兵隊航空部隊、空母1隻で計約100機、在韓米空軍も約100機いるから、攻撃能力には全く不足がない。

 仮に航空自衛隊が韓国軍の許可を得ず北朝鮮攻撃を行ったり、海上自衛隊が巡航ミサイルを発射したりすれば韓国軍にとってはむしろ邪魔になりそうだ。

 また「同胞を日本軍が攻撃」するのは、韓国の国民感情に触れかねないから、韓国軍の発言力が高まっている米韓連合司令部が「日本の攻撃参加は見合わせてほしい」という可能性は十分考えられる。

 湾岸戦争で米国などが「イスラエルが多国籍軍に加わればアラブ諸国が反発し結束を乱す」としてイスラエルの参戦を拒否したのと同様になりかねない。

 韓国と北朝鮮のGDP比率はすでに1001の大差があるから、通常兵器による戦争では、韓国は単独でも北朝鮮を比較的短期で制圧できるだろうが、崩壊に瀕するとなれば北朝鮮は自暴自棄となり、核ミサイルを発射する公算は高い。

 韓国軍と米軍は血眼になって北朝鮮の弾道ミサイルやその指揮中枢を最優先目標として探し求めて攻撃するだろう。だが、北朝鮮が持つといわれる弾道ミサイルのうち核弾頭付きは30基とみられ、それを完全には破壊できず、北朝鮮が残存した核ミサイルを発射するリスクは残る。

 それに対し米軍が韓国などに核汚染が及ばないよう低威力の核兵器で報復する構えを示し、北朝鮮の核使用を抑止しようとしても、滅亡が迫り「死なばもろとも」の心境になった北朝鮮には効果はないだろう。「抑止戦略」は相手の理性的判断を前提にしているのだ。

戦争を具体的に 考えられない「タカ派」

  日本で「敵基地攻撃」を主張している人々は、目標の位置情報の提供を米軍に頼ることを考えている。

 しかし米軍・韓国軍が、まさに発射されようとしている弾道ミサイルを発見すれば寸刻を争って直ちに攻撃するはずだ。

 日本に位置を通知し、わざわざ手柄を譲るような悠長なことをすることはまずあり得ない。

 こんな甘い構想を抱くのは戦争を具体的に考えられない「平和ボケのタカ派」の論と言うしかない。

 

 

【自衛隊がいまだに突撃訓練をやめられない「日本人ならでは」の理由  「銃剣道」の伝統に縛られている 2020/9/10  PRESIDENT Online 二見 龍陸上自衛隊 元幹部】

 陸上自衛隊は、日々どのような訓練をしているのか。『自衛隊は市街戦を戦えるか』(新潮新書)を出した元陸将補の二見龍氏は「サイバーや宇宙、市街地が主戦場になる中、陸自は原野で「突撃」を前提とした陣地防御や陣地攻撃訓練を続けている。日露戦争以来の悪弊が今も残っている」という——。

 根強い「消耗戦型」の戦争イメージ

一般の人がもつ陸上自衛隊の訓練のイメージは、何もない原野で戦車や装甲車が走り回り、大砲(特科部隊)が遠くの目標へ大量の砲弾を撃ち込んでいる「富士総合火力演習」ではないでしょうか。両軍が塹壕を掘り、どちらかが戦争を継続できなくなるまで長期間にわたって塹壕戦で対峙する第二次世界大戦のような「消耗戦型の戦争」の印象はいまだに根強いものがあるでしょう。

しかし、考えてもらえばわかると思いますが、そんな原野に敵が攻めてくることが現代にあるでしょうか。日本で戦いが起こるとすれば国家中枢、都市中枢などの市街地になると捉えることが現実的です。

「そんなことはあり得ない」、「そんなふうになったらおしまいだ」と思っている人が多いかもしれません。「日本で市街戦が起こる」=「本土決戦」=「焼け野原」というような太平洋戦争で敗戦したイメージで戦争を捉えている人が多いからだと思います。

しかし、国外の紛争でも、いまや主な戦場となるのは人々が生活を営む市街地です。現在のハイブリッド戦争(正規、非正規軍の他、サイバー戦や情報戦を組み合わせる戦い方)では、住民に極力損害を与えないように都市部の主要施設を占拠することで、戦争に勝利するという目的を達成します

多くの兵士が消耗し、住民に被害が生じるような戦いは、国際的にも国内的にも許容できないものになってきました。第二次世界大戦において繰り広げられていたような戦車を主体にした機動戦や火力戦、大規模な上陸作戦を伴う戦いのイメージは、大きく変化しているのです(これらの実態については、新著『自衛隊は市街戦を戦えるか』で詳述しています)。

 ハイブリッド戦争」の時代でも陸自は陣地防御と陣地攻撃訓練を実施

しかし、陸上自衛隊において部隊同士が戦う訓練のメインは今でも、演習場で行う陣地攻撃と陣地防御の訓練なのです。陣地攻撃訓練が行われる度に私がイメージしてしまうのは日露戦争における203高地の攻撃です。

当時は、兵士は突撃を繰り返すだけの消耗品として扱われ、損耗したら新たな兵士が投入され続けました。そのためには、短期間で新たな兵士を作り上げなければなりません。となると、兵士に過大な期待はできません。速成するためには、兵士の期待値を限定して訓練を行うことになるのです。

そうやって、前線へ兵士を投入し続けていた消耗戦型の軍隊のイメージと、自衛隊の陣地攻撃訓練における突入の様子とが、私の中では重なるのです。

実際の自衛隊の陣地攻撃訓練では、まず特科部隊が敵の陣地への「突撃支援射撃」を行います。その間、普通科連隊の隊員が匍匐(ほふく)をしながら、敵が設置した地雷原の手前まで接近します。味方の砲弾を避けるためにもできるだけ低い姿勢で近づきます。

大砲や機関銃など多くの火器が配置されている敵陣地の手前には、地雷原や鉄条網が構築されています。突入するためにはこれを迅速に処理しなければなりません。その処理を施設科(工兵)が行います。敵の火力が待ち受けている危険な場所での作業です。

 日露戦争以来の突撃の伝統……陣地攻撃訓練の中身

普通科部隊は、地雷原の近くに到達したところで、銃剣を銃に取り付けます。これを「着剣(ちゃっけん」といいます。

「突撃支援射撃」の最終弾落下の時間になると、そのタイミングが無線で連絡されます。連絡を受けた小隊長は、「突撃にーー」と小隊へ指示を出し、最終弾落下とともに「進めーー」と号令をかけます。

それを受けた隊員たちは、施設部隊によって地雷原の中に作られた安全な空間を1列縦隊で全速力で走り抜けなければなりません。砲撃対応をしていた敵が「相手は突撃の態勢に入った」と判断し、戦闘の態勢につくまでに通過しなければならないからです。

地雷原を通過した小隊員は、地雷原がなくなったところで横1列に展開、陣地からこちらを確認するために顔を出そうとしている敵への射撃を行うためです。その後、登り斜面を50100メートル、敵の陣地目指して突入し、敵を倒して陣地を奪取、息を整える間もなく「逆襲」に対処するため敵の陣地を確保する態勢をとる――これが陣地攻撃訓練です。

ここまで読んで、読者の頭にもいろいろと疑問が浮かんだことだろうと思います。「これではかなりの損害が発生して当然ではないか」と。しかし、これらは自衛隊の「教範」に書かれている通りのことで、参考とされているのは、日露戦争から太平洋戦争まで行われてきたことです。それをいまだに頑なに守っているのです。

 「突撃」を支える銃剣道

「陸上自衛隊はいまだ突撃をしているのか」と驚かれた方も多いのではないかと思いますが、この「突撃」と切っても切れない競技が陸上自衛隊では立派に生き残っています。「銃剣道」です。

知らない方もいるかもしれないので少し説明しておきますと、「銃剣道」とは剣道のような防具をつけて竹刀の代わりに木製の銃(木銃)で相手と突き合う競技です。もともと明治時代にフランスから伝来した西洋式銃剣術(銃の先に剣をつけた状態で戦う戦闘技術)に日本の剣道や槍術の技術を取り入れてスポーツ化したものです。

第二次世界大戦後一時期中断されましたが、その後、復興しました。大学や実業団でも行われていますが、競技人口の大半は陸上自衛隊関係者です。武道としての魅力はともかく、装備も戦い方も変化した現代の戦闘において銃剣道が必要な状況は稀と言ってよいでしょう。

しかし、それがいまだに自衛隊内では続いています。2000年頃、今の時代に銃剣道の訓練を行う必要があるのかが議論されたことはあります。しかし、銃剣道がなくなることはありませんでした。「銃剣道継続支持」派の人たちは陸上自衛隊内に定着し、部外で応援するOBや関係者も多く、全国規模で支援されてきたからです。

銃剣道一筋で生きていた隊員もいれば、部隊同士で競う銃剣道競技会も毎年行われ、競技会の選手に選ばれるだけで一目置かれるのが現実です。「銃剣道が強い」=「自衛隊生活が有利になる」のです。

 実戦とかけ離れた突撃と銃剣刺突の癖

実戦で役立つとは思えないこの銃剣道が、陸上自衛隊では一般の戦闘訓練よりも優先して行われているという現実を知ったら、皆さんはどう思われるでしょう。

さらに言えば、第一線部隊では相変わらず突撃訓練が行われているのです。陸上自衛隊の陣地攻撃では、陣地に突入後、巻き藁で作った俵や標的へ銃剣を何ヵ所か突いて敵を倒し、通常、そこで訓練は終了となります。大きな声を上げて突撃する様子は一見勇猛果敢で非常に強い印象を受けます。数十名の隊員が丘陵の頂上を目指し、横一線となって突撃していく光景は、まさに圧巻です。

隊員が横の線を崩さず突入すると、「きちんと横一線に隊員が展開していてよろしい」と幹部や訓練補助官が高い評価を下します。視察している部隊長も「迫力のある攻撃だ。よく頑張っている」と褒めるのです。

しかし、一般の方でもおわかりになると思うのですが、現代戦では、敵の火点(自動小銃や機関銃等)が残っているだけで、こうした突撃部隊はあっという間に倒されてしまうのが現実です。

陸上自衛隊には、戦闘について学ぶ教科書として「教範」といわれるものがあります。幹部必読の書です。その「教範」には、火力によって十分に敵を叩き潰してから敵陣地へ前進・突入するように記述されているのです。

したがって、部隊・隊員は、敵の陣地の近くに来ると、突撃と銃剣刺突をする癖が長い年月をかけて頑固にしみ付いています。あまりにも実戦とはかけ離れすぎています。

 不毛な突撃を前提とした戦法が続くワケ

この「突撃」が不毛であることは、富士山の北麓に広がる北富士駐屯地に駐屯する富士トレーニングセンター(FTC)での訓練で明らかとなっています。実戦的な戦闘訓練を可能にするシステムを保有するFTCは無敗の強さでした。挑戦してくる日本全国の普通科中隊は連戦連敗で、壊滅状態にされたのです。

訓練の最終段階では「突撃」を実施するのですが、毎回、陣地内に残存している敵の小銃・機関銃の射撃により、突撃が始まった瞬間から、攻撃部隊はまるで射的の的となり、戦死者の山が築かれるのです。

 もちろん、何人かが敵の射撃を潜り抜けることができれば白兵戦に持ちこめます。白兵戦で敵を倒す戦法は、まさに日露戦争そのものですが、今は防弾ベストがあります。銃剣が刺さるポイントは極めて限定されますし、そもそも単発式の三八式小銃の時代ではないのです。自動的に給弾され、連射で弾詰まりも少ない89式小銃を装備しているのですから、銃剣で刺す間合いに入る前に、敵の身体に何発も弾を送り込めます。

そんな「突撃」を今でも防衛大学校でも新隊員教育でも教え続けているのです。FTCでの教訓が何も生かされてはいません。なぜ教訓が生かされないのか。それは「突撃」が、陸上自衛隊で偏重されている「銃剣道」と表裏一体のものだからと私は考えています。

「突撃」という戦法が残っているから「銃剣道」も残る。「銃剣道」が続けられているから「突撃」の是非は見直されず、新しい戦法も開発されないままだと私は考えるのです。

 

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