教員免許更新制 「発展的解消」でなく、きっぱり廃止を
時間的、金銭的な負担を強いて、役に立たない免許更新制――もともと批判が強かった制度が、教員不足の中、退職教員の再雇用のネックになっていることで「見直し」論議となっているが、そもそも国家権力による教員・教育統制の手段というのが本質(安倍政権のもとで導入)であり、されたものであり、「発展的解消」―― オンライン研修等も含め研修履歴の記録管理などによる学習分析を通じ、各教師の「個別最適な学び」と称して、国定研修により管理統制する仕組みづくり---ではなく、きっぱり廃止すべき。
教職員を苦しめる教員免許更新制はきっぱり廃止を
2021 年 8 月 25 日 全日本教職員組合
書記長 檀原毅也
8 月 23 日、中央教育審議会「『令和の日本型学校教育』を担う教師の在り方特別部会教員免許更新 制小委員会」は、「『令和の日本型学校教育』を担う新たな教師の学びの姿の実現に向けて」(審議まと め(案))で、「教員免許更新制を発展的に解消することを文部科学省において検討することが適当で ある」と「廃止」の方向を示しました。
教員免許更新制は、安倍政権(当時)が「教育基本法」改悪(2006 年)を強行し、その具体化として教職員の反対を押し切り 2009 年から導入されたものです。導入後、更新講習にかかる時間と費用 に対する教員の負担感や「うっかり失効」が生じる制度上の不備、未更新からくる教員不足など、多 くの問題が相次いで起こり、「免許更新制は百害あって一利なし」の声が圧倒的な世論となりました。
全教は、これまで一貫して「教員免許更新制は直ちに廃止」を求めてきました。今年 5 月から「教員免許更新制の廃止を求める『私のひとこと』署名」にとりくみ、わずか2ヶ月足らずで 3 万 7000 筆 を超える教職員の声を集め、文科省に提出して「教職員の声を聴け」と迫りました。集めた声は、「毎日仕事と家庭でギリギリの状態なので、さらに更新のために時間を取られるのでとても辛い」、「時間 をとられて金銭的な負担もあり、更新が認められなければ失職するという恐怖心は計り知れません。 なぜ教員が? 納得できません。廃止を!!!」「現行の制度では、結局、教員免許状を人質に、まったく別の科目の研修を受講せざるを得ないこともあり、本当の効果を感じません」など切実な声や厳しい指摘があふれていました。こうした教職員の声がついに文科省を動かし、「教員免許更新制の廃止」へ 舵を切らせたということができます。
「審議まとめ(案)」は「教員免許更新制が制度的に担保してきたものは総じて代替できる状況が生 じること」を述べ、「教員免許更新制は、『新たな教師の学びの姿』を実現する上で、阻害要因となると考えざるを得ない」とさえ言い切り、「教員免許更新制を発展的に解消することを文部科学省において検討することが適当である」とまとめています。
しかし、「審議まとめ(案)」は教員免許更新制を「発展的に解消」するものの、「新たな教師の学びの姿」をより高度な形で実現するとして、研修をいっそう強化することを強調しています。オンライ ン研修等により研修履歴の記録管理が容易に行えるようになり、学習分析(Learning Analytics)を 通じた教師の「個別最適な学び」をすすめ、「利用 ID」によって教員を管理しマイナンバーとの連携 なども視野に入れています。新たな仕組みとして研修履歴をもとに管理職と「対話」することや、教育委員会および管理職が教員への研修受講奨励を義務付けることなど、自主的な研修とは正反対の研修押し付けも提案しています。さらに職務命令に基づき研修を受けさせることや従わない場合には懲戒処分の対象とすることに言及するなど、研修の目的を逸脱するような踏み込んだ記述も見られます。
これらの点から、「新たな教師の学び」は国の介入を大きくし、国定研修ともいうべき官製研修で教職員を一元的に管理する大きな危険性を孕んでいます。
「審議まとめ」が小委員会の結論を経て中教審で確定された後、法改正を含めた改定が行われるも のと考えられます。それまでの間は教員免許更新制および更新講習を凍結すべきです。全教は、研修等の強化とセットで「発展的に解消」するのではなく、「教員免許更新制の廃止」を一刻も早く行うこ とを強く求めるものです。
以 上
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