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ILO 社会保障なし 世界人口の53%、41億人  コロナ復興戦略の中核に

ILO9/1発表。新型コロナウイルス危機の中で世界各国は失業手当などの社会保障給付を拡大したにもかかわらず、世界人口の53%に相当する約41億人がいまだに社会保障が全くない状況にある(医療保険はこの数字の対象外)。社会保障の対象となる子どもは26%しかなく、失業労働者で給付対象となるのは19%にとどまっている。また、各国の新型コロナ対応にはばらつきがあり、先進国と途上国の社会保障格差はさらに広がっているとも指摘。

ILOのガイ・ライダー事務局長は、各国のコロナ対応がかつてない規模の社会保障給付の活用をもたらしてきたと評価する一方、「各国は岐路に立っている。今こそ世界中で社会保障制度に投資し、強化する時だ」と述べ、社会保障の充実をコロナ復興戦略の中核に据えるよう求めた。(赤旗記事より)

 【ILO新刊:何らの社会的保護も得られない人が世界にはまだ40億人以上 9/1

【ILO新刊:何らの社会的保護も得られない人が世界にはまだ40億人以上 9/1

 この度発表されたILOの定期刊行物の最新版『World social protection report 2020-22: Social protection at the crossroads - in pursuit of a better future(社会的保護世界報告2020/22年版:より良い未来の追求において岐路に立つ社会的保護・英語) 』は、新型コロナウイルス危機の中で社会的保護は世界中でかつてなかったほどに拡大したにもかかわらず、依然として40億人以上が全く保護を受けていない状態にあることを示しています。そして、コロナ禍対応にはばらつきがあり、不十分であるため、高所得国と低所得国の格差が広がり、全ての人類が適用を受けるに値する、大いに必要とされている社会的保護が提供されていないことを明らかにしています。

  社会的保護には、保健医療に加え、とりわけ老齢、失業、疾病、障害、業務災害、出産あるいは主たる所得稼得者の死亡に関連した所得保障や子どものいる世帯向けの所得保障などが含まれています。

  本書は、新型コロナウイルスの世界的大流行 の影響も盛り込んだ上で、社会的保護の土台などの社会的保護制度の最近の世界的な動向を概括しています。また、「持続可能な開発のための2030アジェンダ 」の下、各国はそれぞれに適切な社会的保護制度を実施し、2030年までに貧困層と脆弱な人々の相当割合に保護を広げることを目指していますが、このターゲット1.3に関連したものも含み、保護のギャップを特定し、主な政策を提案しています。

  現在、少なくとも一つの社会的保護給付が実効的に適用されている人は世界人口の47%に過ぎず、残りの53%に当たる41億人は国の社会的保護制度による所得保障を全く受けていません。社会的保護には相当の地域間不平等が存在し、適用率が世界で最も高い欧州・中央アジアでは人口の84%、同じく平均以上の米州では64.3%が一つ以上の社会的保護給付の適用を受けているのに対し、アフリカ(適用率は人口の17.4%)やアラブ諸国(同40%)、アジア太平洋(同44%)には著しい保護ギャップが存在します。

  世界的に見ると、大半の子どもがなおも実効的な社会的保護の適用を受けておらず、給付を受けているのは子どもの4人に1人(26.4%)に留まっています。現金出産給付を受給している新生児の母親は45%に過ぎず、障害給付を受給している重度障害者は3人に1人(33.5%)に過ぎません。失業給付の適用率はさらに低く、世界の失業者の18.6%しか実効的な保護を受けていません。そして、引退年齢を上回る人々の77.5%が何らかの形態の老齢年金を受給してはいるものの、地域間、都市部と非都市部、男女間には依然として大きな格差が存在します。

  社会的保護に対する政府支出にも相当のばらつきがあり、対国内総生産(GDP)比で見た社会的保護年間支出(保健費を除く)の平均は12.8%であるものの、高所得国(対GDP比16.4%)と低所得国(同わずか1.1%)には大きな開きがあります。

  本書はまた、新型コロナウイルス危機が始まってから、財源ギャップ(全ての人に少なくとも最低限の社会的保護を確保するために必要な追加支出)は30%近く膨らんだことを示しています。少なくとも基礎的な社会的保護の適用を保障するために必要な追加投資額は、低所得国でGDPの15.9%に当たる年779億ドル、下位中所得国で3,629億ドル(GDP比5.1%)、上位中所得国で7,508億ドル(同3.1%)に上ります。

  ガイ・ライダーILO事務局長は、「諸国は岐路に立っている」として、次のように説いています。「今は、コロナ禍対応を活用して、権利を基盤とした新世代の社会的保護制度を構築することに向けた決定的に重要な瞬間です。こういった制度は将来的な危機が人々に与える影響を和らげ、労働者や企業が前途に横たわる様々な移行に自信と希望をもって立ち向かう安心感を与えることができるでしょう。実効性がある包括的な社会的保護は社会正義とディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)にとってのみならず、持続可能で強靱な未来の構築にとっても必要不可欠であることを私たちは認識する必要があります」。

  本書をまとめたILO社会的保護局 のシャハラ・ラザビー局長は、「危機対応策に対する巨額の公的支出を行った後で、各国には財政強化に向けた巨大な推進力が存在しますが、社会的保護の切り下げは深刻なダメージをもたらすことでしょう」として、今はここに投資が求められていると強調しています。「社会的保護はあらゆる開発段階の国々に幅広い社会的・経済的利益を創出し得る重要な手段です。より良い保健と教育、平等の広がり、より持続可能な経済システム、より良く管理された人の移動、中核的な権利の尊重を下支えするものとなり得ます。こういった好結果を生む仕組みの構築には、混合財源と、とりわけより貧しい国々への支援を伴う国際連帯の強化が求められるでしょう。成功の利益はしかし、国境を越えて私たち全てに及ぶことでしょう」とラザビー局長は説いています。

 普遍的な社会的保護を促進する具体的な措置は、今年6月に開かれた第109回ILO総会第1部で加盟国政労使によって全会一致で採択された「新型コロナウイルス危機からの人間を中心に据えた回復に向けた行動に対するグローバルな呼びかけ 」で強調されています。この文書は、回復に向けた包括的な道筋の大枠を示しています。

  5章構成の本書は、序章に当たる第1章「岐路に立つ社会的保護:新型コロナウイルス対応と回復の道」で、社会的保護を取り巻く現状と課題を簡潔に示した上で、第2章「新型コロナウイルス以前の状況:一定の進展はあったものの、相当のギャップが依然として存在」で、コロナ禍以前の状況を検討し、危機によってその多くが悪化した、以前から存在していた一連の課題に光を当てた後、第3章「新型コロナウイルス危機の中及び回復期における社会的保護」で、とりわけ保健、経済、社会に対する新型コロナウイルスの影響とそれに対する社会的保護分野の対応に焦点を当て、将来に向けて進み得る道を示しています。

 第4章「ライフサイクルを通じた全ての人への社会的保護の強化」では、「2012年の社会的な保護の土台勧告(第202号) 」が社会的な保護の土台に含むことを提案している基本的な社会保障の四つの分野を反映する形で、持続可能な開発目標(SDGs)の達成において決定的に重要な役割を果たす、全ての人に提供されるべき保健医療に加え、ライフサイクルに沿い、子ども、生産年齢の人々、高齢者のそれぞれに対する社会的保護の状況を検討しています。

 最後の第5章「社会的保護の未来を形作る」では、社会的保護の未来に向けた優先事項や政策選択肢を論じています。付録資料として、簡単な用語集、用いた方法論の説明、ILOの社会保障関係基準が定める要求事項をまとめた一覧表に加え、世界全体、地域・国別の社会保障適用率と社会保障支出に関する統計データが含まれています。

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