米軍廃棄物告発・抗議で家宅捜査 土地規制法案の“見本”
米軍の無法を放置し、それを告発・抗議したチョウ類研究者宅を家宅捜査・・・今審議されている「重要土地等調査規制法案」の巳本のような事件。
この法案、重要施設の範囲、情報手協もとめる範囲、機能を阻害するおそれなど・・・法で定めず、政令等で範囲をきめるというとんでもないもの。
【米軍に抗議で家宅捜索 土地規制法案の“見本” 廃棄物告発の研究者 沖縄・北部訓練場 赤旗6/9】
米軍北部訓練場(沖縄県国頭村、東村)のメインゲートで抗議行動を行い、米兵らの通行を妨害したとして、沖縄県警が4日、威力業務妨害の疑いでチョウ類研究者の宮城秋乃さんの自宅を家宅捜索したことが分かりました。宮城さんは4日から8日にかけて4回取り調べを受けました。
宮城さんによると、4日午前、県警の捜査員ら約10人が宮城さんの東村の自宅内などを約1時間半かけて捜索。パソコンやタブレット端末、ビデオカメラなどを押収し、車や書籍類などを撮影しました。
宮城さんはこれまで、北部訓練場返還跡地に放置された米軍の廃棄物や、米軍ヘリの訓練の実態などを告発。4月7日には、同訓練場ゲート前にある基地との境界線内側に米軍の物と思われる廃棄物を置いて抗議し、その際、複数台の車が約50分間通行できない状態になりました。宮城さんによると、この件で捜索を受けたとの説明があったといいます。その後、威力業務妨害、道路交通法違反、廃棄物処理法違反の疑いで取り調べを受けました。
宮城さんはこれまで、返還地で火薬入りの弾薬を発見するたびに県警に通報してきましたが、回収されませんでした。「それにもかかわらず、廃棄物について訴えたことに対し、家宅捜査までするのはおかしい」と、本紙の取材に述べました。
宮城さんは「奄美・沖縄の世界自然遺産登録が目前になる中、動物たちが米軍から受けている廃棄物や騒音の被害を政府は明るみに出したくないのだろう」と指摘。基地の周辺で「阻害行為」のおそれがないか住民を監視する土地利用規制法案の「典型的な見本だと思う」と警戒を強めます。
今後、罰金などが科せられた場合、「徹底的にたたかう」としています。
【重要土地等調査規制法案に反対する会長声明 6/2】
「重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律案」(重要土地等調査規制法案。以下「本法案」という。)は、本年6月1日の衆議院本会議で可決され、今後、参議院で審議される。
本法案では、内閣総理大臣は、閣議決定した基本方針に基づき、重要施設の敷地の周囲おおむね1000メートルや国境離島等の区域内に「注視区域」や「特別注視区域」を指定することができ、そして、その区域内にある土地及び建物(以下「土地等」という。)の利用に関し、調査や規制をすることができることとなっている。
しかしながら、本法案には、次のとおり重大な問題がある。
第一に、本法案における「重要施設」の中には、自衛隊等の施設以外に生活関連施設が含まれているが、その指定は政令に委ねられている。しかも、生活関連施設として指定されるためには、当該施設の「機能を阻害する行為が行われた場合に国民の生命、身体又は財産に重大な被害が生ずるおそれがあると認められる」ことが必要とされているが、この要件自体が曖昧であり、恣意的な解釈による広範な指定がなされるおそれがある。
第二に、本法案では、地方公共団体の長等に対し、注視区域内の土地等の利用者等に関する情報の提供を求めることができるとされているが、その範囲も政令に委ねられている。そのため、政府は、注視区域内の土地等の利用者等の思想・良心や表現行為に関わる情報も含めて、広範な個人情報を、本人の知らないうちに取得することが可能となり、思想・良心の自由、表現の自由、プライバシー権などを侵害する危険性がある。
第三に、本法案では、注視区域内の土地等の利用者等に対して、当該土地等の利用に関し報告又は資料の提出を求めることができ、それを拒否した場合には、罰金を科すことができるとされている。そこでは、求められる報告又は資料に関して何の制限もないことから、思想・良心を探知されるおそれのある事項も含まれ得る。このような事項に関して、刑罰の威嚇の下に、注視区域内の土地等の利用者等に対して、報告又は資料提出義務を課すことは、思想・良心の自由、表現の自由、プライバシー権などを侵害する危険性がある。
第四に、本法案では、内閣総理大臣が、注視区域内の土地等の利用者が自らの土地等を、重要施設等の「機能を阻害する行為」に供し又は供する明らかなおそれがあると認めるときに、刑罰の威嚇の下、勧告及び命令により当該土地等の利用を制限することができるとされている。しかし、「機能を阻害する行為」や「供する明らかなおそれ」というような曖昧な要件の下で利用を制限することは、注視区域内の土地等の利用者の財産権を侵害する危険性がある。
第五に、本法案では、特別注視区域内の一定面積以上の土地等の売買等契約について、内閣総理大臣への届出を義務付け、違反には刑罰を科すものとされているが、これも過度の規制による財産権の侵害につながるおそれがある。
このように、本法案は、思想・良心の自由、表現の自由、プライバシー権、財産権などの人権を侵害し、個人の尊厳を脅かす危険性を有するとともに、曖昧な要件の下で刑罰を科すことから罪刑法定主義に反するおそれがあるものである。
なお、本法案は、自衛隊や米軍基地等の周辺の土地を外国資本が取得してその機能を阻害すること等の防止を目的とするとされているが、これまで、そのような土地取得等により重要施設の機能が阻害された事実がないことは政府も認めており、そもそも立法事実の存在について疑問がある。
よって、当連合会は、法の支配の徹底と基本的人権の尊重を求める立場から、不明確な文言や政令への広範な委任により基本的人権を侵害するおそれが極めて大きい本法案について、反対する。
2021年(令和3年)6月2 日
日本弁護士連合会
会長 荒 中
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