ヤングケアラー認識広がる 国が支援策 社会保障削減は矛盾
「全国保険医新聞2021年6月15日号」より―――「家族の世話や介護などのケアを担う子どもの存在が、「ヤングケアラー」として認知され始めている。支援団体や一部自治体などが啓発を続けていた。政府は昨年末、初の実態調査を全国規模で行い、4月に公表。1学級に1~2人程度いる可能性が分かった。政府は支援策を「骨太の方針」に反映させ実施を目指すが、同時に進める社会保障削減との矛盾を正すことも必要だ。」と指摘。 ケアラ-支援条例もひろがりつつある。
【ヤングケアラー認識広がる 国が支援策 社会保障削減は矛盾 保団連 】
「みんなの介護」から。ヤングケアラ―も含めての記事
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「ほぼ毎日」5割、「7時間以上」も
政府の調査によれば、ケアの内容は、食事や洗濯などの家事、幼いきょうだいの世話や、高齢や病気の親や祖父母のサポートなど多岐にわたる。
子どもによるケアは「お手伝い」「家族の助け合い」として当然視されがちだが、同調査からは、教育の機会や健全な育成が阻まれかねない実態が分かった。
ケアが「ほぼ毎日」という答えが約5割に上り、1日平均7時間以上を費やすという答えも約1割あった。影響として、▽学校にいけない、遅刻早退してしまう▽宿題や勉強の時間が取れない▽身体的・精神的にきつい―などが挙げられ、進路選択にも影響している。
政府は支援策として、学校や医療現場などを通じた状況把握と、利用できる福祉制度などへつなぐ体制づくりを目指す。
一方、政府が進める社会保障削減は子どもへの支援と矛盾する。
調査では、ケアの対象は1~2割が祖父母とされており、要介護状態や認知症のため、入浴やトイレの世話、外出や通院の付き添い、見守りが必要だ。
政府は、2014年に特養の入所要件を要介護1から3へ厳格化。介護保険の利用料も引き上げ、制度の利用を抑制してきた。家庭にケア人員を求めることを前提した施策だ。また、政府が今国会で成立させた75歳以上の患者窓口負担2割化も受診抑制による重症化を招きかねない。
医療、介護の抑制は重症化、身体状態悪化を招き、ひいてはケアを担う子どもを追い詰める。ヤングケアラーを本当に救済するには、社会保障充実は不可欠だ。
【全国3例目のケアラー支援条例が名張市で発案!ケアラーの支援を手厚く 2021/06/23】
介護疲れのケアラーに支援を
三重県名張市はケアラー支援を推進する条例案を提出
三重県名張市は、全国3例目として、家族の介護や世話などを担う「ケアラー」への支援の推進を目的とする条例案を6月の定例会で提出しました。
この条例案は、すべてのケアラーが自分らしく、健康的で文化的な生活を送れるような社会の実現を目指してつくられています。
ケアラーへの支援の推進を目的とした条例を初めて成立させたのは、埼玉県です。全国でもトップクラスのスピードで高齢化が進んでいる埼玉県では、ケアラーの孤立化を防ぐ社会の仕組みづくりにいち早く取り組んでいます。
5人に2人が5年以上も介護を続けている
一般的な在宅介護では、家事に加えて、食事や排泄、入浴などの身体的介護、服薬管理、医療的ケア、徘徊防止のための見守り、金銭管理などを行います。そのうち、「身体的介護」「医療的ケア」「徘徊防止」については、1日に8時間以上行っていると回答した家族などのケアラーが3割を超えています。
また、5人に2人は、5年以上の長期間にわたって介護に取り組んでいます。特に、認知症の方への介護の場合、10年以上におよぶケースも少なくありません。現在の研究では、認知症を治す根本的な治療法は見つかっていないため、少しずつ進行する病状と向き合っていくことになります。認知症によってできることが少しずつ減っていく中で、ケアラーが気持ちを込めてケアを続けるのは大変なことです。
そういった現状を踏まえ、「今後、ケアラーとしての役割を継続して担っていくことに不安がありますか?」と質問したところ、「非常にある」「ややある」と回答した方は76.1%もいました。多くのケアラーが介護について不安を感じているわけです。
介護によって日常生活に良くない影響も
ケアラーの約4割が通院をしている
ケアラーが身体的不調や精神的不調を抱えているケースも多くあります。以下のグラフは、『埼玉県ケアラー支援計画のためのケアラー実態調査結果』で、ケアラー本人の体調について質問されたものです。
また、介護によって離職せざるを得なくなった方もいます。上記と同様の調査によると、「ケアのために勤務時間を減らした(11.9%)」「ケアのために退職した(6.8%)」と約2割の人が働き方の変更や退職に追い込まれています。
さらに、「ケアのために就労経験がない(2.3%)」と回答した人もいたことがわかっています。
ヤングケアラーは学業や部活に支障
就労経験がない方の中には、18歳未満の子どもの頃から家族のケアを行ってきたケースもあります。
家事や家族の世話、介護、感情面のサポートなどを行っている18歳未満の子どものことを「ヤングケアラー」と呼びます。近年、このヤングケアラーは大きな社会問題のひとつとなってきています。
本来、高校生や中学生などは学業や部活に熱を入れるもの。しかし、ヤングケアラーは、祖父母や親、兄弟などのケアに多くの時間を割かれるため、学業や部活に専念しにくい環境下にあります。場合によっては、授業や部活の出席状況が芳しくないことも。
また、肉体的・精神的に厳しい状況になっても、学校の先生などに相談しているのはごくわずかで、悩みや不安を誰にも相談していないヤングケアラーがほとんどです。
中には、ケアすることが当たり前となっており、「自身がヤングケアラーなのかわからない」と回答した子どもも1~2割いました。そのため、潜在的なヤングケアラーの数は少なくないと言えます。
自治体に加えてNPOも支援を実施
ケアラーは悩みや不安を話せず、孤立状態に陥りやすい
ヤングケアラーの中には、本人に自覚がないまま重い負担がかかっていたり、学業に専念できないため学力低下につながったりするケースも見受けられます。
また、ヤングケアラーだけでなく、多くのケアラーには、相談できる相手や協力してくれる相手が少ないのが現状です。『埼玉県ケアラー支援計画のためのケアラー実態調査結果』によると、ケアラーに対して「ケアに協力してくれる人がいるか?」という質問を行ったところ、9.8%のケアラーが「誰もいない」と回答しています。
一方、「ケアに協力してくれる人がいる」と回答した方の中で最も多かったのが「医療者やサービス事業所の人(39.9%)」です。相談相手としては、家族だけでなく、地域包括支援センターやケアマネジャーも挙がっています。
緊急時に代わって介護してくれる人が必要
ケアラーの年齢にかかわらず、気軽に相談できる相手や少しでも協力してくれる相手を探しておくのは大切なことです。頼れる相手がいないまま孤立していった結果、介護ストレスによって、ケアラーが虐待などの事件を起こしてしまうこともあります。
そんなケアラーへの支援として、行政だけでなく全国のNPO法人でも先進的な取り組みを行っており、一定の成果が出ています。
埼玉県では、ケアラーの負担を軽減することを目的に、認定NPO法人「さいたまNPOセンター」が「介護者支援セミナー」と「介護者サロン」を県内に広めました。
そのほか、東京都にあるNPO法人「介護サポートネットワークセンター・アラジン」では、介護者が交流できる「介護者の会」や「ケアラーズカフェ」を立ち上げるなど、多様なケアラー支援を行っています。
また、ケアラー本人が必要と考える支援としては「ケアラーに役立つ情報の提供」が多く挙げられています。こういった交流の場を通して、現状を改善するために有益な情報などが得られるのです。
孤立化しがちな介護においては、信頼できるところに助けを求める姿勢をケアラーが持つことと、不安を抱えるケアラーを支える社会の仕組みづくりの両方が必要不可欠です。
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