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コロナ危機と資本主義  格差危機と、その問い直し(メモ)

 コロナ危機は、資本主義経済の構造的矛盾をあぶだした。その内容について「赤旗」連載などのメモ

 ・「同じボートに乗っている」という虚構/格差・矛盾を隠蔽

・コロナ危機前から崖っぷち

・6割占める非公式労働者を直撃、所得8.3%減  

・格差拡大  問われる政府介入の正当性 

・働く貧困 1億800万人増  ILO報告 意識的対策求める 

 20での最低国際税率の合意、クローバルタックスへの模索、EUの金融取引税導入の努力、バイデン新税制(大企業・超富裕層への増税で、子育て・教育・貧困対策)、アマゾンでの労組結成のたたかいなど・・・巨大な変化が起きつつある

 

(1)妄想と神話 はびこる世界  

◆「同じボートに乗っている」という虚構/格差・矛盾を隠蔽

 「不平等というパンデミックへの取り組み 新時代のための新しい社会契約」  昨年7月18日、ネルソン・マンデラデーでの国連のグテレス事務総長の演説

「新型コロナウイルスの世界的大流行は、私たちの世界のもろさを露呈させた。不十分な医療制度、社会的保護の欠如、構造的な不平等、環境破壊、気候危機など、私たちが数十年にわたって無視してきたリスクを表面化させたのだ」---極度の貧困に陥る人がさらに1億人増えるおそれ、歴史的な規模の飢饉(ききん)が発生する可能性について言及

「新型コロナウイルスは、私たちが構築した社会のもろい骨格に生じた亀裂を映し出すX線のような存在」「あらゆる場所で、誤謬や虚偽が明るみに出ている。自由市場がすべての人に医療を届けられるというウソ。無給の育児や介護は仕事ではないという虚構。私たちが暮らす世界に人種差別はないという妄想。そして、私たちはすべて同じボートに乗っているという神話。事実、私たちは同じ海の上を漂っているとしても、豪華なヨットに乗る者もいれば、流れてきた残骸にしがみついている者もいる

→この格差こそ、現代の社会を特徴づけている/が、「すべて同じボートに乗っている」という考え方は、富裕層と貧困者に格差や対立・矛盾は存在しない、という見方につながる。このような虚構や妄想、神話がはびこる世界は、現実から人々の目をそらせたいと思っている大企業や富裕層たちにとって、都合のいい場所を提供していねことを指弾

 

◆富裕層 資産急拡大

・「世界で最も豊かな26人は、世界人口の半数に等しい資産を保有」(グテレス事務総長)

・ コロナ禍で世界の人々が苦しむ中、この1年間で富豪たちの資産が急拡大。

→ 米誌『フォーブス』4月6日発表/2021年版の世界長者番付  資産総額10億ドル(1090億円)を超える富豪(ビリオネア)数 前年比660人増の2755人。過去最高 / 合計資産  20年8兆ドルから5・1兆ドル増え13・1兆ドルに

→ 富豪の資産が拡大したのは、各国政府・中央銀行による金融緩和策を背景に株価上昇による

・日本人 1位はソフトバンクグループ孫正義会長兼社長。454億ドルで全体の29位。2位は衣料品店ユニクロを展開するファーストリテイリングの柳井正会長兼社長(441億ドル)で全体の31位

⇔一方、コロナの影響による解雇・雇い止め(見込みを含む)人数 厚生労働省(把握分) 10万人超え

 ・国際通貨基金(IMF)のゲオルギエワ専務理事 「行き過ぎた格差は成長をさまたげ、国の基盤を空洞化させる」

 

(2)コロナ危機前から崖っぷち

・国際NGOのオックスファム 毎年1月、格差拡大に警鐘を鳴らす報告書を発表

⇔ 今年の最大のテーマ「コロナ禍に襲われた世界」/記録が残っている歴史の中で初めて、ほとんどすべての国で同時に格差が拡大。と実態を告発/ 富の上層部への集中は、21世紀の初頭から着実に進展。08年のリーマン・ショック以来の10年間でビリオネア(資産10億ドル以上の大富豪)の人数、ほぼ2倍。新しいビリオネアは、2日に1人のペースで増加。

報告書 「コロナウイルス危機は、すでに極端な格差が存在していた世界を襲った」

 ・コロナ危機前から現代資本主義をむしばむ格差問題を国際機関は、フォーカス

・世界経済フォーラム 毎年、発生する可能性が高いグローバルリスクを公表/12年~14年、トップは「所得格差」

・OECD  リーマン・ショック直後の08年10月、「格差は拡大しているのか」と題した報告書/「普通の人に『今日、世界が直面している主要な問題は何か』と尋ねれば、最初に返ってくる答えの中に『格差と貧困』が入っている可能性は高い」。

/続いて11年 「なぜ格差は拡大し続けるのか」をテーマに報告書。

グリア事務総長(当時)、「OECD諸国での所得格差は、過去50年間で最も高い水準に達している」。

報告書 「格差の拡大をもたらしている最も重要な要因は、賃金と給与の不平等の拡大である」と分析 

/さらに15年5月 「格差縮小に向けて」を発表。 グリア氏、「私たちは崖っぷちに達した」

・IMF ラガルド専務理事(当時)  14年5月の講演「所得格差が高まり、暗い影が世界経済を覆っている」と強調。

 

〇格差拡大のメカニズム  9つの特徴

・オックスファム 18年1月の報告書 「格差危機」の節を設け、「経済成長の成果は、わずかな人々の手に集中しているために、格差の危機は引き続き悪化している」/そして「なぜ格差が拡大するのか」、そのメカニズムについて分析

  「新自由主義の経済思想をもったエリートたちが政策の決定権を奪取し一連の経済力を発揮している。高額報酬を得る人や富の所有者の利益になるように低賃金労働者たちの力を抑えつけてきた」と、その経済システムについて九つの特徴を指摘

 (1)労働者の権利を切り下げる規制緩和

(2)グローバル・サプライチェーンを活用し各国に賃金の安さを競わせる雇用の底辺に向けての競争

(3)新技術による雇用削減と、機械の所有者の利益確保

(4)労働者の交渉力を削減するためにジェンダー不平等の利用

(5)企業に対する大株主の圧倒的支配

(6)国境や企業間を移送する資本に巨大な交渉力を与える規制緩和

(7)税逃れとタックスヘイブン(租税回避地)

(8)資産・企業・資本課税の底辺への競争

(9)企業の集中と独占力の増大―。

 ・危機の根源・・・新自由主義が、労働者の団結力がそぎ落とし、富裕層たちが政治への圧力を強化したこと

⇔コロナ禍/ 「格差危機」に陥っている現代社会に対し、新自由主義路線からの脱却を迫っている

 

3)6割占める非公式労働者  雇用直撃、所得8.3%減  

・IMF 4月発表 世界経済見通し/ 「2020年に起こった経済活動縮小の速度とその広がりの同時性は、人々の記憶に残っている範囲では先例がない」 /世界経済の20年の成長率は―3・3%と推定

~ なかでも深刻な打撃が、若者、女性、比較的学歴が低い労働者、非公式経済の労働者たちに/極度の貧困に陥った人が20年には9500万人増加し、新たに8000万人が栄養不良になったと指摘。

・日本 20年度のGDP 前年度比―4・6%。下落率は08年度(3・6%減)を超え、統計上遡れる1956年度以降で最大。

 ・ ILO 20年、世界で1億1400万人という前代未聞の規模で雇用が失われた

20年の世界の労働所得(所得支援措置の算入前) ―8・3%/その額は、世界のGDPの4・4%、3・7兆ドルと推計

 

〇非公式労働者

・ILO推計 コロナ以前、世界の就業者の61%以上、20億人余が非公式(インフォーマル)経済で生計。日本 18・7%。

・非公式経済/ 未登記で法人化されていない零細事業の事業主とそこで働く労働者のほか、安定した雇用契約がなく、各種福利厚生、社会保障の適用対象とならない就業者で構成

~ 露天商、靴磨き、自転車修理工、自宅で作った服やお菓子を売る女性たち、日雇い建設労働者、自宅でデータ入力作業を行う人々、アルバイトのヘルパーだけでなく、先進国における非正規労働者など、活動内容・形態はさまざま

・非公式経済の労働者と生産者は、さまざまなつながりで、グローバル経済と結びついている

⇔ILO 「経済のグローバル化と情報通信技術(ICT)の普及に伴う生産および雇用関係のインフォーマル化と柔軟化は生産の分散、非典型労働の増大をもたらし、その規模は現在、ますます膨らみ続けています」(02年11月6日のトピック解説)

~ 衣料品や繊維、スポーツシューズなど輸出産業の労働力の多くは、非公式経済の下で働いているとも指摘

 *多国籍企業が最低の労働コストを求めて国から国へと移動する「底辺への競争」に伴って、労働者は、低賃金競争にかりたてられ、社会保障などの公的保護や、職場における安全性の欠如にさらされている。

 

〇賃下げ圧力

・コロナ禍は、多国籍企業主導で拡大した非公式労働者に襲い掛かった

⇔ 医療保健サービスを利用することが難しい上、都市封鎖(ロックダウン)で仕事を失った場合、病気になった場合、ほかの手段で所得を得ることが困難/ステイホームを強いられ家にとどまることは、露天商などにとっては失職を意味。

・ILO 20年12月「世界賃金報告」・・・コロナ危機は多くの国で賃金に大きな下方圧力をかけ、20年上半期にデータがある国の3分の2で、賃金は前年より下落するか、伸びが鈍化 /「この危機は近い将来、大規模な賃金押し下げ圧力をもたらす可能性が高い」と警告

  

(4)問われる政府介入の正当性 

・08年9月15日  リーマン・ブラザーズが破綻。世界が金融経済危機に直面。資本主義制度のあり方めぐり議論に。

 ・イングランド銀行 カーニー元総裁 14年5月の講演 「すべてのイデオロギーは、極端になりがちです。資本主義では、市場の力を過信すると、その節度を失う。危機が起きる数十年前、このような過激主義が経済に関する考え方を支配し、社会的な行動様式になってしまった。政府は、軽度な規制しかおこなわず、バブルの発生に気づくことができなかった。市場はいつもよどみがない、という市場原理主義は、金融危機への直接の原因となった」

 

〇財界の自省

・同じ会議で/IMF ラガルド専務理事(当時) 「格差は、分断をもたらす。過度に不平等な社会では、社会を結びつける連帯と互恵の原則が、いっそう浸食されやすい」「歴史は、われわれに教えている。いったん、政治的争いが、持つものと持たざるものを分断すれば、民主主義は、末端から、すり減らされるのだ」

 ・経済学者のスティグリッツ氏、リーマン・ショック直後の講演、「2008年9月15日は、市場原理主義の終わりを記した」。「市場原理主義の欠陥は、所得分配や社会の善良さ、公平性に注意を払わないことである」「アメリカは、今(08年当時)格差問題に直面している」「マーケットは、それ自身では機能しない」

→ 新自由主義思想の基礎をなす市場原理主義を批判、政府による介入が必要だと指摘

 ・日本/ 市場原理主義の政策を積極的に政府に働きかけてきた人物から自省の発言

・社会経済生産性本部(現、日本生産性本部)牛尾治朗会長(当時) 年頭所感 [肥大化した米国の金融システムの崩壊は、短期間のうちに世界の金融システムに大きな影響を与え、株式相場や通貨相場は大混乱に陥った。実体経済でも、設備投資や個人消費が萎縮し、米国自動車産業のビッグスリーが危機にひんするなど、世界的な景気後退が起こっている」「自由経済の思い上がりが競争の正義を崩壊させ、市場は輝きを失った。自由経済を支える金融の専門家には、プロフェッショナルな倫理観が求められるが、今回の金融バブルには自制心を含めた倫理観の欠如が明らかにみられる」(09年1月5日付「生産性新聞」)~牛尾氏 、01年1月~06年9月、経済財政諮問会議の民間議員。小泉「構造改革」を推し進めてきた財界人。

 

〇“賢い”政府

・コロナ危機を受けて各国政府 金融・財政支援策を展開/IMFによると、総額16兆ドル(4月上旬時点)の財政支援策

⇔が、すでに経済システムは、企業減税や規制緩和、独占化の容認など大企業や富裕層に有利になるようにつくり変えられており、その経済システムを前提とした対策によって、かつて資本主義が経験したことのないような格差が拡大

 ・MF 4月発表「財政モニター」・・・「課税の能力の強化、公的支出の効率性の改善が求められる。このような公的部門に関する強い要求は、賢い政府を求める」と、政府のあり方にまで踏み込んだ

⇔ 壮大な規模の支援策は、政府の経済への介入の正当性、公平性を問いかけるものに/IMF「賢い政府に求められる最初のことは、透明性と説明責任である」

  

働く貧困 1億800万人増  ILO報告 意識的対策求める 

ILO年次報告書 /新型コロナウイルスによる雇用と実労働時間の減少が所得の急落を招き、2019年時と比べ、働く貧困層が世界で1億800万人増えた/女性や若者、移民の労働者への不平等な雇用打撃もあげ、意識的な対策がなければ「コロナ禍の影響がこの先何年も残る可能性がある」と警告

 ・「世界の雇用および社会の見通し」  コロナで労働市場に起きた危機の終えんにはまだほど遠いとし、雇用が以前の水準に戻るのは早くても23年との予測を示した

・コロナによって「働く貧困層の根絶に向けた5年間の前進が無に帰した」

(働く貧困層~本人とその家族が1人1日あたり3・20ドル(約353円)未満で暮らす労働者)

 ・コロナ以前からあった社会的不平等をコロナがさらに悪化と報告

 20年の世界の就業者数 男性3・9%減、女性5%減。一般成人(3・7%減)に対し、若年層8・7%も減

⇔ 21年の上半期に最も雇用の打撃を受けた地域 、中南米・カリブと欧州、中央アジア

 ・ILOのガイ・ライダー事務局長、「人間を中心に据えた政策を基盤とし、行動と予算に裏打ちされた包括的かつ調整のとれた戦略が必要だ。人間らしく働ける雇用の回復なくして、真の回復はありえない」

 

★G20での最低国際税率の合意、クローバルタックスへの模索、EUの金融取引税導入の努力、バイデン新税制(大企業・超富裕層への増税で、子育て・教育・貧困対策)、アマゾンでの労組結成のたたかいなど・・・巨大な変化が起きつつある

 

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