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司法にジェンダー平等を ~選択議定書批准、最高裁判事の1/3を女性に

 日本の裁判所は一貫して、女性差別撤廃条約の「直接適用可能性」を否定。だからこそ、個人が通報できるよう選択議定書の批准が必要。未批准は「法はつくるが守らない」と公言しているようなもの。

 1933年まで女性が弁護士になることを禁じられていた。女性の経験が反映されない司法判断の偏向(「強姦神話」)など長く間、大きな問題だった。その改善にむけ、最高裁判事15名中女性は2名。せめて5名に。

 女性差別撤廃条約が日本で発効した日、725日を「女性の権利デー」に、というアクションに参加を。

 
【「司法にジェンダー平等を」  浅倉むつ子さん(早稲田大学名誉教授・女性差別撤廃条約実現アクション共同代表) 2021/5/31  法学館憲法研究所 今週の一言】

【「司法にジェンダー平等を」  浅倉むつ子さん(早稲田大学名誉教授・女性差別撤廃条約実現アクション共同代表) 2021/5/31  法学館憲法研究所 今週の一言】

 「実現アクション」のスタート

 201935日、私たちは「女性差別撤廃条約実現アクション」を始めました。「実現アクション」の具体的な活動については、以下のURLをご覧ください。https://opcedawjapan.wordpress.com/
 女性差別撤廃条約は、19791218日に、第34回国連総会で採択されました。正式名称は「女性に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」です。固定化された性別役割の変革や、法律上だけでなく事実上の男女平等をめざすなど、画期的な内容をもっています。締約国は189か国に達し、日本も1985年に、この条約を批准しました。そのための国内法整備として、国は、均等法を制定し、国籍法を改正し(父系血統主義から父母両系主義へ)、家庭科男女共修に向けて学習指導要領を改定しました。
 さらに、条約ができて20年後の1999106日、国連は、女性差別撤廃条約の「選択議定書」を採択しました。選択議定書は、条約の実効性を強化するために、個人通報制度と調査制度という二つの仕組みを設けています。日本が選択議定書を批准すれば、私たちは、これら2つの仕組みを使うことができるのです。ところが、日本はまだ選択議定書を批准していません。
 すでに世界の114か国は、これを批准しています。条約を批准しながら選択議定書を批准しないのは、「法律は作るが守らない」と公言しているようなものです。そこで私たちは、選択議定書を批准する共同行動のために、「実現アクション」を立ち上げました。

 個人通報制度とは

 選択議定書の「個人通報制度」は、私たちにとってとくに重要です。条約上の権利を侵害された人が、国内で救済されなかったとき、「頼みの綱」として利用できるのが個人通報だからです。通報先は、女性差別撤廃委員会です。この委員会は、世界中から選ばれた23人の専門家で構成されており、個人通報を受理した場合には、条約違反があったかどうかを検討します。差別があったと判断すると、委員会は、締約国に対して「見解や勧告」を出します。それを受けた締約国は、6か月以内に、委員会に回答書を提出しなければなりません。
 委員会から出される勧告は、権利侵害された人への金銭的な賠償、法の改正や施行、司法関係者への研修、政府による公的謝罪など、さまざまな救済策の組み合わせになっています。個人通報がスタートして約20年の間に、女性差別撤廃委員会は、40か国に対する165件の個人通報を受理し、うち41件で条約違反を認定しました。違反ありとされた事案は、ジェンダーに基づく暴力、出産や健康の権利、雇用や社会保障、市民的・政治的権利など、さまざまです。

 条約は「絵に描いた餅」ではないはず

 じつは、日本の裁判所は一貫して、女性差別撤廃条約の「直接適用可能性」を否定しています。性差別を受けて裁判に訴えても、裁判所は、その権利侵害が条約違反だという判断はせず、条約は「当然に自動執行力を有すると認めることはできない」とか、条約の「規定は、我が国の国民に対し、直接権利を付与するものということはできない」などと述べてきました。これでは、女性差別撤廃条約が批准された意味はどこにあるのでしょうか。条約は「絵に描いた餅」でしかないのか? 女性たちは、この司法の判断に落胆してきました。
 だからこそ、最高裁で敗訴した女性たちは、「日本も選択議定書を批准して欲しい」、「そうすれば私も、国連の委員会に個人通報できる」と、大きな期待をかけていますもし個人通報が利用できるようになれば、日本の司法判断は変わるでしょう。個人通報によって、国内の裁判所の判断が国際社会の評価にさらされるからです。そうなれば裁判所も、「条約の解釈水準とはどのようなものなのか」を真剣に考慮しなければならないはずです。

最高裁判事の3分の1を女性に

 司法の判断を変えるもう一つの鍵は、裁判官の女性比率です。私たちは、今年315日に、最高裁判事を推薦する機関に、裁判官の女性割合を少なくとも3分の1にして欲しい、と要望しました。
 20213月現在、最高裁の15人の判事の中に女性は2人しかいませんが、7月に2人(うち女性1人)、8月に2人の裁判官が退官します。もし後任の判事が全員女性であれば、ようやく3分の1の5人が女性になります。私たちは、全国92団体の連名で、ぜひそれを実現してくださいと要望しました。日本の司法を変えたいという女性たちの期待がこめられた「要望書」PDFです。
 法曹界に女性が少ない理由の一つは、女性排除の歴史があったからです。1933年以前、女性は弁護士になることを法律で禁じられていました。法改正によって、女性が高等文官試験に合格したのは1938年。その2年後に、ようやく初の女性弁護士が3人誕生しました。
 女性の経験が反映されない司法判断の偏向(ジェンダー・バイアス)は、長い間、大きな問題でした(たとえば、「抵抗すれば避けられたはず」という「強姦神話」など)21世紀初頭の大規模な司法改革は「誰の手にも届く司法」が合言葉でしたが、そのとき私たちは、「司法にジェンダー平等を!」と願って、200312月にジェンダー法学会を立ち上げました。
 もちろん、「女性なら弱者の立場にたつはず」と、単純に決めつけることはできません。それは男性も同じで、男女にはそれぞれ多様な考えの持ち主がいます。ですが、男女の経験に差異があるのは、確かな事実です。性暴力やDVの被害者は圧倒的に女性が多く、妊娠・出産の経験は女性だけのものです。婚姻による同氏強制で苦労した経験も、圧倒的に女性が多いでしょう。だからこそ、男女が混在していることは、法の世界でも必要なことだと思います。
 法曹をめざす女性たちにとって、将来に希望が持てるロールモデルは必要です。最高裁の裁判官に女性がいることは、よいロールモデルです。私たちが「少なくとも3分の1」と主張したのは、この割合が「黄金の3割」、「クリティカル・マス(分岐点となる数)」だからです。少数者が自然体で発言して影響力を及ぼすことができる割合が、3割なのです。

 ■725日を「女性の権利デー」に!

 私たちは、いま、女性差別撤廃条約が日本で発効した日、725日を「女性の権利デー」にしたいと願っています。女性差別撤廃条約が定めるジェンダー平等は、日本の女性たちに大きな力を与えてきました。ところが一方で、「女性差別撤廃条約という用語の周知度」は、2012年には34.8%でしたが、2019年には34.7%に下がってしまいました(内閣府「第8回・第5次基本計画策定専門調査会」資料)。世界経済フォーラムのジェンダー・ギャップ指数では、日本は156か国中、120位でしかありません。日本の女性の権利が国際レベルになる日は、まだまだ遠い将来のように思えます。それだけに、「女性の権利デー」を全国に広げて、ジェンダー平等を私たちの手で実現していきたいものです。
 毎年725日を日本における女性差別撤廃条約の日、「女性の権利デー」にする、という私たちのアクションに、みなさんもぜひ参加してください。「女性の権利を国際基準に。司法にジェンダー平等を」。それらをテーマに、「実現アクション」は、この日にパネル・ディスカッションを持ち、また全国各地でスタンディングなどを実施するよう、呼びかけます。

 浅倉むつ子(あさくら むつこ)さんのプロフィール
千葉県生まれ。東京都立大学大学院博士課程単位取得退学(1979)。博士(法学・早稲田大学、1993)。東京都立大学法学部助手・講師・助教授・教授(1979-2003)を経て、早稲田大学大学院教授(2004-2019)。日本学術会議会員(2003-2014)、日本労働法学会代表理事(2003-2005)、ジェンダー法学会理事長(2007-2009)などを歴任。主著に、『男女雇用平等法論-イギリスと日本』(ドメス出版、1991)、『均等法の新世界-二重基準から共通基準へ』(有斐閣、1999)、『労働とジェンダーの法律学』(有斐閣、2000)、『労働法とジェンダー』(勁草書房、2004)、『雇用差別禁止法制の展望』(有斐閣、2016)、『労働法(第6版)』(共著、有斐閣、2020)などがある。

 

 

【要望書】

司法に男女平等の実現を! 最高裁判事の 5 名を女性にすることを求める要望書

 最高裁判所判事 15 人のうち、5 人の判事が 2021 年に定年退官されます(うち 1 人はすでに退官されています)。現在最高裁の女性判事は 2 人ですが、そのうちの 1 人が今夏、退官されます。 私たちは、そもそも最高裁判事の半数を女性にするべきだと考えますが、さしあた って少なくとも 3 分の 1 5 人を女性にするため、本年退官予定の 4 人の判事の後任 に女性を推薦されることを強く要望します。 国際社会はジェンダー平等の実現にむけて歩みを進め、いまや、あらゆる分野の意 思決定の場を男女同数(パリテ)にすることが目指されています。 一方、日本ではあらゆる分野で女性の参画が立ち遅れ、ジェンダーギャップ指数も 低位置のままです。あまつさえ、重要な公的立場にある者が、公的機関への女性の参 画を妨げる発言をし、国の内外から批判を浴びるなど、ジェンダー平等に逆行する日 本の実情が露わになっています。 政府は、第 5 次男女共同参画基本計画において「2020 年代の可能な限り早期に指 導的地位に占める女性の割合が 30%程度となるよう目指して取り組みを進める。」と したうえで、司法分野の具体的な取組として、「最高裁判事も含む裁判官全体に占め る女性の割合を高めるよう裁判所等の関係方面に要請する。」と、その意気込みを示 したところです。本年退官予定の 4 人の判事の後任に女性が任命されれば、最高裁の 女性判事は 5 人になります。ジェンダー不平等の日本を変えていくためには、司法の トップからの変革が必要です。 最高裁判事の推薦について、この機を逃さず、特段の取り組みをここに強く要望い たします。 内閣においては、ジェンダー平等を推進し、推薦名簿を遵守されることを要望いた します。

 2021 3 10

 

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