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夫婦別姓制度の導入を~日本企業、日本社会の国際的な信用や競争力を高めるために不可欠  JILA

 企業・官公庁に勤務する弁護士の任団体「JILA」。

「夫婦別姓制度の導入により、経済界における真の意味での男女共同参画型の経営が後押しされ、日本企業の競争力が強化されます」「日本企業ひいては日本社会の国際的な信用や競争力を高めるためにも、もはや「通称使用」では上記問題が解決できないことを理解しなければなりません。」~ 経済・社会活動面からの意義を説く。「声明」本文は下段

 

【プレスリリース  夫婦別姓の導入について】

組織内弁護士(企業および官公庁の組織に勤務する弁護士)の任意団体である日本組織内弁護士協会(JILA)は、基本的人権の尊重擁護を使命とする弁護士の団体として、また、組織の価値向上に貢献し、組織における両性の平等や人権を尊重した環境整備のために重要な役割を担うビジネスパーソンの集団として、公平な職場環境の実現を目指し、夫婦別姓制度の導入を提言いたします。

【提言要旨】

  1. 【氏の意義】 氏は、人が個人として尊重される基礎であること。
  2. 【国際協調】 世界の中で夫婦同姓制度が義務付けられているのは日本のみ。いまだGender 後進国であり、まずは法制度における平等の実現が急務であること。
  3. 【世論の変化】 2015 年は約 5 割の賛成に留まっていましたが、2020 年には約 7 割にまで増加し、今や社会の多数意見を反映すべきという観点からも、夫婦別姓制度の早期の導入が望まれること。
  4. 【通称使用】 通称使用によるプライバシーの問題、二つの姓の使用による混乱・煩雑さ・コスト増など、通称使用では、問題の解決にならず、むしろ別の問題が発生すること。

以上の理由により、夫婦別姓制度の導入を提言いたします。

【JILA理事長榊原美紀(さかきばらみき)のコメント】

今年中にも最高裁大法廷はこの問題を再度審理予定ですが、日本はいまだ Gender 後進国であり、まずは法制度における平等の実現が急務です。夫婦別姓制度の導入により、経済界における真の意味での男女共同参画型の経営が後押しされ、日本企業の競争力が強化されます。今後、夫婦別姓制度に向けた機運がますます高まり、2021 年が「男女平等元年」として記憶されることを願ってやみません。

 

 【夫婦別姓制度の導入に関する理事長声明3/10

【夫婦別姓制度の導入に関する理事長声明3/10

 提言内容

私たち日本組織内弁護士協会は、基本的人権の尊重擁護を使命とする弁護士の団体として、また、組織の価値向上に貢献し、組織における両性の平等や人権を尊重した環境整備のために重要な役割を担うビジネスパーソンの集団として、企業・社会における公平な職場環境の実現を目指し、夫婦別姓制度の導入を提言いたします。

法務省によれば、夫婦別姓を認めないのは世界中で日本だけとのことであり、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会元会長の発言に対する国内外の反応にも見るように、日本の男女平等問題には世界中が注目しています。

2015 年に最高裁は現行制度を合憲としつつ、その意見中で夫婦別姓制度にも理解を示し、また、一部裁判官は、現行制度は違憲との意見も付しました。今年中にも最高裁大法廷はこの問題を再度審理予定ですが、夫婦別姓制度に向けた機運がますます高まり、2021 年が「男女平等元年」として記憶されることを願ってやみません。

 

  1. 氏の意義と個人の尊厳

 氏は、名とあいまって、個人を他人から識別し特定する機能を有するほか、人が個人として尊重される基礎となるもので、その個人の人格を一体として示すものです。したがって、婚姻によって改姓する者は、そのことによりアイデンティティの喪失や、婚姻前の氏によって形成してきた個人の社会的な信用、評価、名誉感情等を維持することが困難になるなどの不利益を受け、改姓を強制する夫婦同氏強制制度(民法第 750 条)は、個人の尊厳を害すると考えます。

  旧姓を「職務上の氏名」として利用している女性弁護士は、約4割に上ります。しかし、職務上の氏名の利用には、弁護士業務上、多くの問題が伴います。例えば、全国銀行協会は、戸籍と口座を一致させておかないと不都合が生じる可能性があるとしており、旧姓を利用できるかどうかは、金融機関次第です。したがって、顧客から報酬を受領する銀行口座や預り金を管理する銀行口座の名義として、「弁護士の氏名」を使うことができない場合があります。また、登記も原則として戸籍姓でなければならないため、成年後見人や法人の役員等に就任した場合に、様々な場面で登記上の戸籍姓と職務上の氏名を架橋するための手続きが必要となるなど、不利益を強いられます。一部、登記上も旧姓の併記が認められているものの、それにより結婚や離婚の事実が分かってしまうなど、プライバシーの問題が生じます。さらに、これらの不利益を受けることを避けるために、あえて婚姻をしないという選択をする者や、旧姓利用を断念する者も存在します。

 

  1. 両性の本質的平等と国際協調

 世界の中で夫婦同姓制度が義務付けられているのは、法務省によれば、日本のみですi。例えば、米国、カナダ、英国、オーストラリアなどのコモンウェルス諸国では、夫婦は婚姻により姓を変える必要はなく、夫婦同姓でも別姓でも、自己の姓を選べる選択制です。フランスやオランダ等ほとんどの主要国も選択制を採用しています。ドイツでは、1993 年に夫婦同姓の原則が憲法裁判所により違憲と判断されたため、別姓の選択が可能となりました。また、中国や韓国は、夫婦別姓制度となっています。

  日本のように、夫婦同姓を強制し、通称の使用やその併記を認めることとすると、例えば、パスポートの別名併記制度を利用した場合、査証(ビザ)及び航空券を通称で取得することは困難であることから、出入国審査や滞在時に併記の意味が理解されずトラブルになるなど、日本人の海外駐在や日本企業の海外進出に支障が生じています。外務省は、2020 12 25 日、旧姓について英語で「Former surname」との説明書きを加えることを開始しました。しかし、かかる対策では、旧姓が過去の姓であることが明確となり、長年の愛着や信用などが蓄積した旧姓を使用したいというニーズ・人格的利益に反する結果となっています。これは、通称の使用やその併記といった小手先の解決策では、問題の解決にならないことの現れといえます。

  夫婦同姓制度は、形式的には性中立的な規定です。しかし、実際には96.2%が夫の氏を選択しています。これは、2015 年の最高裁判決においても、「女性の社会的経済的な立場の弱さ,家庭生活における立場の弱さ,種々の事実上の圧力など様々な要因のもたらすところ」と指摘されており、男女間に著しい不均衡が生じています。これでは女性の姓は男性の姓と平等に尊重されているとはいえません。最高裁は、「夫婦間に実質的な平等が保たれるように図ることは,憲法14 1 項の趣旨に沿う」と表明し、3人の女性最高裁判事全員が、民法750 条は憲法24 条に違反するとの意見を述べていることにも着目すべきです。また、国連女性差別撤廃委員会も、日本が締結している女性差別撤廃条約の遵守に関し、「女性が婚姻前の姓を保持できるよう夫婦の氏の選択に関する法規定を改正すること」を、2003年、2009年、2016年と繰り返し要請しています。

 世界経済フォーラムが201912月に公表した、「Global Gender Gap Report 2020」によれば、日本は153カ国中121位であり、男女平等とは程遠い結果です。今般の東京オリンピック・パラリンピック組織委員会会長による、「女性委員は、わきまえず、話が長い。」という性差別発言も、性別による差別を禁止するオリンピック憲章や、ジェンダー平等の実現を目標の一つとする国連・持続可能な開発目標(SDGs)、性別による差別を禁止する日本国憲法141項の趣旨等に抵触します。これは、日本がいまだGender 後進国であることの証左であり、まずは法制度における平等の実現が急務です。

 

  1. 社会の変化

そもそも夫婦同姓制度は、日本古来の制度ではなく、明治民法において家制度が確立した結果導入された、歴史も明治31 (1898 )以降の120 年足らずのものです。その後の時代の変化や女性活躍が政府方針とされる現在においては、もはや日本の文化や世論を反映したものとはいえません。価値観・生き方の多様化する現在、別姓を望む夫婦にまで同姓を強制する理由はなく、別姓も選択できる制度を導入して、個人の尊厳と平等を保障するべきです。

  1996 年に法制審議会から選択的夫婦別姓制度の法制化が答申されて、間もなく四半世紀を迎えます。

 2015 年の最高裁判決も、「選択的夫婦別氏制に合理性が無いと断ずるものではなく、それらについては婚姻制度や氏の在り方に対する社会の受け止め方に依拠するところが少なくなく、この点の状況に関する判断を含め制度の在り方は国会で論ぜられ、判断されるべき」と判示しています。朝日・東大谷口研究室共同調査によれば、夫婦別姓について、2015 年は約5 割の賛成に留まっていましたが、2020 年には約7 割にまで増加していますii。さらに、少なくとも177の地方自治体が、選択的夫婦別姓の導入を求める旨の意見書を、国会に提出しています(2020 12 22日時点)。従来は、特定の個人の人権問題として扱われてきた面も否めませんが、今や社会の多数意見を反映すべきという観点からも、夫婦別姓制度の早期の導入が望まれます。

 

  1. 通称使用

 夫婦別姓制度を不要とする立場には、「通称使用」が広まることで上記の問題が解決できるため、夫婦別姓制度の導入は不要という意見があります。しかし、そもそも、法的行為、海外渡航、登記、投資、保険、納税、各種資格、特許、論文発表など、多くの場面において、いまだ通称使用はできない状態です。また、法的根拠のない通称と戸籍姓という二つの姓の使用を継続しなければならない結果、個人レベルでは、煩雑な手続を経ることを強制され、また、職場や取引先など必要のない範囲にまで、旧姓の通称使用及び旧姓併記をすることで、婚姻や離婚の事実を知らしめることになり、プライバシーの問題も生じます。企業レベルでは、日常業務は通称で行う一方、給与や保険の取扱いにおいては戸籍姓を使用せざるを得ないといった使い分けが必要となり、人事・法務・経理・総務などにおいて相当な労力とコストの増大などを強いられます。旧姓の通称使用を認める企業が、内閣府調べでいまだ半数以下にとどまるのもそのためでしょう。日本企業ひいては日本社会の国際的な信用や競争力を高めるためにも、もはや「通称使用」では上記問題が解決できないことを理解しなければなりません。

 以上より、私たち日本組織内弁護士協会は、企業・社会における男女平等及び人格権の尊重による公平な職場環境の実現を目的として、この問題に積極的に取り組む社会的使命を負うものと考えています。

 

i 2018 3 20 日、第196 回国会衆議院法務委員会の政府参考人答弁「法務省が把握している限りでは、現在、婚姻後に夫婦のいずれかの氏を選択しなければならない夫婦同氏制を採用している国は、我が国以外にはございません。」

 ii https://chinjyo-action.com/47prefectures-survey/

2020 年の11 22 日 早稲田大学法学部・棚村政行研究室と選択的夫婦別姓・全国陳情アクションによる47 都道府県「選択的夫婦別姓」意識調査

 

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