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課税新時代  地球的課題を一網打尽にできる「グローバル・タックス」(メモ)

 貧困と格差、気候危機、感染症の大流行。現代社会の課題は地球規模であり。それらを解決していく手段の一つとして、地球規模で税制を敷くグローバル・タックス(国際連帯税)が議論されている。

 グローバルタックスは、各国の分担金で賄われ、国益の調整と妥協の場である国際機関を、貧困、気候危機など地球益に正面からとりくめ足場をつくり、新時代を開くことが期待されている。矛盾をの乗り越える市民運動のパワー/弁証法である。

グローバル・タックスを研究し、後押ししてきた横浜市立大学教授の上村雄彦さんに聞く(赤旗4/6-8)からのメモ。 またグローバルタックスの柱のの1つでる「金融取引税」について、同税の歴史を研究するグローバル連帯税フォーラム理事・津田久美子さんに聞く(2021 3 23-25)からのメモ。

 *うえむら・たけひこ 1965年生まれ。横浜市立大学国際教養学部教授。カナダ国際教育局カナダ・日本関係担当官、国連食糧農業機関住民参加・環境担当官などを経て現職。著書に『不平等をめぐる戦争 グローバル税制は可能か?』など。

・つだ・くみこ  1986年東京都生まれ。中央大学総合政策学部卒。民間企業に勤務後、2013年から北海道大学法学研究科修士課程、15年から同研究科博士課程在籍(国際政治)。現在、北海道科学大学で非常勤講師。グローバル連帯税フォーラム理事。共著に上村雄彦編『グローバル・タックスの理論と実践』。

◆ 国際連帯税 役割大きく

〇新型コロナウイルスの世界的大流行から1年以上。地球規模課題が全人類に襲いかかっている

・地球規模の課題を自分事に感じざるをえない時代~WHOのテドロス事務局長はワクチン・ナショナリズム(国家主義)に懸念。とにかく自分の国が助かればいいと、先進国がワクチンを大量に購入して、お金のない途上国はワクチンが不足する状況に。命の格差が広がっている

・経済が停滞しているのに、株価は高騰~中央銀行が発行した大量のお金がマネーゲームに流入~ 多くの人が経済的に困窮しているのに、富裕層や多国籍企業はどんどん利益を増やしている。

(世界最大の経済大国・米国/半数以上の人がその日暮らしの収入しか得られていない。0・1%の富裕層の富は、米国の9割の人々の富を集めた規模に達している。)

 が、富裕層や多国籍企業はまともに税金を払ってない/ タックスヘイブン(租税回避地)に資金を移して課税を逃れ

特に米国企業のGAFAM(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン、マイクロソフト)は国際税法の不備をついて攻撃的な租税回避を行い、ぼろもうけ

→コロナ危機で世界の無情な政治経済構造が露呈。主権国家体制の限界、あるいは資本主義体制の限界といってもよい状況。

 

〇グローバル・タックスの大きな役割

・各国の大規模な財政出動による赤字をどう補てんするか。途上国と先進国の格差をどうするか。気候危機対策の財源をどうするか。あるいはタックスヘイブンにどう対処するか 

→  これらすべての地球規模課題を一網打尽にできるのがグローバル・タックス。すぐにやらないといけない。

 

〇内外で高まるグローバル・タックスへの注目

・OECDは「デジタル経済への課税」に取り組み、国際税法を大転換させるような新方式(合算課税)の導入を検討

→ 実現すれば、GAFAMなどのIT企業から税金をとって、彼らの独り勝ちを抑える道へ一歩踏み出せる。

 ・EUの動き  コロナ対策で96兆円規模の欧州復興基金を創設。債券発行、加盟国の分担金引き上げなど、財源づくりに取り組んでいるが全然足りない。→ そこで金融取引税の導入が選択肢にあがっている。

 ・金融取引税~ 株式、債券、通貨、デリバティブ(金融派生商品)などの金融商品を売買するたびに低率の税金がかかる仕組み。1秒間に1000回以上売買するような投機的取引を抑え、マネーゲームに制限をかけられる。EUでは2011年以降ずっと検討され、停滞気味でしたが、コロナによって図らずも議論が再活性化している。

 ・日本でもグローバル・タックスへの注目~巨額の財政赤字をどうするか、感染症対策の財源をどうするか、という観点から論じられ、通貨取引に課税するトービン税をやろうという声が政府の会議のメンバーからもあがっている。

→ 超党派の「国際連帯税の創設を求める議員連盟」は議員立法で国際連帯税の実現をめざすことを3月9日の総会で決定。画期的なことであり、大いに期待。

 

◆グローバル・タックス 3本の柱

〇第1の柱 、各国の課税当局が所得や資産などの課税情報を共有してタックスヘイブン(租税回避地)をなくすこと。

 ・個人レベルでは、非居住者の金融口座情報を各国の課税当局が共有するための「自動的情報交換(AEOI)」制度ができている。2014年、OECDが国際基準を公表し、日本では17年から実施。

  タックスヘイブンのスイスでは、銀行口座をつくろうとしたら、「あなたの銀行口座の情報はあなたの国の課税当局に知られます」という契約書にサインを求められる。応じないと口座をつくれない。

 AEOIにはほとんどの国が加盟。どこにいようとも日本人の金融口座情報は国税庁に把握されるということ。

 ・多国籍企業に対してはOECDを中心に同様の取り組みが進んでいる

多国籍企業がどの国でどんな活動をしてどれだけの売り上げがあるか、すべて報告させている。さらに企業の所得の定義などのルールを世界で共通化して適正な課税をしようとしている。

 → これらはグローバル・タックス全体の土台をつくる作業/課税に必要な課税ベースの情報を把握し、ルールを共通化して、地球規模で課税するための条件を整えるもの。そのうえで国境を越えた革新的な税制を導入していく。

 

〇第2の柱  さまざまなグローバル・タックスの実現

・重要なものは3種類~ 金融取引税、デジタル課税、地球炭素税

金融取引税

・目的~ 税制には主に2つの役割=財源調達手段、政策手段の役割/金融取引税の政策上の目的には投機的な金融取引の抑制がある。

・ 1970年代以降、グローバルな金融市場が急速に成長。国境を越える資本移動があまりに過剰で流動的になり、通貨危機、金融危機を頻繁に引き起こす、「経済の金融化」とも呼ばれる現象。過剰な流動性の背景には投機=利ざやを稼ぐことのみを目的にした投機的な金融取引は短期間に何往復も売買を繰り返す。

・その取引一つ一つに税を課すならば、低率でも累積的に多額の税が蓄積される。こうして投機的取引の抑制を狙うのが金融取引税。低率なので長期的な取引にはさほど影響を与えない。むしろ市場の安定は長期的な投資に好影響をもたらす。

 

・金融取引の規模が大きいので財源調達手段としても優れている

 金融市場は実体経済の何倍もの大きさ。低率でも巨額の税収が見込まれる。当然、課税対象が広いほど税収額も増える。

EU  株式と債券に0・1%、デリバティブに0・01%の税を課す金融取引税のプランを2011年に提案/加盟国のうち11カ国が13年に実施することでいったん合意。11カ国で見込まれる税収は300億~350億ユーロ(約3兆9000億~4兆5500億円)と試算。11カ国のGDPの0・4~0・5%を占めるという。

 

・ヘッジファンドによる相次ぐ通貨危機~国の運命が翻弄される事態

→ 「金融業界の利益追求のせいで失われた民主主義を奪回する」が運動とし発展/97年以降、市民運動の側からトービン税導入を求める声 /その流れを決定づけたのが98年にフランスで結成された社会運動団体ATTAC(アタック

 

・現状/金融取引税導入で合意したEU有志連合  具体化が、なかなか進展せず、15年にエストニアが離脱して10カ国に。

 他方でフランスとイタリアは単独での導入に踏み切り、スペインも導入予定~ フランス 時価総額10億ユーロ以上の国内株式の購入に0・2%を課税する金融取引税を12年に導入。その後、税率を0・3%に引き上げ

・現在EUではコロナ禍のもとで財源の議論が活発化し、一つの選択肢として金融取引税があがってる。

 1月にEUの議長国になったポルトガル 有志連合の中でも積極的な役割を果たしてきた国で、改めてEU全体でのデリバティブ(金融派生商品)取引にも課税できる金融取引税導入の検討を提案。

 →これには欧州のNGOが「ナウ・アンド・ネバー(いましかない)」という言葉で支持を表明/あらゆる金融商品の取引に課税する包括的な金融取引税を求めるものの、第一歩としてポルトガル案を後押し。

 

・EUは24年までに欧州復興基金の財源案をつくり、26年から導入するという計画。金融取引税が浮上する可能性

 ・金融取引税の一種である通貨取引税(トービン税)は日本でも議論されているが、ただし東京だけで課税したら資本が海外に逃げるから世界で一斉にやらなければ実施できないとの批判がある

→ よいアイデアが存在 /フランス主導で開発資金の創出のあり方を検討した「革新的開発資金に関するリーディング・グループ」の専門家委員会の案 / 現在ほとんどの通貨取引は多通貨同時決済銀行を通して実施。時差のせいで決済価格が変動するリスクを避けるため、どんな通貨の取引でも同時に決済する銀行をつくった。そこでは通貨取引のたびに手数料をとるので、同時に税金を徴収すれば、資本逃避の可能性は消えてなくなる。改めて検討する価値があるアイデア

 

・新しい市民運動の立ち上がり   ロビン・フッド・タックス運動

 金融市場の不安定性と並んで新たに問題視された事態~巨大金融機関が次々と破綻の危機に陥り、「大きすぎてつぶせない」という理由で各国が公的資金を注入して救済したこと。/・他方で欧州各国では財政難を理由に緊縮策が敷かれ、医療、教育、福祉などの公的サービスを削減。多くの国民が不満を募らせ、金融部門の責任を追及し、財政的な貢献を求める論調が高まった。

→イギリス 2010年、金融取引税の導入を主張するNGOを束ねてロビン・フッド・タックス運動が発足。現代版ATTACともいえる重要な役割を果たしている。「強きをくじき、弱きを助ける」

 

②デジタル経済への課税~ 多国籍企業が世界であげた利益を合算し、全体利益を把握する方式(合算課税)が検討

その税収の一部を感染症対策などの地球規模課題に回せば、新しいグローバル・タックスになる。

 

③二酸化炭素の排出に課税する地球炭素税  各国レベルですでに導入/新たに共通の国際課税ルールをつくり、気候危機対策のために活動している緑の気候基金の財源にしたらよい。

 

*他に「最低税率設定」の動き  ~米 財務長官 主要国間で法人税率の最低税率設定すること提唱NHK4/6

  

◆ 市民社会が変革の主役に 

〇グローバル・タックスを実施すれば巨額の税収

 ・その他にも、多国籍企業利潤税、富裕税、武器取引税など様々なグローバル・タックスが世界で検討され、税収についても多くの試算がある。

 ・それらすべてのグローバル・タックスの税収試算を合計すると、およそ2・5兆ドル(272兆円)

・国連貿易開発会議(UNCTAD)は持続可能な開発目標(SDGs)を途上国全体で達成するためには年2・5兆ドルの資金が不足すると試算/理論上、この資金不足をほぼ埋める額がグローバル・タックスによって生み出される。

 

〇グローバル・タックスの第3の柱  新たな意思決定の仕組みを創造すること

 ・グローバル・タックスを実現する過程では、グローバル・ガバナンス(国際問題に関わる意思決定の仕組み)が変革されて民主化される。国際機関が大きく変わる。

 

・現在の国際機関~ 各国の分担金や拠出金によって成立/理事会のメンバー 基本的に政府代表の

→ 政府代表の第一の目的は国益なので、国益同士の妥協で物事が決まる仕組み

・大国が一番大口の資金を出すので、往々にして大国の意向が反映され/ 少数の富める人々が運営し、大多数の貧しい人々の意見をあまり反映しない仕組み

「1%の、1%による、1%のためのガバナンス」。地球益をめざして行動したくても、現在の国際機関ではできない。

 

★グローバル・タックスが財源になると状況が一変する

~国際機関が自主財源を持つので、各国の国益に縛られず、地球益をまっすぐ追求できる

/納税者は多数で多様なので、情報を公開して説明責任を果たすことが中心課題になる 

/ 資金の流れを透明にし、可能な限り多様な立場の人が入って民主的に使い道を決めなくてはならない。国際機関の意思決定の仕組みの大きな構造変化が起こる

 

〇すでに実施されているグローバル・タックスの例。

・主に国際線の航空券に税金を課す航空券連帯税~ フランス、韓国、アフリカ諸国などが導入/その税収を財源としてユニットエイド(UNITAID)という国際機関を創設/感染症で苦しむ途上国の人々に医薬品と診断技術を供給する機関

ユニットエイドの理事会13人中9人は政府代表、2名が市民社会の代表。ほかの1人は財団、1人は国際機関の代表。市民社会が政策決定の中核に入り、現場の思いを持ち込める仕組み。

 ★透明性や民主性を欠く現在のグローバル・ガバナンスを変革する核に、グローバル・タックスはなりえる。

 

◆生存危機の時代

〇主権国家が国益に固執している間に、人類は生存危機の時代に突入

 自国だけがワクチンを確保しても、コロナ危機は他国から舞い戻ってきて共滅する/ 自国経済のために二酸化炭素を排出し続ければ、気候危機が進んで共滅する → 体制を変えない限り、生存危機は深まっていく。

 

〇市民社会の役割が大きい

・市民社会ががんばらないと、グローバル・タックスは実現しない/ 国家は国益第一、企業は利潤第一。国家の利益にも経済の利益にもとらわれない市民社会が主役になる

・市民社会の成功例~ 対人地雷全面禁止条約、クラスター爆弾禁止条約、核兵器禁止条約を実現させた。金融取引税を政治課題に押し上げてきたのも市民社会のがんばり。

 

鍵はネットワークとパートナーシップ/世界のNGOが網状につながりつつ、同じ志をもつ国家や政治家、企業と連携する。

 そうした変革を主導できるのが市民社会

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