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課税新時代 サンダース現象、若者がもたらした米・バイデン政権の新税制 ~所得再配分機能の強化

赤旗ら連載された「政治経済研究所理事 合田寛さん」の論説(2021.4.27-29)を基軸に、日経の報道なども踏まえ、バイデン政権のドラスチックな転換についてのメモ。

若者の多数が「社会主義」を求めるという米国で、その思いを先導したサンダー氏の主張が、新税制には色濃く反映している。

世界は変えることができる、ということを示した点でも極めてインパクトは大きいと思う。日本でもぜひ、変革を

 詳細は以下・・・

1.米、法人増税へ転換   

・米財務省がバイデン政権の税制改革の基本的考え方を示す「メイド・イン・アメリカ・タックスプラン」を発表

・バイデン政権の新税制プランによる税収増 15年間で2・5兆ドル(約270兆円)と試算/新型コロナウイルス危機後のニューディール(新規まき直し)=8年間で総額2兆ドル(約220兆円)投入する「アメリカ雇用計画」を十分賄うことができる。

 

企業減税見直し

 その内容は、

(1)トランプ政権が35%から21%に下げた法人税率を28%に引き上げる

(2)多国籍企業のタックスヘイブン(租税回避地)への利益移転による税逃れを封じる

(3)国際的な最低税率の適用を強化する

(4)高収益をあげながら税を支払わない企業に対して最低15%の税率を適用する

(5)化石燃料産業への補助金をクリーン産業への補助金に置き換える ―など

 

それ以外の見直し(メモ者追加)

(1)連邦個人所得税の最高税率を37%から39.6%に上げ、

(2)年収100万ドル超の富裕層の株式などの譲渡益(キャピタルゲイン)の最高税率39.6%を適用/現行20%

(3)「課税逃れ」の摘発。内国歳入庁による富裕層や企業への税務調査を徹底し、10年間で7000億ドルの税収増をめざす

 図は「日経」より

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・新税制プランの核心・・・これまでの法人税制に関する考え方を根本的に転換し、新しい方向に向ける

~企業課税に関するこれまでの支配的な考え方~「企業に対する課税の強化は投資を抑制し経済成長を妨げる」

・新税制プラン~ トランプ政権による2017年の企業減税が経済成長をもたらさなかったことなどを例に挙げ、減税が成長を呼ぶという考えを真っ向から否定/減税で過剰となった現金はさらに低税率のタックスヘイブンに移転され、国内の投資を呼び起こさなかったと指摘

・数十年にわたる企業減税の結果、米国の法人税収は税収総額の10%以下に下落/一方、労働に対する課税は増え続け、総税収の80%を超えている

 

課税逃れにメス

・新税制プラン~ 長期にわたって続いた企業減税は、税負担を企業や資本から労働に移し、富裕者をより豊かにさせる一方、労働者に過大な負担を負わせ、不平等をいっそう拡大する原因となった

→法人税増税は、税収確保とともに、不平等を減じるためにも必要。労働に報いる税制を構築する必要がある

・米国を拠点とする多国籍企業が利益を海外のタックスヘイブンに移転、巨額の税逃れにメスを入れる必要性を強調

 

1. トランプ税制改革まで~ 多国籍企業が海外であげた利益は、米国内に還流したときに初めて通常の法人税率で課税されることになっていた。そのことが、米国での課税を逃れるために利益を海外でため込む誘因となっていた。

2. 17年のトランプ税制~ 海外にため込まれた利益に対し、一定の控除を認めたうえで、法定税率の半分の税率(10・5%)を課す「ギルティ」という制度が創設

→が、この制度でも、多国籍企業の利益移転の誘因は減ることはなく、タックスヘイブンへの利益移転は止まらなかった/トランプ改革後、多国籍企業が利益をあげた場所のトップ10のうち、7カ所はタックスヘイブン~バミューダ、ケイマン、アイルランド、ルクセンブルク、オランダ、シンガポール、スイス/タックスヘイブンに海外利益の約61%が移転されていた

3. 新税制プランの特徴~ 新型コロナウイルス危機後必要となる巨額の財政需要を、法人税を中心とした増税によって賄うこと/法人税率引き上げなどで国内企業への課税を強めるとともに、利益を海外に移して米国の税を逃れる多国籍企業に対し、利益移転の誘因を封じようとするもの

 

.利益移転に歯止め  

・「世界的な法人税の引き下げ競争をやめ、法人税の最低税率を設定する国際協調が必要だ」~ 米財務省のイエレン長官、4月はじめ、シカゴ国際問題評議会で行われた就任後初めての演説

→基本的な公共財に投資して危機に備えるために、十分な財源を確保する安定的な税システムがつくる必要である。国際的な合意は可能だ、と演説

 

税率下げ競争で

・数十年にわたって、各国は自国に投資を呼び込むために、税率の引き下げを競ってた

~2000年、OECD諸国平均で32・2%だった法人税率は、20年には23・3%に低下/税の競争はとどまることを知らず、破局的な「底辺への競争」を招いている。

・米国はこれまで国際的な税率引き下げ競争の先頭グループを走っていた/が、新税制プランは方針を180度転換し、世界共通の最低税率を定める国際的取り組みに復帰することを宣言した

 

・いま20カ国・地域(G20)とOECDが主導し、約140カ国が参加する「包摂的枠組み」の下で、国際的課税ルールを刷新する取り組みが進行/昨年10月にまとめられた「ブループリント」(青写真)は二つの柱からなる

・第1の柱~ 多国籍企業の低税率国への利益移転を抑えるために、現行のルールを刷新する。~現行ルールは

(1)工場など固定的施設がなければ外国企業に課税しない「恒久的施設(PE)原則」

(2)企業のグループ内取引で任意の価格設定による利益移転を認める「アームズレングス原則」

→これを改め、多国籍企業グループの総利益を「売上高」にもとづいて各国に配分する新課税権を創出するというもの

・第2の柱~ 税率引き下げ競争に歯止めをかけるために、国際的最低税率を設定するというもの

 当初、昨年末までに国際的合意を得るスケジュールで進んでいたが、米国が交渉から離脱。決着は今年中ごろに延期されていた ⇔ 歓迎された米国の復帰

 

・2つの柱のうち、第1の柱は1世紀前から続く現行国際ルールの原則を変えるもので、国際合意が困難 /が、第2の柱は関係国の合意さえあれば実現可能。租税条約を改定する必要もない⇔ 最低税率の合意が実現すれば、多国籍企業から利益移転の誘因を取り除くことができる。

・もともと米国には「ギルティ」という第2の柱に相当する独自の制度があり、これを強化すれば国際的に合意できる最低税率の国際的システムがつくれるはず

 

二つの方法示す

・が、ここにも乗り越えなければならない課題が~ OECD「包摂的枠組み」の下で昨年秋に合意されたブループリントは、第2の柱に関して二つの課税方法を提示

  • 「所得合算ルール」~ これは多国籍企業が利益を低税率国に移した場合、その利益を親企業の所得に合算して最低税率までの税を支払わせるというもので、企業の母国が課税する
  • 「軽課税支払いルール」~ グループ内企業への金利などの支払いに対する課税が最低税率に満たなければ、控除を否定したり、源泉課税するというもので、利益が生まれた国が課税

・ブループリント~第1のルールを優先し、第2のルールは補完的なものと位置付け/が、それでは企業の母国が有利となり、経済活動が行われた場所で課税するという目的に合致しない~ GAFAなどの巨大企業の多くは米国を母国。米国が増収分を先取りしてしまうことになる

 

.利益移転に歯止め最低税率へ新提案 

・破滅的な「底辺への競争」の流れを変えるためには、世界共通の最低税率を設定する国際的な合意が不可欠

~ タックス・ジャスティス・ネットワーク(TJN)、国際企業課税の改革を求める独立委員会(ICRICT)など、国際的市民運動や専門家は早くからそのために取り組んできた

 

・これまで国際的な最低税率を設定する交渉が進まなかった原因の一つに、税率の設定は各国の主権に属するものだという考え方があつた/が、税率引き下げ競争は自国だけでなく、他国の税収を奪う競争 ⇔ 互いに他国の税収を奪い合うことが国の主権の名のもとに行われていいはずはない

・特にコロナ禍の下で命を守り、経済を回復するために各国が巨額の財源を必要としている今、国家間の税の競争はすべての国の主権を失わせるものといわなければならない

 

実現のチャンス

・G20とOECDが主導し、約140カ国が参加する「包摂的枠組み」が国際的最低税率の具体案を示し、米国が意欲的な姿勢に転じた今、それを実現する最大のチャンスが訪れている。

・国際的最低税率制度の設計にあたっては、

(1)最低税率の水準は十分な税収増が期待できる高さであること

(2)税率引き上げによる増収分は多国籍企業の母国だけでなく経済活動に応じて各国が受け取ること

(3)簡素な仕組みで実行が容易なこと

―などに配慮する必要がある

 

・2021年4月、英国ランカスター大学のソル・ピチオットら国際的に著名な税制専門家グループは、法人税の国際的最低実効税率(METR)を設定する新しい提案を示した。

→ 新提案/ OECD「包摂的枠組み」の下で行われてきた交渉の行き詰まりを打開し、これまでの合意を踏まえつつ、実現可能な提案としてまとめられたもの

→ グローバルな最低税率の設定によって多国籍企業が利益を低税率国に移転する誘因をなくし、投資の呼び込みを目的とした各国の優遇措置を抑制する効果を期待している

・新提案/国際的な最低税率の水準として、世界の法人税率の加重平均である25%を提案/ OECD「包括的枠組み」のブループリント10・5%、米国の税制改革プラン21%なので、とりあえず妥当な提案といえる

 

日本税収増3位

・新提案/ 多国籍企業が低課税によって得られた利益の総額を一定のルールにもとづいて各国に配分する、いわゆる「定式配分法」を提案し

・配分の基準~ 各国の有形資産、雇用者数、売上高にもとづくものとし、配分された利益に対して、各国は自国の税率を適用して課税するというもの

 

・新提案によって期待される税収増/、設定される税率の水準によって異なる~ 新提案の25%を前提にすると、世界全体で7840億ドル(約86兆円)、米国案の21%でも5400億ドルの税収増が期待/地域別に見ると、これまで巨大企業による利益移転の損害をもっとも多く受けてきた途上国、貧困国ほど、大きい税収増が期待される

・国別ランキング~  最大の税収増=米国1814億ドル(法人税収に占める割合は45%)、次いで中国1235億ドル(同24%)、3位日本966億ドル(10兆円超、同50%) ~ かなり大きい税収増の見込まれる

 

・タイムリミットである今年半ばまでに、全て国にとって好ましい国際的合意に達することは可能だし、そうする必要がある

 

.・所得の再配分を強化 集めた財源を子育てや教育の支援(メモ者追加)

・所得再配分の強化。集めた財源を子育てや教育の支援に振り向ける~格差の拡大を食い止めるには、富の分配だけでなく、人種や所得の違いなどで生じる不公平を減らし、将来の経済成長につながる土台づくりが必要との考えから。

・主な内容

(1) 中低所得層の保育負担の軽減に2250億ドル

(2) 介護など包括的な有給休暇制度の確立に2250億ドル

(3) 幼児教育の機会拡充に2000億ドルなど

(4) 3月の1.9兆ドルの経済対策で拡充した子供がいる世帯の税額控除の期限を2021年末から25年末まで延ばす

拡充期間の控除額は3000ドル(6歳未満は3600ドル)。低所得で納税額が少ない場合でも、控除額を満額利用できる仕組みを恒久化し、子育て世帯への事実上の手当とすることをめざす

(5) ・学び直しの機会を増やすため、日本の短大にあたるコミュニティーカレッジの無償化に1090億ドル/義務教育に加えて「無償公的教育期間を上乗せする」。

 

⇔米国家経済会議(NEC)のディース委員長 4月26日 議会演説

教育や子育て支援を柱とした成長戦略の第2弾の財源として、バイデン大統領が株式などの売却益にかかるキャピタルゲイン課税の増税を提案することを明言/増税対象となるのは年収100万ドル(約1億800万円)以上の富裕層。米国全体の世帯の0・3%にあたる約50万世帯/ 現行の20%から39.6%に引き上げる

~「富裕層の税率は多くの中間層世帯の税率より低くなっている」「労働と富に対する課税を平等にする措置が必要だ」と強調 (増税案に対する商工会議所などからの反発について)「長期投資に重大な影響を及ぼす証拠はない」と反論。また子どもたちに投資することで、学問的な成功、医療システムのコスト削減、将来の生産力と成長などの巨大な効果が期待できると指摘

 

5.最賃 15ドル 米大統領令  連邦契約業者の従業員に 

・バイデン米大統領 4月27日、連邦政府と契約する業者の従業員に最低賃金時給15ドル(約1600円)を保障する大統領令に署名/ツイッターで「フルタイムで働きながら貧困にあえぐべきでない。だから私は連邦契約業者で働く人々の最低賃金を上げる」。

・大統領令~連邦政府機関と契約する業者が従業員を新規雇用する場合、最低賃金15ドル支払う(2022年初めから)。既存の雇用については、契約延長時に賃上げを義務付け。

・現在の連邦契約業者の最賃は時給10・95ドル/民間シンクタンクの経済政策研究所(EPI)の試算  今回の措置で対象になる労働者は39万人、平均で年間3100ドル(約34万円)の賃金上昇になる

⇔ 最低賃金の引き上げを求める運動団体「ファイト・フォー15ダラーズ」は、多くの労働者の賃金が劇的に上がるとして歓迎を表明。同時に「議会はこれにならい、すべての労働者の時給15ドル実現にむけ進む時だ」と主張。

 *バイデン氏は、最低賃金15ドル引き上げを公約/民主党進歩派も強く要求

 3月に成立した新型コロナウイルス経済対策(米国救済計画)には、法案段階で盛り込まれたものの、共和党と一部民主党議員の反対で、最終的に削除/連邦の定める最低賃金は時給7ドル25セント。09年以来、上がっておらず、一部の都市・州レベルで時給15ドルが実現~今回の大統領令は、全国一律の時給15ドル実現にむけた強い意志のあらわれ

 

【資料】~ 社会主義への新たな期待 ~ 資本主義の矛盾の顕在化の反映

  • アメリカの有力外交誌『フォーリン・アフェアーズ』(2020年1―2月号)

「資本主義の未来」を特集/ 「資本主義は危機にある。......気候変動は今や人類生存の将来を危機にさらしている。......人々の生活の質をぼろぼろにした経済崩壊と同様、環境の悪化は資本主義の危機に根がある。そのどちらの課題も、オルタナティブな経済モデル――社会主義の理想を現代に適合させることにより真の改革への渇望にこたえるようなモデル――を採用することで、対応できる」

  • 米誌『フォーブス』(5月26日付) 「資本主義は、コロナウイルスがパンデミックを起こす前からすでに緊張にさらされていた。…アメリカ人の多くが、システムが不正だと感じ、勤勉とルール順守はもはや成功を保障しない、と訴えていた。…これらの感情は今春、特に若者の間で加速している。2月の終わり、新型コロナ時代前の最後の週に、フォーブスは30歳未満のアメリカ人成人1000人を対象に資本主義と社会主義について調査した。半分は前者を支持し、43%が後者を肯定的に評価した。10週間後(8万人が死亡し、2000万人が失業した後)、再び調査したところ、結果は悲惨だった。47%が社会主義に賛成し、46%が資本主義に賛成していた。普遍的な最低所得保障、家賃免除、雇用保障などの考えが周辺から主流に急速に移行し、これらの感情変化が大衆的に広まっているのがわかる」

 

  • アメリカ 若者の70%が社会主義の候補者を支持 (2019/11)

共産主義の犠牲者記念財団(Victims of Communism Memorial Foundation)と調査会社YouGovが実施した最新の世論調査によると、ミレニアル世代の70%、ジェネレーションZ64%は社会主義的な政策を訴える候補者に「多分投票するだろう」または「必ず投票するだろう」との考えを持っている。この調査は、16歳以上のアメリカ人2100人を対象に行われた。

  • バイデン氏の得票が史上最高になった「たった一つの理由」より

民主党のバイデン候補は、予備選で戦っていたサンダース上院議員の撤退と引き換えに、彼と政策協定を結んだ。その政策とは、国民皆保険、公立大学の無料化、最低賃金の引き上げ、そしてグリーンニューディール(ガソリン車の販売中止など、エネルギーのゼロエミッション化)などだった。まさに、社会主義でありエコ主義だったのだ。

 

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