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福島原発事故による避難生活への影響に関する検証結果~ 新潟県

  明日で、福島原発事故から10年目。自公政権のもとで、「確立した脱炭素技術」として「最大限活用していく」など露骨な原発推進、歪んだ「容量市場」での再エネ・新エネ抑制がすすめられている。

  深層防護の第五層はまったく無視。過酷事故を防ぐためにベントで放射性物質をまき散らすのに、避難計画は絵に描いた餅。住民を被爆させることが前提となっている。

 1月に出された新潟県の報告書(下線はメモ者)。 人類と共存できない「技術」であることを再確認しなくてはならない。

 

「福島第一原子力発電所事故による避難生活への影響に関する検証~検証結果~」

令和3年1月 12

新潟県原子力発電所事故による健康と生活への影響に関する検証委員会(生活分科会)

「福島第一原子力発電所事故による避難生活への影響に関する検証~検証結果~」

令和3年1月 12

新潟県原子力発電所事故による健康と生活への影響に関する検証委員会(生活分科会)

 

はじめに

2011 年3月の東京電力福島第一原子力発電所事故によって、深刻な放射能汚染が広がり、避難指示が出された区域の内外から多くの住民が避難を強いられました。復興庁のデータによると、福島県の避難者数は2012 年のピーク時に約16 5 千人を数えています。避難を選択しなかった住民も、不自由な生活を送ることになりました。

  新潟県では、柏崎刈羽原子力発電所の再稼働に関する議論を始める前提として福島事故の徹底的な検証(3つの検証)を行うことになり、その一環として2017 年に福島第一原発事故による「健康と生活への影響に関する検証委員会」がスタートしました。本「検証結果」は、そのうち「生活分科会」による検証を簡潔に取りまとめたものです。

 生活分科会では、2017 年度に、新潟県内に居住する(居住していた)避難者を対象とする大規模なアンケート調査を実施しました。この調査とそれを補完する2本のテーマ別調査により、避難生活のアウトラインを押さえることができました。

 初年度の検証結果を土台として、2018 年度以降の6回の分科会では、調査対象範囲の地理的な拡大(空間軸)と時間の経過に伴う状況変化の把握(時間軸)を念頭に置いて、検証を計画的に進めてきました。それぞれの分野で研究・支援実績を持つ有識者による報告やアンケート調査結果の再分析などにより、多面的な検証が可能になったと考えています。

  本分科会では足かけ4年にわたり、原発事故が人々の生活に何をもたらしたのかについて、事実とデータに基づいた検証作業に取り組みました。それにより現時点で分かったことは、原発事故による生活への影響が、極めて深刻で、長期にわたって続き、回復が難しいことです。多くの方が生活再建に向けた努力を続けていますが、元の暮らしを取り戻すことは容易ではありません。

 避難者は突然の指示により避難を強いられ、あるいは諸条件を合理的に考慮した上で、やむなく避難を選択しました。その結果、仕事や人間関係などで多くの犠牲を払い、「ふるさと」を失ったことにも苦しみ続けています。さらに、時間の経過とともに避難者の喪失や苦悩に対する理解が薄れて、周囲からの偏見や差別さえも見られるようになりました。避難元の状況を含めて、被害の回復に長い時間を要することが、原子力災害の大きな特徴と言えるでしょう。

  新潟県内では、依然として 2,000 人を超える人々が避難生活を続けています。この「検証結果」では、現時点での取りまとめを行っていますが、避難者が抱える困難や課題の多くが未解決のままです。避難者個々の状況も多様化しており、それぞれのケースに応じたきめ細かな支援や調査を、今後も長期的に続けていく必要があります。

 新潟県民の皆様には、ひとたび原発事故が起こると、その周辺の住民の生活がどのような影響を受けるのかについて、ぜひ「自分ごと」としてお考えいただければと思います。本「検証結果」がその一助となることを願っています。

 新潟県原子力発電所事故による健康と生活への影響に関する検証委員会・生活分科会 座長   松井 克浩

 

 

1.福島県の避難者数

○原発事故から1年3か月後(平成24 年6月)において、全国で約16 万4千人が避難していた(避難者数のピーク)

○原発事故から1年3か月後において、把握されているだけでも、原発から30km圏内の市町村人口※2の約53%にあたる約9万8千人、30km 圏外の市町村人口※3の約3%にあたる5万9千人が避難していた※4。

○原発事故から6年7月後(平成29 10 )においても、ピーク時の約3分の1にあたる約5万3千人が避難を継続している(30km 圏内の市町村が約3万5千人、30km 圏外の市町村が約1万8千人、合計約5万3千人)

【補足】令和2年9月現在の避難者数は、約3万7千人(福島県まとめ)

 

2 応急仮設住宅の供与終了後の避難継続や帰還の状況

本調査により全国の都道府県に照会したところ、避難指示区域外避難者に対する応急仮設住宅の供与終了(平成29 年3月31 )後も県外避難者の79.0%が福島県外に居住し、一方、福島県へ帰還したのは17.1%であった。避難者の多くは、家賃負担が生じても福島県外に居住を継続している。

  

3 避難指示区域解除後の避難継続や帰還の状況

 避難指示の解除は、平成 26 4 月の田村市都路地区を始めとして、順次進んできており、平成29 34 月には双葉町と大熊町を除く避難指示解除準備区域と居住制限区域が解除されている。

解除された市町村や地域における震災時人口に占める現住人口の割合は2%から25%程度であり、また、実際に帰還しているのは高齢者が中心との見方が多く、全体としては、帰還は進んではいないものと思われる。

  

4 新潟県内避難者等へのアンケート調査による避難生活の状況

(1)家族の分散居住状況

平均世帯人数は、全体で、震災前3.30 人から 2.66 人へ減少した。

単身世帯と二人世帯が増加し(計 震災前 32.4%→現在 50.2%)、3人以上世帯が減少した(計 震災前67.5%→現在49.9%)。

また、3世代同居世帯も大きく減少しており(震災前 15.3%→現在 6.4%)、避難の過程で家族が分散した状況が見られる。

※ 回答数:全体431(区域内187、区域外236

 

(2) 避難による住居形態の変化

避難により、持家率が半減 (避難指示区域内(以下「区域内」という。)は、避難前 62.6現在 31.6%、避難指示区域外(以下「区域外」という。)は、避難前 49.6現在 24.6%)し、特に区域外避難者は自費による賃貸住宅が過半を占めるなど、居 住形態の変化と家賃負担の増加が見られる。回答数:全体431(区域内187、区域外236

 

3)就業形態の変化

避難により、正規の職員(役員・管理職を含む)や自営業者・家族従事者が減少し、パート・アルバイトを含む非正規職員や無職が増加した。

区域内は無職が最多(避難前 18.6%→現在 50.0%)となり、区域外は非正規職員が最多(避難前20.9%→現在 34.5%)となったが、区域内外の違いは、賠償金や住宅支援の有無が影響しているものと見られる。

※ 回答数:全体624(区域内280、区域外330

 

(4) 収入・支出の変化

 避難により、毎月の平均世帯収入は 10.5 万円減少した(避難前36.7 万円→26.2万円)が、平均世帯支出は大きくは変化していない(避難前 26.2 万円→26.0 万円)。生活のやりくりは、勤労収入、預貯金、賠償金(区域内避難者)により行われている。

 

(5) 賠償制度に関する意識

 個人への精神的損害賠償の基準額は、帰還困難区域は 1,450 万円、居住制限区域 と避難指示解除準備区域は 850 万円である。一方、避難指示区域外からの避難者に 対しては、子どもと妊婦は 72 万円、それ以外の大人は 12 万円とされている。 東京電力は、既に総額約7兆5千億円(平成29 12 22 日現在)の賠償金を 支払っているが、本調査の避難者へのアンケートによると、賠償制度全体について 約3分の2(66.1%)が不満をもっており、特に区域外避難者の不満度は高い。

 ※ 回答数:全体431(区域内187、区域外236

 

(6) 被ばくに関する不安意識

 被ばくに関する将来の健康への影響に不安を持つ避難者が多数を占めており(不 安 54.3%、不安でない 26.1%)、また、結婚、出産など被ばくに関する差別・偏見が 不安としている避難者も多い(不安 56.9%、不安でない 17.5%)。不安の割合は、い ずれも区域外が区域内を上回っている。

回答数:全体624(区域内280、区域外330

 

(7) 避難による人間関係の変化

 長年の友人・知人との付き合いや、つながりが薄くなった避難者が多数を占めている(あてはまる71.3%、あてはまらない12.8%)。

また、避難元の近所や地域のつながりが薄くなった(あてはまる70.8%、あてはま らない 10.9%)、避難先では知り合いが少ないため孤独である(あてはまる 42.0%、あてはまらない 35.6%)、としている避難者も多い。あてはまる割合は、いずれも区域 内が区域外を上回っている。

回答数:全体624(区域内280、区域外330

 

(8) 児童生徒への影響

 本調査では、中学生と高校生にも避難生活に関する意識を聞いている。

避難先で「友達がたくさんできた 70.7%」、「学校が楽しい 66.7%」と前向きな回 答が多い一方で「学校になじめない 12.2%」、「友達が少ない 12.2%」との回答も あった。回答数:全体123(区域内36、区域外83

将来の不安については、「進学・就職」の不安(37.4)が不安でない(34.9%)を上 回り、質問した項目の中では不安意識が最も高い。回答数:全体123(区域内36、区域外83

福島県への帰還者と避難継続者の不安意識を比較すると、「結婚・出産」の不安 (帰還者40.0%、避難継続者 19.4)、「自分の健康」の不安(帰還者 46.7%、避難 継続者 26.2)であり、帰還者は、健康に関する不安意識が高いことがわかる。回答数:全体123(帰還者15、避難継続者103

  

5 まとめ

 福島第一原発事故による避難生活の全体像について現時点で言えることは、避難区域内外において一部相違が認められるものの、総じて震災から6年半以上がたっても生活再建のめどがたたず、長引く避難生活に様々な「喪失」や「分断」が生じ、震災前の社会生活や人間関係などを取り戻すことが容易でないことがうかがいしれる。

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