菅政権の「デジタル化」推進・考 ~③「行政デジタル化」の行き先
「行政のデジタル化」の行く先は、地方自治の破壊、憲法の否定に通じる・・・・以下の記事から学び、整理したメモ
「行政のデジタル化は何をもたらすか 塩川鉄也衆院議員に聞く」(20年12月に5回連載)
デジタル化と地方自治 白藤博行専修大教授にきく (2020/11/11、12)
「コロナ禍 地方自治体の展望は 自治体問題研究所理事長 京都橘大学教授 岡田知弘さんに聞く」(21年1月、2回)
~膨大な個人データを保有している地方自治体は、「デジタル化」をめぐり、福祉・人権と利権・監視とのたたかいの場となってる。
「行政のデジタル化」の行く先 地方自治の破壊
◆はじめに .国家目的優先~ 地方は“端末”
・9月、菅政権の発足 ~ ・デジタル庁の創設=規制改革の断行の「突破口」と位置付け ~菅政権の基本方針は、「われわれの目指す社会像は『自助・共助・公助、そして絆』」であり、「行政の縦割りや前例主義を打破して、既得権益にとらわれずに規制の改革を全力で進める」
→ 菅政権が進めようとしているデジタル化は、安倍政権のもとでの「Society(ソサエティ)5・0」~ 個人情報を含む膨大なデジタルデータの集積を前提として、それを解析するAI(人工知能)などの先端技術をあらゆる産業や生活に導入する社会(「超スマート社会」)の具体化政策
◎政府と財界一体
・経団連・・・これを「デジタル革新(DX)と多様な人々の想像力・創造力の融合によって価値創造と課題解決を図り、自ら創造していく社会」(「創造社会」)と再定義して、「全集中の呼吸」で後押し
⇔政府と財界が一体となった「未来社会像」の展開/「人間中心の社会」などという注釈がつけられているが、実態は別物。
・安倍政権末期の7月に閣議決定された「骨太方針2020」・・・「デジタルニューディール」の打ち出し
~「統合イノベーション戦略2020」 / 「国家間の覇権争いの中核」に位置する「新興技術によるイノベーション」に着目し、デジタル化の加速を宣言/その目的は、国家の「全体最適な経済社会構造」の構築
⇔ あくまでも、各国企業・政府間の技術覇権争いの中で、科学技術・イノベーション力を向上させることが主眼
◎「スマート自治体」の打ち出し 国の“端末化”
・安倍前政権時に、総務省は「自治体戦略2040構想」を公表~2040年を目標に逆算方式で「スマート自治体」~AI(人工知能)やロボティクス(省人化・無人化)の活用で現在の半分の公務員数で運営できる自治体つくるの、というもの
・2020年6月 地方制度調査会が答申~ 内容/コロナ禍の教訓をデジタル化の遅れに求め、マイナンバーなどを利用した個人情報の活用を経済成長につなげるため、デジタル化を一気に進めようというもの
⇔ そもそもコロナ禍の教訓/1990年代末からの「構造改革」・自治体合併、交付税の圧縮による保健所の統廃合や公務員の大幅削減で、必要な対応ができていないことにある。自然災害時も同じ。デジタル化には電気が必要、自然災害で停電した時には役に立たない
→ が、「答申」はこれらの問題を一切検証していない
★デジタル化の徹底 ⇔ 自治体行政は国のデジタルネットワークの“端末”となり下がる
→ 個別の自治体の情報が共通化・標準化・共有化・統合化されれば、すべての自治体・住民情報は国や広域自治体に吸い上げられ、個人情報などないに等しいものになる。
→ 国が定める標準仕様に準拠した情報システムの利用を求める「情報システムの標準化」は、個別の自治体が住民のために築いてきた独自の行政サービスを破壊し、団体自治を破壊する恐れがある
1 .自助優先の社会保障
●「デジタル庁」の新設 目的は何か
・デジタル庁の創設によって --- ▽国、自治体のシステムの統一・標準化 ▽マイナンバーカードの普及促進を進め、各種給付の迅速化やスマホによる行政手続きのオンライン化 ▽民間等のデジタル化支援とともに、オンライン診療やデジタル教育などの規制緩和―などをめざす
・通常国会は、多方面にわたる法改正を一括で行う法案を提出。IT基本法の抜本改定、来秋のデジタル庁設置を目指す
★個人データの国家管理進む ~「データ戦略」を策定
・デジタル化によって生み出された個人や産業の巨大なデータ(ビッグデータ)が「競争力の源泉である」として、成長戦略とするもの
→「国内最大のデータホルダー(保有者)である行政機関は最大のプレイヤー」と位置付け、行政のデジタル化によって個人データの利活用を推し進めようとするもの。安倍政権から引き継がれた路線
●行政のデジタル化、「デジタル・ガバメント(電子政府)」の問題点
・デジタル化によって個人データの管理を進め、社会保障費削減が狙い
・あらゆる分野でマイナンバーカードの公的個人認証やマイナポータルを利用することを目指している
~学校や職場等の健診結果を含む医療・介護の個人データ、国税還付・年金給付・各種給付金・緊急小口資金・被災者生活再建支援金・各種奨学金等の公金、障害者手帳や在留カード、各種免許・国家資格、学校教育における学習データなどを対象にしている。
・マイナンバーカードは、全国民が2022年度末までに取得することを目標とし、来年3月から健康保険証としての利用を開始、運転免許証との一体化も計画
~ 任意であるマイナンバーカード取得を、実質的に強制とする危険 /この結果、国民の所得や資産、さらに医療、教育など、個人を丸ごとスキャン(読み取り)した膨大なデータが政府に集中。国家による個人データの管理が進む
★最大の狙いは給付抑制徹底
・もともと財界の要求であった「共通番号」制度の導入の意図~ 各人が納めた税・保険料の額と、社会保障の給付額を比較できるようにし、「公正な給付と負担」の名で徹底した給付抑制を実行し、国の財政負担、大企業の税・保険料負担を削減していくことが最大の狙い
→社会保障を、納めた税・保険料に相当する“対価”を受けとるだけの仕組みに変質させ、「自助」が優先され「自己責任」に後退させるもの。
2. 情報集約 漏えいの危険
●個人情報の集約 プライバシー侵害の恐れ。
・マイナンバー制度~ 社会保障・税・災害対策の3分野についてのみ共通番号を導入 /情報漏えいやなりすましの防止のため、個人情報を一元管理せず、年金の情報は年金事務所、地方税の情報は市町村と、分散して管理
・が、法的に利用制限のかかるマイナンバーと、1対1の関係となっているマイナンバーカードの認証「発行番号」(法的利用制限なし)を利用して、情報をまとめ、官民共通で利用することを目指している。分散管理による安全対策を骨抜きにする脱法的やり方・マイナンバー制度を大本から変えることになる。
★本人知らぬ間 不利益使用も
①利便性の高さはセキュリティーレベルの低さと表裏一体 ~ドコモ口座の不正引き出し事件であらわに
マイナンバーカード~ 行政機関が「国内最大のデータホルダー(保有者)」/情報は集積されるほど利用価値が高まり、攻撃されやすくなる。情報漏えいを100%防ぐ完全なシステム構築は不可能で、一度、漏れた情報は流通・売買され、取り返しがつかない。
②これらの個人データが捜査機関へ照会されない保証はなく、監視社会へ導く危険もある
現在のIT(情報技術)社会では、国家や企業などに集積された個人データが、本人の知らないところでやりとりされ、プロファイリングやスコアリング(格付け)され、本人に不利益な使い方をされる懸念がある
* 19年、学生就職支援サイト「リクナビ」を運営するリクルートキャリア社が、就活生の閲覧履歴などから採用試験の合否を左右しかねない内定辞退率を勝手に算出し、採用企業に販売していた問題が発覚 ~ 成績優秀な学生が友人が内定が次々決まる中、一次で落とされつづけたという被害が発生
* 通販大手のアマゾンではAI(人工知能)を用いた人事採用システムが過去の傾向などから女性の求職者に不利な評価を行うといった差別が発覚
~ビッグデータやAIを利用して、個人にレッテルを貼り、信用力を点数化してサービスや取引から排除するといったことも行われています。プロファイリングやスコアリングが、個人の人生に大きな影響を与える事態を引き起こしている
★個人情報保護 ルール強化を ~ EUと比べても、極めてお粗末な現状
・ デジタル化の時代に相応しい個人情報保護のルールを強化する必要がある /が、極めて不十分
~ 政府は、私の質問に対し、リクナビ事件のような事例は起きないと答弁できなかった。
・日本の法律~ 、インターネット上に残る個人データの削除・消去、利用停止権(いわゆる「忘れられる権利」)の保障からは程遠く、EUの一般データ保護規則(GDPR)で保障されている「忘れられる権利」や「プロファイリング」に関する規程が明記されてない。
・個人情報の定義は狭く、閲覧履歴など端末情報も保護されてない。利用目的が公表されていれば本人に自覚がなくても同意したとみなされる。
★個人情報は、「個人の人格尊重の理念の下に慎重に取り扱われるべきもの」。プライバシーを守る権利は、憲法が保障する基本的人権/ どんな自己情報が集められているかを知り、不当に使われないよう関与する権利、自己情報コントロール権、情報の自己決定権を保障することが、いまこそ必要
3. 自治体のサービス低下
●行政手続きのデジタル化・オンライン化の問題点
デジタル化・オンライン化のみでは、多様で多面的な国民ニーズに応えられないということが問題
◆利用できぬ人 置いてきぼり /災害時に機能せず
・コロナ禍のもと給付金のデジタル申請をめぐって、さまざまな問題が起きた。政府が、遅れているマイナンバーカードの普及のために、制度上無理のあるオンライン申請を押し付けたことが混乱の原因。/また、原則デジタル申請とした持続化給付金で、手続きができない、遅れるなどという問題も
(即日で給付金を国民に届けたドイツは、共通番号制がない。納税者の権利を守る立場から、税の申告制をとっており、口座を通じた納税・還付を実施。その税申告のシステムを利用)
・災害時ではデジタルよりもアナログ手続きの方が安定的な手段に
デジタルの最大の弱点は、電源・電波と水没~ この間の災害時/電源の確保問題、情報通信機能のマヒ、自治体のサーバーの水没などが発生
・デジタル化の大前提はデジタル・デバイドの是正
が、政府の対応は、障害者や高齢者などデジタルを使いこなすことが困難な条件や環境にある人、経済的事情でIT機器が利用できない人などへの具体策はなし。/ サポートセンターなどでデジタルを習熟せよと求めるだけ
→ デジタル化に対応できない人/ 利便性を感じないどころか、従来の書面申請や、相談しながら申請を行う対面による窓口手続きがなくなり、利便性は後退し、行政サービスが低下することに
*コンビニなどでマイナンバーカード利用による住民票の写しの交付が可能となったことを理由に、窓口削減
(東京都北区は区民事務所7分室撤廃、東京都練馬区は17の出張所廃止)
*群馬県前橋市 移動困難者対策のタクシー運賃助成制度「マイタク」について、2022年度に紙の登録証と利用券を廃止し、マイナンバーカード利用へ完全移行する方針を発表/ マイナンバーカードを所持しない高齢者などの利用者を排除するもので、批判の声が上がっている。
◆対面サービス向上こそ必要
国には国民の命と暮らしを守る責任~ 「自助」「効率化」といって、その責任を放棄することは許されない
→ 多様で多面的な住民ニーズに応えるには、対面サービスの向上、住民の身近な窓口である自治体業務の拡充こそ求められている。
→ 自分の状態を的確に把握し、利用できる制度を的確に選択し、申請できる人は稀有 / そこを対話を通じて、真のニーズを把握し、福祉部門や他の機関につなくなど「窓口」は、自治体職員の総合力か求められるところ
/が、国、地方の公務員が減らされ続け、職務遂行に支障。災害やコロナ禍であらわに。
◆行政サービスの“多様化” ~ 団体自治の否定
・第32次地方制度調査会答申~ 今後の地方行政における「公共私の連携」「広域連携」の重要性を強調
⇔ 必ずしもいまの地方自治体が唯一の行政サービス提供主体である必要はないという発想が強くみられる
例) 医療や介護などの機能を最適に果たせるとみなされれば、そのサービス提供主体は、民間資本でも公共私混合主体でも広域行政体でも構わないということ
→ そのためには行政が持つ住民の個人情報を民間とも共有しやすくすることが必要 /それをデジタル化で推進する
→ これらは団体自治の否定、憲法が保障する地方自治の破壊につながる
◆福祉部門などギクエコノミーに置き換え
・自治体職員半減・・・そのため、保育や高齢者などの福祉現場でIT技術を活用し「シェアリングエコノミー」(インターネットを介して個人同士でモノや場所、技術などを取引するサービス)を使える環境整備を行う
例) ウーバーイーツ・・ポータルサイトで配達員を必要とする飲食店と空き時間を活用して所得を得たい人をマッチングさせて、注文してくれた人に商品を届ける仕組み。配達員は自営業者扱い(事故、病気も自前)。
・この仕組みを公共部門に拡大しようというもの ~公共サービスの担い手は、最低賃金も保障されない時間契約の請負業者に置き換え、新たな官製ワーキングプアが生む
*利用者にとっては、例えば保育現場では子どものアレルギー食の対応、高齢者施設では投薬といったきめ細かなケアが保障されるのかが危惧される。命に関わる問題。
4. 自治体を鋳型に収め、自治を否定
●システムの統一・標準化とは ---自治の本質にかかわる重大問題
・菅首相 、「2025年度末までに自治体の業務システムの統一・標準化を目指す」
~そのため政府は、複数の自治体の情報システムを集約し共同利用し標準化する「自治体クラウド」の導入を推進
◆標準化強要しサービス抑制
*富山県上市町 日本共産党町議の「3人目の子どもの国保税免除、65歳以上の重度障害者の医療費窓口負担免除」との提案に対し、町長が「自治体クラウドを採用しており、町独自のシステムのカスタマイズ(仕様変更)はできない」と答弁
→「自治体クラウド」によって、「システムに行政の仕事内容を合わせる」ことが目的となり、自治体独自のサービスは抑制へ
・システムの統一で情報共有がしやすくする? が、実際には情報抑制に
*コロナ感染情報の公表 /内閣官房のIT総合戦略室が統一化を図ろうと、東京都のコロナ情報サイトのシステムを各道府県に押し付け。が、公開情報が少ない東京モデルを受け入れず、各道府県は別サイトでも情報を公開
→ 政府は、「個人保護条例が厳しい自治体があるため、政府のシステムに乗らない」と、条例の統一化も狙っている
★自治体への統一・標準化の押し付け~ サービス低下、地方自治の多様性否定、自治体の自立性を破壊
→ 「住民の福祉の増進を図ることを基本」とした地方自治体の住民自治・団体自治を侵害するもの
・コネクテッド・ワンストップの推進~引っ越しや死亡の際、民間を含め、複数の手続き・サービスを一括で実現させる仕組み
が、決められたメニューから利用者がサービスを選ぶことになり、選択肢が減り、一概に利便性が向上するとは言えない。
◆自治体の個人情報保護が障害
・自治体の個人情報保護条例の存在を敵視・・・社会全体のデジタル化を推進したい者にとっては、各自治体が、外部のコンピューターとの結合を原則禁止とするなどした個人情報保護条例が障害
~政府は、個人情報保護法に一体化し、この法の解釈権限を、例えば国の個人情報保護委員会等に一元化しようと発想
◆自治体丸ごとデジタル化の実験=スーパーシティ構想
~ 「改正」国家戦略特区法に基づいて指定された区域では、データ基盤整備事業を担う民間事業者は国や自治体のデータを要求することが可能に / 行政保有の個人情報は容易に民間事業者に流れることになる
→ 個人情報保護の問題が喫緊の課題(EUのような「忘れ去られる権利」「プロファイリング禁止」の法制度が確立)
★すべての問題は「デジタル集権化」に行きつく~ 国や大企業が個人から情報を吸い上げ、管理統制を強めていくようなデジタル化・・・暮らしも地方自治も破壊。/ ・デジタル化での利便性の向上・・・個人の尊厳、プライバシーを守る仕組みがないと身も凍えるような行政になりかねない。
~個人情報が民間企業等に不用意に流れないように、そして個人情報を自己コントロールできるようにすることが不可欠
★国が地方をリモートするデジタル化ではなく、地方が国をリモートすることができる「情報主権・デジタル主権」の確立が必要→ そのためには、地方自治体が自治の砦となって住民を守る。住民は自分たちのことを自治体と一緒になって考え、行動する。それが本来の住民自治
5.特定企業の利益重視
●デジタル庁-- 官邸直結の司令塔機能を設置し、財界・特定企業の利益重視へ向かう
・安倍政権下 /個人情報の利活用を進め、個人情報をもうけの種にした「ビッグデータ利活用」を成長戦略に掲げ、行政手続きや業務のオンライン利用の原則化、国や自治体保有の個人情報を民間企業が活用できるようにしてきた (財界の要求にもとづく「官民データ活用推進基本法」はその柱の1つ)
→ 菅首相がいう「改革」/ この間、官邸機能強化を最大限に活用した財界・特定企業の要求に応えた「改革」。
◆権限・業務…徐々に明らか 民間から大量登用
・検討中のデジタル庁の権限・業務 ~ 政府はなかなか公表せず
・報道では・・・ デジタル庁は、「強力な司令塔機能を有し、官民を問わず能力の高い人材が集まり、社会全体のデジタル化をリードする強力な組織とする」
~平井デジタル改革担当相 「民間人材の登用」を主張。デジタル庁設置準備室にも民間から12人採用。デジタル庁の体制は、500人のうち100~150人を民間から登用、事務次官級の「デジタル監」も民間から起用する方針、と報道
◆癒着排除必要 政治の転換を
・デジタル庁による国の情報システム統合にり、2025年度までに運用経費などを3割削減する、と主張
→が、ICT化する業務が増えれば、関連予算増加は当然のこと/この5年間、情報システム関係予算は増加/各省庁のIT・情報システム予算は、今年度から順次内閣官房のIT総合戦略室(IT室)が予算査定から執行段階まで一元的に管理することに。デジタル庁発足前から、すでにIT室が予算配分・執行に直接口出しできるようになってる。
★官民癒着の観点から見る~ 現在のIT室は、約半数の76人が民間企業出身の非常勤職員
・私の追及に対し、政府答弁・・・これらの職員は、出身企業からの在在籍出向、給与補てんを否定せず
→ 民間企業の社員が、非常勤の国家公務員として、直接、政府のデジタル政策策定に関与。予算配分にまで関与 /一部大企業は「IT特需」にわき、国民には負担がのしかかり続けるということ。
★デジタル庁になれば、その弊害はさらに拡大。 政治の転換が必要
~菅政権と総務省、放送業界、NTTとの底なしの癒着事件を見ても、すでにその危険は顕在化している
◆国会審議なし強力な支配も
・急ピッチでの推進~が、デジタル化をどのような機能・権限を構築していくのか、設計の段階が極めて重要~特にデジタル技術は強力な支配をもたらす懸念
*デジタルコンテンツの違法コピーを防止策の例・・・複製を不可能とするプログラムをメディアに埋め込めばいいとなり、著作権法は実質不要となる/が、複製を拒むプログラムは、著作権法上合法な私的複製まで不可能に
→ 国会審議を通じて行われる立法過程を飛ばして、システム設計によって、法的に認められている権利まで制約する、法を超えることを可能にする、という危険性
まとめ . 今こそ憲法生かす政治へ
・スーパーシティ法(改定国家戦略特区法/昨年成立)~自治体が持つ個人情報を民間企業に渡し、情報化都市をつくる
~国が支援するハードとソフト事業によって情報系企業の利益が確実に保障される/ 一方、住民は生活全てを監視される
例) ある人が交通カードを使いどこで電車に乗りどの店で何を食べたか、病歴や銀行取引状況など、全てマイナンバーカード等で把握・監視されることに (利用制限のない電子認証の「発行番号」であらゆる情報をひもづけ)
★国・・デジタル化で個人情報を収集でき、地方自治体を「国の出先化」させ、団体自治、住民自治の毀損させる
◆SDGsとの関係
・財界の提言~自治体がもつ個人情報の活用、行政サービスを民間企業が担う「超スマート社会」「Society5・0」を進めよ
→が、これだけを前面に押し出すと合意が得にくいので「持続可能な地域や都市をつくる」「環境や貧困、医療・福祉の持続」のためのSDGsと言って、正当化をはかっている →SDGsの17番目の目標・・・「パートナーシップで」目標達成に取り組むとして、官民連携を掲げている
→ 貧困や環境問題を引き起こした多国籍企業がビジネスチャンスとして推進主体になるもので、注意が必要
★ SDGsには一見良いことが書かれている/が、どんな主体がどのように取り組み、私益ではなく「住民福祉の増進」が実際に実現できるかどうか、政策ごとの検証が必要
◆地方から国へ
・和歌山県 国の言いなりでなく、保健所統廃合をほとんど実施せず/昨春、日本で最初の病院クラスターが発生した際、PCR検査を県独自の判断で大規模に実施し、早期に収束させた。
・東京・世田谷区 区独自に財源を確保しPCRの社会的検査を大規模に実施。国と都にも支援を求め、国の補助が実現し他の自治体も活用
⇔ 「地方から国へ」の流れ~1970年代の公害対策の拡充に通じる
・・・三重県四日市 ぜんそくが発生した当時は「謎の風土病」と言われた/研究者らが原因はコンビナート企業からの排出ガスだと突き止め/さらに医師会や自治会から無料診断、医療費救済の要望が出さ/保守市政だが、住民運動の高まりにより、市長も現場の声に耳を傾けざるを得なくなり、市独自の公害被害者の救済制度を実施 / さらに全国市長会と連携して国と交渉し、公害対策基本法、患者救済・補償が実現 / 革新自治体が広がった時期と重なる。
~この一連の過程と世田谷区などの動きはとてもよく似ている。
★コロナ禍で苦しむ住民の課題の解決・・・住民に最も身近な自治体の現場しかない/そこで創意工夫して制度をつくり全国に普及する。そして、国が法制度を大きく変えるという流れは歴史の必然
→ 明治憲法には「地方自治」条項はない。戦前の都道府県や市町村は、中央集権体制のもとで国の出先機関であり、戦争動員機関/ 現政権が目指している方向も、「情報化」によって自治体を国の出先にするもの
→ これでは住民の命も生活も守れない。
・日本国憲法における地方自治・・・主権者である住民が抱える課題を解決し、福祉を向上させることが最大の目的
~「今こそ憲法を生かす政治に転換できる時機。住民や公務員、地方議員、首長の皆さんには、国の動きだけでなく、足元の地域をよく見てほしい。その中に必ず困難を突破できるヒントがあります。」(岡田知宏教授)
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