菅政権の「デジタル化」推進・考 ~ ②究極の新自由主義
コロナ危機で、明らかになった新自由主義の破たん。が、自公政権・財界は、給付金支給のドダバタ、テレワークの拡大など踏み台に資、デジタル化による新自由主義のさらなる推進に使おうとしている。
今回は、デジタル化の全体像について、「デジタル化の落とし穴」「デジタル化と新自由主義」など昨年9月、10月の赤旗連載を軸に、他の資料などを追加したメモ。
【デジタル化の落とし穴】
(1) 官邸・財界 歩調合わせ
・国民生活を支える形で進めば利便性が高まるデジタル化。/が、菅政権が進めるデジタル化には、多くの問題点
⇔9月16日、首相就任日、「デジタル庁」新設、を強調(竹中平蔵が「マイナンバーデジタル庁」を提案していた)
・政府9/23 デジタル改革関係閣僚会議の開催・・・コロナ禍で浮き彫りになったデジタル化への課題(6分野)を提示
→「経済・生活」…サプライチェーンの一部断絶、飲食店などの休業/「働き方」…テレワーク増加/「教育」・・・全国的な学校の臨時休業/「行政」・・・給付金支給など申請の膨大化/「医療」・・・現場要員の不足/「防災」・・・自治体など現場の負担増
◆個人情報集め
・これらの課題は、それぞれ具体的な対策が求められる問題/が、「行政の縦割りを打破するデジタル施策を展開」で、課題が解決すると描き/その中心施策は、国民の不安・不信で普及が進まないマイナンバーカード活用
→麻生財務相 「安全性を取ろうとすると利便性が下がる、利便性が下がると国民は使わない」(同会議)と率直に指摘
・政府 情報漏えい防止策として「生体認証」まで検討。国民の個人情報を吸い上げようとしている
→が、国民に知られたくない情報を改ざん、廃棄してきたのが自公政府/狙いは国民監視と国家の情報の隠蔽の横行
◆中央集権型で
・同会議・・・学校・医療等のオンライン化、各府省、地域でバラバラになっている情報システムの標準化・共通化
地方自治体のシステムを標準化・共通化→ 地方の独自性や多様性が奪われ、画一化、中央集権化が進む危険
・9/30 デジタル庁創設に向け、内閣官房IT総合戦略室内に「デジタル改革関連法案準備室」を設置~準備室には、民間からも約10人が加わる予定、各省庁からの約50人と合わせ60人規模
→平井卓也デジタル改革担当相 9/30 経団連会長と会談、人材面での協力を要請 /経団連側・・・強力な司令塔が国・地方のデジタル化を一体的に推進するよう要望
・経団連 9/23、「デジタル庁」に関する緊急提言を発表/デジタル技術で社会のあり方を変えるデジタルトランスフォーメーション(DX)をけん引する司令塔になる組織を設置することを求めた。具体的には、国・地方のデジタル政策を一元的に企画立案する組織を内閣官房に設置し、システムの企画・開発などを担う「デジタル庁」を内閣府に設置することである。
*官邸・財界が歩調を合わせた中央集権型のデジタル化を推進
(2) 安全対策あとまわし
・電子決済サービスを通じて、銀行口座から不正に出金される事件が相次ぐ
~被害が確認されている決済サービス・・・ドコモ口座の他、ペイペイ、メルペイ、ラインペイなど幅広く、不正に出金された銀行もゆうちょ銀行の他、りそな銀行、多数の地方銀行、イオン銀行などに拡大。
→ 政府が掲げるキャッシュレス化の促進が国民の財産を危険にさらしている。
◆持たない人も 今回の事件が深刻さ
・スマホを所有せず、電子決済サービスを利用しない人でも、銀行口座をもってさえいれば被害にあってしまうこと
~ 電子決済サービス・・・連携したクレジットカードや銀行口座、コンビニのレジなどから、専用ソフトを導入したスマートフォンに入金し、店舗での買い物の際や他の口座に対して出金できる機能のこと
・今回は銀行のインターネットサービス機能を通じて入金するしくみが悪用された・・・・銀行の口座番号や名義人、暗証番号など預金者情報を入手した第三者が本人になりすまして電子決済サービスに登録。銀行口座からお金を引き出した模様
・事件が明るみに出たきっかけ/ 9月初め頃からインターネット上の交流サイトで自分の保持する銀行口座からドコモ口座への不正出金の疑いを報告する投稿が相次いだこと
→ 9月5日以降、NTTドコモはドコモ口座への銀行口座登録・変更を順次停止。5日現在、全提携銀行で停止/一部の銀行に対しては入金機能も停止。ドコモ口座での被害は1日現在、238件、被害総額は2904万円。
・金融機関の被害(判明分) ゆうちょ銀行が最多。同銀行で、ドコモ口座だけでなくメルペイやペイペイなど多くの電子決済サービスで発生/ 同銀行によると9月24日現在、被害は383件。うち210件、総額4940万円については10月2日までに全額補償手続きを終えたとのこと。 4日には自行のキャッシュレスサービス「mijica(ミヂカ)」カードの専用サイトに不正アクセスがあり、氏名や生年月日、カード番号など1422人分の顧客の個人情報が流出した疑いがあると発表
*両者に共通するのは安全対策の甘さ
→ドコモ口座の場合、メルアドの入力だけで口座開設ができ、本人確認が不十分
→ゆうちょ銀行の場合 電子決済を登録する際、口座番号や名義、カード暗証番号などの情報だけで認証可能。加えて開設口座数の多さが被害を広げました。
★大門実紀史議員 11月19日 参院財政金融委員会 /IT企業が中心の経済団体である「新経済連盟」が本人確認の簡易化を求め、同連盟からの献金も受ける平井卓也デジタル改革担当相らが推進してきたと指摘。デジタル最優先の菅内閣で「利用者保護がますます置いてきぼりになるのではないか」として利用者保護を強く要求。
麻生太郎財務相は「利用者保護の観点から今後十分な対応をしてまいりたい」と答弁
◆政府前のめり
・安倍前政権はキャッシュレス化を促進~ 19年10月に消費税10%を強行する際、「増税対策」としてキャッシュレスでの支払い時のポイント還元まで導入して普及を図つた。
・14年に閣議決定された改訂版の「日本再興戦略」・・・「キャッシュレス決済の普及」を明記
・17年の「未来投資戦略」 当時21%だったキャッシュレス決済比率を27年6月までに4割程度に引き上げる目標を掲げる/その後目標は25年までと2年繰り上げ (19年26・8%)
*政府が前のめりに推進 / 安全性が軽視して、されているとしたら看過できない。
不正出金があったドコモ口座を提供するNTTドコモの丸山誠治副社長は本人確認の甘さについて 9/11記者会見で「提供範囲を広げるため、(認証などを)簡易な手段にしていた」
→ 電子決済サービスが乱立し、競争が激化するもとで安全性がないがしろにされることは許されない
★情報漏洩 日本の人口の約7割分
東京商工リサーチ /2019年に個人情報の漏えい・紛失事故を公表した上場企業とその子会社は66社、事故件数は86件でした。漏えいした個人情報は903万1734人分。同社が調査を開始した12年から19年の累計では372社、685件。
漏えい・紛失した個人情報は累計で8889万人分、約3700社の上場企業数の約1割が個人情報の漏えい事故を起こした。
★2020年版情報通信白書 企業などが提供するサービスやアプリケーションを利用する際に、個人データを提供することについて8割が「不安を感じる」と回答
(3) 資本主義下の「封建制」】
インターネット通販大手・楽天/「楽天市場」に出店する事業者に対し、不利益となる規約変更を繰り返してきた。
「まるで悪徳地主ですよ」(出店業者でつくる楽天ユニオンの勝又勇輝代表) /手数料の引き上げ、罰金制度の導入と恣意(しい)的運用、「送料無料」の強要。楽天の規約変更で利益を削られ、苦境に陥る出店業者が続出。楽天ユニオンは公正取引委員会に是正を求めている。
◆業者負担強要 「デジタル封建制」
・世界最大のネット通販企業アマゾン/ 優越的な地位を利用して、日本の商品納入業者から巨額の金銭を搾り取ってきた
⇔ 公取委の公表(9/10)「アマゾンジャパン合同会社から申請があった確約計画の認定について」により、いかにしてアマゾンが業者に負担を強いてきたかが明らかに
《 独占禁止法違反の疑いがあるアマゾンの行為》
○仕入れた商品の販売でアマゾン側が目標の利益を得られない場合、商品納入業者に金銭を提供させる。
○商品の情報を掲載するサービスの対価として商品納入業者に金銭を負担させながら、情報掲載サービスを提供しない。
○アマゾンの設備投資に対する「協賛金」などの名目で、合理的な範囲を超えた金銭を商品納入業者に負担させていた。
○「過剰な在庫」とアマゾン側が判断したら、商品納入業者の同意を得ず、損失補償もせずに、商品を納入業者に返品。
○業者がアマゾンに納入する商品の価格を値下げする場合、アマゾンは自社が抱えるその商品の在庫数に値下げ額を乗じた金銭を、自動的に納入業者に負担させるシステムをつくっていた。
→ 公取委は今年7月、独占禁止法違反(優越的地位の乱用)の疑いがあるとアマゾンに通知。協議の結果、アマゾンはこれらの行為をやめ、商品納入業者に返金するなどの計画を公取委に提出しました。返金対象は、2017年以降3年間の取引とし、現時点で約1400社に約20億円が返金される見込み /ただし、「アマゾンが自主的に調べてつくった返金計画なので、漏れが生じている可能性はある」(公取委)
・ネット通販やネット広告など、デジタル経済の基盤を握る巨大IT企業(プラットフォーマー)
→ 自らの利益になるように取引のルールを定め、消費者と事業者に押し付ける権力を持つ/顧客を囲い込んで専制的に支配し、金銭や個人情報を吸い上げて利益を増やす様態は「デジタル封建制」とも呼ばれている。
・業者の悲痛な訴えを受け、5月に国会で「デジタルプラットフォーム透明化・公正化法」が成立/ネット通販とアプリストアの分野を念頭に、プラットフォーマーを規制する枠組みを構築。取引条件の開示や国への定期報告を義務付け
*米国 その独占状態が大問題となり、下院司法委員会は、巨大IT企業が独占的な地位を利用して適正な競争を妨げているとして、事業の分割も視野に規制を強化するよう求める報告書をまとめた/司法省は独占禁止法違反でグーグルを提訴
◆課徴金上げよ
日本共産党の岩渕友参院議員・・・新たな規制の意義を認めつつ、「より実効性のある規制」が必要だと主張。▽自社商品を有利に表示する▽取引条件を変更して業者に不利益を強いる―などのプラットフォーマーの行為を禁止し、課徴金を引き上げる修正を提案。
・楽天ユニオンの勝又代表 「違法の疑いを公取委に指摘されても、少し返金すれば済むということになったら、プラットフォーマーは自制しません。具体的な禁止事項を法律で定め、課徴金を引き上げて抑止してほしい」
*巨大IT企業の権力に実効性のある規制を課さないまま、国がネット通販など経済社会の「デジタル化」を後押しすれば、ますます多くの中小零細業者が不利な立場に陥る恐れがある。
★巨大IT企業規制 米国、EUの動き
・グーグル 米国10州が 20年12は16日 反トラスト法(独禁法)違反で提訴~企業の合併・買収(M&A)を通じてデジタル広告事業で圧倒的なシェアを握り、公正な競争を妨げた /10月にも司法省と11州が訴え~自社の検索エンジンをスマートフォンに標準搭載させ、他社製品を排除して競争を歪めた。
・フェイスブック 12月9日 企業の公正な取引を監督する連邦取引委員会と州当局が訴え~写真共有アプリ「インスタグラム」や対話アプリ「ワッツアップ」を買収したのは市場を独占するためだったとして事業の売却を求めた
・アップルやアマゾンも当局に取り調べを受け、本拠地である米国でGAFAの支配にメスが入りつつある。
・EUの執行機関、欧州委員会 12月15日、GAFAを念頭に包括的な規制法案をまとめ、欧州議会などで審議される
~「デジタル市場法」「デジタルサービス法」2本の新法の制定/ 違法行為を厳罰で取り締まるもの。
・市場法案・・・巨大IT企業が自社サイトで自社サービスを優遇して他社を締め出す行為などを禁止し、違反には世界売上高の最大10%の罰金を科す。事業分割を命じることもできる。す。
・サービス法案・・・SNSでのヘイトスピーチや児童ポルノなど違法なコンテンツの削除を事業者に義務づけ、違反した場合は世界売上高の最大6%の罰金を科す。
~日本としても学ぶべき内容!
(4)「デジタル日雇い労働」の拡大
・インターネットの普及に伴い、個人で仕事をして報酬を得るクラウドワーカーが急増
→インターネットの職業仲介サイトを通じて、仕事を受注・納品/高度な専門スキルをもった専業者から、隙間時間に単発で仕事を請け負う兼業者まで、その規模は多種多様
・雇用のデジタル化は働き方を「進化」させるものではなく、「退化」させ得る危険性をはらんでいる
◆脆弱な法体制
・事業主(企業)と直接仕事を取引する「雇用類似就業者」、約170万人/、「雇用関係によらない」新たな労働形態として、政府・財界がさらなる拡大を狙っている。
典型例 食品の宅配代行サービス・ウーバーイーツの配達員/都心では、コロナ危機の下、日々の生活費を稼ぐための「緊急避難」として配達員になる人が増加/ ウーバーイーツの配達業は時間や空間に縛られない自由な働き方といわれるが、労働者を保護するための法制度は極めて脆弱(ぜいじゃく)。
・日本共産党の笠井亮議員 2月の衆院予算委員会 配達員の過酷な労働実態を取り上げ、働き手の権利を保障を迫った
~ウーバーイーツの配達員は運営会社と雇用関係のない個人事業主で、配達員が事故にあっても労災保険が適用されない。最低賃金の規定もなく、配達待ち時間は無報酬。配達員の大学生が自転車で配送中に交通事故で死亡も発生
◆19世紀型労働
・日本の財界 コロナ危機をテコに、雇用形態をより柔軟にするという口実で、労働者保護を強化しないよう政府に圧力
⇔ 経団連 今年1月に発表した「経営労働政策特別委員会報告」(経労委報告)/「雇用類似の働き方は、多様な就労ニーズをもった働き手が自由な意思に基づき選択するものであり、過度な規制とならないような配慮が求められる」として、報酬額の適正化や労災保険の適用に否定的な考えを示す。
・政府 今年の「骨太の方針」/「多様で柔軟な働き方を労働者が自由に選択できるような環境を整備」する
★国際労働機関(ILO)/クラウドワーカーのような働き方を「デジタル日雇い労働者」と呼び、その在り方に懸念を表明。「デジタル経済」の普及により、労働者へのむき出しの搾取が横行していた19世紀型の「労働慣行を再現」する恐れがあると警鐘
⇔ デジタル労働の賃金は時に最低賃金を下回るほど「劣悪」な上、「不正な処遇を是正する仕組み」は設けられてない。「デジタル経済」が、地域格差およびジェンダー格差を拡大する恐れがあると警告。
(5) 究極の新自由主義
・「デジタル社会に不可欠」 ---と菅政権が位置づけて普及を促してるのがマイナンバーカード / 来年3月から健康保険証としての利用を始め(当初、任意利用)、2年半後にほぼ国民全員に行き渡らせたいと表明。
◆真の思惑 ・・・ 利便性の「向上」というが
・行政のもとに集まる大量の個人情報を一括して把握し、大企業の利益のために活用すること
・マイナンバー/日本に住民票を持つすべての人に割りふられる12桁の番号/社会保障、税、災害対策の3分野で複数の行政機関が持つ個人情報を名寄せし、同一人物の情報であることを確認するために使用
⇔ 分野横断的な共通番号の導入により、行政は「個人の特定を確実かつ迅速に行うことが可能」(総務省)になった。
・政府 マイナンバー制度の利用範囲のとめどない拡大をもくろんでいる
~ 預貯金口座とのひもづけや、児童生徒の健診情報・学習履歴の蓄積まで検討。個人の生涯を丸ごと記録し集中
→この個人情報のビジネス利用をたくらむ/経団連「デジタル技術とデータの活用が進むことによって、社会・産業・生活のあり方が根本から革命的に変わる」と主張。医療分野では「マイナポータル(行政機関が持つ個人情報を確認できる政府のオンラインサービス)に蓄積される医療データ、事業主健診データ等のデータを、民間PHR(パーソナル・ヘルス・レコード)を通じて活用できる仕組みを早急に整備する」よう政府に求めている。
・PHR 個人の健康・医療情報を蓄積し、本人と医療従事者が活用する仕組み。政府と民間企業の双方が整備を進めている
→ 公的PHRはマイナンバーカードの健康保険証利用と一体で進められ、(1)生活習慣病予防のための特定健診(2)医師の処方を受けた薬剤(3)手術・移植(4)透析―などの情報が蓄積される計画です。学校健診や事業主健診、電子カルテの情報の蓄積も検討
《学習記録、学校健診のデータ蓄積》 12/11第6回WG報告
・GIGAスクール構想で注目されている学習履歴(スタディ・ログ)の活用などに必要な学習者IDをマイナンバーにひも付け、2023年度から希望する家庭や学校で利用できるようにする
・学校健康診断の結果 2022年度を目途にマイナンバーで管理し、生涯にわたる健康情報を本人が把握するパーソナル・ヘルス・レコード(PHR)に活用する
◆医療抑制狙う
・経団連/国民がマイナポータルなどから得る健康・医療情報を、「本人の意思」に基づいて民間PHR事業者のもとに集め、「新たなサービスや医薬品の開発」に利用する考え /一例としてあげている中国の「健康スコア」・・・個人の病歴や生活習慣を100点満点で評価するシステム。健康の自己責任論を強めて医療費を抑制する意図が透ける。
・政府 公的PHRの情報を民間PHR事業者に「利活用」させる仕組みを検討中/
→ 民間企業が膨大な個人情報を収集して利益のために使えば、深刻な差別や排除を引き起こす恐れがある
★もともと経団連が税と社会保障に共通する番号制度の導入を求めたのは、社会保障給付を縮小して企業の負担を減らすためだった/ 個人ごとの給付と負担の情報を総合的に把握し、「社会保障個人会計」を導入することを提唱してきた。
→ 「社会保障の各制度から同じような趣旨で行われている給付を合理化する」「個人ごとに給付と負担を把握して、運営上、こうした重複給付をチェックし、効率的な給付を行おう」「社会保障受給額(特に年金給付)のうち本人以外が負担した社会保険料相当分と相続財産との間で調整を行なう仕組みも検討すべきである」(04年「社会保障制度等の一体的改革に向けて」)
*必要に応じて給付するという社会保障の原理を否定/負担と給付の等価交換という市場原理に置き換える狙い/マイナンバー制度の拡大は、社会保障全体を「自助」の制度に変質させる、究極の新自由主義と結びついている
( メモ者 政府が、マイナンバーカードにこだわるのは、カードの持つ電子認証機能を利用するための「発行番号」が欲しいから。これは、マイナンバーと一対一の関係で突合できる。マイナンバーは、法律で利用制限がかけられているが、発行番号は、事実上野放しであり、この「発行番号」を使って、官民での利用できるプラットホームを形成しようとしている。
【「マイナンバーカード」固執~ 利用制限なし 電子証明証の「発行番号」がカギ 2021/01】 )
http://wajin.air-nifty.com/jcp/2021/01/post-30fd23.html
(以上 20年10月の赤旗連載記事からのメモ)
【デジタル化と新自由主義】
・新型コロナウイルス感染拡大が社会の意識に大きな変化を生み出している/特に強調されているのが、多様性の認め合いを前提にした国際的な協力・協調
→新自由主義の経済政策を各国に押し付けてきたIMFも「この医療的・経済的危機とのたたかいには強固な多国間協調が求められる」(10月の「世界経済見通し」)
・コロナ禍の日本 「自助」を強調する菅政権が誕生、その金看板は「デジタル化の推進」
→ 菅政権の「デジタル化」の狙い/ 社会全体の画一化・統一化
~菅首相(9/23デジタル改革関係閣僚会議)「行政の縦割りを打破し、大胆に規制改革を断行」して「国、自治体のシステムの統一・標準化を行う」と号令
・インターネットの操作は、データの出入力・管理などのさい、自らの責任が強く求められる/そのためデジタル化の進行は、「自己責任」を求める新自由主義と相性がいい
・経団連/デジタル政策を一元的に企画立案する内閣デジタル局を内閣官房に設置、中央省庁システムおよび地方公共団体に提供するシステムの企画立案・開発を一元的に行うデジタル庁を内閣府に設置を求め、さらに「行政各部に対する指揮命令権を持つようにすることが必要である」としている
*企業のもうけ本位にデジタル化が進めば、格差がさらに拡大し、社会的排除や差別などのひずみが大きくなる
→ 一握りの大企業のために官邸機能を強化し、画一化・統一化を求める動きは、国際社会が求める方向にも逆行
(赤旗 2020/10/20)
■デジタル化の暗黒面 格差、紛争資源
・世界経済フォーラムのHP掲載のレポートがデジタル化が引き起こす負の側面を指摘
「デジタル化における負の側面―その解決方法」と題したリポート/、「デジタル革命は、私たちの生活や、人との交流の仕方に変化をもたらしていますが、それは持続可能でも公平でもありません」
・問題1 格差の拡大~ デジタル経済での成功は、携帯電話やワイヤレス接続の数ではなく、インフラ、コード、データの所有権によって決まる、とリポートはずばり指摘
→ 北米、西ヨーロッパ、東アジアの富裕国に、世界のデータセンターの90%以上が存在。一方、ラテンアメリカやアフリカの国々のデータセンターは、世界全体の2%以下。世界最大規模のデジタルプラットフォームにおいては、株式の時価総額の90%以上を米国と中国の2カ国が保有。
⇔その結果、一部の国、企業、分野が、他の国よりもはるかに多くデジタル化による恩恵を受けている。デジタル経済の利益配当が均等に分配されない構造問題がここにある
・問題2 環境破壊やエネルギー問題~ ハードウエアに組み込む希少金属などを世界中で物色(メモ者 紛争資源問題)。頻繁なモデルチェンジによる大量の廃棄物の発生。さらには、消費する電力量の拡大―など。
*米国では、IT巨人の独占化が問題となり司法省は独占禁止法違反でグーグルを提訴/ が、日本 経済財政諮問会議の民間議員「デジタル化にそぐわない規制の改革」を要求~ダークサイドを無視した改革に危機が迫る。
(赤旗 20/10/27)
■もう一つの暗黒面 広がるセキュリティー脅威
・デジタル化社会の進展 ⇔ 個人情報の漏えいなど安全性の問題の増加
・20/11末 原子力規制委員会のシステムに不正接続/20/12 ゲーム大手カプコン、三菱電機から社内情報が流出
・原子力規制委員会への不正接続 10月27日に発覚/当初、規制委は情報が漏えいした形跡はないとしていたが、その後の調査で非公開資料が閲覧された可能性がある/規制委は30日時点で安全確保のため、外部との連絡に電子メールは使わず、電話やファクスで行っている。
◆身代金要求型
・カプコンの発表 2日未明、同社の社内システムに接続障害が発生。コンピューターウイルスの一種、ランサムウェアによる攻撃だと発覚
・ ランサムウェアとは身代金要求型ウイルス /感染したコンピューター内部のデータを暗号化するなど所有者からの接続やデータ利用を制限するというもの。そのうえで制限解除するための身代金を要求する画面を表示
・元従業員の名前や住所など個人情報、顧客や株主・同社関係者の氏名や住所、電話番号など35万件を超える個人情報も流出した可能性/ 「Ragnar Locker(ラグナロッカー)」を名乗る集団からの身代金要求を確認、警察に通報。同社は金銭要求には応じなかったとのこと。11日には犯罪者集団が盗んだ情報の一部をインターネット上に公開。
◆クラウドサービス(インターネットを利用した情報共有サービス()から流出
・20日には三菱電機が自社利用のクラウドサービスに外部からの不正接続があり、取引先の金融機関口座など8635件が流出したと発表/。
・昨年6月にも同社の社内ネットワークに外部から不正接続/当初は採用応募者や従業員の個人情報などが流出した可能性はあるものの、「社会インフラに関する機微な情報」の流出はないとしていたが、今年2月にも防衛省の指定した「注意情報」が流出した可能性があると発表。
◆脆弱性を利用
・「情報セキュリティ10大脅威」の2020年版 /情報処理推進機構(IPA)(経産相が所管の独立行政法人)の公表資料
《個人向けの脅威》
1位 「スマホ決済の不正利用」、
2位は「フィッシングによる個人情報の詐取」・・・フィッシング詐欺とは有名企業を装った電子メールを送信し、偽のホームページに誘導することで、個人情報を盗み取るオンライン詐欺、
3位 クレジットカード情報の不正利用。
《組織向け》
1位 「標的型攻撃による機密情報の窃取」・・・悪意あるメールやホームページにアクセスすることでコンピューターにウイルスを仕込まれるというもの。このウイルスがコンピューター内の情報を流出させるとともに、ネットワークを通じて他のコンピューターにも感染と被害を広げる
カプコンの「ランサムウェアによる被害」は5位。
★これらの攻撃はコンピューターシステムの脆弱(ぜいじゃく)性を利用したもの/ IPAは多くの攻撃に対し、「情報リテラシーや情報モラルの向上」を対策にあげている。さらにIPAは「サイバー攻撃の脅威は、常に進化し続けて」いると指摘し、「定期的に脅威と対策の検討を見直す」ことが必要だとよびかけている。
(メモ者 この脆弱性は、軍事面から、核兵器廃絶の「理由」ともなっている。)
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