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実施差押え禁止債権の強制徴収~ 宮城県と大崎市 全額返還・徴税業務改善で和解  仙台地裁

【滞納処分に関する仙台地方裁判所における和解に対する会長談話  日弁連1/7

https://www.nichibenren.or.jp/document/statement/year/2021/210107.html

【滞納税強制徴収で和解 宮城県と大崎市、原告女性に解決金支払い 河北新報1/7

https://kahoku.news/articles/20210107khn000021.html

 

1月6日、仙台地方裁判所 和解が成立

・宮城県及び大崎市が、税滞納者に対し、預貯金口座に給料が入金された直後に、預金債権として全額の差押えをした案件に関する国家賠償請求事件

・和解内容

  • 差押えにより徴収した金員の全額を返還すること
  • 今後は、実質的に差押禁止債権の差押えと同視されるような差押えをしないこと、地方税法及び通知等を尊重し、税滞納者の個別具体的な実情を十分に把握した上で適切な措置を講じること。

 

~いったん口座に入金されれば、お金に色はないとばかりに、差押禁止部分まで差し押さえる・・・国税は明確に禁止する通達を出しているが、地方税では、まだ広く残っている。声をあげつづけことが大事。

【滞納処分に関する仙台地方裁判所における和解に対する会長談話  日弁連1/7

 本年1月6日、仙台地方裁判所において、宮城県及び大崎市と税滞納者との間で、滞納処分に基づき、金融機関に開設した預貯金口座に給料が入金された直後に、預金債権として全額の差押えをした案件に関する国家賠償請求事件について、和解が成立した。和解内容としては、差押えにより徴収した金員の全額を返還することに加え、今後は、実質的に差押禁止債権の差押えと同視されるような差押えをしないこと、地方税法及び通知等を尊重し、税滞納者の個別具体的な実情を十分に把握した上で適切な措置を講じることが約束された。

 納税の義務(憲法30条)を負う国民としては、税滞納は好ましい事態ではないが、一方で、生存権(憲法25条)もまた、保障された権利であることから、生存権を脅かすような態様での徴収は許されない。

 当連合会は、2017年(平成29年)1月20日、「財産開示制度の改正等民事執行制度の強化に伴う債務者の最低生活保障のための差押禁止債権制度の見直しに関する提言」において、差押禁止債権が預金口座に振り込まれ、預金債権に転化した直後に、これを差押えする行為について、実効性ある規制の立法化を求めてきた。

質問検査権をはじめとした広汎な調査権限が与えられている税徴収の場面においては、差押禁止債権が振り込まれる口座を特定することは容易であり、差押禁止債権が入金されるのを待って狙い撃ち的に差押えをすることもまた容易なのであるから、民事執行の場面と比較して、格段に生存権を脅かすおそれが高い以上、かかる差押えについては厳に差し控えられなければならない。

 

 しかし、本件もさることながら、税徴収の場面において、差押禁止債権が預金口座に入金された直後に差押えをするという例が、全国で散見されており、訴訟等で争われているのが現状である。

高等裁判所の判決案件だけを挙げても、広島高裁松江支部平成25年11月27日判決及び大阪高裁令和元年9月26日判決などで、差押えにより徴収した金員について不当利得に基づく返還を命じる判断が相次いでいる。

これを受けて、国税庁は、2020年(令和2年)1月31日に、かかる差押えを原則としてしないよう求める通達を発出している。しかし、いまだに地方税についての差押事案の報道がなされ、当連合会にも報告がなされている。かかる差押えは地方税においても同様に自粛されるべきである。

  本和解は、差押禁止債権が預金口座に振り込まれた直後に預金債権として差押えをした自治体が、訴訟を通じて、問題指摘を受け止め、自らかかる差押えを控えることを言明したものとして大いに評価することができる。

そもそも、総務省が各自治体に対し、毎年繰り返し通知をしているとおり、滞納処分に基づく差押えは、税滞納者の個別具体的な生活実態を踏まえて行われるべきことからすれば、本和解が、全国の各自治体においても、徴収姿勢に行き過ぎがないかを見直すきっかけとなり、本和解を参考とした、適切な徴収緩和措置を含む徴収実務が行われることを期待するものである。

  2021年(令和3年)1月7日

 日本弁護士連合会

会長 荒   中

 

【財産開示制度の改正等民事執行制度の強化に伴う債務者の最低生活保障のための差押禁止債権制度の見直しに関する提言17/1/20

https://www.nichibenren.or.jp/document/opinion/year/2017/170120_3.html

 

◆本提言の趣旨

1 民事執行法152条1項1号及び2号所定の各差押禁止債権については、債務者の最低限度の生活を保持するために欠くことができない金額として政令で定める最低限度金額までは全額を差押禁止とする等の立法化を検討すべきである。

 

2 給与・年金・生活保護費など民事執行法その他法令における差押禁止債権に係る給付が、債務者の預貯金口座に振り込む方法により行われた場合における当該預貯金口座に係る債務者の預貯金債権に対する差押えを制限するための制度の立法化を検討すべきである。

 

 

【滞納税強制徴収で和解 宮城県と大崎市、原告女性に解決金支払い 河北新報1/7

 

 銀行口座に振り込まれた給与を、宮城県と市町村でつくる県地方税滞納整理機構に預金として差し押さえられ精神的苦痛を受けたとして、大崎市の60代女性パート従業員が県と市に、220万円の損害賠償を求めた訴訟は6日、仙台地裁で和解が成立した。差し押さえた約8万7000円を県と市が解決金として支払う。

 和解条項には、滞納処分の該当者を著しく困窮させる恐れがある場合は「個別・具体的な実情を十分に把握し、(処分の)執行停止など適切な納税緩和措置を取る」との文言が盛り込まれた。

 国税徴収法は、滞納者の月収が一定額を下回る場合、給与の差し押さえを禁じている。一方、口座に振り込まれた給与が預金と見なされれば禁止規定はない。和解条項には、差し押さえが禁止される債権と同視し得るものは原則、差し押さえないとの内容も含まれた。

 訴えによると、女性は2008年6月から17年2月までの分の国民健康保険料など約139万円を滞納した。市は17年5月、延滞税などを加えた約197万円の徴収を機構に委託。機構は同9月に口座に振り込まれた給与を差し押さえ、女性は所持金を全額失った。

 女性の収入は月8万~11万円の給与と、隔月で得る月約7000円の厚生年金だった。女性は親族に100万円を借りて納付。残額の分割払いを申し出たが、認められなかったという。

 仙台市内で記者会見した原告の女性は「担当者に家庭の事情を聴いてほしかった」などと語った。

 機構の担当者は「当時は適法な差し押さえだった。その後の裁判例の趣旨などに鑑みれば脱法的だと言われても仕方がないと考え、和解に至った」と説明した。

 

◎自治体は行き過ぎた徴収の改善を/仙台弁護士会が声明

 税金滞納者の預金口座に振り込まれた給与の差し押さえを巡る訴訟が仙台地裁で和解したことを受け、仙台弁護士会は6日、税金の徴収に当たる自治体に、行き過ぎた姿勢を改善するよう求める声明を公表した。

 声明は、滞納者の生存権を脅かすような徴収は許されないと指摘。弁護士会は過去にも、宮城県地方税滞納整理機構に支払い能力を顧みない徴収をしないよう求めており、原告への対応について「生活の維持を事実上、不能とさせたことは誠に遺憾」と批判した。

 和解条項に盛り込まれた滞納者の実情把握が適切になされれば、生活の破綻を回避できると強調。和解は、県と大崎市が差し押さえの問題点を反省するものだと評価し「県と市が誓約した徴収実務に関する姿勢は、全国一律に採用されるべきだ」と訴えた。

 弁護士会はこの日、全国の同様の機構と宮城県内各市町村、47都道府県などに声明を送った。

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