〈全国行動声明〉 日本政府および日本メディアは日本軍「慰安婦」訴訟判決を正しく受け止めよ 1/14
人権にかかわる国際的合意の前進を無視し続け、そして決して事実を認めて謝罪しない日本政府の姿勢に最大の問題がある。韓国地裁が日本軍「慰安婦」被害者12名による日本国への損害賠償請求を認めた判決について、日本軍「慰安婦」問題解決全国行動の声明。
なお、関連記事で、韓国の司法は、国内問題でも韓国政府に先進的な判決をくだしていることを知った。
国際的な合意の前進については以下のブログで紹介したことがある。
【人権侵害の「救済」とは―事実を認め人間の尊厳を回復し、教育に活かし繰り返さないこと 国連の基本原則2020/02】
桜「前夜祭」で、ウソをつき続け、時に相手を恫喝しながら、事実をつきつけられると、知らなかった、と反省もせず、証拠となるホテルの明細書もしめさない前・現政権の姿勢と共通している。
コロナ対策でも、科学を無視し、後手後手・逆行政策で、東アジア・沿岸諸国の中で最悪レベルの感染拡大をもしらしたことに無反省の姿とも共通する。
【〈全国行動声明〉 日本政府および日本メディアは日本軍「慰安婦」訴訟判決を正しく受け止めよ 1/14】
【〈全国行動声明〉 日本政府および日本メディアは日本軍「慰安婦」訴訟判決を正しく受け止めよ 1/14】
1月8日、韓国のソウル中央地裁は日本軍「慰安婦」被害者12名が日本国を相手に起こした損害賠償請求訴訟に於いて原告の請求を全て認容し、被告である日本国に被害者1人につき1億ウォン(約950万円)の支払いを命じる判決を言い渡した。判決直後から日本の政府およびメディアによって、この判決を貶めるコメントと報道がなされていることに対し、以下、是正を求める。
◆「国際法的にも常識的にもあり得ない判決」なのか
日本政府が今回の判決を「国際法的にも常識的にもあり得ない」とする根拠は、「主権免除」という国際慣習法があるからだという。しかし主権免除論については、すでに19世紀から例外を認める相対的主権免除論が台頭しており、国際秩序の変動に伴い絶えず修正され、例外が拡大されてきている。「国際法上、主権国家は他国の裁判には服さないのが決まりだ」という菅首相の認識は、21世紀において「国際法的」には決して「常識」ではなくなっているのである。
この度の判決は、「被告とされた国家が国際共同体の普遍的な価値を破壊し、反人権的行為により被害者に深刻な被害を加えた場合までも、最終的手段として選択された民事訴訟で裁判権が免除されると解釈することは不合理で不当な結果を導くことになる」としている。「日本やアメリカなどの裁判所に民事訴訟を提起したがすべて棄却又は却下され、請求権協定と2015年の日韓合意も被害を受けた個人の賠償を包括することができなかった」がために、被害者らは最終手段として韓国国内裁判所に訴えたのである。日本軍「慰安婦」という重大な人権侵害を被った被害者が日本の裁判所に訴えた際には「国家無答責」や「除斥期間」で斥け、あらゆる手段を尽くして最終手段として韓国の国内裁判所に訴えたら「主権免除」を唱える。このように旧態依然として非人権的な日本政府および司法とは異なり、被害者らが最終手段として訴えたことから目を背けず、人権重視の判断を示した韓国司法は称賛されてしかるべきだ。このような判断は、国際人権の伸長に必ずや寄与するもので、それは結局、日本の市民にも跳ね返るであろう。
◆「反日判決」なのか
「反日感情に寄せた判断」(1/8読売オンライン)といった論評も見られるが、これは近年の韓国司法において人権重視の判断が日本政府に対してだけでなく、韓国政府に対してもなされている事実を無視した論評だ。
その一例として、米軍基地村女性(*)が韓国政府を相手に2014年に起こした損害賠償請求訴訟で、ソウル高裁が原告117名全員に反人権的不法行為に対する慰謝料を支払うよう韓国政府に命じた判決(2018年2月8日)がある。同判決は「国家が基地村慰安婦の性的自己決定権、ひいては性によって表象される原告らの人格自体を国家的目的達成のための手段と見なし、人権尊重義務に違反した」と判示した。また、基地村女性らが「自発的に」性売買を始めたのだという主張に対し、「国家がこれを奇貨として基地村慰安婦の性ないし人間的尊厳性を軍事同盟の強化または外貨獲得の手段とした以上、それによる精神的被害を被ったと見るべきだ」とし、国家による重大な人権侵害の被害者であることを認定する上で、「自発」か「強制」かというフレームが無意味であることを明示した。
現在の日本では想像も出来ないような先進的な人権重視の判決が、韓国司法においては出されているという事実をまず認識しなければならない。
(*)米軍基地周辺で性売買をさせられた女性たち。当時の行政文書で米軍「慰安婦」と表記されていた。
◆「この判決で日韓関係がさらに悪化する」のか
またしても「日韓関係悪化」の原因を韓国側に求める論調で日本の報道は覆われている。そもそも、加害国日本が被害者たちの求めに応えていないことが「日韓関係悪化」の原因であるにも関わらず、根本原因を指摘して抜本的に問題を解決すべきと主張する報道はほとんど見当たらない。
勝訴の知らせに原告の一人である李玉善さんが「うれしくない」と言った(1/8中央日報)ことの意味を、日本政府と市民は深く受け止めなければならない。李さんは「まともに解決されたものは何もない。私たちが何か罪を犯してこのように生きなければならなかったのか」とし「私たちの気持ちが晴れてこそ真の解決だ」「日本が謝罪しなければならない。お金ではダメだ」と述べた。
被害者たちが求めているのは、日本が過去の過ちを率直に認め、真摯に反省し謝罪する姿を示すことなのである。被害者たちの「気持ちが晴れる」まで、加害国日本は謝罪と反省を表明し続けなければならない。日韓関係改善のために被害国や被害者に譲歩や諦めを強いる姿勢は、歴史を反省しない姿勢同様、日韓関係を却って「悪化」させることを肝に銘じるべきだ。
2021年1月13日
日本軍「慰安婦」問題解決全国行動
【太平洋戦争慰安婦強制動員、日本政府に賠償責任を認めた理由は...1/18
リーガルタイムス キム・ドクソン記者(dsconf@legaltimes.co.kr)】
◆中央地裁、「主権免除理論は適用不可」
ソウル中央地裁民事34部(裁判長 キム・チョンゴン部長判事)が1月8日、故ぺ・チュニハルモニなど「慰安婦」被害者12人が日本政府を相手に慰謝料の一部として1億ウォンずつを請求した訴訟(2016カ합505092)で「被告は原告に1人当たり1億ウォンずつを支給せよ」と原告勝訴判決を下した。 日本軍慰安婦被害者らに対する日本政府の損害賠償責任を認めた初の判決であり、日本政府が報復措置を取ると公開的に言及するなど、波紋は韓日間の外交対立に拡散している。
◆韓日間の外交葛藤拡散
ソウル中央地裁の判決文を入手し、損害賠償責任を認めた根拠などについて詳しく調べた。
裁判所は、まず「国内裁判所が外国に対する訴訟について裁判権を持たない」という国際慣習法である国家免除または主権免除の理論を適用するかどうかについて、「国家の主権的行為は、他の国の裁判権から免除されることが 原則という国家免除の国際慣習法によっても、上記国際慣習法が国のすべての行為について裁判権が免除されるため、主権を持つ国家であれば、例外なく、他国の裁判権の行使から免除されるべきと見ることはできず、一定の場合には、その例外が認められなければならない。
この事件の行為(朝鮮半島に住んでいた原告などを誘拐または拉致して、韓半島の外に強制的に移動させ、慰安所に監禁したまま常時暴力、拷問、性的暴行に晒した一連の行為)は、当時の日本帝国によって計画的、組織的に広範囲に強行された反人道的犯罪行為として国際強行規範に違反したものであり、当時の日本帝国によって不法占領していたわが国民である原告等について強行されたもので、たとえこの事件行為が国家の主権的行為であったとしても国の免除を適用することができず、例外的に大韓民国の裁判所に被告の裁判権があると、見るのが妥当である」と述べた。裁判所はこれと関連し、「国家免除が慣行として定着した国際慣習法だとしても、被告が人道に反する重大な不法行為を犯した場合まで被告に対する裁判権を免除するという内容の慣習法を適用することになる場合、ある国家が他国の国民に対して人道に反する重犯罪を犯すことができないようにした様々な国際条約に違反しても、これを制裁できなくなり、これによって人権を蹂躙された被害者らは憲法で保障した裁判を受ける権利を剥奪され、正しく救済されない結果をもたらし、不条理である。憲法を最上の規範とする法秩序全体の理念にも符合せず、正当性がなく、そのような場合にまでも国家免除を適用する国際慣習法としての効力は認められない」と述べた。
裁判部によると、太平洋戦争終戦後にも原告など「慰安婦」被害者の被害は明らかにされないまま、韓日両国間の賠償や補償の対象にならず、1990年代に入って、慰安婦被害者たちが自ら口を開いて被告(日本国)の謝罪と賠償を要求してから、論議の争点になった。被告は1993年の河野談話を通じて公式的に日本軍が慰安婦制度を運営したことを認め、これに対し、政府レベルで謝罪をするに至った。
しかし、それにもかかわらず、被害者一人ひとり人に対する補償、あるいは賠償はほとんど行われておらず、これに慰安婦被害者たちが日本の裁判所に何度も民事訴訟を提起したが、全て棄却や却下とされ、米国など他の国の裁判所に提起した訴訟結果も同じだった。
韓国政府と日本政府間の請求権協定と朴槿恵大統領時代、結ばれた「2015年日本軍慰安婦被害者問題に関する合意」もまた、被害を被った個人に対する賠償を包括しなかった。 裁判所は判決理由について、「交渉力や政治的な権力を持たない個人にすぎない原告としては、同事件の訴訟以外に具体的な損害賠償を受ける方法はない」と判断した。
裁判所は「大韓民国はこの事件の当事者及び紛争になった事案と実質的関連性があるとし、したがって大韓民国裁判所はこの事件について国際裁判管轄権を有する」と認め、「この事件行為当時の国際条約、一般的な国際慣習法と日本帝国の国内法、戦後の戦争犯罪に関する国際刑事裁判所の憲章などを総合すると、この事件行為は当時の日本帝国の韓半島と韓国人に対する不法な植民支配及び侵略戦争の遂行に直結する反人道的不法行為に該当すると見るのが相当」と判断した。
したがって、大日本帝国の不法行為によって原告等が精神的苦痛を受けたことは経験則上明白であり、大日本帝国の後身として同一性が認められる被告は特別な事情がない限り、上記のような不法行為によって原告等が受けた精神的苦痛をせめて金銭によって賠償する義務があるというのが、裁判所の結論。
裁判所は損害賠償の範囲と関連し「加害行為の違法性の程度と原告らの当時の年齢、「慰安婦」として苦痛を強いられた期間、当時の環境と自由抑圧の程度など原告らが被った被害の程度、原告らが帰国後に経験した社会的・経済的困難、不法行為以降、相当な期間の被害回復が全くなされていない点、その他の弁論に現れた諸般の事情などを総合して被告人が支払うべき慰謝料は少なくとも原告らに対して各100,000,000ウォン以上とみるのが妥当である」と判示して、原告が損害賠償の一部として求める各1億ウォンずつを支給せよと命じた。
◆「請求権協定にかかわらず賠償請求権は消滅しない」
裁判所は1965年6月、韓国と日本政府の間に締結された請求権協定によって「慰安婦」に動員された韓国人の補償金及びその他の請求権が消滅したかどうかについても、「原告は被告を相手に未払い賃金や補償金を請求しているのではなく、日本帝国の韓半島に対する不法な植民地支配や侵略戦争の遂行と直結した反人道的な不法行為を前提に慰謝料を請求している」とし、「原告らが主張する被告に対する損害賠償請求権は請求権協定の適用対象に含まれると見ることはできないため、(大法院2018.10.30.判決2013タ61381の全員合議体判決など参照)、請求権協定により原告の被告に対する損害賠償請求権が消滅したとは言えない」と明らかにした。
裁判所は「請求権協定の締結経過とその前後の事情によれば、請求権協定は、日本帝国の不法な植民地支配に対する賠償を請求するための協定ではなく、基本的にサンフランシスコ条約第4条に基づき、韓日両国間の財政的・民事的債権債務関係を政治的合意で解決するためのものだったと判断される」と指摘し、「請求権協定の交渉過程で、被告は日本帝国の植民地支配の不法性を認めないまま、「慰安婦」被害者に対する法的な賠償を原則的に否認し、これによって、韓日両国の政府は日本帝国の韓半島支配の性格について合意に達しなかった。このような状況で「慰安婦」被害者たちの慰謝料請求権が請求権協定の適用対象に含まれていたと見ることは難しい」と明らかにした。
裁判所は「2015年日本軍慰安婦被害者問題に関する合意」による請求権消滅可否についても、「この合意は「慰安婦」被害者らの民事上の損害賠償請求権行使の有無を韓国政府に委託したことのない状態で行われたものとして、別途の委任や法令の規定もなく、個人の権利を国家が処分することはできず、この合意によって原告らの損害賠償請求権が最終的、不可逆的解決に至ったと断定することはできない。この合意は、韓日両国間の「慰安婦」問題に関して国家対国家としての政治的合意があったことを宣言したにすぎないとみる」とし、「原告らが主張する被告に対する損害賠償請求権がこの合意の適用対象に含まれると見ることはできないので、この合意によって原告らの被告に対する損害賠償請求権が消滅したとはいえない」と判示した。 キム・ガンウォン弁護士が原告を代理した。
(訳 Kitamura Megumi)
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