平均値でだす基準地震動は過小 大飯3.4号の設置許可取り消し判決
大飯原発の基準地震動は過小評価であるとして、設置許可を取り消せとの判決が出された。
基準地震動の基礎となる地震規模を決める入倉・三宅式は、過去に起こった世界中の 53 個のデータの平均値である。しかし実データはばらついていて平均式との間に乖離があり、平均式より大きい地震規模が発生する可能性をはらんでいる。
この事実を反映し、原子力規制委員会は 2018年12月19日付「新規制基準の考え方[改訂版]」において、「当該経験式の前提とされた観測データとの間の乖離の度合いまでを踏まえる必要があることを意味している」との見解を出している。
自ら出した見解を無視し続けてきた規制委を断罪した判決。
科学を政治が支配するととんでもないことになる一例・・・コロナ対策しかり。学術会議人事介入問題の重大性を示すもの。
【原告団声明 12月4日 大阪地裁は国に対し大飯原発3・4号の設置許可取り消しを命じる
国は控訴を断念して設置許可を取り消し、すべての原発等について耐震性の見直しを行え】
【大飯原発 設置許可取り消す判決 NHK関西 12月04日】
バラつきを無視した入倉・三宅式の基準地震動想定の問題点について、以前整理したメモ
【原告団声明 12月4日 大阪地裁は国に対し大飯原発3・4号の設置許可取り消しを命じる
大飯3・4号は地震に耐えられないと、原告の主張を認める判決
国は控訴を断念して設置許可を取り消し、すべての原発等について耐震性の見直しを行え】
本日(12 月 4 日)大阪地裁の行政訴訟において、大飯原発の基準地震動は過小評価であるとして、設置許可を取り消せとの判決が出された。これは福島原発事故後に新たに導入された地震動審査ガイドの規定を踏まえた結果である。原子力規制委員会は直ちに大飯3・4号の設置許可を取り消し、国は人々の安全を守るために控訴を断念すべきである。この判決は8年半にわたる長い闘いの成果である。
原子力規制委員会は、これまで自ら策定したガイドにおける地震規模の「ばらつき」を考慮せよとの規定を無視し、適用を退けてきた。大飯原発で、基準地震動の基礎となる地震規模を決める入倉・三宅式は、過去に起こった世界中の 53 個のデータの平均値である。しかし実データはばらついていて平均式との間に乖離があり、平均式より大きい地震規模が発生する可能性をはらんでいる。
この事実に基づいてガイドは、「経験式は平均値としての地震規模を与えるものであることから、経験式が有するばらつきも考慮されている必要がある」と規定している。この規定について、原子力規制委員会は 2018年12月19日付「新規制基準の考え方[改訂版]」において、「当該経験式の前提とされた観測データとの間の乖離の度合いまでを踏まえる必要があることを意味している」との見解を出している。
今年 1 月 30 日に裁判長は被告に対してこの乖離の度合いとして、少なくとも標準偏差を考慮しても、設置許可基準規則 4 条 3 項が規定する「地震による損傷の防止」が成り立つことを示すよう指示した。「ばらつき」の考慮が福島事故後に初めて策定されたことの意味を考えるようとも指摘した。
現行では「不確かさ」を考慮した場合の 856 ガルが最大加速度である。それにさらに「ばらつき」の標準偏差を考慮すれば 1,150 ガルとなる。それでも上記基準規則の成立を示すことが事実上求められたのである。
ところが被告は、標準偏差は考慮したものの、今度は現行の「不確かさ」考慮をとり払い、現行より低い 812 ガルにしかならないと主張した。これでは裁判長が基準規則適合性を求めた意味が消し飛んでしまう。
このような愚論を判決ははっきりと退けた。地震が過去の平均値で起こるとは限らないとの法則性を裁判所が認定したのである。
原子力規制委員会はこの判決を踏まえて、すべての原発及び原子力施設等について、地震規模(地震モーメント及びマグニチュード)の見直しを行うべきである。
関西電力に関しては、大飯原発の地震規模の見直しはもちろんのこと、とりわけ老朽美浜3号炉の耐震性が大きな問題になる。敷地のほぼ直下にある C 断層が現行でも 993 ガルをもたらすが、「ばらつき」の標準偏差を考慮しただけで 1,330 ガルに跳ね上がる。老朽化に伴う諸問題を抱えながら、このような危険性が放置されてよいはずはない。再稼働を中止し、耐震性の見直しを行うべきである。
全国各地の原発に関して、耐震性の見直しを要求する取組みを協力して進めていこう。
2020 年 12 月 4 日 おおい原発止めよう裁判の会
【大飯原発 設置許可取り消す判決 NHK関西 12月04日】
福井県にある大飯原子力発電所の3号機と4号機について、大地震への耐震性が不十分だと原発に反対する市民グループが訴えていた裁判で、大阪地方裁判所は原発の設置を許可した国の決定を取り消す判決を言い渡しました。
福島第一原発事故を教訓にした新たな規制基準が設けられてから、原発の設置許可を取り消す司法判断は初めてです。
関西電力・大飯原子力発電所の3号機と4号機について、関西や福井県などに住むおよそ130人は「大地震への耐震性が不十分だ」と主張して訴えを起こし、設置を許可した原子力規制委員会の決定を取り消すよう求めていました。
原発はその周辺で想定される最大規模の地震の揺れ、「基準地震動」を算出し、それに耐えられる設計になっていることが必要です。
今回の裁判では、規制委員会が審査で関西電力が設定した基準地震動の数値を妥当だとしたことの是非が争われていました。
4日の判決で大阪地方裁判所の森鍵一 裁判長は、「関西電力は過去に起きた地震の平均値を用いて将来、起こりうる地震の規模を想定した。しかし、新しい規制基準は平均値を超える規模の地震が発生しうることを想定しなければならないとしており、基準地震動を設定する際には数値を上乗せすべきかどうかを検討する必要があった。原子力規制委員会はこうした検討をしておらず、審査すべき点を審査していないので違法だ」という判断を示し、原発の設置許可を取り消しました。
3号機と4号機は現在、定期検査のため稼働を停止していて、判決の効力は国側が控訴すれば生じません。
しかし、福島第一原発事故のあと裁判所が原子力規制委員会の設置許可を否定したのは初めてで、事故を教訓に規制のあり方を大きく見直してきた国は司法から厳しい判断を突きつけられた形になりました。
【判決言い渡し廷内では】。
判決の言い渡しは、4日午後3時から始まり、森鍵一裁判長が、冒頭に「3号機と4号機の設置許可を取り消す」と主文を述べると、法廷に詰めかけた原告や支援者から「おぉっー」というどよめきが起こりました。
そして、5分ほどの判決要旨の読み上げが終わると、大きな拍手がわき起こりました。
【判決直後の原告側は】。
4日午後3時の判決の直後、原告たちが大阪地方裁判所の正門前に集まった支援者らに向かって「勝訴。大飯原発3・4号機の設置許可取り消しを命ずる」、「すべての原発の地震動評価をやり直せ」などと書かれた紙を掲げると大きな歓声があがりました。
原告側で中心的に活動してきた冠木克彦弁護士は「全国の原発に大きな影響を与える判決だ」と話していました。
原告の一人、石地優さんは「主文を読み上げているとき、涙がこみ上げてきた。理屈抜きでうれしく感じた。今後につながる希望がある判決だ」と話していました。
【原告側の会見】。
判決のあと、裁判を起こしていた原告の市民グループが会見を開きました。
このうち、共同代表のアイリーン・美緒子・スミスさんは、「判決は地震国の日本で、原発事故から市民や環境、経済を守るための最後の警告だ。これを機に原発を動かさないでほしい」と話しています。
また、同じく共同代表の小山英之さんは、「すばらしい勝訴判決だ。来週には原子力規制委員会に行って全国すべての原発に、判決で指摘された『ばらつき』を考慮するよう申し入れたい」と話しています。
そして、弁護団長の冠木克彦 弁護士は、「国側は裁判の中で、『専門的な知見に司法は口出しをするな』という主張もしていて、判決はそうした不誠実な姿勢を糾弾したものとも考えられる。判決によって全国の原発訴訟でも、『ばらつき』を考慮した基準地震動の議論を始めることが必要となり、本当に大きな影響力を及ぼすものだ」と話しています。
【原子力規制委コメント】。
大阪地方裁判所が福井県にある大飯原子力発電所の設置を許可した国の決定を取り消す判決を言い渡したことについて、原子力規制委員会は「国の主張について裁判所の十分な理解が得られなかったものと考えている。今後については関係省庁と協議のうえ、適切に対応してまいりたい」とするコメントを出しました。
【関西電力“極めて遺憾”】。
福井県にある大飯原発の設置を許可した国の決定を取り消す判決が出たことについて、関西電力は、「裁判所に対し大飯原発の安全性について丁寧に説明を行い、理解してもらえるよう真摯(しんし)に対応してきた。今回の判決については国や当社の主張を裁判所に理解してもらえず極めて遺憾で、到底承服できるものではない。今後、判決内容の詳細を確認し、速やかに国と協議のうえ、適切に対応していく」とするコメントを出しました。
【原発30キロ圏内の滋賀県】。
福井県にある大飯原子力発電所の3号機と4号機について、大阪地方裁判所が4日、原発の設置を許可した国の決定を取り消す判決を言い渡したことについて、高島市の一部が30キロ圏内に入る30キロ圏内に入る滋賀県は、「判決の詳細はまだ確認できていないが、滋賀県としては従来どおり国や関西電力に対して原発を稼働する、稼働しないにかかわらず、県民が不安感を持たないよう誠意と責任を持った説明と万全の対策を求めていきたい」とコメントしています。
【原発の「設置許可」とは】。
電力事業者は、国から原子炉の規制に関する法律に基づく「設置許可」を受けなければ、原子力発電所を運転することができません。
原発の安全性を確認する国の審査を受け、原発を設置しても問題ないと判断されると設置許可が出されることになります。
この国の審査のときに用いられるのが規制基準です。
地震や津波といった自然災害や、核燃料が冷却できないような重大事故などへの対策を取ることが定められています。
福島第一原発の事故のあと、規制基準はより厳しくなり、新しい知見を取り入れながら地震に対しても原発周辺にある活断層の影響などをチェックしてきました。
この新しい基準に基づいて原子力規制委員会は、原発の再稼働を求める電力事業者の対策を評価し問題がないと判断した場合には審査に合格、つまり設置を許可することになります。
大飯原発3号機と4号機は、平成29年5月に審査に合格し規制委員会から許可を得ていました。
【大飯原発とは】。
今回の裁判で対象となった関西電力の大飯原子力発電所は福井県おおい町に設置され、3号機は平成3年に、4号機は平成5年に営業運転を始めました。
出力はいずれも関西電力がもつ原発のなかで最大の118万キロワットで、2基でおよそ460万世帯の1年分の電力がまかなえるということです。
平成23年の福島第一原発の事故のあと、ほかの原発と同様に運転を停止しましたが、平成29年に新しい規制基準のもと原子力規制委員会の審査に合格し、その後、再稼働しました。
今回の裁判では、このとき規制委員会が設置を許可した決定の是非が争われました。
▼3号機はことし7月から、▼4号機は先月からともに定期点検に入っていて現在は運転を停止しています。
再稼働の時期は、▼3号機は未定で、▼4号機は来年1月を予定しています。
一方、昭和54年に運転を始めた大飯原発1号機と2号機は、福島第一原発の事故のあとに法律で定められた原則40年の運転期間をむかえたため、おととし運転を終了し、現在は廃炉作業が進められています。
【関電の原発めぐる司法判断】。
関西電力が福井県に設置している大飯、高浜、美浜の3つの原発に対しては、平成23年の福島第一原発の事故以降、原発に反対する地元の住民などから運転をしないよう求める訴えや仮処分の申し立てが相次ぎました。
その多くは退けられていますが、大飯と高浜については、運転を認めない司法判断も出ています。
このうち、大飯原発の3号機と4号機をめぐっては、平成26年5月に福井地方裁判所が「地震の揺れの想定が楽観的だ」と指摘して、当時、運転を停止していた原発の再稼働を認めない判決を言い渡しました。
これは原発事故後に全国各地で起こされた裁判の中で最初の判決で、その結果が運転を認めないものだったことから、原発を推進してきた国や電力会社に衝撃が走りました。
ただ、仮処分ではないためすぐに効力が生じることなく、関西電力が控訴して行われた2審で、平成30年7月、名古屋高等裁判所金沢支部が「原子力規制委員会の審査に不合理な点は認められない」と判断して、福井地裁の判決を取り消し、そのまま確定しました。
一方、高浜原発3号機と4号機をめぐっては、運転を停止していた平成27年4月に福井地方裁判所が「国の新しい規制基準は緩やかすぎて、原発の安全性は確保されていない」という判断を示し、再稼働を認めない仮処分の決定を出しました。
その後、福井地裁の別の裁判長が決定を取り消したことから、関西電力は翌年(平成28年)1月に、2基のうち3号機を再稼働させました。
しかし、その2か月後、今度は大津地方裁判所が「事故対策や緊急時の対応方法に危惧すべき点がある」として、運転停止を命じる仮処分の決定を出しました。
この決定により、3号機は運転中の原発で、初めて司法の判断によって停止しました。
この決定は、1年後の平成29年3月に大阪高等裁判所が取り消したため、3号機は4号機とともに再び運転を始め、高裁の判断も最高裁判所への抗告が行われなかったため、確定しました。
これらの裁判や仮処分はいずれも関西電力に運転をしないよう求めるものでしたが、今回の裁判は、国が行った設置許可自体を取り消すよう求めるものでした。
【原発訴訟の司法判断】。
原子力発電所をめぐる裁判で住民側の訴えが認められたケースは、これで9件目となり、設置許可を無効とする判決は平成15年の高速増殖炉「もんじゅ」をめぐる判決以来、2件目です。
原子力発電所の運転停止や設置許可の取り消しを求める訴えは昭和40年代後半から各地の裁判所に起こされましたが、「具体的な危険があるとはいえない」などとして退けられてきました。
平成15年に福井県の高速増殖炉「もんじゅ」をめぐる裁判で、名古屋高裁金沢支部が国の設置許可を無効とする判決を言い渡し、これが住民側の訴えを認めた初めての判決でしたが、最高裁で取り消されました。
平成18年には、金沢地裁が石川県の志賀原発2号機の運転停止を命じる判決を言い渡しましたが、高裁で取り消されました。
こうした中、平成23年に福島第一原発の事故が起き、改めて安全性を問う動きが広がり、住民側の訴えを認める司法判断が増えました。
平成26年に福井地裁が福井県の大飯原発3号機と4号機の運転停止を命じる判決を言い渡しましたが、2審で取り消されました。
また、運転停止を命じる仮処分の決定も相次ぎ、福井県の高浜原発3号機と4号機では、平成27年に福井地裁、平成28年に大津地裁が2度、運転停止を命じました。
関西電力は平成28年3月、大津地裁の1回目の決定が出た際に運転中だった3号機の原子炉を停止させ、司法の判断で運転中の原発が停止した初めてのケースとなりました。
運転停止の決定は高裁で取り消され、高浜原発3・4号機は再び運転を始めました。
また、愛媛県の伊方原発3号機では平成29年とことし1月に広島高裁が2度、運転停止を命じる決定を出しました。
平成29年の決定はその後、取り消されましたが、ことし1月の決定については広島高裁の別の部で審理され、伊方原発3号機は運転できない状態が続いています。
原子力発電所をめぐる裁判で住民側の訴えが認められたケースは、これで9件目となり、設置許可を無効とする判決は平成15年の高速増殖炉「もんじゅ」をめぐる判決以来で、2件目です。
【運転への影響は】。
大飯原発3号機と4号機は、現在、定期検査のため運転を停止しています。
今回の判決は仮処分ではなく、国側が控訴すればすぐに効力が生じることはなく、ただちに原発の運転に影響がでる訳ではありません。
▼4号機は来年1月に運転を再開する計画で、▼3号機は配管に傷が見つかった影響で現在、再開の見通しはたっていません。
一方、判決が確定すれば設置許可が取り消されるため、運転できなくなります。
原子力規制委員会は、「国の主張について裁判所の十分な理解が得られなかったものと考えている。今後については関係省庁と協議のうえ、適切に対応して参りたい」とするコメントを出しました。
【ほかの原発の影響は】。
今回の判決が確定すれば、想定される地震の揺れ、「基準地震動」は、ほかの原発でも見直しが求められる可能性があります。
例えば、福井県にある関西電力の美浜原発3号機は、大飯原発と同様の算出方法で基準地震動を導き出していて、住民側によりますと、基準地震動の算出に「ばらつき」を考慮すれば、現在の最大993ガルを上回って「1330ガル」になるということです。
また、基準地震動は、すべての原発で算出する必要があり、今回の判決が今後、各地で行われている原発をめぐる裁判に影響する可能性もあります。
佐賀県にある九州電力の玄海原発3号機と4号機をめぐり住民が設置許可の取り消しなどを求めて起こした裁判でも、今回と同様に住民側は基準地震動の評価にばらつきを考慮すべきだと主張しています。
この裁判は、来年3月12日に判決が出る見通しです。
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