抑止力に替わる戦略はあるか 柳澤協二氏・論稿 (メモ)
柳澤協二氏(共著「抑止力神話の先へ」)の論稿「抑止力に替わる戦略はあるか」のメモ
論稿は、抑止とは、戦争とは、戦勝と解決の関係は、平和とは、抑止の成り立つ条件とは、抑止が成立しない領域とは・・をきちんと定義し、実例--ミサイル防衛、島しょ防衛、南シナ海・台湾海峡、ホルムズ海峡のケースで検証。
そのうえで、これからの平和の構築について考察。
その際、いまある「抑止の成功体験」は、冷戦という特殊条件--米ソを互いに相手を核で滅ぼす意志をもった状況—でのこと。現在は、グローバル市場のもとでの米中の覇権争い。「相互確証破壊」ではない抑止の不確実性、そのもとでアメリカが戦争に慎重になる背景-- 勝利しても、勝利後の真の目的を達成の不透明性の増大。
そして、力の相対的低下から、自由社会のリーダーでなく、自国の利益第一と変化したアメリカ。そのアメリカは、ついてくるものが同盟で、ついてこないものは敵というスタンス
日本は、戦争に巻き込まれる危険性を承知で、米国に見捨てられないよう一体化をすすめるのか・・・もはや「居心地のよい同盟関係」は存在しない。/ それゆえ、大国の抑止力にたよらない、違う道の模索が必要、と指摘する。
(メモ者は、核・気候危機などで発揮されている市民社会と非同盟諸国の大きな流れと連帯する道と思う。)
【抑止力に替わる戦略はあるか 柳澤協二(共著「抑止力神話の先へ」より)】
◆はじめに 抑止力という実態は何か
・「抑止力」・・・安全保障の議論の中で普通に使われているが・・ 論考の表題に「抑止力」の言葉を使うのを止めた
・抑止という作用は存在しても、抑止力という計測可能な実態は存在しない
*例)イージスアショア・・・秋田配備で地元の心配は、「いざとなったら真っ先に狙われる」/政府は「こればあればミサイルは飛んでこない」と説明/ が、何かおかしい
→ 「それがないと落とせない」はわかるが、「それがあればミサイルが飛んでこない」飛躍しすぎ
・「自衛隊がなければ守れない」と「自衛隊があれば攻めてこない」は、違う論理
→ 攻めてくるかもしれないから、自衛隊、ミサイル防衛で万が一に備える。が真っ当な論理
・そもそもなぜ秋田が狙われるか/日本攻撃の場合に優先的な目標となるから
~「秋田が攻撃をうけてもミサイル防衛で撃ち落とすから大丈夫」と言っても、迎撃ミサイルは3回の実験で成功は1回
→ 改良されてもミサイル防衛に完全はない/「撃ち落とせるから大丈夫」とは言えない
・1-2発のミサイルが飛来するのは有事ではない/敵がスキをついて大量のミサイル攻撃する~イージスアショアで防衛力は向上する。が、攻撃を抑止する1つの要素にはなる/が完璧はない。敵のウラを欠くのか戦争
→ それなのに「抑止力があるからミサイルが飛んでこない」と平気で考えているとすれば、その方が心配
・「抑止」とは、敵との相対的な力関係の問題~1つの装備で戦争を止める実態的に力があると、いうのはおかしい
・そして、抑止が崩れるから戦争になる/戦争の決めてであるミサイル基地が真っ先に攻撃されるのは自明
・アメリカの「抑止」論・・・「戦争になれば勝つことによって戦争を防ぐ」/日本は「抑止力があれば戦争にならない」・・・ここに大きなギャップがある
→ミサイルが飛んでくるのを前提に安全保障を考えているアメリカ。その時、どう敵をやっつけるかを考えている
/日本、抑止力があれば相手は攻めてこない・・・いざ攻められると、きっとパニックなる・・・リアリティがないまま安全保障が論じられていることが大きな問題
*「抑止」とは…相手との力関係を認識し、攻撃の代価をどう払わせるかを常に考える生きた意思の探り合いであり、相手が「今のところせめても得にならない」と思う状況/「抑止力」という実態が固定的にあるのではない。
1.抑止とはなにか
◆抑止力を定義する
議論の前提として、関連する言葉を定義する・・・戦争とは、抑止とは、平和とは等しくはない
①戦争と抑止の定義
・戦争‥‥… 国家の意思を強制する目的をもって武力を行使すること
・抑止(力)… 対抗する力があることを示すことで、戦争したいという相手の意欲を抑え込むこと
・抑止 2種類のやり方
1.「拒否」…抵抗することで相手の目的を達成させないやり方。合理的計算で抑止 /日本の防衛力
2.「懲罰」…もっと強い力でやり返す、それが怖ければ手を出すな。恐怖で戦争を抑止/アメリカ
~ 日本 専守防衛に徹するが、相手が力の行使をあきらめない場合、アメリカの懲罰行動が補う、という構え
②戦勝の定義
・武力で国家の意思を相手に押し付けたときに目的が達成される/これが戦争に勝つということ
・戦勝 2つのやり方
1.相手がこちらの意志を飲むこと 例)相手が譲歩する形で講和が成立
2.相手がどうしても拒絶する場合・・・拒絶する主体を排除する/占領統治、かいらい政権の樹立
・大事なこと 「戦勝は解決とは違う」
「解決」とは・・・意志の対立がなくなる状況/暴力で意志をイヤイヤ押し付けても火種が残り、解決とは言えない
→ 負けた側が受け入れるような秩序が築かれることが「解決」なら、やり方は「戦争」でなくてもよい/別の道の方がよい
例) アジア・太平洋戦争の結末、日本人が秩序をうけいれて武装解除・民主化したケース
/ レアケース。アメリカは、イラクで同じことをやろうとして失敗/北朝鮮相手でも多分できない
③平和の定義
・2015年成立の新安保法制/ 政府「平和安全法」、野党「戦争法」と真逆の表現
抑止力を強めることで、相手の戦争の意志を抑え込む、それが平和、という観点に立てば「平和完全法」
その手段は、相手より武力で優位にたつ。より強い戦争する力を持つ。手段からみれば「戦争法」
→ 同じコインの表裏の関係 (メモ者 最大の孫壮国家・アメリカの世界戦略への加担という点を消長している)
・背景に国家の対立があり、それを力で解決をしようとする限り、戦争が起こらないという安心は得られない/抑止が働く結果、今は戦争にはなっていなくても、戦争の不安は続く
→ それが、本当に求める平和なのか。/本来の平和は、戦争の恐怖から解放された状態ではないか/こちらが譲歩し、和解し、意志の対立をなくすことも1つのやり方。それが本当の平和と言えるのでないか。
◆抑止はどういう場合に成り立つのか
抑止力という固定した実態があるわけで理解するためにも、抑止の条件を知ることが必要
①能力と意志のかけ算である
・抑止とは・・・相手が攻めてきたら対応する(拒否でも懲罰でも)能力があり、その能力を使う意志がある。それを相手が同じように認識することが前提 /互いの認識の相互作用によって、抑止が成立する
・相手が、それを認識した時に、どう出てくるか、は別の問題/ 2つの出方
1.抑止されたくないので、こちらの能力を上回る力をつけないといけない、と思う場合
こちらが抑止し続けようとすれば、さらに強い力を持つことに/より危険な状況に・・・「安全保障のジレンマ」
2.こちらの力にかなわない、と妥協してくる場合 /妥協にも2通り
・自分の望みを放棄する(可能性は低い)
・別のやり方で目的を達成しようとする
→ いずれにしろ、相手が妥協できる範囲で相手の意志を抑え込まないと「抑止」はなりたたない
・抑止は、相手が我慢できる範囲でないと成立しない
例) 台湾の独立・・・中国は武力を使用しても阻止するだろう。アメリカが軍事力を投入しても、中国はあきらめない
→ 中国にとっての台湾問題の位置「核心的利益」/武力で阻止できないものがある。抑止の限界
・相手に対して、何を止めたいのか、という意志が伝わらないと、そもそも抑止としての意味がない
~抑止とは、意志の相互認識/どの程度のやり方で、どの程度の反応が来るか、共通理解がないと、抑止は成立しない
/一方、明確すぎるのは抑止にならない/無条件降伏を迫ったりすれば、「屈服しない」と強硬にさせかねない。ただの挑発・・・「曖昧さ」が必要だが、ただ曖昧なのでなく「相手の逃げ道の残す幅がある」という意味
②抑止をめぐる政治と軍事
・その時々の具体的な相互意志がわからないと、目に見える兵力量に頼ろうとする
→抑止とは「反撃の能力と意志のかけ算の認識」なので、能力で圧倒すれば、意志と関係なく抑止できる、と錯覚する
・が、抑止が問題になる局面…ほぼ同等の能力という場合/ 抑止の成立に重要なのは具体的意志の認識
→ そこに誤解が生まれる余地/これだけやれば相手は沈黙すると考えても、相手は沈黙しないかもしれない。決定的に不利になる前に戦端を開くかもいれない = 昔のラ本はアメリカの石油禁輸により、そう考え行動した
→ 相手の意志がよめなからこそ、対立を激化させない政治の知恵が必要となる
例)トランプのイラン戦略~何をしたいのか、何をイランにさせたいのか目標が不明。タンカーを守る有志連合を主張にサウジに軍隊を増派/ が、事の起こりは、イランが゛順守していた核合意からの一方的離脱と制裁発動
~自分でケンカを売っておいて、相手の攻撃を抑止する、という支離滅裂
→政治が対立を激化させておいて、軍隊に戦争を抑止させようとするのは無理/ 軍の失敗を政治がカバーすることは可能だが、政治の失敗を軍がカバーすることは不可能・
→今日のホルムズ解消問題は、抑止に関する政治と軍事の関係、政治の意志の重要性を示す教材
③抑止力が成立しない領域
・今日、伝統的な意味での戦争の論理が通用しない領域がある
1.国際テロをおこす組織・・・なぜ抑止できないか/テロ集団が実現すべき意志・政治目的が不鮮明だから
暴力そのものが目的となった集団の意志を変えることは不可能で、テロ防止は、集団を絶命させる以外にない/しかも、ネットで結ばれるような主体で、実態も不鮮明で、絶滅させる対象が見えないし、暴力を通じ自己増殖する主体
2.グレーゾーン領域… 戦争以前の手段で現状変更することに対し、軍隊のよる抑止は効かない
例) 中国海警を使って、他国が実効支配する島しょを乗っ取る場合⇔ 軍事力で抑止はできない
→「相手が軍隊を出してないのに、こちらが軍隊を出して対抗する」ことは、国際常識の中では禁じ手/軍隊を出すことがルール化すると、より危険な状態に・・・しかも、戦争すれば、余計に相互が納得する解決が難しくなる
3.サイバー攻撃… 直接破壊してないように見えるし、少なくとも殺傷はしていない/伝統的武力行使の概念と異質
アメリカは自衛権の発動、日本も「状況によって自衛隊で反撃する場合もある」
→現代の軍事力はサイバーに依存。そこが機能不全になると抵抗できない / 相手に戦争の意志がなく、いやがらせのともりでも「見えない」という恐怖が引き金となって、戦争に突入する危険が大きくなる
*戦争も抑止も、意志の相互作用なので、相手の意志をみえなくするサイバー攻撃は最も危険!
2.抑止の論理を実例で検証する
◆ミサイル防衛のケース
・17年2月14日衆院予算委 安倍 「北朝鮮がミサイルを発射したときにアメリカと一緒に防衛するけれど、撃ち漏らした場合に報復するのはアメリカしかない」「だからアメリカが確実に報復することを北朝鮮が認識しないと冒険主義に走るかもしれない」という趣旨の答
⇔「イージスアショアがあれば抑止力になりミサイルは飛んでこない」という話よりは遥かに抑止力の本質を理解した答弁
① 3つの前提は確かなものなのか
この論理が成り立つためには、いくつかの前提がある
1.「アメリカは必ず報復する」という前提
北朝鮮゛アメリカに届く核ミサイルを持った場合、米大統領が、自国市民の犠牲を覚悟して、日本のために報復しようと思うか ⇔ 報復しない(メモ者 冷戦時、欧州へのソ連侵攻に際して、米の核使用を明確に否定)
2.「アメリカの確実報復を認識するが故に、北朝鮮が日本へのミサイル攻撃を思い留まる」という前提
100%とは言えない/「アメリカの報復は大したことない」、または「このままでジリ貧になるので、やらないより、先に攻撃した方がよい」と、考えるかもしれない ⇔ 1941年の日本はそう判断。真珠湾は、アメリカに抑止の失敗例とも言われる
3.安倍答弁にあるように「ミサイル撃ち漏らす」「日本に着弾していること」が前提
・日本がアメリカに報復を依頼することは、戦争を継続するということ ⇔ 「日本国民が復讐の念に燃えて戦争を望んでいる」「ミサイルが数発飛んできても、それを覚悟で戦争する」という国民世論になっていることが前提
→ しかし、日本の世論がそうなっているか。/誰が保証できるのか
・抑止というのは、こちらの戦争継続意志があって初めて成立するもの
→ どんな戦争も、奇襲的な第一撃から安全を守る手立てはない/一発の攻撃で手を挙げるのなら、そもそも抑止など問題にならない。日本の世論がどう動くか。ミサイル発射にいたる経緯などその時の状況で左右とれるだろう
・以上、「アメリカの報復を恐れ、北挑戦が自制」という論理は、不確実なもの
・さらに、安倍答弁は、日本にミサイルが落ちていることが前提なので「抑止力があるから、日本は安全・安心」という話ではない/一方、「抑止力があるから、報復を恐れ、北朝鮮を思い留まらせる」というのが抑止の論理
→「抑止と安全保障のジレンマ」/抑止の論理そのものが安全を前提としないから
② 意志をなくせば脅威はゼロになる
・ミサイルからの安全を100%保証する道 ⇔ 抑止するべき相手の脅威は「能力と意志の掛算」で成り立つ概念
→ 相手の能力を凌駕する能力が持てないなら、「相手の意志をなくさなければならない」/意志ゼロなら脅威ゼロ
・従来、意志は不確実なので、能力に着目し対抗措置を考えるのが防衛政策だった/武器の性能・量を重視
→「意志は変わる」と言っても戦争の意志・・・ 戦争する動機がなければ、戦争を始める意志も生まれない
*北朝鮮が日本をミサイル攻撃する動機とは? 日本と北朝鮮には戦争で解決しなければならない対立はない/過去の植民地支配も、拉致問題も、戦争ではなく国交正常化の前提(メモ者 包括的な協議・解決)となる課題
→ 一方、北朝鮮は、朝鮮戦争(メモ者 休戦)以来アメリカと敵対(メモ者 核攻撃の脅威にさらされ続けている)
/動機はここ! アメリカとの敵対関係の中で、在日米軍が「北朝鮮を滅ぼしに来るかもしれない」という恐怖から派生
→抑止力と称してアメリカの攻撃力が、そこにあることで、相手の先制攻撃のインセンティブを与えている、という構図
・北朝鮮は、体制維持が至上の目標/進んで戦争する余裕はない、という認識が一般
◆島しょ防衛のケース
①占領された島を奪回することの難しさ
・2018年12月「防衛計画の大綱」・・・「離島を守るためには海上・航空優勢を確保することが大事である」と当然の記述/が、続けて「しかし、万が一、占領された場合には、速やかにこれを奪回する」
→不思議な記述/島が占領される。つまり海上・航空優勢を失った状態、敵に海と空を支配された状態で、どう速やかに奪回するというのか?
・おそらく長崎県相浦の陸自め水陸機動団が決死の覚悟でゆくのかもしれない。そうとうな犠牲を覚悟しての任務
(メモ者 AAV7は水上では極めて低速。空と海からの援護もなく、恰好のまと)/ 作戦としての現実性はない
・最も大事なこと/ 島を奪回しても、それで戦争は終わらないということ
→ 軍隊を使ってても島を奪いに来るほど本気なら、取り返しに来る、と考えるべき/取る・取り返すが延々とした繰り返しか、戦争を本土に拡大して決着させようとするか、のいずれかになるはず
→相手は、不利な条件での講和を受け入れると考えにくい。/互いに消耗し、耐えきれなくなった時に、「この辺で手を打とう」という妥協=講和が設立する。こまで行かないと講和は成立しない/つまり、戦争は簡単におわらない
・「防衛大綱」には、そのあたりが考えられてない/「沖縄に海兵隊がいる」「陸自が水陸両用戦闘機能を持つことが抑止力になって、島を取りに来ない」という程度の認識/ その根本のところが危うい
・さらに/領土を奪うために軍隊を出すことは、国連憲章違反 /いきなり軍隊をだすより、相手は、漁民の難破を装い上陸し、それを保護するために海警が領海に入っくる方があり得るシナリオ ⇔ それを海保で排除できない場合に「自衛隊が海上警備行動で出で行く」「治安出動で出ていく」ことで「シームレスに対応する」という政府の構想
→相手の思う壺/ 相手は「漁民保護のための警察部隊に対して、日本は軍隊を出してきた。こちらも軍隊を出さざるを得ない」と反応するに違いない
・自衛隊をシームレスに出動させる態勢を持つことが「抑止力」と言われるが、実際にやると戦争に拡大する危険がある(メモ者 しかも、相手が、国際法上の「道義」を掲げて…)
→「抑止と拡大のジレンマ」/むしろ、グレーゾーンに自衛隊を出したら、その時点で「政治的に負け」
②アメリカの出動は抑止力になるか
・アメリカの基本的立場 領有権がどちらにあるかはコミットしない
→無人島の領有紛争に巻き込まれたくない、一方で中国の横暴を放置てきない、というジレンマ
・そもそも無人の小島のために自国の兵隊の命を差し出すのか疑問 (メモ者 安保5条の防衛義務は、それぞれの国の手続きにかける、ということしか言ってない。アメリカは、開戦権は議会がもつ。議会の議決なしに、紛争介入できない)
・仮に米軍が出動すれば、本格的な米中戦争になり、どこまで拡大するかわからない /どんな規模であり、米中戦争になれば前線基地である日本が戦場に
→ 米軍の出動態勢が抑止になるというのでは、その抑止が崩れた時、本格戦争になり、日本は戦場に /「抑止と拡大・抑止と安全のジレンマ」
・もっとも/“中国はアメリカとの戦争を本当は望んでないので、米軍が出ると思わせておく方が抑止になる”との考えもあるが、それは、こちらの思い込みかもしれない/ 核心的利益にかかわれば軍事をだすかもしれない、偽装漁民による戦争に拡大する危険の小さいやり方も、選択肢となる
・尖閣… 日中間の固有の紛争要因/ 中国がどのやり方を選択するのか⇔日本がどの手段で抑止するのか、戦争への拡大をどの程度予測し覚悟するのか ⇔ ここが問題の本質
→ 米軍が出れば米中の戦争に拡大し、日本が攻撃対象になることも予測しないといけない
→戦争の展望が持てないなら、政治的に解決する以外にはない/ 中国が本音でアメリカとの戦争を避けたいのなら、米軍の参戦を求めるのではなく、仲介役として事態収拾を図る方が現実的
◆南シナ海ケース と 台湾海峡ケース
★南シナ海で中国は抑止されているか
・アメリカ 航行の自由作戦…人工島の周りを軍艦で航行/対し、中国海軍が妨害⇔抑止の理論で説明できるか?
・「南シナ海で中国を抑止する」とは・・・2つの意味 /力づくで現状変更に及ぶことを抑止する意味 と 人工島を中心に構築された軍事インフラを利用し、他国船舶の安全を脅かすことを抑止する意味がある
→ 中国はすでに現状変更を繰り返し、人工島の建設と軍事化を完了/これまでのところ民間船舶の航行妨害はない
→「航行の自由作戦」は、具体的な何かを抑止するというより、中国が我が物顔で支配することを許さないという「政治的意志」の表明 /「何かをしたら許さない」という具体的メッセージではない。戦争を決断するレッドラインが存在しない
→中国も何を抑止されているのかわからない/ 抑止とは、戦争する意志と能力を相互に認識するところで成り立つので、レッドラインがない、ということは、一般的防衛意志の表明であって、具体的な抑止効果はない
・他方、政治的意志の表明としては、相手の行動に応じて対応の変化が必要 ~ 同じことの繰り返しでは、政治的効果は薄まる ⇔ トランプ政権 回数を増やした。が、対応の変化は、中国には挑発と映ることとなる
→相互のエスカレートが進めば、現場で予期しない衝突の危険性/どこかでエスカレートを止める必要
★台湾問題で、中国を抑止することはできない
・アメリカ 「航行の自由作戦」を、台湾海峡にも拡大 /南シナ海の人工島は国際的には領土と認められてないもの。あえてそれをアピールするために軍艦を出す動機は理解できなくはない
・台湾海峡・・・政治的には別にして、軍事的緊張も領土紛争もあるわけではない/ 中国から見ればいやがらせ以外のなにものでもない(メモ者 西側諸国も「1つの中国」を承認している)/予期せぬ衝突、戦争への発展を危惧する向きも
・アメリカは何をしたいのか?・・・ 「何かあったらアメリカは放っておかないぞ」のアピールかも・・・?/台湾は中国にとって絶対に譲れない国土の統一という核心的利益の中で一番のコア部分。武力でもっても意志の変更はできない
→ つまり、抑止という意味でも、力による強制外交という意味でも、アメリカは成功しないやり方を実施
*共にあれば巻き込まれ、共にしないと見捨てられる
・台湾・南シナ海のケースは、日本にとって他人事ではない
→15年のガイドライン改定・新安保法制…日米共同の抑止に重点 /南シナ海で共同訓練、沿岸国に寄航と活動/米韓防護の任務 17年2回、18年16回実施
・米艦防護・・・米軍と業同行動する自衛隊は、米艦が襲われた時、武器を使って守らなくてはならない/ 安倍 米艦防護の実施で「同盟はかつてなく強固にになった」 ⇔ 不意の軍事衝突に巻き込まれる危険も「かつてなく強固になる
・アメリカが軍事的緊張のある中で行動をともにしないと、いざというときに日本が見捨てられる心配がある⇔ 行動をともにすればアメリカの戦争に巻き込まれる心配が高まる /これが「同盟のジレンマ」
・南シナ海、台湾海峡で本格的な戦争になれば、いずれにしろ在日米軍いる日本が戦場となる
・戦争を避けるために抑止力を強化する、ということかもしれないが
南シナ海における対立の本質は「米中の海洋覇権をめぐる争い」
台湾問題は、中国にとって核心的利益のコア部分、台湾にとっては独立の問題、アメリカにとっては自由な政治体制の選択を保証する秩序維持の問題
~ 少なくとも いづれも日本にとって、主権や領土の問題ではない /この構図の中で日本の選択が問われている
・日米同盟の強化で、抑止力は高まるかもしれないが、/抑止が破たんし戦争になれば、日本は巻き込まれる。同時に戦争当事者となるので、アジア諸国と協力して米中を仲介し、事態の収拾を図る余地もなくす/抑止一辺倒のジレンマ
◆ホルムズ海峡のケース
・ペルシャ湾・ホルムズ海峡で、タンカーがミサイル攻撃される事件多発。アメリカが船舶護衛の「有志連合」呼びかけ
→ 海軍を出せは、タンカーへの攻撃が阻止できるか?/遠方からのミサイル、ドローンでの攻撃は防げない
・海軍の派遣が抑止として機能する前提・・・タンカー攻撃すれば軍事的報復を受けるという認識を持たせること/つまりイランを封じ込めて圧力をかけること ⇔ 各国も、そこまでの覚悟・意志があると思えない
・日本 ホルムズ海峡の外の海域に、調査研究を目的に派遣/ タンカー護衛の任務はない
→何のための派遣か?/有志連合参加はイランと敵対、仲介外交の余地消滅 /一方、アメリカの要請無視はできない
→ アメリカへの義理立て/政治的なツジツマわせのために自衛隊を出すこと自体、おかしなこと /同時にねタンカーを守れないという意味で、まったく役ただず
*仮に、「自衛隊がタンカーを守る」とすれば2つのやり方がある
1.海上警備行動 犯罪防止の警察活動/攻撃相手をむやみに叩けない。まして警察行動で国家に強制はできない
2.自衛権の行使 国家を相手にタンカーを守るのであれば、自衛戦争としての反撃/が、日本はタンカー攻撃の主体が誰なのか明確にしてない。イランとの戦争は望んでない(メモ者 石油の輸入先でもある)
・結局、警察行動では軍事的に対応不可、自衛権行使は政治的に選択不可/ので、自衛隊を出しても何も解決しない
・そもそも問題の発端/米トランプ政権が、イランが順守してきた核合意から一方的に離脱し、イランへの制裁を強化したことにある/制裁はするが、イランに何を望むのか~核開発力の放棄か、サウジを攻撃する武装組織と縁を切ることか。相手もどこまで妥協すればよいかわからない ⇔ これでは抑止も強制外交もなりたたない
→ 問題の根源であるアメリカの市政を変えなければ問題の解決はない
・解決の展望のないまま自衛隊を出すことは賛同できない/軍事力は、それで解決しなければ、さらに強硬な手段としてて使われるエスカレートの性質をもっている
3.抑止が成立する条件
◆「同盟の抑止力」という成功体験を疑う
・抑止という政策・・・抑止が破たんした場合に戦争に巻き込まれる。抑止と思って行動したことで相手の攻撃を誘発するジレンマがある / 抑止と安全とは、必ずしも両立しない、ということ
・日本・・・長きにわたり戦禍に遭わなかった/冷戦構造の中で最前線に位置する欧州も日本も、ソ連かせの侵攻はなし/同盟の抑止力は機能してきた、と言える。
→この大きな成功体験が、アメリカとの同盟に依存すれば戦争から免れるという観念を根付かせた
★米ソ冷戦時代とは背景が異なっている
・その成功体験は、米ソ冷戦という特殊な背景で培われたもの/その背景が、今日はどうなっているか。考えるべき点
・ソ連・・・「社会主義」を信奉し、独自の経済システムと経済圏を持っていた。今日の中国は、国家統制のもとで資本主義的に発展しようとしている、北朝鮮も、外部との交易なしには経済的になりたたない
→資本と技術は国境を超えて広がる。世界単一市場となり、国家間の経済的相互依存関係は、かつてなく深まっている
→戦争で相手国のインフラを破壊すれば、自ら投資した資産を失うとか、モノや情報の流通が阻害され、経済システムがマヒすれば、自国も経済活動が成り立たなくなり、金融はリスクから逃れようとパニックになる
*が、経済的損失を伴ってもなお戦争に訴える対立がありうる。その対立はどのようなものか
・冷戦時代は明確 米ソの経済と統治のシステムをめぐるイデオロギーの対立は、原理的に非妥協的/相手の存在否定
・が、戦争で相手を滅ぼすことでは、対立は解決できない
→ 米ソとも大量の核兵器を保有、そして使用する意志をもっていた /同時に、双方とも滅びることが確実に予見できた
→核は使われる兵器であると認識されたがゆえに、抑止の中核的手段となりえた / 相互確証破壊
★米中対立を「新冷戦」と呼ぶことの問題点
・米中・・・貿易、技術、国内統治体制をめぐり、対立。南シナ海・台湾海峡での軍事的な緊張もある
/が、このまま戦争に向かうとは誰も思っていない ⇔ここに米ソ冷戦と違う米中関係の特徴がある
・冷戦とは・・・戦争も辞さない非妥協的な対立/が、核による相互抑止で熱い戦争とならなかった状況
・今日の米中関係・・・国際的公平性、国内統治のやり方の違いで、妥協の共通基準が見いだせないが
→ ゜核の応酬で自分が滅びるリスクを負っても相手を打倒する」対立ではない/ 米中とも、相手を自分のシステムによって支配しようと考えていないから /どちらかと言えば、中国の振る舞いについてアメリカが一方的に文句を言い、中国が、それに応じることなく、やりたいようにやっているという構図
*米中戦争の危機を指摘する「ツキディデスの罠」
古代ギリシアのツキディテス 「戦争の要因」を「富と名誉めぐる対立と恐怖」と描いた ~今世界は米中の派遣交代の児戯にあり、勃興する挑戦国に、覇権を奪われる恐怖が戦争要因になっている、という考え方
→ この場合、戦争の動機はアメリカにあり、挑戦国を「戦争でつぶすなら早い方がいい」となる
・中国に対するアメリカの見方の厳しくなっている背景・・・経済規模だけでなくハイテク技術で追い越されつつある覇権国としての恐怖の表れと見ねことができる。米国は、貿易、IT技術移転に関し強硬姿勢
→ 経済的不利益によって相手の意志をコントロールする強制外交 /暴力、脅しで意志を強制する戦争と別物
→ なぜか/互いに市場経済を前提とした競争の中で、自分優位のルールを飲ませようとする争い/ 相手を滅ぼせば、「ルールを飲ませる」目的の達成はできない
★不確実性の抑止は成り立つか
・もう1つの考え/抑止戦略に立脚しながら、冷戦との違いを踏まえ、戦略を「修正」する考え方
・冷戦時代は、核につながる拡大が確実であったゆえに戦争が抑止された / が、核の応酬に拡大する確実性はない
⇔ が、そのことが戦争となった場合にどこまで拡大するかわからない恐怖を生み、抑止となっているという見方 /「拡大の不確実性による抑制」というべき考え方
~トランプの行動/が、軍艦を出しても、巡航ミサイルを気まぐれに打ち込んでも、中国の南シナ海の行動は止められない、シリア政府による反体制波への非人道的な弾圧も止められない(メモ者 米は、反政府のテロ組織を応援・育成。ISの台頭を招いた、シリアが対ISで力を発揮したという政治面もある)
・「拡大の不確実性」は、抑止とむすびつかない・・・「こういうことをしたらアメリカの反撃が確実だ」と思わせるのが抑止
→「何をするかわからない」では、相手は、「何をしてはいけないかわからない」ので抑止すべき行為が決まらない
→ 抑止の信ぴょう性が崩れ、思惑による誤算の余地が広がり、世界はより不安定化する
・このように、同盟の抑止力の不確実性は増大している/ 「同盟の抑止力」の成功体験を疑う理由がそこにある
◆米国はなぜ戦争に慎重なのか?
・03年、アメリカは、イラクへの先制攻撃で、フセイン体制を崩壊させた(口実した大量破壊兵器はなかった)
・北朝鮮には、交渉で問題を解決しようとしている/ 力の差は圧倒的なのに・・・
・抑止力・・力の優劣が背景/ 論理的にはアメリカを抑止することは誰もできない/が、アメリカが世界中で戦争をしかけているわけではない ⇔それは「戦争が起きないのは抑止力があるから」という論理に背反する事実
→やはり、戦争が起きない理由を、抑止だけで声明するのは無理がある
★アメリカが戦争できない理由
①戦争を決断するには、勝利の見通しが必要
・力に勝るというのは、1つの条件。が、何をもって「勝利」というのか?
例)イラク戦争 フセイン打倒の点では勝利/ 大量破壊兵器の武装解除では、もともとなかったわけで勝利は無理/隠された目的・・・サダム体制を倒し、イラクを民主化し、中東を安定させる点では、むしろ敗北
(メモ者 イラクにシーア派政権ができ、イランと協力関係に・・・逆に働いた)
②戦争になれば、敵も反撃する。それによる味方の損害が受け入れ可能な範囲にとどまる見通し
・イラクで・・・空爆が中心。地上部隊も大量破壊兵器に備えた防護の手立てを準備/損害を最小限に出来ると予測
・北朝鮮・・・韓国のソウルを攻撃する能力を有し、損害は民間にもおよび甚大。20万人の在韓米国人の存在/ 受け入れ可能とは言えなくなる
(メモ者 北朝鮮が崩壊すると、大量の難民—武装兵士も紛れて、周辺国へ。治安悪化と経済的負担のリスクもある)
③勝った後、以前よりもはるかに安定した秩序が訪れる見通し
戦争は破壊が目的ではなく、勝者に都合のよい秩序をつくることが目的/イラクは失敗。北朝鮮も見通し不明
→ 一時、核施設への限定攻撃、指導者の暗殺という作戦が取りざたされた/ アメリカの能力なら不可能ではないが、「戦争は最も錯誤に充ちた事業」(クラウゼビッツの教訓)であり、作戦成功後の北朝鮮の出方、国内混乱が読めない限り、作戦は実行できない/ 戦争に勝っても、問題解決にはならない、悪化する考えられるから
★戦争にならない理由を抑止で説明できない
・よってアメリカは戦争に慎重になる/遠くからミサイルやドローンを使って攻撃する程度のことは日常的にやれるが、本格的な侵攻作戦は、やる意志なし/空爆程度では、強固な統治が保たれている国家が音をあげることはない
・戦争とは、相手の意志を変えるまで強固に、それでも意志を変えない相手を排除する覚悟がないと、勝利できず、勝利しても目的を達成できるとは限らない
・今や、アメリカが抑止されることはなくても、戦争に内在する不確実性とコストそのものが、アメリカをして戦争という手段の行使をためらわせている/ それは「報復の恐怖」を本質とする「抑止」とは別の論理で説明されるべきもの
→ 抑止以外にアメリカの戦争を制約する要因の存在—ましてアメリカ以外の国はさらに制約される・
→その要因に気づいた時、アメリカに対抗する核開発とアメリカの軍拡という悪循環を断ち切る道も見えるのではないか
◆抑止は永久不滅のキーワードではない
・安全保障の考え方として抑止以外きいたことがない。それであたかも永久不滅の原理と認識してしまう
⇔ 歴史を振り返ると/抑止が安全保障の中核的概念となっている時代が続いてきたわけではない
★抑止は、米ソ冷戦時代に固有の概念
・戦争の歴史・・・敵味方が同じやり方で戦争している背景に、一種のマインド・セットの共有が考えられる。時代精神と呼ばれるもの /抑止にも、それを成立させる敵味方共通の時代精神があった。
①20世紀前半の2つの世界大戦の時代・・・国家間の対立を解消する一番有力な手立ては戦争との時代精神を共有
・ WWⅠ後、戦争違法化への動きも出てくるが、戦争は政治目的達成、国家間対立の解消の一番有力な手段であるとの時代精神の共有が、19世紀以来続いてきた⇔軍隊は戦争をし、勝つために存在・・・その追求の果てに核兵器が登場
②WWⅡ後、冷戦時代に。米ソが核兵器を持って対峙する時代になると、「核の打ち合いは、互いに滅んでしまう」という相互確証破壊の認識を共有 ⇔ この時代、軍隊、核兵器の存在は「抑止するため」で「使うのではなく、使わないようにするために、軍隊・核兵器がある」という論理が誕生/「核抑止を中核とした抑止」という考えは冷戦の賜物
③ソ連が崩壊し、冷戦が終結/すると、世界各地で内戦が起き、人道的危機が広がる
⇔ 再び「軍隊を使わないとだめだ」という時代が復活。したように見えるが、かつての国家意志を強制するための戦争ではなく、秩序を維持し、人道危機という犯罪を制止する警察的な役割と位置付けられた
④現在、パワーシフトの時代へ/米中の派遣の抗争・・・そこでの軍隊の使い方は、「航行の自由作戦」という示唆行動。一方で戦争にならないよう中国の乱暴な行動にも耐え、それ以上拡大しないよう行動。ペルシャ湾への空母派遣も
⇔ 政治的シグナルとして軍隊を使う。今日のトレンド
★名誉が戦争の原因として残される時代だからこそ
・現代は、ツキディデスの教訓からすると/ 経済は世界的に統合されている中で「富」のための戦争はあり得ない/戦争より、交渉と取引のほうが、よほど安上がりで確実
・現代は、「名誉」が戦争の要因として残されているのでは・・・/覇権国アメリカにとって「アメリカを再び偉大な国にする」という名誉、中国では「大中華の復興」という名誉(メモ者 4000前から世界の中心に君臨してきた中国。18世紀以降の弱体化した200年の間に、西欧列強が現在に通じる国際ルールを確立。そのことへの強烈な不満がある)
→ どちらも自己承認願望を前面に打ち出している。=自国第一主義の対立であり、互いが恐怖を持つことで、どこかで戦争につながりかねない状況がある
→ 一方、戦争というリスキーな大事業をしようとすれば、勝利の展望、損害の見積もり、そして戦勝後の世界がどうなるかを展望する必要がある/国家が合理的に判断する限り、ほぼ戦争という答えは出てこない
・抑止」とは・・・もともと戦争に勝つ見通しに関わる概念/「負けるような(または、利益にならないような)戦争)はしないでおこう」という認識の上に「抑止」がある /しかし、名誉の対立は戦争では解決しない⇔ 名誉を譲れば自己否定となり、名誉の欲求を力で抑圧すれば、どこかで無理が来て抑止が破たんする
*戦争が国家間の対立を解決する手段でなくなりつつある時代 ⇔ 戦争を前提とした抑止が安全保障の中心概念であり続けるはずがない。/では、何をもって、安全保障政策を構築していくか?という課題に世界が直面している
⇔ だから、戦争するつもりがないまま軍隊を政治的示唆の手段に使う、という危険な状況が生れている、
*抑止に替わる戦略のコア概念とは?/抑止とは、戦争を防ぐための理屈。戦争が暴力によって国家意思の実現を目的としているのであれば、その本質の中に戦争をさける道筋がある
⇔ 暴力以外の手段で国家意思を実現すること、受け入れない相手を滅ばすのが戦争なら、相手が受け入れられる程度に国家目的を切り下げることができれば戦争を避けることが可能なはず
(メモ者 キッシンジャーが唱えたアメリカ外交の目的と一致
*キッシンジャー氏『核兵器と外交政策』、
①中小国が核兵器を保有すれば、それを用いることなく全面降伏することはない、②)しかし、その生存が脅かされるとき以外は核兵器を用いることはない、③ 従って、核兵器を持つ中小国に対しては、軍事力でその国を破壊しないと約束することが重要――と主張
/孫崎・・外交には自分の要求100%達成--相手はゼロ%はあり得ない。互いの譲歩が不可欠 )
・平たく言えば、妥協か戦争かの選択の問題。今日、人の命を奪ってまで一方的に勝たなければならないほどの問題はあるのか。大国が自国第一主義に走る商人願望の時代だからこそ、その問いかけが必要
おわりに――居心地のよい同盟の時代はおわった
・安保条約の「片務性は、52年の対日講和、安保条約から続いている
・当時、アメリカは、日本を反共の防波堤とする一方、軍国主義の復活を阻止するため、日本の武装解除(メモ者 48年には、日本再軍備の方向転換が出ている。それは米軍支配下の再軍備)と基地の使用をセットにして日本の独立を回復。/60年安保では、基地提供と日本防衛義務が明記
・日本は、軍事的負担を軽くして経済復興に専念し、高度成長を経て経済大国に/ベトナム戦争を経て、アメリカの経済一強体制が揺らぐと、思いやり予算、対ソ作戦のためのP3C大量購入などで支援・貢献
・冷戦が終結すると、北朝鮮の核開発を機に極東が不安定化。アメリカによる地域安定に日本の貢献がもとめられ、米軍の後方支援の枠組みがつくられ、やがて自衛隊のイラク派遣につながっていく
・今日、中国の軍事的台頭に対し、集団的自衛権を容認し、米艦防護する新安保法制で、米軍との一体化が進展
⇔ 日米同盟は、国際状況と日米の国力の変化にあわせ、調整を重ね、互いに居心地のよい同盟を維持してきた
/が、トランプはこれに不満という。居心地がよいと思ってない = 果たして「同盟はかつてなく強固」なのか?
・イラク戦争に際してアメリカは、「同盟が任務をきめるのではなく任務が同盟を決める有志連合」を主張/それは、アメリカについてくる国は味方で、そうでない国は味方ではない、というもの /アメリカが自由世界のリーダーとして同盟国を守るという同盟関係ではない /それに拍車をかけるトランプ政権。が、単なる「気まぐれ」ではない
→ それは「世界の構造的変化によるものなら、これまでのような修正で、居心地のよい同盟関係を続けることは不可能
・アメリカには世界が思うようにならない居心地の悪さがあり(メモ者 植民地体制の崩壊、冷戦の終結という世界の構造変化で、国際政治の主人公が市民社会や非同盟諸国に代わりつつある)、日本にとっては、アメリカと軍事的に一定化することでアメリカの戦争に巻き込まれるという居心地の悪さ
⇔ これまでの日本は、アメリカにつくか、ソ連・中国につくか、自前の核武装するかの三択を自ら設定。アメリカにつくしかない、という結論を出してきた。/その背景に「成功体験」
→ 今、アメリカを含む大国が道義よりも自国の利益を優先する時代 /日本は、第四の選択肢をもたなければならない
→それは大国の抑止力に頼らず、アメリカ、中国とも上手に付き合い、対立のタネをへらしていく、賢くしたたかな生き方を模索すること
(メモ者 市民社会、非同盟諸国と連携し、道義のパワーで、貧困の拡大、気候危機など地球規模の課題解決に尽力する方向性の中に、答えがあるように思う)
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