任命拒否 学問の自由に与える影響はきわめて深刻 国際学術会議が書簡
国際学術会議(ISC)が、菅首相の任命拒否に対し「学問の自由に与える影響をきわめて深刻」と懸念を表明。「自由で責任ある学術の実践」の内容を示したうえで、「世界の学術を代表するものとして、ISCが、学術の最高議決機関のメンバーを推薦する際の学術上の選択の自由を擁護し、確保することに取り組む日本学術会議に強力な支援を提供することが適切だと考えています」と支援を表明した書簡を、日本学術会議会長が、記者会見で紹介した。下段に同会議による翻訳全文。
*国際学術会議 40の国際的な学術団体と、140以上の国や地域を代表する学術団体が加盟する組織
記者会見では、学術会議の活動として提言とその1年後に提言の効果が不十分だった場合に出されるインパクトレポートのスケッチ的な一覧、活動についてのるQ&A、学協会・大学等の声明等一覧表などが資料としてアップされている。
【件名:日本学術会議の総会への6人の学者の任命を承認しないとの日本の内閣総理大臣の決定に関する懸念】
国際学術会議(ISC)は、菅義偉内閣総理大臣が日本学術会議の総会への6人の学者の任命を拒否したとの報道以来、日本の動向を注視しています。
私たちは、この決定が透明性を欠いていることについて日本学術会議が表明している懸念に留意し、このことが日本における学問の自由に与える影響をきわめて深刻に捉えています。
ISCは、日本学術会議がISCに加盟しており、その結果、国際的な交流と連携を通じた学術の発展を促進するためのコミュニケーションの拡大と緊密な協力の機会がもたらされていることを大変高く評価しています。
21世紀の世界が直面する最も緊急の問題のいくつかに対して、最先端の科学を推進することによって効果的かつ公平な解決策を確保しようというビジョンを共有し、自由で責任ある学術の実践こそが学術の進歩並びに人間の福利及び環境の健全性にとって不可欠であるという価値観を共有する私たちは、日本における最高の独立した学術機関の推薦が菅内閣総理大臣に認められなかったことを懸念しております。最も重要なことは、学術に関わる諸決定(学術活動の優先順位や範囲に関するものを含む。)は、国際的な学術コミュニティで受け入れられている学術の誠実さに求められる条件(scientific integrity constraints)にしたがって行われるものであり、それが、政治的な統制や圧力の対象となってはならないということです。
国際学術会議は、自由で責任ある学術の実践を提唱しており、それには以下のことが含まれます。
学術の進歩並びに人間の福利及び環境の健全性にとって不可欠なものとしての自由で責任のある学術の実践。 このような実践には、そのすべての側面において、科学者の移動の自由、結社の自由、表現の自由及びコミュニケーションの自由、並びにデータや情報への公平なアクセスの保障が必要です。
あらゆるレベルにおいて、学術研究を誠実に遂行し伝達する責任。
したがって、世界の学術を代表するものとして、ISCが、学術の最高議決機関のメンバーを推薦する際の学術上の選択の自由を擁護し、確保することに取り組む日本学術会議に強力な支援を提供することが適切だと考えています。
本件について前向きな解決がなされることを期待しております。
教授 ダヤ・レディ―
国際学術会議会長
国際学術会議・学術における自由と責任に関する委員会議長
南アフリカ計算力学研究会長
ケープタウン大学 数学および応用数学部
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