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コロナショックの被害は女性、特に子育て中の女性に集中 JITP調査

 労働政策研究・研修機構(JILPT)主任研究員・周 燕飛の調査レポート「コロナショックの被害は女性に集中」とインタビュー記事。

 女性の中でも子育ち中の女性、特にひとり親世帯への被害が顕著となっている。

 現在、世帯収入のうち女性が占める割合は、正規雇用で4割、非正規でも2割となっており、加えて全世帯のうち貯金が月収3か月未満が約1/4をしめており、女性の収入減が、家計破綻にむすびつく危険がましている、と指摘する。

 その矛盾の深まりは、真の男女平等にむけての「好機となる可能性を秘めている」と、期待をつなぐ

  以下、レポートから気になる部分の抜粋

【コロナショックの被害は女性に集中】

  • 働き方改革でピンチをチャンスに─ 6.26

・労働力調査 4月の休業者数 597万人 過去最大 / 就業者総数(6,625万人)の約9%、失業者数(178万人)の約3.4倍/求職活動をやめる人も急増・・・非労働力人口 3月から94万人増 /4月時点、労働者の1割が休業または職探しを諦めている状態 = 潜在的失業者

◆女性の休業者比率は男性の3倍以上/特に、18歳未満の子どもを育てている女性雇用者は不利な状況に

・シングルマザーに特に大きな影響/休業者割合・・・男性1.6、未成年子のいない女性4.7%、未成年子のいる女性7.1%。母子世帯の母親8.7%

◆労働供給を一時的に減らさざるを得ない子育て女性・・・通常の景気減速時とは大きく異なり、今回は自ら就業を控える子育て女性が多いことは特筆すべき /臨時休校、登園自粛により、一時的とは言え、子どもの保育と教育という新たな負担が、労働者に重くのしかかったため。新たな負担は、夫婦間でフェアに配分されるわけではない

◆子育て女性の平均労働時間15.5%減、平均月収8.8%減/下落率は、男性の2倍以上

◆テレワークの効果・・・男性で顕著、女性での効果は限定的。特に子育て女性には、思ったほどの効果が発揮されなかった。この背景には、コロナ禍の影響で、食事づくり等の家事負担の増、小中学校や保育園の臨時休園・休校に伴って子育て負担の増加が考えられる。/つまり、テレワークだけでは対応しきれず、休業を選択せざるを得ない女性が多かった。

◆コロナショックは男女の雇用格差を縮める好機

・コロナ禍は、女性が男性よりも大幅に就業時間を減らし、休業している。その状況が長引く場合には、女性のキャリアに深刻な影響が及ぶことが懸念される。

・仮にコロナショックによって大きな「働き方革命」が起きた場合・・・・出産・子育て期も正社員として働き続ける女性が増え、夫婦完全共働きモデルが専業主婦流のライフスタイルに取って代わることも空想ではなくなる。/その意味で、コロナショックは、男女の雇用機会平等を実現する好機となる可能性を秘めている。

 

②雇用回復の男女格差─  20.9.2

・保育園・小中高校が再開、経済活動も制限緩和~ 雇用市場全体/持ち直しの兆し。が、女性雇用の回復は遅々として進んでいない。7月の男性雇用者数は増、女性は減少を継続。/特に子育て女性・・・休業率の高止まり、労働時間回復の鈍さが目立っている

"She-cession"とも言うべき女性の雇用危機・・・リセッション(recession)に伴う雇用喪失が、女性に集中していることから生まれた造語/ 一般的な不況・・・雇用減少は主に男性の側に現れる /今回のコロナショックでは、主に宿泊・飲食、生活・娯楽等のサービス業に壊滅的なダメージ = 女性雇用者が多い産業

◆通常の不況時とは異なり、今回は自ら就業抑制する女性が多い点も特徴的

・「仕事か家庭かの二者択一」に迫られている女性が増加・・・ 通常の男性不況時に観察される「追加的労働力効果」-夫の収入減を補うために主婦が就業を増やすという現象が、現れにくくなっている。

・回復の鈍さが目立つ子育て女性の雇用状況 /67月の労働時間は通常月比12.3%減、月収6.6%減。7月末時点、労働時間は通常月88.9%、賃金93.9%/男性はもちろん、女性全体と比較しても雇用回復が芳しくない/分析結果から、コロナ禍によって増えた家事と子育ての負担が、女性の側に集中していることがうかがえる。

女性収入減が、家計破綻につながる恐れ・・・・日本の多くの家庭=男性(夫)が主たる稼ぎ手と位置付けられ、男性の雇用が守られている限り、女性の雇用減少が家計に与える影響は少ないとみられがち/が、現在の家計の収入構成比を改めてみると、それは大いなる誤解である

→ゆうちょ財団2018年全国調査・・・世帯総収入に占める割合。正規規雇用の妻 約4割、非正規雇用の妻 約2割。未婚・離婚女性等の女性世帯主 帯総収入の7割を超える→ 収入減で、家計は大きな打撃を受ける

加えて、金融資産残高がゼロまたは少額で、3カ月を超えない程度の生計費しか賄えない世帯の割合は24%

→ 約4分の1の現役世帯が、失業や収入減となった場合に、半年以内に生活資金が底をつく/女性の収入減が、家計の破綻につながる恐れがある

◆女性収入の減少家庭の2割が食費切詰め

8月調査から・・・女性の収入が1割以上減った家庭  5世帯に1世帯が食費を切詰め、1割弱が公共料金等を滞納

女性の収入があまり減っていない家庭との比較  食費切詰めと料金滞納の発生割合は、2倍~4倍もの高さ

・家計消費が冷え込む中、女性雇用の減少が状況悪化に拍車をかけている可能性が高い→ 生活困窮者の家庭を救い、所得と消費減少の負のスパイラルから抜け出すため、女性雇用の回復が日本経済回復のカギを握っていると言える。

◆女性の雇用回復をめぐる諸課題 

・問題は、女性の雇用回復は、政策的に容易なことではないということ

  ① コロナ禍による子育て負担増が続いており、元の水準に戻っていない。母親の就業時間が元に戻せない可能性。

  ②テレワーク(諸種の在宅勤務を含む)の定着があまり進んでいないこと

緊急事態宣言中の5月第2週・・・3割近くあったテレワーク比率 7月最終週時点 1割強へ落ち込み/男性や正規雇用者、高所得者のテレワーク比率はコロナ前より38ポイント高い状況を維持。が、女性や非正規雇用者、低所得者のテレワーク比率は、ほぼコロナ前の水準に回帰。女性のテレワークを日本社会に根付かせることは容易ではない

◆男女格差改善の好機を逃さないために

少子高齢化で構造的な労働力不足に直面する産業界にとって、女性活用は長期戦略であり、コロナ禍でも、その方向性が変わるわけではない → 現在講じるべき対策 雇用ミスマッチの解消、所得格差対策、生活困窮者対策

~具体的には、アフターコロナ時代に生き残れない構造的不況業種から好況業種への転職支援、職探し期間を活用した職業訓練の強化、生活困窮者への生活支援策を拡充すべき

 ・中長期的には、コロナショックは男女の雇用格差を縮める好機となる可能性を秘めている。コロナ禍で男性の在宅時間が長くなったため、夫が家事、育児を担う機会は多少なりとも増加したはず(メモ者 子どもが一人増えに等しい、という声も記事もよく目にする)である。それが新たな生活習慣として定着できれば、「男は仕事、女は家庭」という旧来の社会規範も変わっていく可能性がある。

【コロナ禍、子育て女性に負担集中  休業高止まり、求職活動断念も 2020.11.13 全国新聞ネット】

【コロナショックの被害は女性に集中 /JILPT  働き方と雇用環境部門 主任研究員 周 燕飛】

≪─働き方改革でピンチをチャンスに─ 2020.6.26≫

≪─雇用回復の男女格差─  20.9.25≫

 

 

【コロナ禍、子育て女性に負担集中  休業高止まり、求職活動断念も 2020.11.13 全国新聞ネット】

  コロナウイルスの感染拡大による雇用への影響は、男性と比べてより女性のほうが大きいことが指摘されている。女性の就業問題を研究する、労働政策研究・研修機構(JILPT)の周燕飛主任研究員に話を聞いた。 (聞き手 共同通信=岩原奈穂)

  JILPTは、4月の時点で民間企業で働いていた4307人を対象に、インターネットで5月と8月の2回にわたって調査を実施した。「18歳未満の子どもの有無が、休業割合や労働時間にどれほど影響したのか」という観点で分析すると、女性には明らかな影響が出ていることが分かる。コロナ禍によって増えた家事や子育ての負担が女性に集中しているのが理由の一つとして考えられる。

 ―具体的には?

 ・4月時点で働いて、その後休業に転じた人の割合とその変化を見ると、全体では5月末の3・3%から2カ月で1・6%に減少した。一方、子育て中の女性の休業割合は7・1%から6・1%と高止まりしたままだった。ちなみに子育て中の男性は1・0%から0・3%に改善した。

 ―保育園の利用制限や学校の休校は7月末時点では緩和されている。なぜ子育て中の女性は休業割合が高いままなのか。

 ・私自身、保育園や学校に通えるようになれば女性の雇用も急回復すると考えていたので、結果を見て驚いた。保育園や学校は再開されても、分散登校や保育園の登園自粛がしばらく続いた。それで母親への負担も続いたのではないかと推察している。コロナ禍の長期化や感染リスクを心配して元々は復職しようと考えていても先延ばしにしたり、あきらめたりする人もいるだろう。

 ―休業のほかに、失業した人や、求職活動自体を止めている人を足した割合でも、男性4・2%に対して、女性は7・2%と高い。

  コロナ禍での完全失業率の上昇幅や休業割合も、男性と比較して女性が大きく、影響を受けた。安倍政権下で働く女性の数は増えたが、多くはアルバイトや派遣社員など非正規労働者だ。雇用の調整弁に使われた可能性が高い

 ―影響が大きいのは単身女性やシングルマザーだけか。

 ・そうではない。日本では、バブル経済が崩壊するまで、主たる世帯の稼ぎ手は男性で、女性は家事育児を担う代わりに、働いたとしても「おこづかい程度」と見なされていた。ただ男性の生涯賃金は1997年ごろがピークで、その後2割も減っている。一方、世帯所得はそれほど減っていない。女性の収入が穴埋めしているということだ。

 妻の収入は子どもの教育費や住宅ローン返済など家計の中で重要度を増している。妻の休業で収入が減れば、世帯の家計が余裕をなくしたり、生活困難に陥ったりする可能性がある。単身女性やシングルマザーだけの問題ではない

  ―コロナ禍ではテレワークが広がり、定着すれば女性も働きやすくなると期待された。

  男性は5月最終週、7月最終週ともにテレワークをした人の割合がコロナ前より高かった。だが、女性は7月最終週にはコロナ前とほぼ変わらない割合に戻っていた。女性の就業先が飲食業や小売業といったテレワークが難しい仕事の人が多かったためとみている。

  ―コロナ禍で見えた女性の雇用課題にどう取り組むべきか。

  コロナ前には非正規労働者の正社員登用など雇用の質や安定性を高める動きがみられた。これらが後退してしまった印象だ。雇用の質を上げて男性か女性かを問わず労働市場で能力を発揮できるようにすることは、国内総生産(GDP)向上にもつながる。政府は、長期的な視点で正規就業や継続就業を高めるよう取り組み続けるべきだ。

 

★しゅう・えんび 中国・湖南省生まれ。専門は労働経済学 、社会保障論。労働政策研究・研修機構(JILPT)主任研究員。

 

   以下の文中では、図、表、脚注を省略。元のサイトで確認してください

【コロナショックの被害は女性に集中】

JILPT  働き方と雇用環境部門 主任研究員 周 燕飛

 

 ≪─働き方改革でピンチをチャンスに─ 2020.6.26≫

 ◆コロナの影響で4月の休業者数が過去最多に

 新型コロナウィルスを封じ込めるために、政府、企業、個人は、経済活動の自発的縮小を余儀なくされている。その結果として日本を含む世界各国は、さながら「計画的リセッション(designed recession)」と言うべき状態に立たされており、4月以降の日本経済は、「戦後最大の危機」(安倍首相)と言われるほどの落ち込みとなった。このままでは、大きな不況に発展する可能性も高いものと思われる。実際、内閣府が68日に発表した5月の景気ウォッチャー調査によると、景気の現状判断指数(DI)は15.5となり、最低点の4月(7.9)よりやや持ち直したものの、コロナショック前の1月(41.9)と比較すると、26ポイントもの大幅下落が続いている。

 緊急事態宣言(525日)の解除で足元の景況感にはやや改善の兆しが見られるが、感染再拡大のリスクは依然として存在することから、本格回復にはまだ時間がかかるものとみられえる。景気がコロナ以前の水準に回復する時期について、朝日新聞(623日)が主要100社を調査したところ、年内までのV字回復と答えた経営者は皆無であり、「2021年秋以降」が45社でもっとも多くなっている。巨額の経済対策を行っているにもかかわらず、企業収益や雇用環境の悪化は長期に及ぶ見通しである。

 雇用情勢の厳しさを物語る衝撃的な統計が、次々と明らかになっている。総務省が529日に発表した4月の労働力調査によれば、4月の休業者数は597万人に達し、比較可能な196712月以降の数字の中で過去最大である。これは、就業者総数(6,625万人)の約9%、失業者数(178万人)の約3.4倍にあたる規模である。求職活動をやめる人も急速に増加しており、非労働力人口は3月から94万人も増えている。言い換えれば4月時点において、労働者の10人に1人は、休業または職探しを諦めている状態にあり、潜在的失業者と言えるだろう。

 

◆女性の休業者比率は男性の3倍以上

 コロナショックは、男性よりも女性、特に子育て女性の仕事に大きな影響を及ぼしていることがJILPTの最新調査によって明らかとなった。41日時点で就業していた民間企業の会社員4,307人(20-65歳未満)を対象に、5月の就業状況を調査したところ失業・休業した者の割合に顕著な男女間差が見られたのである。特に、18歳未満の子どもを育てている女性雇用者は不利な状況に置かれていることがわかった(1)。

 まず、解雇、雇い止め、企業の倒産による「非自発的失業者」の割合は、男性が1.8%であるのに対し、未成年子のいない女性(女性×未成年子なし)は2.9%、未成年子のいる女性(女性×未成年子あり」は2.2%(うち、「母子世帯の母親」が3.9%)となっている。非自発的失業の発生は全体として見れば低く抑えられているものの、男性より女性(特に母子世帯の母親)の方がやや深刻である。

 次に、自らの意志で離職した「自発的失業者」および求職活動をやめている「非労働力化」の割合についてみると、男性と未成年子のいない女性がいずれも1%未満であるのに対して、未成年子のいる女性は2.2%に上っている。

 そして、もっとも大きな男女差が現れているのは、職に就いているのに実際は仕事をしていなかった「休業者」の割合である。男性の休業者割合が1.6%であるのに対して、未成年子のいない女性は4.7%、未成年子のいる女性は7.1%にも達している。休業によって高まる潜在的失業のリスクは、未成年子のいない女性が男性の3倍、未成年子のいる女性が男性の4.4もの高さである。母子世帯の母親に限ってみると、休業者の割合は実に8.7%にも達しており、新型コロナがシングルマザーの仕事にとりわけ大きな影響を及ぼしていることが分かる。

 

◆労働供給を一時的に減らさざるを得ない子育て女性

 男性と比較して、女性は非正規雇用や中小零細企業に従事している割合が高い。景気減速による人員調整は、経営基盤の弱い中小零細企業から始まり、正社員よりも非正規雇用から行われる傾向があるため、もともと女性は男性よりも雇用喪失のリスクが高い。

 ただし、通常の景気減速時とは大きく異なり、今回は自ら就業を控える子育て女性が多いことは特筆すべきであろう。小中学校や保育園の臨時休園・休校による社会生活の急変が、その背景にあると思われる。当初は「32日から春休みまで」との首相の要請で始まった小中高校の臨時休校は、結果的に5月末まで延長となった。各地の保育園と幼稚園も「登園自粛」、「利用制限」という経過措置を経て、4月から次々と「臨時休園」に入り、「集団保育」が「家庭保育」へと強制移行された。一時的とは言え、子どもの保育と教育という新たな負担が、労働者に重くのしかかったのである。

 感染による死亡リスクの高い祖父母に、子どもの面倒を頼むわけにもゆかず、必然的に仕事に使える時間は減ることになる。

 在宅ワークで仕事と子どもの世話をうまく両立させている女性もいるが、子どもの面倒を見ながらでは仕事が難しいという人も多いはずである。コロナショックによって増えた家事と子育ての負担は、夫婦間でフェアに配分されるわけではなく、母親の方に重くのしかかっているものと想像される

 これまでは景気後退期になると、夫の所得低下や雇用不安に対応するため、妻は新規就業や労働時間の増加によって家計の収入を補うという、いわゆる「追加的労働力効果」が観察された。しかし、今回のコロナショックに伴う不況では、妻の労働力供給行動は全く逆の動きをしている。夫の所得低下や雇用不安にもかかわらず、労働供給を一時的に減らさざるを得ない妻が増えているのである

 

◆子育て女性の平均労働時間15.5%減、平均月収8.8%

 子育て女性における労働供給(3月から5月までの週あたり平均労働時間)は一時的とは言え、大幅に減少している(表1)。

男性会社員の労働時間は、通常月が43.0時間であるのに対して、3月は42.3時間、4月は39.6時間、5月は37.9時間となっており、3-5月平均対通常月の変化率は7.1%の下落である。一方、未成年子のいる女性会社員の労働時間は、通常月が31.2時間、3月が28.1時間、4月が26.6時間、5月が24.3時間となっており、3-5月平均対通常月の変化率はマイナス15.5%である。子育て女性の労働時間の下落率は、男性の2倍以上であり、小中高校の臨時休校が始まった3月では特に大きな下落幅(-9.9%)を記録した。

 労働時間に比べれば、男女ともに月収の下落幅はややマイルドであるが、男女格差が大きいという点は変わらない。男性会社員の平均税込月収は、通常月が30.2万円、3月が29.4万円、4月が28.8万円であり、3-4月平均対通常月の変化率は3.9%の下落である。一方、未成年子のいる女性会社員の平均税込月収は、通常月が14.9万円、3月が13.9万円、4月が13.3万円となっており、3-4月平均対通常月の変化率はマイナス8.8%である。

 3-4月の月収が比較的マイルドな下げ幅にとどまっているのは、企業の自助努力ならびに国民の痛みを緩和する政策、いわゆる「災害救援(disaster relief)」の施策が奏功したものと思われる。新型コロナ対策として、「雇用調整助成金(新型コロナ特例)」、「保護者休業手当助成」、住居確保給付金や子育て世帯への臨時特別給付金等、家計への救援策が次々と打ち出されている。これらの救援策が、新型コロナの長期化に対応しきれるかどうかは不明だが、少なくとも足元においては一定の効果を発揮している模様である。

 

◆低いテレワーク労働者の休業率

 新型コロナウィルスの影響で、「定時に出社して仕事する」ことはもはや常識ではなくなり、時差出勤や在宅でパソコン等を使って業務を続けるテレワークが一気に拡大している。これまで海外に比べ、日本はIT後進国と言われてきたが、4月の緊急事態宣言の発令による外出自粛要請で、多くの企業がテレワークの実施を余儀なくされた。パーソル総合研究所が4月に全国の約25000人を対象に実施した調査では、企業のテレワーク実施率は27.9%に達し、わずか1カ月で2倍に高まったという。また、日本生産性本部が雇用者1,100人を対象として行った5月の調査によると、29%の労働者がテレワークを実施しているJILPT5月調査においても、テレワークの実施率は3割近くになっている。

 テレワークを行っている雇用者は、休業率が顕著に低い(表2)。5月の休業者割合をみると、「テレワークあり」では1.0%、「テレワークなし」では4.2%となっている。ただし、男性と未成年子のいない女性の場合、テレワーク労働者と非テレワーク労働者の休業率には45倍の開きがあるのに対して、未成年子のいる女性については、1.2倍の差に止まっている。

 平均労働時間の推移を見ると、男性のテレワーク労働者は、4月にやや緩やかな下落幅となっている(表2、図2)。女性の場合、テレワーク労働者と非テレワーク労働者の労働時間がほぼ同じような勢いで下落している。子育て女性に限ってみれば、むしろテレワーク労働者の方が4月・5月と、急速な下落を記録している。

 もっとも、テレワーク労働者の休業率が低いことや労働時間の下落幅が小さいことは、テレワークを実施したことによる影響かどうかは不明である。テレワークは、大企業の従業員や正社員を中心に実施されており、こうした労働者は元々労働減少量の少ないグループに属している可能性がある。そのため、企業規模と就業形態をコントロールした上で、テレワークの効果を確認する必要がある。その結果をみると、やはり男性と未成年子のいない女性については、テレワークによって休業確率が下がる効果が確認できる(表3)。

 全体的にみると、労働供給の減少をやわらげるテレワークの効果は、男性で顕著である一方、女性にとってはその効果は限定的である。特に子育て女性にとって、テレワークの実施は思ったほどの効果が発揮されなかったようである。この背景には、新型コロナウィルスによって外食が選択できなくなり、食事づくり等の家事負担が増したことや、小中学校や保育園の臨時休園・休校に伴って子育て負担が増加したことがあると考えられる。つまり、テレワークだけでは対応しきれず、休業を選択せざるを得ない女性が多かったのであろう。

 

◆コロナショックは男女の雇用格差を縮める好機

 新型コロナウィルスの影響で、女性が男性よりも大幅に就業時間を減らしたり、休業したりしていることが、JILPT5月調査によって明らかになったその状況が長引く場合には、女性のキャリアに深刻な影響が及ぶことが懸念される。また、就業を控えることによる女性の収入減がさらに続けば、家計にも大きな影響が及ぶだろう。

 もっとも、働く女性にとっては悪いことばかりではないかもしれない。新型コロナの大流行によって押し寄せるテレワークをはじめとする働き方改革の波は、女性にとっては長期的に有利になると指摘する研究者もいる

電車通勤が不要で、仕事の傍らで子どもの世話もできるテレワークは、もともと男女格差の解消のためにその普及が期待された働き方の1つである。そのほか、時差出勤、裁量労働等時間といった柔軟性の高い働き方も、女性が正社員の仕事を持続させやすい働き方とされる。感染症対策をきっかけに、テレワーク、時差出勤、裁量労働等の柔軟性の高い働き方が一気に広がり、新型コロナ終息後も日本社会に根付くことが期待される。

 柔軟な働き方が普及すれば、女性のライフスタイルに革命的な変化をもたらされる可能性が高い。これまで日本の女性は、妊娠・出産を機にキャリアの主戦場から離れ、子育てが一段落してから、パートとして再就職するという専業主婦流のライフスタイルをとることが多かった仮にコロナショックによって大きな「働き方革命」が起きた場合、出産・子育て期を乗り越えて、正社員として働き続ける女性が増える。近い将来、夫婦完全共働きモデルが専業主婦流のライフスタイルに取って代わることも空想ではなくなるかもしれない。その意味で、コロナショックは、男女の雇用機会平等を実現する好機となる可能性を秘めている。

 備考)本稿の主張・提言は筆者個人のものであり、所属機関を代表するものではない。本稿の分析に用いられる調査データは渡邉木綿子氏より提供されたものである。記して感謝を申し上げたい。

 

≪─雇用回復の男女格差─ 20.9.25≫

38回リサーチアイ「コロナショックの被害は女性に集中」(626日)では、コロナ禍の影響で、女性が男性よりも大幅に就業時間を減らしたり、休業したりしていることを報告した。それから約3カ月が経ち、各地で保育園・小中高校が再開され、経済活動の制限緩和も行われてきた。雇用市場全体でみても、持ち直しの兆しが次第に見え始めている[1]。しかしながら、女性雇用の回復は遅々として進んでいない7月の男性雇用者数は既に増加に転じているが、女性雇用者数は減少を続けている。特に子育て女性については、休業率の高止まりや労働時間回復の鈍さが目立っている。

 

"She-cession"とも言うべき女性の雇用危機

 新型コロナウイルスによる感染症(Covid-19)に端を発した今回の経済不況と雇用急減を"She-cession"と呼ぶ経済学者がいる。これは、リセッション(recession)に伴う雇用喪失が、男性よりも女性に集中していることから生まれた造語である。

 一般的な不況の場合には、雇用減少は主に男性の側に現れることが多い。例えば、2008-09年のリーマンショック時には、世界同時不況の影響で外需が大きく減り、主に男性雇用者の多い製造業で雇用調整が起きた。一方、今回のコロナショックでは、主に宿泊・飲食、生活・娯楽等のサービス業に壊滅的なダメージが生じているが、これらは女性雇用者が多い産業である。このため、通常の不況時に比べて、女性の雇用減が目立つ結果となっている。

 また、やはり通常の不況時とは異なり、今回は自ら就業抑制する女性が多い点も特徴的である。外食の機会が減少したことによって家事負担が増加したり、小中学校や保育園の臨時休校・休園が行われたことによって、「仕事か家庭かの二者択一」に迫られている女性が増えている。このように、家事や育児負担が増える形での就業抑制が行われているため、通常の男性不況時に観察される「追加的労働力効果」-つまり、夫の収入減を補うために主婦が就業を増やすという現象が、現れにくくなっている。

 実際、国際機関の雇用統計をみると、"She-cession"は日本だけではなく、世界各国で進行している世界共通の現象であることが分かる(図1)。日本の場合、女性の雇用者数は昨年末から7月までの7か月で3.2%87万人)減り、男性雇用者(同0.8%減)より減少率が2.4ポイントも高い。コロナショック前後の完全失業率の変化についてみても、男性が0.4ポイント上昇しているのに対して、女性は0.5ポイントの上昇と、女性の方が+0.1ポイント上回っている。一方、リーマンショック時には、この男女差は-0.4ポイントであり、女性の失業率悪化幅の方が小さかった。

 もっとも、日本よりも"She-cession"が際立っているのがアメリカである。アメリカの雇用減少率および失業率増加幅は、女性の方が男性よりも、それぞれ3.3ポイント、2.9ポイント大きくなっており、日本よりも女性雇用の悪化が深刻である。アメリカに比べて日本の方が"She-cession"がマイルドである理由は、新規感染者数や死亡者数が少ないことや、保育園と小中高校が6月初旬から全面再開できていることが大きいものと思われる

 

 ◆高どまりする女性休業者比率と非労働力化の進行

 JILPT41日時点で就業していた民間企業の会社員4,307人(20歳~64歳)を対象に、5月末頃に調査を行い、さらに8月上旬頃に追跡調査を実施した。当該調査によると、コロナ禍がやや落ち着き始めている7月末現在においても、失業・休業した者の割合に顕著な男女差が残っている。中でも、18歳未満の未成年子を育てている女性雇用者の雇用回復が鈍いことが判明した(図2、付表1)。

 すなわち、経済活動の再開を反映して、男女、正規・非正規ともに休業者の割合は減少しているが(男性1.6%0.7%、女性5.3%2.7%)、依然、男女差、正規・非正規差が顕著である。7月末時点においても女性の休業者比率は男性の3.9倍であり、5月末時点(3.3倍)に比べて男女格差の改善がみられていない。子育て女性の休業者比率も、5月末よりも若干の改善はあったが、依然として6.1%で高止まりを続けている

 また、5月に比べて、失業化(仕事はしなかったが求職活動をした人)や非労働力化(仕事も求職活動もしなかった人)の動きが顕著である。失業者の割合は、男性が2.3%から2.8%へ上がり、女性が3.1%のままである。「非労働力化」の割合は、男性が0.3%から0.7%、女性が0.7%から1.5%に上昇している。子育て女性の場合、休業者比率の減少分(1.0ポイント減)が、非労働力化比率の増加(0.7ポイント増)で相殺される形となっている。

  

◆子育て女性は労働時間と賃金の持ち直しが鈍い

 労働時間と賃金の持ち直しについても、子育て女性の遅れが目立つ結果となっている。図3は、3月から7月末まで継続して働いた者の労働時間と賃金の推移をみたものである。

 男性の週あたり平均労働時間は、5月第2週に通常月の88.4%まで落ち込んだが、7月最終週には通常月の95.3%までに回復している。一方、女性の平均労働時間は、4月~5月の落ち込み幅が男性より大きかったこともあり、7月最終週の回復も通常時の93.2%にとどまっている。

 税込月収については、男女ともに6月以降の持ち直しが鮮明である。7月の平均月収(見込額)をみると、女性全体では通常月と同程度の水準までに回復している。男性の月収も通常月と比べて2.4%減(7月見込)まで回復している。

一方で、回復の鈍さが目立っているのが、子育て女性の雇用状況である。子育て女性の67月の労働時間は通常月に比べて12.3%減、月収は6.6%である。7月末時点の子育て女性の労働時間は通常月の88.9%、賃金は93.9%にとどまっている。男性はもちろん、女性全体と比較しても、子育て女性の雇用回復が芳しくないことが分かる。

女性、とりわけ子育て中の女性の雇用状況悪化が顕著であることは、就業形態、業種、企業規模などの要因を考慮しても変わらない(付表2)。ちなみに、付表2の統計分析では、「未成年子あり」の場合に、休業率や労働時間がどれぐらい悪化しているかを見ているが、「未成年子あり」の効果が男性の雇用状況には影響せず、女性のみに現れていることが印象的である。分析結果から、コロナ禍によって増えた家事と子育ての負担が、女性の側に集中していることがうかがえる。

 

◆女性収入の減少家庭の2割が食費切詰め

 日本の多くの家庭では、男性(夫)が主たる稼ぎ手であり、女性(妻)は補助的な労働力と位置付けられている。したがって、男性の雇用が守られている限り、女性の雇用減少が家計に与える影響は少ないとみられがちである。しかしながら、現在の家計の収入構成比を改めてみると、それは大いなる誤解であることが分かる。

 ゆうちょ財団が2018年に行った全国調査によると、世帯総収入のうち、妻の収入が占める割合は、正規雇用の妻で約4割、非正規雇用の妻でも約2割に達している未婚・離婚女性等の女性世帯主の場合には、女性の勤労収入は世帯総収入の7割を超える。したがって、彼女らの収入が減少した場合には、当然ながら家計は大きな打撃を受けることになる[7]

 それに加えて、金融資産の残高がゼロまたは少額で、3カ月を超えない程度の生計費しか賄えない世帯の割合は24%に上る。つまり、約4分の1の現役世帯が、失業や収入減となった場合に、半年以内に生活資金が底をついてしまう。女性の収入減が、家計の破綻につながる恐れもある

実際、8月調査からは、女性の収入減が家計を逼迫させている実態が浮かび上がっている(図4)。女性の収入が1割以上減った家庭では、5世帯に1世帯が食費の切詰めを行っており、1割弱が公共料金等の滞納をしている。女性の収入があまり減っていない家庭と比較すると、食費切詰めと料金滞納の発生割合は、2倍~4倍もの高さとなっている。

 46月期は、雇用者報酬が前期比で3.7%減(金額ベースでは2.6兆円程度減)と過去最大の落ち込みになった。家計消費が冷え込む中、女性雇用の現象が状況悪化に拍車をかけている可能性が高い。生活困窮者の家庭を救うためにも、所得と消費減少の負のスパイラルから抜け出すためにも、女性雇用の回復が日本経済回復のカギを握っていると言える。

 

◆女性の雇用回復をめぐる諸課題

 問題は、女性の雇用回復は、政策的に容易なことではないということである。筆者は当初、保育園と小中高校が再開されれば、子育て女性の雇用状況も急回復すると考えていたが、実態は予想を裏切る結果となった。

 その理由として考えられるのが、コロナ禍による子育て負担増が今なお続いており、元の水準に戻っていないという可能性である。具体的には、保育園や小学校などでは、再開後もしばらくはクラスター対策として通常よりも開園・開校時間を短縮していた。また、放課後の学童や課外活動の再開が遅れていることから、母親の就業時間が元に戻せない可能性もある。

 また、8月調査から見えたもう1つの課題は、テレワーク(諸種の在宅勤務を含む)の定着があまり進んでいないことである(表2)。緊急事態宣言中の5月第2週では、3割近くあったテレワーク比率は、以降急速に低下し、7月最終週時点では1割強にまで落ち込んでいる。男性や正規雇用者、高所得者のテレワーク比率はコロナ前より38ポイント高い状況を維持しているが、女性や非正規雇用者、低所得者のテレワーク比率は、ほぼコロナ前の水準に戻ってしまっている。テレワークが女性の働き方や雇用状況を改善させるという見方もあったが、実際に、女性のテレワークを日本社会に根付かせることは容易ではないようである。

  

◆男女格差改善の好機を逃さないために

 女性の雇用回復は、コロナ禍やコロナショック収束の切り札として期待されている「ワクチン」に左右される部分も大きい。仮に政府の目指している通り、来年の前半までに国民全員分のワクチンが確保できれば、女性の雇用危機も1年以内に収束する可能性が高い。なぜならば、少子高齢化で構造的な労働力不足に直面する産業界にとって、女性活用は長期戦略であり、コロナ禍でも、その方向性が変わるわけではないからである。その意味では、辛抱強く待っていれば、いずれ危機は終息するはずである。したがって、現在講じるべき対策は、雇用ミスマッチの解消や、所得格差対策、生活困窮者対策である。具体的には、アフターコロナ時代に生き残れない構造的不況業種から好況業種への転職支援、職探し期間を活用した職業訓練の強化、生活困窮者への生活支援策を拡充すべきである。

 中長期的には、コロナショックは男女の雇用格差を縮める好機となる可能性を秘めているコロナ禍で男性の在宅時間が長くなったため、夫が家事、育児を担う機会は多少なりとも増加したはずである。それが新たな生活習慣として定着できれば、「男は仕事、女は家庭」という旧来の社会規範も変わっていく可能性がある。

 テレワークについては、カルビー、富士通、日立製作所のように、在宅勤務・テレワークの定着を目指して、成果主義的報酬制度を採り入れたり、職務内容や求める能力を明確化する「ジョブデスクリプション(Job Description)」制度の本格導入を決める動きが次々と現れ始めている。生産性の向上や人材獲得競争の中で、中小企業などもテレワークを定着させるインセンティブは十分にあるだろう。

 コロナ禍で導入の機運が高まったテレワークを、一過性の現象として終わらせないためには、それをサポートするような社内体制の確立が不可欠である。政府もテレワークの導入企業に対しては、資金やノウハウ提供、法制度などの多方面からの支援を行うべきであろう。

 備考)本稿の主張・提言は筆者個人のものであり、所属機関を代表するものではない。本稿の分析に用いられる調査データは渡邉木綿子氏より提供いただいた。記して感謝を申し上げたい。

 

 

 

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