医療従事者の実態調査~防護具・人員も不足 収入減9割、倒産懸念も 国支援待ったなし
日本医労連が、8月に実施した医療従事者の実態調査結果(第3次)について記者会見し、国に対して第5次緊急要請を行った。4月の調査にくらべ、自院でPCR検査を行う施設が増える一方、個人防護具の不足が続き、引き続き感染リスクの不安を抱えて働いていること、事務職員まで検査に駆り出されるなど人員不足が生じていること。心無い言動などの差別的振る舞いや、経営難も深刻で年末一時金が出ない恐れもあり「心身ともに疲弊している状態だ」とのこと。
早急に臨時国会を開いて第3次補正予算を編成し対処しなくてはならない。
【病院、防護具・人員も不足 収入減9割 倒産懸念も 国の支援は待ったなし 医労連調査 赤旗9/2】
【病院、防護具・人員も不足 収入減9割 倒産懸念も 国の支援は待ったなし 医労連調査 赤旗9/2】
日本医労連は1日、医療従事者の実態調査結果(第3次)について東京都内で記者会見し、国に対して第5次緊急要請を行うことを明らかにしました。
森田しのぶ委員長は、前回調査(4月)に比べ発熱外来を設置し、自院でPCR検査を行う施設が増える一方、個人防護具の不足が続き、事務職員まで検査に駆り出されるなど人員不足が生じ、収入減も深刻だと報告。「国による物資の調達や財政補償が待ったなしの状況だ。ただちに臨時国会を開いて第3次補正予算の編成を求める」と訴えました。
川上真理中央執行委員が、全国7組織の労組・120施設から集めた調査結果について、職員のPCR検査が「あり」は21・7%(26施設)、定期的検査は1・7%(2施設)で極めて少なく、外来減による収入減は89・2%、空床確保による収入減は44・2%にのぼると強調。現場からの、感染再拡大の時期に「Go To トラベル」を行ったことへの憤り▽医療従事者への差別的対応が増加しており、公的機関による啓発を求める▽医療従事者への慰労金申請が混乱し、自治体の受付体制も不十分―などの声を紹介しました。
「冬季一時金は難しいと言われた」(岩手)、「例をみない赤字。冬は大きく下がる不安」(鹿児島)などの声を紹介し、「未曽有の危機的状況です。病院倒産の懸念から離職を検討する声も上がっている」と語りました。
厚労省への緊急要請書では、新型コロナを指定感染症としての指定を変更せず、PCR検査拡大や財政補償など5点を求めています。森田進書記長は、経営側である保団連、全日本民医連などとも共同して国民のいのちと健康を守る署名運動にとりくみ、来年度の通常国会での採択を目指すとのべました。
【新型コロナ対応で広がる負担感と冬季賞与への不安 - 8月の医療機関の実態調査結果を公表、医労連9/1】
日本医療労働組合連合会(医労連)が8月に実施した調査によると、発熱外来の設置や新型コロナウイルスの感染疑いのある患者に対する検査を院内で実施する医療機関の割合が4月時点と比べて増加していた。一方で、職員が割かれた部署が人員不足となり、負担が増加しているという訴えが現場から上がっている。夏季一時金については、妥結のタイミングが新型コロナの影響を受ける前か後かで法人の対応が分かれており、冬季一時金についての不安の声が上がっているという。【吉木ちひろ】
調査は8月11-27日に実施。全国の公立・公的病院72施設、地場民間医療機関48施設の組合員から回答を得た。そのうち、医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応については、4月に実施した調査とその結果を比較している。
一例として、通常の外来と区別した「発熱外来」の設置について今回公表の調査結果では、「元々設置していた」が18.3%、「コロナ対応で新たに設置した」が43.8%、「通常の外来のみ」が20.3%、「その他」が17.6%だった。4月の調査では、「通常の外来のみ」と回答していた施設の割合が28.3%であり、何らかの対応を取っている医療機関の割合が増加している。
感染疑いの患者への検査については、今回の調査結果では「院内で対応」が36.1%、「他の医療機関を紹介」が12.2%、「保健所に連絡」が37.6%、「その他」が14.1%だった。4月時点では「院内で対応」と回答していたのは27.0%、「保健所に連絡」は52.6%などの結果が出ていた。
また、衛生資材については、4月と比べて「充足した」が22.5%、「部分的に充足した」が60.0%、「充足していない」が12.5%で、無回答が5.0%あった。具体的な問題点などを尋ねると、マスクの価格が新型コロナウイルスの感染が広がる前の6-15倍になるなど価格高騰を指摘する意見が上がっており、特にN95 マスクについては依然各地から不足しているとの回答があったという。
現場の負担感については、コロナ対応を目的とした人事異動によって職員が割かれた部署の人員不足を訴える回答や、ほかの医療機関や宿泊施設への支援が増加していることによって休暇が取りづらくなっているなどの回答が全国を通じてあったという。
さらに、医労連は今回の調査で、夏季一時金の内容への受け止めや冬季一時金の見通しなどについても意見を求めており、「冬季は一時金を出すのは難しいと病院から言われた」「厳しい交渉になってくる」など冬季一時金への不安の大きさがうかがえる回答が多かったという。
◆新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急要請書(第 5 次) 9/1
国民のいのちと健康を守るためご尽力いただいていることに対し、敬意を表します。
政府は、緊急事態宣言を解除して以降、「GoTo トラベルキャンペーン」を前倒しで実施するなど経済活動の再開を優先させましましたが、7 月下旬より約 1 カ月にわたり新型コロナウイルス(以下、新型コロナ)新規感染者が 1 日 1000 人を超える状況が続きました。感染は、大都市圏から地方へも拡散し、重症化リスクの高い高齢者が多く医療資源の乏しい地方で大規模クラスターが発生すれば、より深刻な事態に陥ることも懸念されています。
こうした中、8 月 28 日、政府の新型コロナウイルス感染症対策本部は、「今後の取り組み」を取りまとめました。新たに示された政府方針では、「ハイリスクの『場』やリスクの態様に応じたメリハリの効いた対策を講じることによって、重症者や死亡者をできる限り抑制しつつ、社会経済活動を継続することが可能」だとしています。しかし、そもそも政府の役割は、重症者や死亡者はもとより、感染の拡大そのものを防いで、国民のいのちと暮らしを感染症から守ることにあります。世界に目を転じれば、欧米でもアジアでも、各国政府や地方政府は、そのためにあらゆる手立てを尽くしています。
医療や公衆衛生を縮小してきたこれまでの政府の社会保障抑制政策が、現状の「限りある資源」となっている医療や保健所のひっ迫という事態を引き起こした最大の要因であり、その抜本的な転換が求められます。さらに、当面する対策においても、医療体制や公衆衛生行政を早急かつ大幅に拡大することこそ必要です。こうした反省もない中で新たな政府方針は「検査体制の抜本的な拡充」「医療提供体制の確保」「保健所体制の整備」などを掲げていますが、その内容は極めて不十分です。軽症・無症状が感染者の多数を占めることを引き合いに、新型コロナ対策の世界標準である「検査と隔離」を徹底する方向ではなく、医療体制と保健所機能を重症者対応に特化することにより、本来求められる抜本的拡充に転換することを回避しようとしています。また、検査・医療の公費負担削減や、営業・外出規制への補償責任回避等をも念頭に、「指定感染症」からの見直しを検討しようとする姿勢は、国民が求める新型コロナ対策に真っ向から反するものです。
いま、政府が取るべきは、医療崩壊を防ぎ、安心して社会・経済活動を引き上げていくためにも、感染の拡大と収束を繰り返すことを未然に防ぐことができるよう、万全の検疫体制を構築して感染症を制圧する抜本的な手立てを講じることです。日本医師会 COVID-19 有識者会議は、「PCR 検査による感染者の把握は、効果的な感染対策とともに、社会・経済活動を起動する上で、その判断と評価のための基本的な指標となる」と指摘しています。諸外国では当たり前の、また、国内でも一部自治体が独自に取り組みをスタートさせている、無症状の感染者をスクリーニングする大規模な社会的検査と徹底したトレーシング、感染者の適切な保護・療養の体制を、国として早急に構築することこそ求められます。
さらに、医療崩壊を回避するための焦眉の重要課題として、医療機関への財政支援の抜本的強化と引き続く医療・介護従事者への支援の強化が求められます。医師会・病院団体の経営実態調査でも、多くの医療機関の経営が大幅に悪化し、そのしわ寄せが感染症と最前線で向き合う医療・介護従事者の処遇に影響している実態が示されています。地域の医療・介護資源を守り、医療崩壊を回避し、感染症対策の最前線に立つ医療・介護従事者のモチベーションを維持する対策が求められます。
また、感染症の流行にともなう不安やストレスから、感染した人や家族、医療関係者やその他の最前線で働く人々に偏見や差別が向かう事態が生じています。こうした状況は、深刻で重大な人権問題であると同時に、差別を避けるため疾患を隠し、受診を阻害するなどの深刻な保健問題を引き起こし、感染の制御を困難にします。差別・偏見の解消には、正確な情報と正しい知識が不可欠です。人権侵害をなくすためにも、感染制御の観点からも、住民を不安のなかに置き去りにすることのない行政としての責任ある対応が求められます。
以上の立場から、下記項目の実現を強く求めます。
記
1.新型コロナ制圧に検査戦略を転換し PCR 検査を大幅に拡充すること
(1)無症状の感染者をスクリーニングする検査戦略に転換し、全国で、いつでも、だれでも、何度でも、公費で PCR 検査が受けられるようにし、感染リスクと社会不安を最小化することにより、早期に社会・経済活動を通常レベルに戻せるようにする政策に転換すること。
(2)全ての医療機関・介護事業所、学校・保育所や公務員など、必要とされる全職員に全額公費で定期的に PCR 検査を行うこと。
(3)全ての新規入院患者、新規施設入所者に全額公費で入院・入所前の PCR 検査を行うこと。
(4)感染経路不明者の居住地・勤務地など地域・職域の全体を PCR 検査による社会的検査の対象とし、無症状の感染者のスクリーニングを徹底すること。
(5)PCR 検査によるスクリーニングと陽性判明者の接触者に対するトレーシングを徹底できるよう、保健所・保健センターの体制を大幅に強化・拡充すること。接触者を追跡調査するトレサーを早急に養成・確保すること。都道府県をまたぐ民間検査センターへの委託の調整を国の責任で行うこと。なお、保健所・保健センターの非常勤職員の正職員化を早急にすすめること。
(6)陽性が判明した軽症・無症状者の適切な保護と療養を確保すること。宿泊療養の待機を含め自宅療養期間中の経過観察・療養管理・生活サポートをパッケージで制度化すること。陽性判明に伴う休業・休職期間の経済的損失を全額補償すること。
2.全ての医療機関・介護事業所に対し新型コロナ対応と医療・介護提供体制確保のための十分な財政補償を行うこと。
(1)コロナ禍による医療機関・介護事業所の減収を補填し、国の責任で地域の医療・介護資源を守ること。
(2)感染第 2 波以降についても、医療・介護従事者に対する慰労金を支給するなど、医療・介護従事者の社会的役割に見合った賃金水準への底上げをはかること。
(3)PPE 確保、感染症対策のための財政措置を継続・強化すること。
3.国と自治体の責任で「コロナ差別」を解消すること。住民の不安払しょくのため新型コロナ対策を抜本的に強化するとともに、正確な情報をリアルタイムで公表すること。
(1)各地域において、新型コロナについてどのような検査・治療・療養等が受けられるのか、その具体的な内容と対応する医療機関等の情報を公開すること。感染状況と検査・医療へのアクセス、稼働状況などに関する情報を随時更新し、メディアを通じてすべての住民に分かりやすい形で公表すること。
(2)新型コロナの検査、入院、宿泊療養等に要する費用は全額公費負担を堅持するとともに、後遺障害への補償を制度化し、治療・療養に関する経済面の不安をなくすこと。世界的なコロナ・パンデミックが収束するまでの間、健診項目に新型コロナの検査を追加すること。
(3)「コロナ差別」解消は、人権問題としても感染制御の面からも、国と自治体の責任であること改めて明確にし、差別や偏見を国と自治体の責任で払しょくすること。自治体・保健所・地区医師会や地域の医育機関・医療機関等との連携をはかり、事業所や自治会ごとなど身近な単位で(「三密」回避などの感染防止対策に万全を期し)「コロナ差別」解消に向けた住民への情報提供と啓発の機会を繰り返し設けること。
4.新型コロナは、感染症法に基づく指定感染症(二類感染症相当)としての指定を変更せず、保健所の増設・保健師等の増員など公衆衛生行政の拡充を図るとともに、最低でも「入院患者受入確保想定病床数」を国の責任で確保できるようにすること。
5.政府が見切り発車した「GoTo トラベルキャンペーン」は一旦中止し、安心して社会・経済活動を引き上げられるよう、万全の検疫・検査体制を構築することを優先すること。
以 上
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