日本の「容量市場」 EUとは正反対 ~ 再エネ抑制、原発石炭温存
「容量市場」とは、電力市場自由化、発送電分離が進む中で、再エネを推進しながらも、火力など予備の発電能力を適正に確保するために、その費用を市場で負担するための仕組み。EUでは、CO2f排出の多い石炭火力、出力調整ができない原発は対象外となっている。
が日本では、制限なし。入札た結果、シェアの8割以上を電力大手が独占( 発電量力が売り買いされる。すでに建設費の多くを回収したように古い火力、原発は低価格で入札でき、断然優位。落札価格以下で入札した電力について、4年後に落札価格で支払われる。)。その発電能力は、総括原価方式のもと国民負担で築き上げたものだから、二重取りである。
落札した電力の中で、水力以外の再エネは0.2%(FITの適用されている発電設備は対象外)。
事実上発送電分離してない電力大手は、自社内で相殺される。発電設備をもたず、再エネをまとめあげて販売する新電力)には打撃となる。
約定価格は想定した0.9円ではなく、上限ぎりぎりの1.4円。国民負担1.6兆円。
事実上の再エネつぶし、原発、石炭火力温存、電力独占支援の制度である。
気候ネットの声明、ISEP飯田哲也氏のインタビュー記事より
【石炭火力や原発を温存し、気候変動対策に逆行する 容量市場の抜本的見直しを 気候ネット9/16】
【国の「太陽光・風力発電推進」どこまで本音?再エネ政策に漂う不透明感 net IB news2020/09/299/24】
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【石炭火力や原発を温存し、気候変動対策に逆行する 容量市場の抜本的見直しを 気候ネット9/16】
NPO法人気候ネットワーク 代表 浅岡 美恵
2020年9月14日、電力広域的運営推進機関が容量市場メインオークション約定結果を公表した。約定総容量は1億6,769万kW、約定価格は14,137 円/kW、経過措置を踏まえた約定総額は1兆5,987億円とされている。
容量市場は将来(4年後)の電源確保を目的に既存の設備に対してあらかじめ対価を支払うしくみとして創設された新たな市場である。今年7月に第一回目のオークションが実施され、約定価格などの動向が注目されたが、想定された指標価格(新規の電源投資を促すために必要なkW価値への支払額(NetCONE))の1.5倍で設定された上限価格とほぼ同額の14,137円/kWという極めて高額な価格で約定されたことを受け、以下に挙げるようなこの制度の問題が改めて浮き彫りになった。
1.設備費用が回収された古い石炭や原発に巨費が流れる
-従来から電源を持つ電力会社の二重取りー
この制度ではゼロ円で入札した電源にも一律の約定価格が支払われる。今回の公表では12,698万kWの“安定電源”がゼロ円で入札したことが報告されているが、旧一般電気事業者が独占時代に総括原価方式のもと電力消費者の負担で建設してきたこうした電源に対しても巨費が流れ、電力会社は二重取りすることになる。例えば100万kWの石炭火力は、設備容量80%を見込んで年間で113億円となり、2010年以前に建設された電源に対する1年目の経過措置(控除率42%)を踏まえても66億円が支払われる。なおこの経過措置の控除率は年々低くなるので、長く電源を維持するほど支払い額は年々増えていくことになる。
2.気候変動対策・脱石炭の流れに逆行する
-「非効率石炭火力のフェードアウト」にも矛盾-
今回の公表では、応札した石炭火力が4,126万kWにのぼることが明らかになった。設備利用率70~80%を前提とすると非効率石炭火力を含む大部分の既存石炭火力が対象になると見込まれる。パリ協定の「1.5 ℃目標」達成には、先進国は2030年までに石炭火力全廃が求められるが、完全に逆行する。また、経済産業省は今年7月、「非効率石炭火力のフェードアウト」の制度を具体化する議論をはじめたが、今回の容量市場の約定結果は非効率石炭火力をも維持する方向に機能することは明らかだ。
3.再エネの普及拡大を阻害する
-再エネ電気の購入者も原発・石炭維持の負担をさせられる不条理-
約定結果における水力を除く再生可能エネルギーはわずか0.2%だった。すなわち容量市場とは、既存の火力・原発・水力に下駄を履かせ、今後の拡大普及を目指すべき太陽光や風力など再エネの普及を確実に妨げる制度である。それにも関わらず費用は全ての小売電気事業者、送配電事業者が支払うしくみとされている(容量拠出金)。その料金は電力料金に転嫁され、原発や石炭火力の電気を購入したくないと新電力に切り替えた消費者までもが、容量市場のもと原発や石炭火力の維持費を支払わなければならない。
4.再エネ新電力には極めて不利になる
-公正な電力取引・電力自由化からかけ離れた制度-
旧一般電気事業者は小売部門が容量拠出金を負担したとしても、容量市場で応札した電源がありホールディングス内で支出は相殺される。一方、発電事業を持たない新電力にとっては卸電力市場で供給する電気を調達している。約定総額から概算するkWh当り負担額は約1.9円となるが、電力小売り事業者にとってこの上乗せは過剰な負担となり競争上もあまりにも不公正だ。新電力の生き残りは壊滅的な状況になると予想され、特に再エネ新電力への影響は、今後の再エネ普及の妨げになる。
5.開示情報が極めて限定的で不透明
-電源別・電力会社ごとの応札情報は不開示-
このような様々な不条理や不公正がある制度であるにも関わらず、具体的な情報が極めて不透明で、どの電源が応札したのか、電力会社ごとに受け取る費用などはすべて非公開である。電力のように公共性が高く、消費者や将来世代の利益も侵害されかねない問題だからこそ、全ての情報がオープンにされるべきだ。
以上のように、これだけの問題をはらむ容量市場は白紙撤回し、原発や石炭から脱却し再エネへのシフトを目指し、電力市場を含むエネルギーシステムについて国民的議論を通じ抜本的に見直すべきである
参考)OCCTO「容量市場メインオークション約定結果(対象実需給年度:2024年度)の公表について」
【国の「太陽光・風力発電推進」どこまで本音?再エネ政策に漂う不透明感 net IB news2020/09/299/24】
洋上風力バブルでも、相変わらず向かい風が吹く日本の再生可能エネルギー。燃料費ゼロでも多額の初期投資と送電系統の空き容量などの問題から、太陽光・風力発電は政策なしには進まない。自然エネルギー政策専門家であり、認定NPO法人環境エネルギー政策研究所・所長・飯田哲也氏に聞いた。
◆エネルギー需要減も再エネはシェア増
――再生可能エネルギーの現状を教えてください。
飯田 世界は「再エネ&電気自動車化」へと急速にシフトしています。ガソリン車の売上が減少するなか、原油安でもテスラの電気自動車の売れ行きは落ちることなく、テスラ株は2,000ドルを突破して時価総額でトヨタを抜き世界最大の自動車会社となりました。コロナ禍で飛行機や自動車などの輸送燃料ニーズの減退が著しいため2020年の世界エネルギー需要予想は前年比6%減ですが、発電時に燃料が必要ない太陽光や風力発電などは増加しているため、再生可能エネルギーの電力シェアがさらに高まると予想されています(国際エネルギー機関(IEA)調べ)。
太陽光や風力発電などの再生可能エネルギーは「天気まかせで不安定」と言われていますが、発電方法のデメリットに目を向けるよりも、自然に毎日変動する発電量に対応できるように送電系統を構築することのほうがむしろ必要ではないでしょうか。これまでは、発電コストが低く、昼夜問わずに安定した「ベースロード電源」として、石炭火力や原子力発電などを利用し、電力需要が上がりベースロード電源のみでは足りない場合に「ミドル電源」として天然ガス発電を稼働し、1日のうち電力需要が高い時間帯のみ発電する「ピーク電源」として石油火力や揚水発電を稼働するという使い分けをしてきました。しかし、再生可能エネルギーの発電量が増加しているため、今までの使い分けは通用しない時代になっています。太陽光や風力などの再生可能エネルギーを最大限に利用できるよう、毎日の発電量の変動を柔軟に送電系統で受け止められる仕組みにパラダイム転換すべきだと考えています。
電力需要量のほとんどを供給できるほど太陽光発電が普及している九州電力管内では、電力供給過剰で何度も太陽光発電の出力抑制がなされましたが、送電系統を整備して効率の高い蓄電池を利用できれば、従来型のベースロード電源に頼らなくても再生可能エネルギー中心で電力をまかなえます。
「CO2排出量の2050年実質ゼロ」を世界が目指していますが、コロナ禍によるロックダウンや自粛などで経済に急ブレーキがかかり、2020年のCO2排出量が前年比8%の予測で第二次世界大戦以来の前年比の減少幅になると見込まれていますが、2050年までに温室効果ガス排出ゼロという目標からはほど遠い状況です。つまり経済縮小では不可能だということが実感されました。約120兆円の予算をかけてインフラを置き換える「欧州グリーン・ディール」や、総額約89兆円の補助や融資を行う「グリーンリカバリー」などの政策を打ち出し、太陽光発電や風力発電など再生可能エネルギー体制に根こそぎ変えることが不可欠です。
欧州グリーン・ディールでは、増加が著しい太陽光や風力などの再生可能エネルギーの送電系統の整備の推進などによるエネルギー分野のCO2削減や、建物の改修によるエネルギー消費量の低減、再生可能エネルギーを利用したEV車(電気自動車)の普及などの省エネの交通の整備などを支援します。また、グリーンリカバリーでは、再生可能エネルギーへの転換をサポートし、エネルギー貯蔵技術などの関連インフラなどへの投資を加速させます。
◆再エネ以外も「お呼びがかかる」容量市場
飯田 今年7月から、発電所が発電できる能力を取引する「容量市場」の第1回入札が行われました。天候や時刻で発電量が変わる太陽光や風力発電は、これまで発電した電気を1kWh単位で取引されていた卸電力取引所(JPEX)とは別に、1万kWなどの「発電能力」の取引が始まったのです。
この容量市場の始まりは、米国で2000年前後に電力市場が自由化され、発電部門と送電線管理部門を分ける分社化(発送電分離)が進んだことでした。1社のなかで発電と送電を行うと、短期間で利益を上げる発電所と、安定供給できる予備電源としての発電所の両方を確保できます。しかし、発送電分離により、卸電力取引のみでは停電を防ぐ予備の発電所の収支が合わなくなり廃止される恐れがあったため、予備の発電所を残すための費用を市場が負担する制度として、容量市場がスタートしました。
欧州では、再生可能エネルギーは初期費用の多くが補助金でまかなわれるため、実質的にはランニングコストのみの負担になり、単価の安い電力になります。そのため、卸電力取引所では、単価の安い太陽光発電により、天然ガスや火力発電などの単価の高い電力が押し出されますが、太陽光発電の発電量の変動に対応するためには、これらを予備電源として確保しておく必要があります。欧州では電力市場自由化により、太陽光などの再生可能エネルギーの普及に向けて、今後も安定供給できる予備電源を残すために容量市場の導入が必要だという議論が2010年ごろに始まりました。
日本では容量市場を開始した理由は、発電所の建設に多くの費用と期間(リードタイム)がかかり、建設時に将来の資金回収の見通しを立てることが必要なため、と説明されています。そのため、容量市場では4年後の発電容量を入札し、取引します。
しかし、欧州などで議論された容量市場の必要性は、季節や天気、時間帯によって発電量が変わる太陽光や風力発電をいっそう普及するためです。そのためEUの容量市場には下記(1)(2)の規制があります。
(1)CO2を排出する電源は不可(例:石炭火力発電など)
(2)出力抑制ができず、系統全体の調整力がない電源は不可(例:原子力発電など)
ところが日本では、これらがすっぽりと抜けており、むしろ既存の大手電力会社の原発や石炭への「補助金」として費用が支払われる(※)ため、実質的には再生可能エネルギー抑制になっています。
電力小売業が容量市場で発電所に支払う1kWhあたり約1~2円の負担金は、電力小売業の約85%を占める大手電力10社(旧・一般電気事業者)にとっては小売部門と発電所がグループ内にあるため問題にはなりませんが、発電所をもたない多くの新電力にとっては競争力に関わる大きな負担になります。
※:玄海原発(118万kW)は容量市場で約70億~106億円を確保できる。容量市場の価格は1kWあたり、約6,000~9,000円として推定。 ^
◆高効率・低価格化する蓄電池
――再生可能エネルギーへの取り組みは進んでいますか。
飯田 天候や時刻で発電量が変わる太陽光や風力発電は、電力を安定供給できるように溜めておける蓄電池が不可欠ですが、今年5月にインドで公募された「24時間365日運転可能な蓄電池付き太陽光発電400MW」に対して、リニューパワー社が約5.6円/kWhという低価格で落札しました。ちなみに同社には、東京電力と中部電力の(株)JERAも出資しています。
「24時間365日運転可能」ということは、いわゆるベースロード電源ですが、単なるベースロードではなく、同時に蓄電池は天然ガスや揚水発電に比べても発電量の変化に圧倒的に早く対応できるために周波数変動も即座に吸収でき、またこれだけの蓄電池規模になるともっと大きな周波数変動による停電も防ぐことができる、ピーク時の対応も緊急時の対応もできる、万能のベースロード電源となります。こうした電源こそ「容量市場」で支えることがふさわしいのです。
その他、太陽光、風力発電が全電力のうち年平均で約50%を占める南オーストラリア州では、テスラ社が巨大蓄電池「ザ・ビッグバッテリー」(規模:100MW・129MWh)を建設しました。その理由は、16年9月に隣州から送電していた連系送電線が暴風雨で倒壊して、停電が起きたためです。総投資費用は約75億円ですが、従来の天然ガスなどより圧倒的にすばやく周波数変動に対応できるため1年あたり約30億円の周波数変動のコスト削減、実質的に2年強で投資費用を回収できる費用対効果だったと報告されています。そのため、今このザ・ビッグバッテリーは容量を1.5倍に増強しているほか、オーストラリア中で巨大蓄電池の建設が進みました。
こうしたことの背景には、この10年間で蓄電池コストが、太陽光発電と同様の技術学習効果によって、約80%も低下した事実があります。つまり、かつては高価すぎて電力用には使えなかった蓄電池も、電力用でも使えるほどに安くなり、今後もますます安くなっていくことが確実視されているのです。
◆FIP制度、再エネ政策で増す不透明感
飯田 日本でも「遅れてきた洋上風力発電ブーム」ですが、EUでは洋上風力発電所のハブとなる人工島を北海につくり、人工島から海底ケーブルで欧州6カ国に送電する、サイエンス・フィクションのような壮大なプロジェクトが進んでいます。オランダ、デンマーク、ドイツ、英国などを結ぶ計画で、建設計画に合意できれば、35年完成予定といわれています。風力発電は10年間でコストが約70%低下し、大型化によりさらにコストダウンが可能になったため、洋上風力への投資が進んでいます。
一方で、洋上風力発電の建設は、漁業組合との兼ね合いや自然保護、景観保護などの課題もあるため、地域の頭越しに進めてしまうとプロジェクトに影響が出る恐れもあります。
FIT制度に代わり導入されるFIP制度は売電時の市場価格にプレミアム(補助額)を上乗せするものですが、準備が遅れているためスタートは22年4月以降になるのではないでしょうか。しかしFIP制度をスタートしても、卸電力取引市場の入札で太陽光・風力発電が優先的に入札されなければその恩恵を受けることはできません。日本では、電源の8割を旧一般電気事業者が独占しているため、卸電力取引市場も、恣意的に操作される恐れを含めていまだに不透明感があります。そのような卸電力市場を前提とする再生可能エネルギー支援策であるFIP制度は、時期尚早と言わざるを得ません。
送電線の接続負担金も、新電力参入の壁です。表向きは送配電分社化されましたが、送電線は旧一般電気事業者が、旧い考えに基づいて運用・管理しているために、再生可能エネルギーの新しい接続の枠がないと判断したり、可能な場合でも本来なら不要と思われる多額の接続負担金を支払ったりする必要があります。
再生可能エネルギー中心の社会にするには、今の大規模発電所中心から、小~中規模発電所をネットワークで結んで各地に送電する方法に切り替える「分散型電源」が欠かせません。しかし、分散型電源には3つの課題があります。
(1)電力業界のIT化が遅れている(ビッグデータやIoT、AIなど)
(2)「上から下」への一方向だけだった送電線を双方向で運用できるアップデートが不可欠
(各地に送電できる方法に切替え)
(3)透明・公平・公正かつ最新の技術や知見に基づく電力市場や送電線管理の導入。
これらの課題の解決に、注目が集まっています。
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