食料支援から考え直す・・・日本の高等教育の貧困
コロナ禍のもと学生に対する食糧支援が各地でとりくまれている。
「ありがどう」「助かりました」という学生の声に、「やってよかった」と思う反面、最高学府にの学生が、バイトと教育ローンに支えられている現実、その時の会話の中で、公的制度の申請すらしてない学生の多さ・・・公的制度を利用するのは「責任をはたせてないダメなこと」とか、学費引き下げなど大学に要求するのは「敵対行為で、よくないこと」と、「自己責任」論にもとで生育してきた若者の実態に対する深い嘆きと怒りの感情の声を聴く。
自公政権、アベ政治のもとで、保育も含め教育が、金もうけの道具にされてきた結果、若い力がそがれ、社会自体が衰退し、国際的地位が低下していることへの焦りと喪失感が、「日本すごい」キャンペーン、メダルの裏側としてのヘイトの「土壌」になっている、と考えている。
以下は、高等教育、特に博士号のすくなさについて、これまでの備忘録からのメモ (高等教育など公的支出の貧困さはその土台にある。当然のこととして・・)
◆Nature Index収録の高水準の科学論文に占める日本の割合 ここ10年大きく低下
→ 特に日本が従来強かった材料科学と工学の論文数が大きく低下
※研究力の低下…中長期的には技術革新を主導する研究開発力の低下に。
→その人的な現れ/企業の研究開発における博士号取得者の少なさ
・企業、大学、研究機関等に在籍する研究者数 2017年
85万3700人(95年72万1200人より18%余増) うち博士号 20.5%、17万4906人
うち企業在籍 48万8800人、博士号 4.4%、2万4107人 にすぎない。
・企業の新規採用(18年) 2万4006人、うち博士号891人、3.7% 「科学技術研究調査」
→日本の企業は、博士号取得者の採用をすすめていない。
※人口100万人あたりの博士号取得者(2014年度)
・日本118人、アメリカ272人、ドイツ348人、フランス177人、イギリス353人、韓国279人
・しかも、08年度比較で、日本だけが減少 131人→118人
※日本の博士課程在学者数
95年4万3774人、06年7万5365人(ピーク)、17年7万3913人~企業就職が困難、大学も任期付採用
◆研究への投資がふえない問題は、企業の側にこそある
・ 日本初の研究成果が海外企業の手で実用化される例がたくさんある
~2015年ノーベル医学生理学賞の大村智・北里大教授の発見をもとに抗寄生虫薬「イベルメクチン」を米国企業開発
・日本の研究成果は、日本より海外で活用されている
日本の技術(特許)は、科学的成果(論文)を引用している割合は9位と低い。/一方、世界で特許に引用されている日本の論文数は、2位 (文科省 「科学研究のベンチマーク2019」)
~ 科学技術・学術政策研究所 伊神正貫所長「日本企業は新しい知識を受け入れる能力が低い可能性もある」(毎日新聞「誰が科学を殺すのか」)
→ 目先の利益優先の視野の狭さ /博士号取得者の採用が、諸外国より低い
◆若者を引き付ける研究環境の構築
・高学歴ワーキングプアといわれる現実のもと、だれが研究者を目指すのか
・第五次基本計画 8つの目標値のトップ 40歳未満の大学本務教員数 1割増
→ 4万3763人 ⇒ 4万3153人に減
・修士から博士課程への進学率 00年16.8% ⇒ 18年9.3% に減少
・国立大 40歳未満の教員のうち、任期付雇用 07年38.8% ⇒ 16年62.9% と激増
・国立最大規模の理化化学研究所 8割超え。しかも雇用上限を設定し、無期雇用転換逃れ
→ 21年度末 数百人、23年度末 千数役人の雇止め /優秀な研究者の国外流出か
メモ者の追記
★自己責任論、勝ち組負け組社会構造の中で、支配層が流布する「日本人はすごい」が、唯一残ったみずからの誇り、自己肯定感の「基盤」として響き、さらに蔑視してきた中国、韓国が隆盛、それに追いつけなくなっている日本の現実を見たくないために、政治的主張、攻撃性を「精鋭化」している、ということだろう。
★ 気象異常による災害の増加・食糧生産の混乱、新型コロナふくめた感染症の続発、希望を奪われた「主張」としてのテロの拡大・・・ 新自由主義、一国主義は何ももたらさない、地球主義の時代にきている。
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